JPH0551645U - 印刷機の刷版保持装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 刷版を版胴周面の所定位置へ容易に高精度で
装着できるように保持することを可能にした装置を提供
することを目的としている。 【構成】 版胴３の周面に対向する安全カバー１３を垂
下してそのカバー本体１７に版ホルダ４０を揺動自在に
枢着した。この版ホルダ４０を、その揺動端部がカバー
本体１７の表面から埋没するようにねじりコイルばね４
３で付勢した。版ホルダ４０をねじりコイルばね４３の
ばね力に抗してカバー本体１７の表面から突出させ、こ
れで刷版２４の下端部を支承させるようにした。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は印刷機において、これから版胴へ装着する刷版を機体側の保持部材で 保持する刷版保持装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

各種印刷機の版胴外周部には、胴の全長におよぶ断面ほゞ扇形状の切欠きが設 けられており、この切欠き内には、刷版（以下、単に版という）のくわえ側端部 を固定するくわえ側版万力と、これにくわえられたのち胴周面に巻付けられた版 の尻側端部をくわえる尻側版万力とからなる版万力装置が、切欠きの底面に固定 されて版胴の軸線方向に延設されている。

【０００３】 従来におけるこれらくわえ側，尻側の版万力は、版胴の軸線方向に延びる長尺 の万力台と、この万力台側に回動自在に支持されその回動により開閉して万力台 との間で版をくわえたり放したりするくわえ板と、これらくわえ板の端縁部切欠 きと係合する複数個のカムとを備えており、複数個のカムは回動自在なカム軸上 に並列して固定されている。また、万力台とくわえ板との間には、くわえ板を開 方向に付勢する複数個の圧縮コイルばねが介装されている。

【０００４】 このように構成されていることにより、版をくわえる場合には、カム軸を回動 操作すると、版胴の軸線方向へ複数個に分割されたくわえ板は、カムの係合から 開放されて圧縮コイルばねの弾発力によりいっせいに開くので、くわえ板と万力 台との間へ版の端を挿入したのち、カム軸を先程とは逆方向に回動させると、く わえ板はカムの作用で圧縮コイルばねの弾発力に抗し回動して閉じ、版の端をく わえる。

【０００５】 また、例えば特開平１−１２７３４６号公報に開示されている装置は、従来版 胴の円周方向に形成されていた版の尻側くわえ面が、版胴の半径方向に形成され るように、万力台とくわえ板とが版胴の半径方向に延設されており、また、版の 端部が、別に設けた版曲げ機によって直角状に曲げられている。このように構成 されていることにより、くわえ側端部をくわえられて胴周面に巻付けられた版の 尻側端部は、折曲げ部を万力台とくわえ板との間へ挿入され、カム機構でくわえ 板を揺動させることにより、版の折曲げ端がくわえられるので、このあと、尻側 版万力全体を円周方向へ移動させることにより、版が均一に張られて胴周面に密 着した状態で装着される。

【０００６】 しかしながら、このような版装着装置においては、くわえ側版万力の狭い開口 部に版万力を挿入するのが難しく、長時間と多大の労力を必要とするばかりでな く、胴周に巻付けながら尻側版万力へ導く版が版胴の周面に密着しないために、 ほゞ直角に折曲げられている版尻を尻側版万力の開口部に挿入するのが難しく、 さらに時間がかかり労力の負担が増大するという問題がある。

【０００７】 そこで従来、版胴の周面に対向する例えば印刷ユニット間の空間部に、版を保 持する保持装置を設け、この保持装置で版を保持させながら版のくわえ側版万力 への版の挿入と、版胴周面への版の巻付けとを行ったのち、保持装置の保持から 解放させた版の尻側端部を尻側版万力にくわえさせるようにした半自動式の刷版 装着装置が提案されている。

【０００８】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、このような従来の半自動式刷版装着装置は、版のくわえ側端部 にＵ字状の切込みを設け、くわえ側版万力には、この切込みと係合する基準ピン を設けたものであって、版の装着に際しては、版の端に手を添えて版万力に挿入 し、基準ピンと切込みとを係合させながら版万力を閉じさせるものであるため、 版万力を閉じるときに切込みの底部が基準ピンから離れたり、最初から切込みの 底部が基準ピンに当っていなかったりすることがあって、版万力の装着位置が不 正確になり、印刷見当が狂って印刷物の品質が低下するという問題がある。また 機体側の部材から突出するホルダを設けてこれで版の下端部を支承させることも 考えられるが、この場合、保持された版を版胴に装着しようとしてホルダから外 しても、版の保持部がホルダに引っ掛かってふたたびホルダに嵌まってしまうの で、作業者は版がホルダに嵌まらないように保持しなければならず、作業がきわ めてやりにくいという問題がある。

【０００９】 本考案は以上のような点に鑑みなされたもので、刷版を所定の位置へ容易に高 精度で装着できるように保持することを可能にした印刷機の刷版保持装置を提供 することを目的としている。

【００１０】

【課題を解決するための手段】

このような目的を達成するために本考案では、印刷機の刷版保持装置において 版胴の周面に対向して垂下する刷版保持部材に、この刷版保持部材の表面から揺 動端部を埋没させるように付勢されこの付勢力に抗して揺動端部を突出させるこ とにより刷版の下端部を支承する版ホルダを揺動自在に枢着した。

【００１１】

【作用】

印刷作業中は刷版保持部材としてのカバーが閉じられていて印刷ユニットの前 面を覆っており、上端部をカバーの版受けで支持された版は、下端部を版ホルダ で支承されて準備されている。この場合、版ホルダはばね部材などの付勢力に抗 して揺動端部がカバーの表面から突出しており、版の下端部は此の突出部で支承 されている。印刷作業が終って版を交換する場合には、カバー全体が版を保持し たまゝ上昇し版胴の前方が開放される。カバーを開いたのち、版胴に装着されて いる用済の版を版万力の開閉と版胴の回転とで取外して機外へ取出す。そこで準 備した版を手で保持してその下端部を版ホルダから外し、版胴のくわえ側版万力 の万力台とくわえ板との間へ挿入する。この場合、版ホルダはばね部材等の付勢 により遊端部がカバーの表面から埋没するので、版の下端部が版ホルダに引っ掛 かることがない。

【００１２】

【実施例】 図１ないし図４は本考案に係る印刷機の刷版保持装置を安全カバーに実施した 例を示し、図１は刷版を支承した状態で示す安全カバー下端部の側面図、図２は 版ホルダ近傍の平面図、図３は刷版を支承しない状態すなわち版ホルダが埋没し た状態で示す安全カバー下端部の側面図、図４は本考案を実施した安全カバー周 辺の側面図である。図４において、印刷ユニット１はフレーム２を備えており、 このフレーム２の内部には、版胴３とゴム胴４とが互いに対接して配設されてい る。版胴３の上方と側方とには、版胴３に装着される版の表面にインキと湿し水 とを供給する図示しないインキ装置と給水装置とが設けられている。フレーム２ の上端水平面２ａ上には、駆動装置としてのエアシリンダ５が、ブラケット６を 介して揺動自在に枢支されており、このエアシリンダ５のピストンロッド７は、 水平面２ａ上の軸受８に回動自在に軸支された支持軸９側のレバー１０に枢着さ れている。軸受８は反対側のフレーム２上にも設けられており、支持軸９は左右 のフレーム２間に軸架されている。

【００１３】 レバー１０が固定された支持軸９には、Ｌ字状に形成された左右一対のアーム １１が同位相で固定されており、ピストンロッド７を進退させることによりレバ ー１０と支持軸９とを介して左右のアーム１１が図４に実線と鎖線とで示すよう にほゞ９０°回動するように構成されている。実線位置にあるアーム１１は左右 のフレーム２の水平面２ａと垂直面２ｂとに添接されており、左右のアーム１１ の下端部間は、カバー支軸１２によって連結されている。

【００１４】 カバー支軸１２の両端部には、全体を符号１３で示す刷版保持部材としての安 全カバーを構成する左右の垂直バー１４が、回動自在に枢支されていて、この垂 直バー１４の下端部には、さらに短いバー１５が回動自在に枢着されており、バ ー１５の下端部に固定されたピン１６は、フレーム２に沿って垂設された断面コ 字状のガイドバー（図示せず）に上下動自在に嵌合されている。そして、上中下 ３段に分割形成された正面視横長長方形中空状のカバー本体（下段のカバー本体 １７のみを図１，図２，図３に示す）は、両端を前記垂直バー１４とバー１５と に固定されており、安全カバー１３は、閉状態では直線状であるが、開状態では くの字状に屈曲されるように構成されている。

【００１５】 このような安全カバー１３上端部のカバー支軸１２の前方には、これと平行状 態の版受け２１が、両端をアーム２２で支持されて架設されており、また、これ から版胴３に装着されようとする版２４は、上端部を版受け２１で支持されると ともに、下端部を後述する版ホルダ４０で支承されるように構成されている。ま た中段のカバー本体の左右両端部からは、側面視を円弧状に形成された版ガイド ２５が、カバー本体との間に間隔をおいて突設されており、さらに中段のカバー 本体の上端部には、版ホルダ４０とほゞ同長で版２４の版尻を挿し込めるように 下方へ開口する版押え２６が突設されている。また、版胴３の外周切欠き２７内 には、前述した版万力２８の万力台３０とくわえ板２９とが設けられており、図 ４ではこれらが模式化されて作図されている。３１は版２４の下端縁に設けられ た切込みと係合する基準ピンである。

【００１６】 そこで、前記版ホルダ４０について説明する。下段のカバー本体１７の下端部 には、切欠き１７ａが形成されており、この切欠き１７ａの端縁部に固着された 一対の軸受４１には，ホルダ支軸４２が固定状態で軸支されている。このホルダ 支軸４１には、版２４の下端部を支承する版ホルダ４０が回動自在に支持されて おり、この版ホルダ４０に一体形成されたカラー４０ａと軸受４１との間には、 版ホルダ４０に、その揺動端部をカバー本体１７の表面から埋没させるように付 勢するねじりコイルばね４３が介装されている。

【００１７】 そして、版２４の下端部を版ホルダ４０で支承させる場合には、図１に示すよ うに、版ホルダ４０をねじりコイルばね４３のばね力に抗して揺動させ、その揺 動端部をカバー本体１７の表面から突出させて版２４を支承するように構成され ている。また、版ホルダ４０で版２４を支承しない場合には、図３に示すように 版ホルダ４０がねじりコイルばね４３のばね力で揺動端部をカバー本体１７の表 面から埋没させるように構成されている。４４はボルト４５で固定されカバー本 体１７の底板に先端を当接させることにより版ホルダ４０の回動端限を規正する ストッパである。

【００１８】 以上のように構成された刷版保持装置の動作を説明する。印刷作業中は安全カ バー１３が図４に実線で示すように閉じられていて、印刷ユニット１の前面を覆 っており、これから装着しようとする版２４は上端部を版受け２１で支持され下 端部を版ホルダ４０で支承されて準備されている。このとき、版ホルダ４０は、 ねじりコイルばね４３のばね力に抗してカバー本体１７の表面から突出されて版 ２４を支承している。

【００１９】 印刷作業が終ってこの状態から版を交換する場合には、エアシリンダ５を作動 させてピストンロッド７を図示の位置へ後退させると、レバー１０を介して支持 軸９が回動し、支持軸９に固定された左右のアーム１１が鎖線位置へ回動する。 したがって、アーム１１の下端部に垂直バー１４の上端部を枢支された安全カバ ー１３全体が版を符号２４Ａで示すように保持したまゝ鎖線位置へ移動して版胴 ３の前方が開放される。安全カバー１３の開放に際しては、ピン１６がガイドバ ーに沿って直線状に上昇し、鎖線位置では安全カバー１３全体がくの字状に屈曲 する。

【００２０】 このようにして安全カバー１３を開いたのち、版胴３に装着されている用済の 版を版万力２８（尻側版万力は図示せず）の開閉と版胴３の回転とで取外して機 外へ取出す。次に前記のようにして準備した版２４を把持してその下端部を版ホ ルダ４０から外し、図示の位置で停止している版胴３のくわえ側版万力２８の万 力台３０とくわえ板２９との間へ挿入する。この場合、版２４の下端部を版ホル ダ４０から外すと同時に、図３に示すように版ホルダ４０は、ねじりコイルばね ４３のばね力により揺動端部がカバー本体１７の表面から埋没するので、版２４ の下端が版ホルダ４０に引っ掛かるおそれがない。

【００２１】 版の装着に際し、図に符号２４Ｂで示す版は、版ガイド２５の円弧状内面に沿 って支持されており、また、万力台３０とくわえ板２９との間へ挿入された版２ ４Ｂの下端縁に設けられたＵ字形の基準切込みは基準ピン３１と係合する。この とき版２４Ｂは、版ガイド２５で受けられた状態で自重により基準切込みが基準 ピン３１に当って係合しているので、確実に係合し、従来版を手で挿入している ときのように係合が外れることがない。

【００２２】 またこのあと、版２４Ｂを撓ませてその版尻部である上端縁を、下方へ開口し ている版押え２６へ挿し込むと、版２４Ｂは、版押え２６，版ガイド２５，基準 ピン３１に当った状態になるが、この場合版２４Ｂの上端自由位置よりも版押え ２６の底面の方が低くなるように版押え２６の位置を設定すれば、版２４Ｂは、 より確実に基準ピン３１に押付けられる。また、版押え２６，版ガイド２５，基 準ピン３１の相対位置は常に一定であるから、基準ピン３１への版２４Ｂの押圧 力も常に一定になる。したがって、このあと、版万力２８を閉じて版２４の装着 を完了したとき版２４の取付け状態が常に同じ条件になり、見当ずれ等の問題が なくなる。

【００２３】 なお、実施例では版ホルダ４０をカバー本体１７からの埋没状態に付勢する部 材としてねじりコイルばね４３を例示したが、引っ張りコイルばねや圧縮コイル ばね等のばね部材でもよく、また、図１におけるボルト４５の位置等におもりを 設けてその重量で版ホルダ４０をカバー本体１７からの埋没状態に付勢してもよ い。また、本実施例では版万力に挿入した版の上端部を保持して下方へ押す版保 持部材として版押え２６を例示したが、これに限定するものではなく、例えば、 吸着パットやローラ等にしてもよい。

【００２４】

【考案の効果】

以上の説明により明らかなように、本考案によれば印刷機の刷版保持装置にお いて、版胴の周面に対向して垂下する刷版保持部材に、この刷版保持部材の表面 から揺動端部を埋没させるように付勢されこの付勢力に抗して揺動端部を突出さ せることにより刷版の下端部を支承する版ホルダを揺動自在に枢着したことによ り、これから版胴に装着される刷版が版ホルダにより確実に支承されることはも とより、版の下端を版ホルダから取外すと同時に、版ホルダが刷版保持部材の表 面から揺動端部を埋没させるように付勢されるので、手で把持されて版胴に装着 される版の下端部が版ホルダに引っ掛かることがなく、版の装着精度が向上する とともに、刷版の装着時間が短縮されて機械の稼働率が向上し、損紙の発生率が 減少する。

【図面の簡単な説明】

【図１】刷版を支承した状態で示す安全カバー下端部の
側面図刷版装着装置の側面図である。

【図２】版ホルダ近傍の平面図である。

【図３】版ホルダが埋没した状態で示す安全カバー下端
部の側面図である。

【図４】本考案を実施した安全カバー周辺の側面図であ
る。

【符号の説明】

３ 版胴 １３ 安全カバー ２１ 版受け ２４ 刷版 ２４Ａ 刷版 ２４Ｂ 刷版 ４０ 版ホルダ ４２ ホルダ支軸 ４３ ねじりコイルばね

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 版胴の周面に対向して垂下する刷版保持
   部材に、この刷版保持部材の表面から揺動端部を埋没さ
   せるように付勢されこの付勢力に抗して揺動端部を突出
   させることにより刷版の下端部を支承する版ホルダを揺
   動自在に枢着したことを特徴とする印刷機の刷版保持装
   置。