JPH056241U - ダンパ装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ダンパ装置において、ダンパプレートと慣性
体との間に介在させた弾性材に過大な歪が生じないよう
にして、弾性材にキレツ等が生じないようにし、その寿
命を長くした。 【構成】 ダンパプレート１に弾性材２ａを介して取付
けられる慣性体３ａに環状空所４を設け、その環状空所
内に補助慣性体５を設けるとともに、補助慣性体の周囲
の環状空所内に粘性流体６を充填した。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、内燃機関のクランクシャフトの回転軸に生じる捩り振動をゴム剪断 歪により発生する内部ヒステリシスにより減衰させるようにしたダンパ装置に関 し、特に大きな励振力によって引き起こされる捩り振動をゴム、慣性体、粘性流 体、補助慣性体の順に振動系を直列に配置し、より効果的に振動を減衰し、更に ゴムの耐久寿命を向上させるようにしたものである。

【０００２】

【従来の技術】

従来、回転軸の捩り振動を減衰する手段としてゴムダンパや粘性ダンパが使用 されている。 ゴムダンパはプレートにゴムを介して慣性体を取付けた構成であって、振動エ ネルギーをゴムの剪断歪による内部ヒステリシスにより熱エネルギーに変換させ ることにより振動を減衰させるようになっている。この場合、変形しやすいゴム を使用すると、振動減衰率を大きくすることができるが、あまり変形しやすくす るとゴムが破断するので適切な柔かさのゴム材料が使用されている。また捩り振 動をより効果的に減衰する為に、ダンパプレートの両面にそれぞれゴムを介して 質量の異なる慣性体をそれぞれ加硫接着などの手段により取付け、各々の振動系 の固有振動数を異なるものとし、回転軸の捩り振動を３分割して吸収するダブル ダンパも使用されている。粘性ダンパは、回転軸に取付けるプレート側と慣性体 側との間にシリコンオイルを充填し、両部材間の円周方向相対運動によるシリコ ンオイルの剪断抵抗により捩り振動を減衰させるようになっている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

ゴムダンパで回転軸の捩り振動を減衰させる場合、捩り振動の振幅は回転軸の 回転速度により変化し、振幅の小さいうちは問題ないが、振幅が大きくなると慣 性体に大きな慣性力が作用してゴムをキレツさせるという問題があった。 そこで本考案は、回転軸の捩り振動の振幅が大きくなったときに、ゴムダンパ の慣性体に作用する慣性力を補助慣性体により拘束して、ゴムに過大な歪が発生 することを防ぎキレツを生じないようにすることを目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】

本考案は、回転軸へ取付けられるダンパプレートに弾性材を介して環状の慣性 体を取付け、この慣性体に環状空所を設けてそこに環状の補助慣性体を挿入し、 環状空所における補助慣性体の周囲に粘性流体を充填し、補助慣性体の軸方向に 直角な両面と内周面とに摺動部材を設けたダンパ装置である。

【０００５】

【作用】

上記手段のダンパ装置は、慣性体の環状空所に補助慣性体を設けて、その外周 に粘性流体を介在させているので、慣性体が回転軸の励振振動数に共振して過大 な振動を起こす時、補助慣性体はそれ自身の慣性力の為に一定な回転を続けよう とする。よって、慣性体と補助慣性体の間で円周方向の相対的振動運動が起こり 、その両部材の間に介在する粘性流体に剪断力が働き、その抵抗により慣性体の 過大な振動は拘束される。したがって、弾性材の過大な変形も拘束されることに なり、弾性材のキレツの発生を防ぎ、寿命を改善するとともに回転軸自体に発生 している振動もより効果的に吸収することになる。

【０００６】 共振点からはずれた回転数や、振動の小さな場合は、粘性抵抗が振動トルクに 打ち勝って、慣性体と補助慣性体はあたかも一体のユニットのように動き両部材 間の相対運動はほとんど働かず、弾性材には許容範囲内の剪断歪が発生するだけ であり、弾性材が破壊するようなことはない。

【０００７】

【実施例】

本考案をダブルダンパに適用した第１実施例について、図１により説明する。 内燃機関のクランクシャフト等に取付けるダンパプレート１は、略円形であっ て、その外周部は２段に折り曲げられて外周部が中央部に対して傾斜している。 ダンパプレート１の外周部の両面に、それぞれゴム等の弾性材２ａ、２ｂを介し て慣性体３ａ、３ｂが加硫接着される。弾性材２ａ、２ｂは環状形であって回転 中心から外に向って厚肉に形成することにより、全体の歪率を一定になるように した。また慣性体３ａ、３ｂも環状形であってその外面は、回転軸に対して垂直 面に形成し、配置スペースの便を図り、慣性体３ａを慣性体３ｂより大径であっ て大きな慣性質量に形成した。

【０００８】 慣性体３ａには、環状空所４が設けられており、この環状空所４内に環状の補 助慣性体５が挿入される。なお、そのような構成にするために、慣性体３ａの外 面にカバー４ａをカシメて固定させた。環状空所４内における補助慣性体５の周 囲には、シリコンオイル等の粘性流体６が充填され、慣性体３ａと補助慣性体５ との相対運動により、粘性流体の減衰力を発生させるようにした。なお、粘性流 体６の充填は、カバー４ａに設けた通孔から流入し、その通孔はプラグ７により 封鎖した。また補助慣性体５の軸方向に直角な両面にそれぞれスラストベアリン グ８を設けるとともに、内周側の面にジャーナルベアリング９を設け、補助慣性 体５が環状空所の壁部と干渉することを防ぎ、捩り振動の方向である円周方向の み自由に運動できるようにし、半径方向、軸方向への動きをルーズに拘束するよ うに支持し、粘性流体の介在する狭い隙間を確保している。なお、各ベアリング ８、９の代りに、摩擦係数の小さな部材を設けてもよい。

【０００９】 上記実施例では、ダブルダンパ機構における２つの慣性体のうち一方の慣性体 内部に補助慣性体を設けたものであったが、両方の慣性体に補助慣性体を設けて も同様の効果を発揮する。しかし、前述した通り固有振動数を異なるものとする 為に一方の慣性質量は他方の慣性質量より小さくするのが通常のやり方であり、 一方の慣性体の断面は小さなものとなり、その内部に補助慣性体を設けなければ ならない。

【００１０】 次に第２実施例を図２により説明する。 この実施例は、ダンパプレート１０の外周部１０ａを回転軸に対して直角とな るように折り曲げ、外周部１０ａの内、外周にそれぞれ弾性材１１、１２を介し てそれぞれ慣性体１３、１４を取付けたものであり、その他の構成は第１実施例 と同一である。すなわち外周側の慣性体１４の環状空所１５内に、第１実施例と 同様に環状の補助慣性体１６を設け、環状空所１５内における補助慣性体１６の 周囲に粘性流体１７が充填され、補助慣性体１６の軸方向両側と半径方向内周に 摺動部材１８、１９が設けられる。なお、内周側の弾性材１１は、ダンパプレー ト１０にカラー２０を介して取付けた。

【００１１】 この実施例の場合も、第１実施例と同様に捩り振動の振幅の大きな場合に、補 助慣性体１６が慣性体１４の動きを拘束して弾性材１１のキレツを防止する。 以上の２つの実施例はダブルダンパであったが、ダンパプレートに１つの弾性 体と１つの慣性体を設けた場合であっても、本考案を同様に適用できる。

【００１２】

【考案の効果】

本考案のダンパ装置は、慣性体の環状空所内に補助慣性体を設けて、その周囲 に粘性流体を充填しているので、捩り振動の振幅が大きいときに、補助慣性体が 慣性体の動きを拘束することができ、慣性体とダンパプレートとの間に設けた弾 性材の破断を防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の第１実施例のダンパ装置の半断面図で
ある。

【図２】第２実施例の半断面図である。

【符号の説明】

１ ダンパプレート ２ａ 弾性材 ３ａ 慣性体 ４ 環状空所 ５ 補助慣性体 ６ 粘性流体

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 【請求項１】 回転軸へ取付けられるダンパプレートに
   弾性材を介して環状の慣性体を取付け、慣性体に設けた
   環状空所内に環状の補助慣性体を挿入し、補助慣性体の
   軸方向に直角な両面と内周側の面とに摺動部材を設け、
   環状空所における補助慣性体の周囲に粘性流体を充填し
   たことを特徴とするダンパ装置。