JPH0558124U - 視覚補助装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】白内障患者の視力、主に、網膜上の像の鮮明さ
を改善する目的で使用することができる新規な視覚補助
装置を提供する。 【構成】人の目の前に配置される少なくとも１枚のプレ
ート４、６と、電気信号により透明または不透明に変化
させることができる液晶装置14により該プレート４、６
上に形成された複数の領域と、該複数の領域の内の特定
の領域だけを透明にし且つ該透明になる領域を所定の周
期で順次移動させる電気信号を発生する走査制御回路８
とを備え、装着状態の該プレート４、６上において、該
複数の領域が互いに平行な帯状の領域であり、該透明に
なる特定の領域が一定の方向で走査されるように該領域
が配列されていることを特徴とする視覚補助装置。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、視覚補助装置に関する。より詳細には、本考案は、白内障患者の視 力を改善する目的で使用できる新規な視覚補助装置の構成に関する。

【０００２】

【従来の技術】

白内障とは、眼球の水晶体の混濁を意味する。また、白内障患者の眼球では、 水晶体の混濁箇所において光が拡散するので、網膜上に明瞭な像が結ばれなくな る。このような症状は外科手術で根治できる場合もある。しかしながら、進行の 遅い白内障の場合は、症状が、発症から長期間にわたって緩慢に進行するので、 患者が治療を決意したときには既に視力が大きく低下している場合が多い。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

本考案は、上述のような、白内障患者の視力、主に、網膜上の像の鮮明さを改 善する目的で使用することができる新規な視覚補助装置を提供することをその目 的としている。

【０００４】

【課題を解決するための手段】

本考案により、人の目の前に配置される少なくとも１枚のプレートと、電気信 号により透明または不透明に変化させることができる液晶装置により該プレート 上に形成された複数の領域と、該複数の領域の内の特定の領域だけを透明にし且 つ該透明になる領域を所定の周期で順次移動させる電気信号を発生する走査制御 回路とを備え、装着状態の該プレート上において、該複数の領域が互いに平行な 帯状の領域であり、該透明になる特定の領域が一定の方向で走査されるように該 領域が配列されていることを特徴とする視覚補助装置が提供される。

【０００５】

【作用】

本考案に係る視覚補助装置は、限定された透明領域を介して人にものを見せる 機能を有し、更に、この装置を使用する者の実用上の視野を狭めることがないと いう独自の構成を有している。この独特の機能と構成により、この視覚補助装置 は、白内障患者の視力を効果的に改善することができる。

【０００６】 眼科医が白内障患者を診察する場合、較正された所定の径の孔を有する不透明 な円板を使用して水晶体の不透明度を測定する場合がある。この円板を目前にあ てがわれたとき患者の目の視野は当然にかなり狭められる。しかしながら、この 円板の孔を介して網膜に結ばれた像は、白内障患者が普通に見ている像よりも鮮 明であることが判っている。

【０００７】 このような現象は光学的に説明することができる。既に述べたように、白内障 患者の眼球では混濁した水晶体で光が拡散されてしまう。この拡散の程度は、水 晶体の混濁が一定であるとすると、光源の光度とこの光が通過する水晶体の部分 の大きさとの２つの要素により決定される。換言すれば、水晶体における光の拡 散は、光が通過した部分の体積の関数として表すことができる。従って、小さい 孔を介してものを見た場合、光の拡散に寄与するのは水晶体の一部分だけになる ので、水晶体全体でものを見た場合に比較すると網膜上の像が鮮明になる。

【０００８】 本考案に係る視覚補助装置は、上述のような現象を応用して完成したものであ り、更に、小孔付き円板を使用した場合のような視野の狭窄がなく、眼鏡のよう に使用することができる実用的な視覚補助装置である。

【０００９】 即ち、本考案に係る視覚補助装置は、白内障患者の目の直前に配置して使用さ れるプレートを備えている。このプレート上には、電気的な制御により透明また は不透明に変化させることができる液晶装置により、複数の領域が画成されてい る。また、本考案に係る装置は、上記液晶装置を制御する走査制御回路を備えて おり、プレート上の複数の領域のうち、特定の領域だけを透明にし、且つ、その 透明の領域を順次移動させることができるように構成されている。

【００１０】 本考案に係る視覚補助装置を使用した場合、使用者は、特定の透明な領域だけ を通してものを見ることができる。従って、白内障患者がこの装置を使用した場 合は、前述のような原理により普段よりも鮮明な像を見ることができる。

【００１１】 また、この視覚補助装置では、透明な領域がプレート上を走査するように順次 移動しているので、１回の走査周期で視野の全体を見ることができる。

【００１２】 ここで、上記走査周期は網膜の残像時間よりも早くすることが有利である。即 ち、このように構成することにより、映画と同様に、一旦透明になった領域が不 透明になってから再び透明になるまでの間、網膜上には残像が残っている。従っ て、使用者にとっては走査が知覚されず、通常の視野が再構成される。具体的に は、走査周期を16Hz以上にすればこのような効果が確実に得られる。

【００１３】 また、本考案の好ましい実施態様に従うと、本考案に係る視覚補助装置は、眼 鏡のフレームによって支持する構成とすることにより、取扱いが極めて容易にな る。更に、具体的に後述するように、走査制御装置までフレームに装着すること も可能であり、この場合は、普通の眼鏡のように使用することができる。

【００１４】 尚、本考案に係る視覚補助装置を使用した場合、視野が狭められることはない が光度は減少する。従って、これを利用して、減光装置として使用することもで きる。この場合、本考案に係る装置では、到達光量を時間的に制限して減光する ので、透過特性に波長依存性がない。従って、着色レンズを使用したサングラス 等と異なって、正確な色調を維持したまま光度だけを低減することができる。

【００１５】 本考案の特徴および利点は、添付図面を参照した以下の説明によってより明瞭 になろう。但し、以下の説明は本考案を何ら限定するものではない。

【００１６】

【実施例】

図１は、本考案に係る視覚補助装置の具体的な構成例を示す図である。

【００１７】 同図に示すように、この視覚補助装置は、基本的には眼鏡のフレームと同じ機 能を有する支持部材２と、眼鏡フレームではレンズが装着される位置で支持部材 ２に装着された１対のプレート４、６と、支持部材２のつるに相当する部分に装 荷された走査制御回路８とを備えている。

【００１８】 このような構成は、使用者にとって取扱いが容易なので、走査制御回路８が小 型で軽量の場合には好ましい。しかしながら、この実施例の支持部材２は使用者 の耳と鼻とによって支持される構造なので、走査制御回路８の重量および寸法が ある程度大きい場合は、走査制御回路８を別体として、使用者の衣服等に固定し たり、ポケットに入れて携帯したりすることができるように構成することが好ま しい。尚、走査制御回路８は、信号線10、12を介して各プレート４、６に接続さ れており、後述する液晶セル14の電極に印加する電気信号を周期的に発生するよ うに構成されている。

【００１９】 各プレート４、６は、それぞれが水平なスリットを画成するようにエッチング された複数の液晶セル14を備えている。各液晶セル14は電極を備えており、電気 信号で制御することにより、個別に透明化または不透明化することができる。

【００２０】 以上のように構成された視覚補助装置では、走査制御回路８において、複数の 液晶セル14のうちのひとつまたはいくつかを順次透明化するような信号を発生す る。また、透明化される特定の液晶セル以外の液晶セルは、全て不透明になるよ うに制御される。尚、透明化される液晶セルは、例えばプレートの上から下へ順 次選択され、下端のセルが選択されると再び最上段のセルが透明化されるように 制御することができる。即ち、動作中の各プレートでは、透明なスリットにより プレートが周期的に走査されることになる。

【００２１】 図２は、図１に示した視覚補助装置において使用することができる走査制御回 路の具体的な構成例を示す図である。

【００２２】 同図に示すように、この走査制御回路８は、ロード回路22とシフトレジスタ16 とを備えている。

【００２３】 シフトレジスタ16は、それぞれデータ信号Ｃおよびクロック信号ＣＬＫを受け る１対の入力と、ｎ本の並列な出力ラインＳ₁ 〜Ｓ_n とを備えており、各出力ラ インＳ₁ 〜Ｓ_n は、前述の液晶セル14により画成された領域ｚ₁ 〜ｚ_n に個々に 対応している。

【００２４】 ここで、シフトレジスタ16の出力ラインＳ₁ 〜Ｓ_n を介して領域ｚ₁ 〜ｚ_n に 所定の値の信号を印加することにより、各領域ｚ₁ 〜ｚ_n を個別に透明状態また は不透明状態にすることができる。例えば、発生した値 "１" の信号を信号線を 介して印加された領域は透明になり、値 "０" の信号を印加された領域は不透明 になる。また、シフトレジスタ16に供給されるクロック信号ＣＬＫに従って、こ の透明な領域は順次移動し、１つまたは複数の連続した領域により形成された透 明なスリットがプレート上を周期的に走査するように制御することができる。

【００２５】 尚、使用者が走査を知覚しないように人の網膜の残像時間を考慮して、透明ス リットによるプレート走査周波数が16Hz以上になるように制御することが好まし い。このような走査周期を実現するクロック信号ＣＬＫの周波数は、スリットの 数ｎの関数として選択することができる。

【００２６】 上述のようなシフトレジスタ16に対してデータ信号Ｃを供給するロード回路22 は、データ信号Ｃとしてｎビットのシーケンスをロードする機能を有している。 即ち、ロード回路22は、１ビットまたは連続した複数ビットの "１" 信号と連続 した "０" 信号とからなるｎビットのシーケンスである信号Ｃを生成して、この シーケンスをシフトレジスタ16のデータ入力から入力する。このとき、 "１" 信 号のビット数が、前述のプレート４、６上に形成される透明な領域の幅を決定す る。

【００２７】 図３は、図２に示した走査制御回路８において使用することができるロード回 路22の具体的な構成例とその動作を説明するための図である。

【００２８】 図３(a) はロード回路22の構成例を示している。同図に示すように、ロード回 路22は、信号発生器24と差動増幅器26とポテンショメータ28とを備えている。

【００２９】 信号発生器24は、例えば鋸歯状波信号Ａを発生する発振器である。差動増幅器 26は相補的な信号を受ける１対の入力を備えており、非反転入力には信号発生器 24の出力を、反転入力にはポテンショメータ28により決定された参照電圧Ｂをそ れぞれ受けている。ここで、ポテンショメータ28の出力値は、差動増幅器26が、 後述するような所望のパルス幅のパルス信号を出力するように調節されている。 以上のように構成されたロード回路22の出力は、シフトレジスタ16のデータ入力 にデータ信号Ｃとして入力される。

【００３０】 図３(b) は、ロード回路22における信号Ａ、Ｂ、Ｃの信号波形を示す波形図で ある。同図に示すように、信号Ｂのレベルは、ポテンショメータ28により使用者 が決定することができる。また、差動増幅器26の出力するデータ信号Ｃは、信号 発生器24が発生する信号Ａと同じ周期を有する周期的な矩形パルス信号であり、 そのパルス幅は信号Ｂのレベルに応じて決定される。ここで、この信号Ｃのパル ス幅は、図１に示した装置の各プレート４、６における、連続した透明領域の数 を決定する。

【００３１】 図１に示した実施例では各プレートは円形であるが、本考案はこの形状に限定 されるわけではなく、例えば、正方形や長方形でもよい。また、プレート上で画 成される透明または不透明領域となる部分の形状は、図１に示した実施例では互 いに平行な複数のスリット状であるが、本考案はこの実施態様に限定されるわけ ではなく、例えば円形等の任意の形にすることができる。

【００３２】 また、図１に示した実施例は、同じ形状の１対のプレートを備えた眼鏡型の視 覚補助装置であるが、このプレートを単独で使用することもできる。図４は、そ のような構成の視覚補助装置を例示する図である。同図に示すように、水平方向 のスリット14を備えたプレート４と走査制御回路10とを備え、走査制御回路10に より発生された電気信号８により動作する。この場合のプレート支持部材30は、 ここでは、プレート４自体の周縁部30をそのまま利用している。

【００３３】 尚、図１および図４に図示した実施例で使用したプレートの単独の寸法は、具 体的には、例えば直径35mmの円形であり、各プレートには10個のスリットが形成 されている。各スリットの幅は２mmであり、また、各スリット相互の間は約0.20 mmの間隙によって分離されている。また、有利に使用できる液晶材料としては螺 旋状ネマチック型の液晶が挙げられる。この種の液晶は、通常は不透明であるが 電圧の印加により透明になる。

【００３４】

【考案の効果】

以上詳しく説明したように、本考案に係る視覚補助装置は、白内障患者の視覚 を効果的に改善して鮮明な像をみせることができる。また、この視覚の改善効果 は、視野を狭窄させることなく得られる。

【００３５】 更に、この装置は、通常の眼鏡と同じ形状で構成することができるので、実用 的な視覚補助装置として眼鏡と同様な取扱いが可能である。

【００３６】 また、この視覚補助装置は、色調を変化させることなく光度を低減する減光フ ィルタとしても利用できるので、溶接プラズマの発光や対向車の前照燈等から目 を保護する装置としても利用できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係る視覚補助装置の具体的な構成例を
示す図である。

【図２】図１に示した視覚補助装置で使用できる走査制
御回路の基本構成を示す図である。

【図３】図２に示した走査制御回路で使用できるロード
回路の具体的な構成とその動作を説明するための図であ
る。

【図４】本考案に係る視覚補助装置の他の具体的な構成
例を示す図である。

【符号の説明】

２・・・支持部材 ４，６・・・プレート ８・・・走査制御回路 10，12・・・制御回路 14・・・スリット 16・・・シフトレジスタ 18・・・入力 22・・・ロード回路 24・・・信号発生器 26・・・差動増幅器 28・・・ポテンショメータ 30・・・支持部材

Claims (4)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】人の目の前に配置される少なくとも１枚の
   プレートと、電気信号により透明または不透明に変化さ
   せることができる液晶装置により該プレート上に形成さ
   れた複数の領域と、該複数の領域の内の特定の領域だけ
   を透明にし且つ該透明になる領域を所定の周期で順次移
   動させる電気信号を発生する走査制御回路とを備え、装
   着状態の該プレート上において、該複数の領域が互いに
   平行な帯状の領域であり、該透明になる特定の領域が一
   定の方向で走査されるように該領域が配列されているこ
   とを特徴とする視覚補助装置。
2. 【請求項２】請求項１に記載された該視覚補助装置が、
   白内障患者の視覚障害を低減するための装置であること
   を特徴とする視覚補助装置。
3. 【請求項３】請求項１または請求項２に記載された視覚
   補助装置において、前記走査回路による走査周期が16Hz
   以上であることを特徴とする視覚補助装置。
4. 【請求項４】請求項１から請求項３までの何れか１項に
   記載された視覚補助装置において、前記プレートが、眼
   鏡フレームを介して人に装着されるように構成されてい
   ることを特徴とする視覚補助装置。