JPH0545244U - セラミツク製軌道輪 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】仕上げ加工の容易化による製作費の低廉化と、
欠損による不良品発生率の低下と、嵌合支持強度の向上
とを図る。 【構成】内輪３と外輪５との表面を、軌道面を除いて金
属の溶射皮膜８ａ、８ｂにより覆う。各溶射皮膜８ａ、
８ｂは厚めに形成し、その後研磨する事で、所望の寸法
に仕上げる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

このセラミック製軌道輪は、各種機械装置の回転支持部に組み込まれる転がり 軸受を構成するものである。

【０００２】

【従来の技術】

各種機械装置の回転支持部に組み込み、回転軸等の回転部材を支承する為の軸 受として、図３に示す様な転がり軸受が、広く使用されている。この転がり軸受 １は、外周面に内輪軌道２を有する内輪３と、内周面に外輪軌道４を有する外輪 ５と、上記内輪軌道２と外輪軌道４との間に転動自在に設けられた複数の転動体 ６、６と、これら複数の転動体６、６を転動自在に保持する為の保持器７とから 構成されている。

【０００３】 内輪３と外輪５との相対的回転は、上記複数の転動体６、６の転動に基づいて 自在である為、上記内輪３を回転軸に外嵌固定し、上記外輪５をハウジングに内 嵌固定すれば、上記回転軸をハウジングの内側に回転自在に支持出来る。

【０００４】 ところで、この様な転がり軸受１の内、高温度領域で使用されるものに就いて は、構成各部材３、５、６をセラミックにより造る場合があるが、セラミックに より内輪３、外輪５、転動体６、６を造る場合、セラミック粉末を燒結して、内 輪３、外輪５、転動体６、６の形状としただけでは、各部材３、５、６の形状精 度並びに寸法精度が不十分となる。

【０００５】 この為従来は、セラミック粉末を燒結する事により、所望値よりも少しだけ大 きな内輪３、外輪５、転動体６、６を造った後、これら各部材３、５、６の表面 に研磨加工を施す事で、各部材３、５、６の形状精度並びに寸法精度を所望値に 規制していた。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

ところが、軸受鋼に比べても固い、セラミックに研磨加工を施す事で、上記各 部材３、５、６の形状精度並びに寸法精度を所望値に仕上げる事は困難で、加工 作業に長時間を要する事が避けられない。この為、上記各部材３、５、６の製作 費が嵩み、この各部材３、５、６を組み合わせて構成される転がり軸受が高価に なってしまう。

【０００７】 又、セラミックにより造られた上記各部材３、５、６、特に内輪３や外輪５等 の軌道輪の靭性は、軸受鋼により造られた軌道輪の靭性よりも低い為、輸送作業 等の際、セラミック製の軌道輪の角を他の物品の角にぶつけたりした場合には、 当該軌道輪の角が欠ける等の欠損を生じ易い。

【０００８】 更に、セラミックの線膨張率は金属の線膨張率に比べて低い為、この線膨張率 の差に起因して、セラミック製の軌道輪と金属製の回転軸或はハウジングとの嵌 合強度が低下し、嵌合面にクリープが発生する恐れがある。

【０００９】 本考案のセラミック製軌道輪は、上述の様な不都合を何れも解消するものであ る。

【００１０】

【課題を解決するための手段】

本考案のセラミック製軌道輪は、セラミックにより全体を円環状に形成され、 一方の周面に軌道面を形成している。更に、本考案のセラミック製軌道輪に於い ては、他方の周面と端面とに、金属の溶射皮膜を形成し、この溶射皮膜の表面を 所望の寸法精度に仕上げた事を特徴としている。

【００１１】

【作用】

上述の様に構成される本考案のセラミック製軌道輪の場合、金属の溶射皮膜の 表面を加工する事で、軌道輪の形状精度及び寸法精度を所望値に規制出来る為、 セラミック製軌道輪の仕上加工が容易となり、製作費の低廉化を図れる。

【００１２】 又、他の物品とぶつかり易い他方の周面及び端面が、靭性の高い金属の溶射皮 膜により覆われている為、セラミック製軌道輪により構成された転がり軸受の輸 送等に伴なって、上記セラミック製軌道輪の角が欠けたりする可能性が低くなる 。

【００１３】 更に、回転軸の外周面やハウジングの内周面と嵌合する他方の周面が金属の溶 射皮膜により覆われている為、熱膨張量（熱収縮量）の差に基づいて嵌合部が緩 みにくく、嵌合面にクリープが発生しにくくなって、転がり軸受の支持が確実に なる。

【００１４】

【実施例】

図１は本考案の第一実施例を示している。複数個の転動体６と共に転がり軸受 １を構成する内輪３と外輪５とは、何れもセラミックにより造られている。この 内、内輪３の内周面３ａ及び両端面３ｂ、３ｂ、並びに外輪５の外周面５ａ及び 両端面５ｂ、５ｂは何れも、ステンレス鋼等、十分な耐熱性を有する金属の溶射 皮膜８ａ、８ｂにより覆っている。

【００１５】 各溶射皮膜８ａ、８ｂを形成する場合、先ず必要とする以上の厚さ寸法を有す る溶射皮膜を形成し、次いで各溶射皮膜の表面を研磨する事により、各溶射皮膜 ８ａ、８ｂの形状並びに寸法を所望のものとする。

【００１６】 即ち、内輪３表面の溶射皮膜８ａは、先ず所望の内径Ｒよりも小さな内径と、 所望の幅Ｗよりも大きな幅とに形成し、その後この溶射皮膜８ａの表面を研磨す る事で、この溶射皮膜８ａの内径をＲに、幅をＷに、それぞれ仕上げる。内輪３ の本体部分を構成するセラミックの内径が上記内径Ｒよりも大きく、同じくセラ ミックの幅が、上記幅Ｗよりも小さい事は、勿論である。

【００１７】 又、外輪５表面の溶射皮膜８ｂは、先ず所望の外径Ｄよりも大きな外径と、所 望の幅Ｗよりも大きな幅とに形成し、その後この溶射皮膜８ｂの表面を研磨する 事で、この溶射皮膜８ｂの外径をＤに、幅をＷに、それぞれ仕上げる。外輪５の 本体部分を構成するセラミックの外径が上記外径Ｄよりも小さく、同じくセラミ ックの幅が、上記幅Ｗよりも小さい事は、勿論である。

【００１８】 上述の様に構成される本考案のセラミック製軌道輪である内輪３及び外輪５に 、複数個の転動体６を加えて構成される転がり軸受が、回転軸をハウジングの内 側に回転自在に支承する作用自体は、前述した従来の転がり軸受と同様である。

【００１９】 特に、本考案の実施例である内輪３及び外輪５により構成された転がり軸受１ の場合、上記内輪３及び外輪５の形状精度及び寸法精度を、それぞれの表面を被 覆した金属の溶射皮膜８ａ、８ｂの表面を研磨する事で、所望値に規制出来る。 金属表面を研磨する作業は、セラミック表面を研磨する作業に比べて遥かに容易 である為、セラミック製軌道輪の仕上加工が容易となり、製作費の低廉化を図れ る。

【００２０】 又、転がり軸受１の輸送作業等の際、内輪３の内周縁角部や外輪５の外周縁角 部が他の物品とぶつかっても、各角部が靭性の高い金属の溶射皮膜８ａ、８ｂに より覆われている為、上記内輪３や外輪５の角が欠けたりする可能性が低くなる 。

【００２１】 更に、回転軸の外周面に外嵌される内輪３の内周面や、ハウジングの内周面に 内嵌される外輪５の外周面が、金属の溶射皮膜８ａ、８ｂにより覆われている為 、熱膨張量（熱収縮量）の差に基づいて嵌合部が緩みにくく、嵌合面にクリープ が発生しにくくなって、回転軸やハウジングに対する転がり軸受１の支持が確実 になる。

【００２２】 次に、図２は本考案の第二実施例を示している。上述の第一実施例が、内輪３ 及び外輪５と共に転がり軸受１を構成する転動体６が、玉であったのに対して、 本実施例の場合、転動体６がころである。その他の構成及び作用は、上述の第一 実施例の場合と同様である。

【００２３】

【考案の効果】

本考案のセラミック製軌道輪は、以上に述べた通り構成され作用する為、高温 部等に使用されるセラミック製転がり軸受の製作費低廉化と、完成後の欠損に基 づく不良品発生率の低下と、嵌合支持の確実化とを図れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の第一実施例を示す部分断面図。

【図２】同第二実施例を示す部分断面図。

【図３】転がり軸受の全体構成の１例を、一部を切断し
て示す斜視図。

【符号の説明】

１ 転がり軸受 ２ 内輪軌道 ３ 内輪 ３ａ 内周面 ３ｂ 端面 ４ 外輪軌道 ５ 外輪 ５ａ 外周面 ５ｂ 端面 ６ 転動体 ７ 保持器 ８ａ 溶射皮膜 ８ｂ 溶射皮膜

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 セラミックにより全体を円環状に形成さ
   れ、一方の周面に軌道面を形成したセラミック製軌道輪
   に於いて、他方の周面と端面とに、金属の溶射皮膜を形
   成し、この溶射皮膜の表面を所望の寸法精度に仕上げた
   事を特徴とするセラミック製軌道輪。