JPH0546423B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

（産業上の利用分野） 本発明は、中高層住宅などにおける床衝撃音の
伝達を軽減する防音性に優れた床構造に関するも
のである。 （従来技術とその問題点） 従来より、中高層住宅における階下への床衝撃
音伝達の問題が頻繁に取り上げられているが、こ
の床衝撃音には、人が歩行するときに生じるよう
な軽量な衝撃力による床衝撃音（軽量床衝撃音）
と、子供が椅子から飛び降りたときのような大き
な衝撃力による床衝撃音（重量床衝撃音）とがあ
る。この床衝撃音のうち、軽量床衝撃音は、床仕
上材にカーペツトなどの柔軟な繊維質の床仕上材
を用いれば簡単に吸収して階下への衝撃音の放出
が防止できる。しかし、後者の重量床衝撃音は、
子供が椅子から飛び降りたときのような大きな衝
撃力（JIS−A1418に規定する重量床衝撃音発生
器の実効衝撃力で3875N）によるために表面の床
仕上材では衝撃力が吸収できすコンクリート床ス
ラブが振動を引き起こして階下に衝撃音を放出す
る結果となり、この重量床衝撃音の低減は、非常
に困難であつた。 一方、床スラブに対する床衝撃力の伝達を低減
する方法として、第６図に示すようにグラスウー
ルマツト等の緩衝材ｂを床スラブａ上に配してそ
の上に根太材ｃを配してから床パネルｄを配して
床下地組を形成し、この上に床仕上材ｅを施工し
た浮床構造が知られている。この浮床構造による
と、衝撃力Ｎは、根太材ｃで分散して緩衝材ｂに
伝達し、緩衝材ｂの変形によつて吸収されること
になるので、床スラブａに直接作用する衝撃力は
弱まるが、反面、床パネルｄ下方に空間ｆを設け
ているので、破線で示す如く床パネルｄが曲げ変
形をし易く、その結果、床仕上げ面の曲げ振動が
大きくなり、床面の振動が階下に伝わりやすい。
またこの曲げ変形の際に床パネルｄ下方の空気が
瞬間的に圧縮されて、床パネルｄの下面や緩衝材
ｂの上面に圧縮空気の空気圧ｐが反復して作用す
るようになり、図示の如くこの圧縮空気圧Ｐによ
つて床スラブａが振動してしまい、満足ゆく遮音
性能が得られないという問題があつた。 （発明の目的） 本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされた
ものであり、浮床におけるスラブ等の床下地に作
用する圧縮空気圧を低減させて床衝撃音の伝達を
軽減した防音性に優れた床構造を提供するもので
ある。 （目的達成のための手段） 具体的には、本発明は、床下地上に棒状あるい
はブロツク状の適宜スペーサーが間隔をおいて配
されていると共に、該スペーサーの上に適宜厚さ
の緩衝材層が床下地との間に第１空気層を設ける
ようにして載置され、かつ該緩衝材層の上部には
床パネルが複数の支持体を介して上記緩衝材層と
床パネル下面との間に第２空気層を設けるように
して載置されてなり、上記床パネルの表面に衝撃
力が作用したときに第２空気層の圧縮空気圧が緩
衝材層内部の空気の移動による摩擦エネルギーに
よつて一部消費されて緩衝材層の下方の第１空気
層に伝達するように上記緩衝材層を連続した空〓
部を有する通気性緩衝材によつて構成したことを
特徴とする床構造である。 （作用） これにより、床下地と床パネルとの間に通気性
緩衝材層で上下に分割された空気層を２層介在さ
せた２重の浮床構造にして、床パネル直下の第２
空気層での空気圧の上昇が床下地直上の第１空気
層に伝達するのを抑制して床下地に作用する衝撃
力を低減したものである。 （実施例） 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明す
る。 第１図は本発明の一実施例に係る床構造を示
し、コンクリートスラブ等よりなる床下地１上
に、合板、繊維板、パーテイクルボード、ゴムマ
ツト、発泡成形体等の適宜材料からなる棒状又は
ブロツク状のスペーサー２が適宜間隔をおいて配
置され、その上にグラスウールマツト又はロツク
ウールマツト等、連続した空〓部を有する通気性
緩衝材よりなる弾性緩衝材層３が載置されてい
る。このスペーサー２と緩衝材層３とによつて、
床下地１上に緩衝材層３との間に第１空気層４が
形成されている。 また、上記緩衝材層３の上には、合板等よりな
る棒状の支持体５を介して床パネル６が載置され
ており、これによつて床パネル６下面と緩衝材層
３上面との間に第２空気層７が形成されている。
さらに、上記床パネル６上には、カーペツト等の
適宜の床仕上材８が設けられている。 上記床パネル６と床下地１との間に配する緩衝
材層３は、第２空気層７の空気圧の上昇を吸収し
て下部に伝えるためには空〓率が20％以上の連続
した空〓部を有する必要があり、例えば密度が40
〜110Kg／m³のグラスウールマツトやロツクウー
ルマツト、比重が0.3以下の木質繊維板、あるい
は連続気泡のウレタンフオーム等の発泡体などが
使用でき、またこれらの組合わせであつてもよ
い。 また、上記支持体５とスペーサー２とは緩衝材
層３を介しての支持剛性を確保するために上下に
対応する位置あるいは上下に交差する位置に配設
する必要がある。また、これらの材質は特定され
ないが、このうちスペーサー２はコンクリートス
ラブ上に載置する関係上、不陸の吸収性を備える
よう繊維板やゴムマツト等の弾性を有するものが
望ましい。 尚、上記の構造において、緩衝材層３の緩衝材
に低密度で腰の弱い材料を用いる場合には、第４
図に示すように緩衝材層３の下面に有孔板等の通
気性を有する補強板３ａを介在させて、該緩衝材
層３の垂れ下がりを防止するようにしておくこと
が好ましい。 上記の構成により、床パネル６と床下地１との
間には、通気性を有する緩衝材層３によつて上下
に分割された２層の空気層４，７が介在されてい
るので、第２図に示すように、床衝撃力Ｎが作用
すると、まず緩衝材層３がスペーサー２および支
持体５との間で圧縮変形して衝撃吸収を行うとと
もに、床パネル６の曲げ変形や緩衝材層３の圧縮
変形で第２空気層７の空気が圧縮されて、その空
気圧P₂が上昇する。また、この時、第１空気層
４も同時に緩衝材層３の圧縮変形の分だけ圧縮力
を受けるが、上記の上部の第２空気層７の如く床
パネル６の曲げ変形による圧縮力は直接作用しな
いため、第２空気層７と比べてその空気圧P₁の
上昇は小さい。 したがつて、第２空気層７の圧縮圧P₂と第１
空気層４の圧縮圧P₁とはP₂＞P₁の関係となり、
従来の空気層を一層とした浮床構造（第６図参
照）に比べて床下地１に作用する、空気圧上昇に
基づく衝撃力の伝播は大幅に低減される。 また、この時、第２空気層７の圧力P₂は緩衝
材層３を介して下部の第１空気層４に伝達されそ
の圧力P₁を高めようとするが、緩衝材層３が通
気性を有する多孔質の緩衝材によつて構成されて
いるので、上記第２空気層７の圧縮空気が緩衝材
層３内部の空気を流動させて下方へ押し出すよう
に働くエネルギーと、該緩衝材層３自体を下方へ
押圧して曲げ変形させようとするエネルギーとで
消費されてから、下方の第１空気層４に作用する
ため、第２空気層７の圧縮空気が緩衝材層３下方
の第１空気層４の空気圧を上昇させる割合は極め
て小さいものである。 即ち、上記緩衝材層が、独立発泡体やゴムマツ
ト等の通気性のない弾性体であれば、圧縮空気圧
P₂とP₁との差分はそのまま該緩衝材層の上面に
圧力として作用して緩衝材層下面を介して第１空
気層を押すように働くが、本発明では、通気性を
有する緩衝材よりなるので、緩衝材層３内部の空
気圧をP₃とすると、床衝撃力の作用直後は、P₂
＞P₁＞P₃の状態にあり、この状態から第１、第
２空気層４，７の昇圧した空気圧P₁，P₂が緩衝
材層３内部の空気圧P₃に作用し、特に第２空気
層７の空気圧P₂が大きいことから、緩衝材層３
内部の空気圧P₃を高めるよう作用し、この緩衝
材層３内部の空気圧P₃の上昇と空気流動とで第
２空気層７の空気圧P₂が低下し、その結果、床
パネル６の下面に働く反力も小さいものとなる。 尚、この時、第３図に示すように、床パネル６
に上下に貫通する通気孔９を略均一に設けておい
て、第２空気層７の空気圧P₂の一部を上記通気
孔９を介して上方に抜くと、この空気圧P₂自体
の圧力も低下し、床衝撃力により昇圧した空気圧
が床下地１に伝わる割合を一層小さくすることが
できる。この場合、第３図に図示の如く床パネル
６上面と床仕上材８下面との間にスペーサー１０
等によつて形成される空気通路１１を設ければ、
上記通気孔９を介して床パネル６上面に流出した
空気が空気通路１１で拡散されるので、上記空気
圧P₂の床パネル６上面への排出をよりスムーズ
に行うことができる。また、この空気通路１１は
通気性のあるフエルトによつて構成したり、床仕
上材８下面に溝加工を施すことによつて構成して
もよい。 （実験例） 次に、具体的に、コンクリートスラブ上に繊維
板よりなるスペーサーを介してグラスウールマツ
トを載置し、その上に合板よりなる支持体を介し
て床パネルを載置し、さらにその上をカーペツト
仕上げして床構造を構成した（実施例１）。また、
他の例として、床パネルとして直径10mmの通気孔
を開口率が４％になるように分散させて設けた床
パネルを用いて上記実施例１と同様の構成で床構
造を構成した（実施例２）。 一方、比較のため、コンクリートスラブ上に大
引と根太材のみで床を構成した（比較例１）。ま
た、他の比較例として、コンクリートスラブ上に
グラスウールマツトを敷設し、その上に根太材を
介して床パネルを載置して浮床構造を構成した
（比較例２）。そして、これら各例について重量床
衝撃力による階下の衝撃音レベルを測定したとこ
ろ、第５図および下記の表１に示す結果を得た。
また、下記の表２には日本建築学会基準の重量床
衝撃音の遮音等級の一覧を示す。

【表】

【表】 上記の結果より、比較例１ではL_H−65、比較
例２ではL_H−57の遮音性能であるのに対し、実
施例１ではL_H−50、実施例２ではL_H−45の遮音
性能が得られ、床衝撃音の伝達が極めて小さいも
のとなることが判る。 （発明の効果） 以上説明したように、本発明の床構造によれ
ば、床衝撃力の作用時に床パネルの曲げ変形に起
因する床パネル直下の第２空気層での空気圧の上
昇が床下地直上の第１空気層に伝達するのを抑制
して床下地に作用する衝撃力を低減したので、床
衝撃音の伝達を大幅に軽減でき、防音性に優れた
床構造を提供することができる。 加えて、上記床パネルに上下に貫通する通気孔
を設ければ、上記空気圧の上昇を一層抑えて床衝
撃音の伝達をより一層軽減できる利点を有するも
のである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例の床構造を示す断面
図、第２図は同床構造の床衝撃力作用時の状態を
示す断面図、第３図および第４図はそれぞれ変形
例を示す断面図である。第５図は重量床衝撃に対
する遮音性能を示す測定結果図である。第６図は
従来の浮床構造を示す断面図である。 １……床下地、２……スペーサー、３……緩衝
材層、４……第１空気層、５……支持体、６……
床パネル、７……第２空気層、９……通気孔。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 床下地上に棒状またはブロツク状の適宜スペ
   ーサーが間隔をおいて配されていると共に、該ス
   ペーサーの上に適宜厚さの緩衝材層が床下地との
   間に第１空気層を設けるようにして載置され、か
   つ該緩衝材層の上部には床パネルが複数の支持体
   を介して上記緩衝材層と床パネル下面との間に第
   ２空気層を設けるようにして載置されてなり、上
   記緩衝材層は、床パネルの表面に衝撃力が作用し
   たときに第２空気層の圧縮空気圧が緩衝材層内部
   の空気の移動による摩擦エネルギーによつて一部
   消費されて緩衝材層下方の第１空気層に伝達する
   ように連続した空〓部を有する通気性緩衝材によ
   つて構成したことを特徴とする床構造。 ２ 床パネルは該床パネルを上下に貫通する通気
   孔が略均一に設けられてなることを特徴とする特
   許請求の範囲第１項記載の床構造。