JPH055125A - 耐摩耗性の優れた摺動部材の製造法 - Google Patents

耐摩耗性の優れた摺動部材の製造法

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JPH055125A
JPH055125A JP19913591A JP19913591A JPH055125A JP H055125 A JPH055125 A JP H055125A JP 19913591 A JP19913591 A JP 19913591A JP 19913591 A JP19913591 A JP 19913591A JP H055125 A JPH055125 A JP H055125A
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cast iron
pearlite
ferrite
remelting
chill
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JP19913591A
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Shigezo Osaki
茂三 大崎
Katsuya Ouchi
勝哉 大内
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Mazda Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐摩耗性の優れた摺動部材を製造するに際し
て、加工性を確保することができるとともに、チル層を
深く形成することのできる製造法を得ることを目的とす
る。 【構成】 耐摩耗性の優れた摺動部材を製造するに際し
て、重量比でC:3.3〜4.1%,Si:2.0〜3.0
%,Mn:0.1〜0.8%,P:0.08%以下,S:0.
03%以下,Cu:0.1〜0.5%,Cr;0.05〜0.
20%,Mg:0.010〜0.060%および残部Feの
組成からなる球状黒鉛鋳鉄を、面積比でフェライト20
〜80%,パーライト7〜71%および残部黒鉛の組織
とした後、摺動部に再溶融チル化処理を施し、該処理の
前もしくは後に所要の機械加工を施すようにしたことを
特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属基材の表面に耐摩
耗性合金チル層を形成するようにした耐摩耗性の優れた
摺動部材の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用エンジンにおいて用いられるカ
ムシャフトのカム部等の摺動部は、特にエンジンが高出
力であるほど高い面圧が作用するため、耐摩耗性に優れ
たものとすることが必要となる。従来、このような摺動
部の耐摩耗性を向上させる手段として、例えば特開昭5
8−196362号公報に記載されているように、カム
部をレーザ,電子ビーム,TIGアーク等のビーム熱エネ
ルギーにより再溶融した後、チル化する方法や、カム部
に合金粉末をコーティングもしくは給粉して再溶融した
り、あるいは合金粉末シートを用いて高合金再溶融した
りしてチル化する方法などが知られている。こうして得
られたチル組織は、一般に、微細な組織で硬くて耐摩耗
性に優れており、また、このチル組織は表面のみに形成
できるため、例えばガンドリルを用いた中空加工が可能
である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、カムシャフ
ト等の素材としては、通常、引張り強さ等の機械的性質
が優れていることから、球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)
が用いられる。しかし、再溶融用カム素材として用いら
れる球状黒鉛鋳鉄は、その組成としてCu(銅)を所定量
含有しているのが普通であって、それにより生地が強化
されており、また、組織としてはパーライト化している
ため硬さも硬い。そのため、このような球状黒鉛鋳鉄を
カムシャフト等の素材として用いた場合、例えばガンド
リルによって中空加工を行うのが困難であり、ガンドリ
ルの寿命が短くなり、また生産加工性も低下してしまう
という問題があった。
【0004】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたも
のであって、加工性を確保することができるとともに、
チル層を深く形成することのできる耐摩耗性の優れた摺
動部材の製造法を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は球状黒鉛鋳鉄の
組成においてCu(銅)の量を少なくし、かつCr(クロム)
を所定量含有させることによって上記課題を達成したも
のであって、その構成は次のとおりである。すなわち、
本発明に係る耐摩耗性に優れた摺動部材の製造法は、重
量比でC:3.3〜4.1%,Si:2.0〜3.0%,M
n:0.1〜0.8%,P:0.08%以下,S:0.03%
以下,Cu:0.1〜0.5%,Cr;0.05〜0.20
%,Mg:0.010〜0.060%および残部Feの組成
からなる球状黒鉛鋳鉄を、面積比でフェライト20〜8
0%,パーライト7〜71%および残部黒鉛の組織とし
た後、摺動部に再溶融チル化処理を施し、該処理の前も
しくは後に所要の機械加工を施すようにしたことを特徴
とする。
【0006】具体的には、上記のように、重量比でC:
3.3〜4.1%,Si:2.0〜3.0%,Mn:0.1〜
0.8%,P:0.08%以下,S:0.03%以下,Cu:
0.1〜0.5%,Cr;0.05〜0.20%,Mg:0.
010〜0.060%および残部Feの組成からなる球
状黒鉛鋳鉄製カム素材を用い、この素材をまず粗加工
し、次いで、カムシャフトの軸部にガンドリルを用いた
中空加工により中空穴を形成する。なお、この中空穴に
よりカムシャフトの軽量化が図れるとともに、該中空穴
はオイル穴としても利用することができる。次いで、摺
動部となるカム表面をビーム熱エネルギーにより再溶融
し、その後、カム研削加工を行って再溶融カムシャフト
とする。
【0007】
【作用】本発明において、再溶融鋳鉄材料としての球状
黒鉛鋳鉄に含有される各元素の含有割合値の根拠は、以
下に示すとおりである。 C(炭素)とSi(ケイ素)について 析出黒鉛を球状化するためには、CとSiの組成が過共
晶組成の鋳鉄であることが望ましい。通常、C:2.5
〜4.5%,Si:1〜4%であって、CとSiとの関係は
Si量(%)/3.1+C量(%)/4.5>1.00を満
足するのがよい。また、Siが多くなればフェライト化
が進み、析出フェライトの比率が多くなるともろくなっ
て機械的性質が低下する。したがって、C量は3.3〜
4.1%,Si量は2.0〜3.0%とするのが好まし
い。
【0008】 Mn(マンガン)について Mnは多量に含まれても黒鉛の球状化を妨げることはな
いが、生地に対してはパーライトを安定にする。また、
Mnが余り少ないとS(硫黄)の作用の中和ができないた
め白銑化し易くなり、一方、過剰に含まれるとセメンタ
イトを安定にして白銑化の傾向を示す。したがって、M
n量は0.1〜0.8%とするのが好ましい。
【0009】 P(リン)について Pは黒鉛の球状化を妨げることはない。しかし、Pが多
く含まれると硬いステダイトが析出し、著しく延性を害
する。したがって、P量は0.08%以下とするのが好
ましい。
【0010】 S(硫黄)について Sは黒鉛の球状化に及ぼす影響が大きく、Mg(マグネシ
ウム)添加後Sが0.03%以下でないと黒鉛は球状化
しない。すなわち、MgとSとの親和力が強く脱硫,脱酸
にMgが用いられるため、S量が多いとMgの歩留りが悪
くなる。したがって、S量は0.03%以下とするのが
好ましい。
【0011】 Cu(銅)について Cuは黒鉛化を阻害する元素である一方、生地を強化
し、パーライトを形成して生地硬さを向上させるため、
ガンドリルによる加工性を害する。したがって、Cu量
は0.1〜0.5%とするのが好まし。
【0012】 Cr(クロム)について Crはパーライト生地を安定化させ、さらに、再溶融時
のチル化を促進させる元素である。但し、多く含まれる
とCrの炭化物を形成し、生地硬さが高くなり、ガンド
リルによる加工性を害する。したがって、Cr量は0.
05〜0.20%とするのが好ましい。
【0013】 Mg(マグネシウム)について 黒鉛を球状化させる元素であり、0.010〜0.06
0%とするのが好ましい。
【0014】また、上記のような各元素の組成に基づく
と、面積比でフェライト20〜80%,パーライト7〜
71%および残部黒鉛からなる生地組織が形成される。
このような生地組織を有する球状黒鉛鋳鉄によれば、適
度な生地硬さとなって例えばガンドリルによる中空加工
が容易に行え、それによりカムシャフト等の軽量化を図
ることができる。また、上記組織とされることにより所
定値以上のチル深さを確保することができ、それにより
内部にクラックが発生するのを防いで、耐摩耗性の優れ
た摺動部材を得ることができる。
【0015】すなわち、生地組織中のフェライトの面積
比が20%未満になると、生地硬さが高くなり、全体と
してパーライトが71%を越えて球状黒鉛が分散した組
織になるため、ガンドリルによる中空加工性を害するこ
ととなり、一方、フェライトが80%を越えると、生地
硬さが低くなり、カムシャフトのジャーナル部の摩耗や
強度が低下することとなる。また、フェライトはパーラ
イトに比べて熱伝導率が大きいため、表面チルは容易に
できるが、チル深さが十分得られない。
【0016】
【実施例】次に、本発明の実施例について以下に説明す
る。 〈実施例1〉この実施例では、重量比でC:3.79%,
Si:2.74%,Mn:0.43%,P:0.019%,S:
0.022%,Cu:0.1%,Cr:0.06%,Mg:0.
045%および残部Feの組成を有し、組織的には面積
比でフェライト量72%,パーライト量15%および残
部黒鉛よりなる球状黒鉛鋳鉄製カム素材を、まず粗加工
し、次いで軸径φ23に対してオイル穴φ9.5をガン
ドリルにて中空加工した。次に、カムシャフト全体を所
定温度に予熱し、カム部をTIG装置にて所定条件下で
再溶融した。
【0017】上記再溶融におけるTIG処理条件、及び
再溶融前の予熱温度条件としては、以下の範囲が好まし
い。 ワーク回転数 : 0.4〜0.8 rpm ワーク回転数が0.4rpm未満の場合には、ワーク温度
が上昇し過ぎ、再溶融過多となって、チル硬さが低下す
る。また、0.8rpmを越えると、再溶融不足およびシ
ールドガス不良により、再溶融部の酸化が発生し、ブロ
ーホール等を誘発する。従って、ワーク回転数は、0.
4〜0.8rpmの範囲が好ましい。
【0018】 オシレート幅 : 11〜13 mm オシレート幅が11mm未満の場合には、チル幅が狭くな
り、未再溶融部と相手部材とが摺動する。そのため、未
再溶融部にピッチングが発生する。また、13mmを越え
ると、カム端部の肩だれが発生し、カムの接触長さが短
くなり面圧が増大して異常摩耗を招くおそれがある。従
って、オシレート幅は、11〜13mmの範囲が好まし
い。
【0019】 オシレート回数 : 20〜40回/m
in. オシレート回数が20回/min.未満の場合には、ピッ
チが大きくなり、カム摺動方向に対し、再溶融部および
未再溶融部が発生して摺動特性を害する。また、40回
/min.を越えると、シールドガス不良により、再溶融
部の酸化が発生し、ブローホール等を誘発する。従っ
て、オシレート回数は、20〜40回/min.の範囲が
好ましい。
【0020】 電流値 : 50〜110A 電流値が50A未満の場合には、再溶融不足となり、十
分なチル硬さ・深さが得られない。また、110Aを越
えると、再溶融過多となり、再溶融部表面の変形等によ
って加工での黒皮残りが生じ、あるいは組織の粗大化に
よってチル硬さの低下を招く。従って、電流値は、50
〜110Aの範囲が好ましい。
【0021】 予熱温度 : 150〜400℃ 予熱温度が150℃未満の場合には、再溶融チル層の冷
却速度が早いため、マルテンサイト変態に伴ってチル層
に焼き割れが発生するおそれがある。また、400℃を
越えると、再溶融チル層の冷却速度が遅くなり、組織が
粗大化してチル硬さの低下を招く。従って、予熱温度
は、150〜400℃の範囲が好ましい。
【0022】本発明実施例1では、上記ガンドリルによ
る中空加工の後、カムシャフトを300℃に予熱し、ワ
ーク回転数0.65rpm,オシレート幅11mm,オシレー
ト回数30回/min,電流値90〜110Aの条件下で再
溶融処理を行った。そして、再溶融後、カム研削加工を
行うことによってφ9.5のオイル穴を有する再溶融カ
ムシャフトを得た。
【0023】こうして得られたカムシャフトの再溶融カ
ム部をカットし、断面をナイタルで腐食し、再溶融チル
深さを測定したところ、0.58mmであり、チル硬さも
HV680であった。また、ジャーナル部の硬さはHV
185であった。なお、この実施例による球状黒鉛鋳鉄
の金属組織は、図1の顕微鏡写真(倍率:100倍)に示
されている。この写真で、白色の部分がフェライトであ
り、黒色で点在しているのが球状黒鉛,その他の灰色の
部分がパーライトである。
【0024】次に、本発明の第2の実施例について説明
する。 〈実施例2〉この実施例では、重量比でC:3.51%,
Si:2.21%,Mn:0.21%,P:0.017%,S:
0.022%,Cu:0.46%,Cr:0.17%,Mg:
0.041%および残部Feの組成を有し、組織的には
面積比でフェライト量31%,パーライト量59%およ
び残部黒鉛よりなる球状黒鉛鋳鉄製カム素材を、まず粗
加工し、次いで軸径φ27に対して中空穴φ13をガン
ドリルにて中空加工した。
【0025】次に、カムシャフト全体を300℃に予熱
し、カム部をTIG装置にて再溶融した。ここで、再溶
融条件としては、ワーク回転数0.65rpm,オシレート
幅13mm,オシレート回数30回/min,電流値90〜1
10Aである。そして、再溶融後、カム研削加工を行っ
てカム部をカットし、断面をナイタルで腐食し、再溶融
チル深さを測定したところ、0.65mmであり、チル硬
さはHV660であった。また、ジャーナル部の硬さは
HV225であった。尚、この実施例による球状黒鉛鋳
鉄の金属組織は、図2の顕微鏡写真(倍率:100倍)に
示されている。
【0026】次に、本発明のより好ましい実施例とし
て、Cu量およびCr量並びにフェライト量およびパーラ
イト量がより限定された球状黒鉛鋳鉄製素材を用いた実
施例について説明する。すなわち、化学成分および生地
組織がより好ましい範囲に限定された球状黒鉛鋳鉄素材
として、重量比でC:3.3〜4.1%,Si:2.0〜
3.0%,Mn:0.1〜0.8%,P:0.08%以下,
S:0.03%以下,Cu:0.1〜0.3%,Cr;0.0
5〜0.13%,Mg:0.010〜0.060%および
残部Feの組成からなる球状黒鉛鋳鉄を、面積比でフェ
ライト45〜80%,パーライト7〜45%および残部
黒鉛の組織とした素材を用いた。
【0027】上記球状黒鉛鋳鉄製素材は、Cu量および
Cr量の上限値をより低く限定するとともに、フェライ
ト量の下限値をより高く、かつパーライト量の上限値を
より低く限定したものである。尚、上記の限定範囲から
明らかなように、前述の〈実施例1〉は、このより好ま
しい実施例の一つに該当するものである。ここで、より
好ましい実施例として、Cu量およびCr量並びにフェラ
イト量およびパーライト量を上記の範囲に限定したの
は、以下の理由による。
【0028】すなわち、生地組織中のフェライトとパー
ライトの比率は、Cu量およびCr量によって支配され、
この両元素の含有量の上限を低く設定することにより、
生地組織中のパーライトの生成および安定化を抑制し、
その面積比率の上限値を低くすることができる。また、
ジャーナル部の加工において、より良好な加工性および
工具寿命を得るためには、フェライト量をパーライト量
に対して1:1以上の比率で確保することが好ましい
が、この値は、共析晶であるパーライト中のフェライト
を含まない値である。つまり、パーライトは、フェライ
トと金属間化合物のセメンタイトFe3Cとからなる共析
晶であるので、面積比率を算出する際に、パーライト中
のフェライトもカウントすれば、フェライトとパーライ
トとの見掛けの面積比が1:1であっても、実質的には
十分に達成することができる値である。従って、フェラ
イトとパーライトの面積比の下限は、基本的には1:1
と考えて良い。
【0029】上記より好ましい実施例の一つとして、
〈本発明実施例3〉では、重量比でC:3.60%,Si:
2.6%,Mn:0.43%,P:0.02%,S:0.02
%,Cu:0.3%,Cr:0.13%,Mg:0.045%お
よび残部Feの組成を有し、組織的には、面積比でフェ
ライト量45%,パーライト量43%および残部黒鉛よ
りなる球状黒鉛鋳鉄製カム素材を、まず粗加工し、次い
で軸径φ23に対してオイル穴φ9.5をガンドリルに
て中空加工した。
【0030】次に、カムシャフト全体を300℃に予熱
し、カム部をTIG装置にて再溶融した。ここで、再溶
融条件としては、ワーク回転数0.65rpm,オシレート
幅11mm,オシレート回数30回/min,電流値90〜1
10Aである。そして、再溶融後、カム研削加工を行う
ことによって、φ9.5のオイル穴を有する再溶融カム
シャフトを得た。こうして得られたカムシャフトの再溶
融カム部をカットし、断面をナイタルで腐食して再溶融
チル深さを測定したところ、0.61mmであり、チル硬
さはHV668であった。また、ジャーナル部の硬さは
HV210であった。
【0031】上記実施例3で用いた球状黒鉛鋳鉄の化学
成分および生地組織、並びに得られたカムシャフトの再
溶融カム部のチル深さ・硬さおよびジャーナル部の硬さ
等のデータを表1に示す。尚、この表1には、前述の
〈実施例1〉および〈実施例2〉、並びに後述する〈比
較例1〉および〈比較例2〉についての各種データも、
併せて記載されている。
【0032】
【表1】
【0033】上記表1から良く分かるように、Cuおよ
びCrの含有量並びにフェライトおよびパーライトの面
積比率が、より狭い範囲に限定された上記球状黒鉛鋳鉄
素材を用いたより好ましい実施例、つまり〈実施例3〉
および〈実施例1〉では、〈実施例2〉に比べて、再溶
融カム部においてはより深いチル深さ及びより硬いチル
硬さを確保した上で、ジャーナル部の硬さはより低く抑
えることができ、より良好な中空加工性が得られる。
【0034】次に、上記各実施例と比較するため、Cu
が0.5%を越えており、パーライト量が多い場合の例
(比較例1)、および、Cu、Crを共に含有していない場
合の例(比較例2)について以下に説明する。
【0035】〈比較例1〉重量比でC:3.55%,Si:
2.24%,Mn:0.29%,P:0.017%,S:0.
021%,Cu:0.56%,Cr:0.27%,Mg:0.0
42%および残部Feの組成を有し、組織的には面積比
でフェライト量1%,パーライト量88%および残部黒
鉛よりなる球状黒鉛鋳鉄製カム素材を、まず粗加工し、
次いで軸径φ23に対してオイル穴φ9.5をガンドリ
ルにて中空加工したが、加工困難となった。これはパー
ライト量が多すぎて素材の硬さが硬くなりすぎるためで
ある。なお、このときのジャーナル硬さはHV273で
あった。なお、この比較例による球状黒鉛鋳鉄の金属組
織は、図3の顕微鏡写真(倍率:100倍)に示されてい
る。
【0036】〈比較例2〉重量比でC:3.61%,Si:
2.56%,Mn:0.28%,P:0.015%,S:0.
021%,Mg:0.039%および残部Feの組成を有
し、組織的には面積比でフェライト量85%,パーライ
ト量4%および残部黒鉛よりなる球状黒鉛鋳鉄製カム素
材を、まず粗加工し、次いで軸径φ27に対して中空穴
φ13をガンドリルにて中空加工した。次に、カムシャ
フトを上記実施例2と同じ条件にて再溶融し、カム研削
加工後チル深さを測定したところ0.4mmであり、目標
のチル深さ(0.5mm以上)が得られなかった。これは、
フェライト量が非常に多く、フェライトの熱伝導率がパ
ーライトより大きいため、再溶融時の熱引けが大きくな
るためである。なお、この比較例による球状黒鉛鋳鉄の
金属組織は、図4の顕微鏡写真(倍率:100倍)に示
されている。
【0037】ここで、上記各実施例において、目標のチ
ル深さを0.5mm以上とするのは、次の理由による。す
なわち、再溶融チル材にローラ荷重を加えた場合、内部
圧縮応力(σx,σy,σz)は材料の表面において最大値を
取り、内部に行くにしたがって次第に小さくなる。一
方、せん断応力(τ45゜)は最表面では0で内部で最大値
を示す。例えばヘルツ面圧185〜205kgf/mm2では
チル層内の深さ0.34〜0.38mmの部位で最大値と
なる。また、クラックは母材とチル層との界面から発生
する。これらのことから、上記せん断応力が材料の許容
せん断応力以下となるように、目標チル深さを0.5mm
以上に設定している。
【0038】なお、上記各実施例においては、ガンドリ
ルによる中空加工等の機械加工を再溶融チル前に行うよ
うにしたが、再溶融チル後に行うようにしてもよい。
【0039】
【発明の効果】本発明は、以上のように構成されている
ので、中空加工等の機械加工が容易に行え、しかも、十
分なチル深さを確保することのできる耐摩耗性に優れた
摺動部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る球状黒鉛鋳鉄の金属
組織を示す顕微鏡写真である。
【図2】 本発明の他の実施例に係る球状黒鉛鋳鉄の金
属組織を示す顕微鏡写真である。
【図3】 上記各実施例の一比較例に係る球状黒鉛鋳鉄
の金属組織を示す顕微鏡写真である。
【図4】 上記各実施例の他の比較例に係る球状黒鉛鋳
鉄の金属組織を示す顕微鏡写真である。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 重量比でC:3.3〜4.1%,Si:2.
    0〜3.0%,Mn:0.1〜0.8%,P:0.08%以
    下,S:0.03%以下,Cu:0.1〜0.5%,Cr;0.
    05〜0.20%,Mg:0.010〜0.060%およ
    び残部Feの組成からなる球状黒鉛鋳鉄を、面積比でフ
    ェライト20〜80%,パーライト7〜71%および残
    部黒鉛の組織とした後、摺動部に再溶融チル化処理を施
    し、該処理の前もしくは後に所要の機械加工を施すよう
    にしたことを特徴とする耐摩耗性の優れた摺動部材の製
    造法。
JP19913591A 1990-09-14 1991-08-08 耐摩耗性の優れた摺動部材の製造法 Pending JPH055125A (ja)

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