JPH0544083A - 粉末の電気めつき法 - Google Patents

粉末の電気めつき法

Info

Publication number
JPH0544083A
JPH0544083A JP22640491A JP22640491A JPH0544083A JP H0544083 A JPH0544083 A JP H0544083A JP 22640491 A JP22640491 A JP 22640491A JP 22640491 A JP22640491 A JP 22640491A JP H0544083 A JPH0544083 A JP H0544083A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
powder
electroplating
cathode
plating
particle size
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP22640491A
Other languages
English (en)
Inventor
Eiki Takeshima
鋭機 竹島
Yoshiaki Watanabe
義昭 渡辺
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nisshin Steel Co Ltd filed Critical Nisshin Steel Co Ltd
Priority to JP22640491A priority Critical patent/JPH0544083A/ja
Publication of JPH0544083A publication Critical patent/JPH0544083A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Electroplating Methods And Accessories (AREA)

Abstract

(57)【要約】 〔目的〕電気めっき法によって,粒径が0.1μmから10μ
mの範囲の金属, 無機物質, または有機物質の粉末一粒
づつの表面に,これらを凝集させることなく金属を被覆
する。 〔構成〕 無機物質または有機物質の粉末の表面に電気
伝導性の皮膜を形成させた導電性粉末もしくはそれ自体
が導電性を有する金属粉末を,陰極と陽極を配した電気
めっき浴中に懸濁させつつ陰極側に衝突させることによ
り,該粉末の表面にめっき浴中の金属イオンを析出させ
る粉末の電気めっき法において,該電気めっき浴中に該
粉末より径大の絶縁体粒子を共存させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,粒径が0.1μmから10μ
mの範囲の金属粉末, 或いは無機物質や有機物質の粉末
の一粒づつの表面に電気めっき法によって金属めっきを
施す方法に関するものであり,より詳しくは同一出願人
に係る特開平1-272792号公報に記載の微粉末に金属を電
気めっきする方法の改善に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より,数μm以上の粒径を有するセ
ラミックスやプラスチックの粉末の表面に無電解めっき
法やCVD法などによってある種の限られた金属を被覆
することが行われ,その被覆粒子は,触媒用, 装飾用,
粉末冶金用, 粒子分散強化型複合材料用および電磁シー
ルド用導電性フィラー材などに適用されている。
【0003】種々のコーティング技術の中で, 最もコス
トが安く,かつ多種類の金属がめっきできるのは電気め
っき法である。電気伝導性のある数μm以上の粒径の金
属粉末に電気めっきが可能な方法としては,例えば特開
昭56-156793号公報等においてすでに多くの報告例があ
る。
【0004】しかし,10μm以下の微粉末への電気めっ
き法に関しては,本発明者らが特開昭63-18096号公報お
よび特開平1-272792号公報に提案した方法を除いてほと
んど報告例がない。
【0005】特開昭63-18096号公報の方法の要旨は,粒
径が100オングストローム〜1μmの範囲のセラミックス
およびプラスチックの超微粉末の周囲に電気めっきによ
って金属を被覆する方法であって,超微粉末一次粒子に
粉砕した後,超微粉末表面のプラズマ処理,錫化合物に
よるセンシタイジング処理,パラジウム化合物によるア
クチベーテイング処理および電気伝導性を付与するため
の無電解めっきを行い,さらに超微粉末の懸濁水溶液を
用いた電気めっきと超音波による分散処理とを繰り返し
行なうことを特徴とするものである。すなわち,電気め
っき浴中に電気伝導性表面をもつ微粉末を懸濁させてめ
っき浴中の金属イオンを微粉末表面に析出させるのであ
るが,微粉末のめっき浴中での懸濁分散状態を良好に維
持するために超音波による分散処理を行なうことが有利
であることを提案した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】特開昭63-18096号公報
の方法では次のような問題が付随した。すなわち, (1) 0.1μm以下の超微粉末では,超音波による分散を繰
り返しても電気泳動のほうが顕著に進行するために微粉
末が陰極板上に分散めっき状となって析出しやすい。こ
のため,超微粉末へのめっき収率は通常20%以下と非常
に悪い。 (2) 粒径が0.1μmから1.0μmの範囲の粉末の場合には該
公報記載の装置構成では陰極板と粉末の衝突による電荷
の移動が必ずしも円滑にはいかない。このため陰極板へ
の電析が多く見られ, 粉末へのめっきの収率は高々50〜
70%程度である。 (3) このような傾向は粉末の粒径が1.0μmから約10μm
の範囲の場合にも共通しており,結局10μm以下の粒径
の粉末一粒づつに密着性の良い均一な電気めっきを高収
率(例えば90%以上)で行なうことは技術的に極めて困
難である。
【0007】このようなことから,特開平1-272792号公
報において, 0.1μmから10μmの範囲の粒径の粉末を対
象としても良好に電気めっきできる方法を提案した。こ
の方法 は,該微粒子の電気めっき浴中の懸濁液を陰極
だけに所定の懸濁濃度のもとで所定 の速度成分をもっ
て衝突させることによって,マイナスイオンを各微粉末
に帯電させ,これによってめっき浴中のプラスの金属イ
オンを各微粉末表面に静電的に中和吸着させるものであ
る。しかし,この方法でも,電気めっきの進行につれて
凝集が起こり, 一個一個の微粉末に効率よく電気めっき
するには限界があることがわかった。
【0008】したがって,本発明の目的とするところ
は,特開平1-272792号公報に提案した粉末の電気めっき
法を一層改善し,でき得る限りの粉末の凝集を防止して
その1粒1粒の粉末の表面に均一に高収率で被覆できる
方法を確立することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によれば,無機物
質または有機物質の粉末の表面に電気伝導性の皮膜を形
成させた導電性粉末もしくはそれ自体が導電性を有する
金属粉末を,陰極と陽極を配した電気めっき浴中に懸濁
させつつ陰極側に衝突させることにより,該粉末の表面
にめっき浴中の金属イオンを析出させる粉末の電気めっ
き法において,該電気めっき浴中に該粉末より径大の絶
縁体粒子を共存させることを特徴とする粉末の電気めっ
き法を提供する。
【0010】特に本発明法は粒径が0.1μmから10μmの
範囲の粉末を対象とし,これを電気めっき浴中において
陰極と衝突するさいの懸濁濃度が30〜55voL%であって且
つこの懸濁流に該絶縁体粒子が混在した状態で陰極に対
して直角方向の速度成分が0.6m/分〜6.0m/分の範囲
で繰返し衝突するような流動状態を維持しつつ電気めっ
きする。混在させる絶縁体粒子は1mm以上5mm以下の粒
径のセラミックス製ビーズを用いるのが実際的であり,
陰極板の電流密度は1A/dm2から10A/dm2に維持する。
【0011】前記の方法を有利に実施することができる
電気めっき装置は,めっき液を収容する軸を縦方向にし
た筒状の容器と,この容器の底部に導電表面を横にして
配した陰極板と,該めっき液の液面近くに配した陽極
と,該陰極板と陽極との間に所定の電位を付与する電源
装置と,容器内液体に前記の陰極板に向かう方向の下向
きの推力を付与する回転翼と,容器内壁に沿って上下方
向に配置された整流板とからなり,前記の整流板の上縁
を陽極下端よりも下方に位置せしめ,該回転翼の駆動に
よって被めっき品である導電性粉末と凝集防止用の絶縁
体粒子をめっき液と共に該陰極板に連続的に衝突させる
ようにしたものである。
【0012】〔発明の詳述〕以下に本発明の内容を具体
的に説明する。
【0013】本発明は,粒径が0.1μmから10.0μmの範
囲の金属, 無機物質 (例えばセラミックス) または有機
物質 (例えばプラスチック) の粉末の表面に各種の金属
を電気めっきするものであり, めっき液中の金属イオン
がこれらの粉末の表面に電析するのに必要な電気伝導性
をその表面に有しなければならない。すなわち少なくと
もその表面の一部が伝導性をもつ導電性粉末であること
が必要である。このために,電気めっきに供する前に無
電解めっきを施して導電性粉末とするのがよい。
【0014】例えば金属粉末の場合でも, 通常は表面が
酸化膜で覆われているので,このままでは電気めっきが
良好にはできない。そこで酸洗処理によって酸化膜を完
全に除去して電気伝導性表面をもつ金属粉末とするか,
酸化膜の上に無電解めっきを行って電気伝導性表面を付
与するのがよい。導電性の低い無機物質または有機物質
の場合には無電解めっきで導電性皮膜をその表面に形成
させることが特に必要となる。
【0015】この無電解めっき法は,先の特開昭63-180
96号公報でも述べた公知の方法を採用することができ
る。すなわち予め粉末の表面に金属パラジウム等の触媒
体を付着させた後, 所定の無電解めっき液に浸漬するこ
とによって無電解めっきが行なえる。
【0016】無電解めっきの種類としては銅, ニッケ
ル, コバルトなどが適用でき,これらは最終製品の粉末
の用途や機能に応じて設定する。無電解めっき皮膜の厚
さも用途によって適当な膜厚に設定し得るが,次工程で
行なう電気めっき時の電気伝導性付与効果から考えて好
ましくは300〜1000オングストローム程度が望ましい。
【0017】このように無電解めっきによって電気伝導
性を付与された粒径が0.1μmから10.0μmの範囲の導電
性粉末を対象としてその表面に電気めっきを施すのであ
るが,本発明においては, 電気めっき液中の該粉末の懸
濁層中に,粒径が数mm単位の電気絶縁性のセラミックス
製ビーズを共存させ,粉末についての所定の懸濁濃度を
保ちながら所定の方向をもった懸濁流をめっき液中に強
制的に形成させ,この懸濁流を陽極には実質上接触させ
ないで陰極板にだけ所定の速度成分をもって循環衝突さ
せるように調整した状態で電気めっきを行なう。
【0018】具体的には,次の諸条件を満足するように
電気めっきする。 (1) 粒径が1mm以上5mm以下のセラミックス製ビーズと
該粉末の懸濁層,好ましくは,該ビーズを該粉末の 0.5
〜2.0倍量の容積割合で混在させた懸濁層を形成する。 (2) 粉末の懸濁濃度を30vol.%から55vol.%の範囲に保
つ。 (3) 懸濁流は陽極板には接触させずに電気めっき液中に
循環させる。 (4) 懸濁流を陰極板に対して垂直方向の速度成分が0.6
m/分から6.0m/分の範囲で連続的に衝突させる。 (5) 陰極板の電流密度として1A/dm2から10A/dm2の範
囲の電流を流して粉末にめっきを行なう。 これによれば, 電気めっき液中の金属イオンの濃度には
実質上無関係に,0.1μmから10μmの粒径の粉末一粒づ
つに均一にかつ確実に高収率(97%以上) で電気めっき
ができる。
【0019】図1は本発明法を実施するのに好適な装置
例の略断面を示しており,図2はこれを平面的に見た図
である。この装置は,めっき液を収容する軸を縦方向に
した筒状の容器1と, この容器1の底部に導電表面を横
にして配した陰極板2と,めっき液の液面近く配した陽
極3と,陰極板2と陽極3との間に所定の電位を付与す
る電源装置4と,容器内液体に陰極板の表面に向かう方
向の下向きの推力を付与する回転翼5と, 容器内壁に沿
って上下方向に設置された整流板6とからなっいる。整
流板6は,その上縁7が陽極3の下端8よりも下方に位
置している。
【0020】容器1内には被めっき品である粒径が0.1
μmから10μmの範囲の導電性粉末と絶縁体粒子のビーズ
をめっき液と共に装入する。導電性粉末とビーズはめっ
き液よりも比重が一般に大きいので下方に堆積するが,
回転翼5によって該粉末とビーズを容器底の陰極板2に
連続的に衝突させるような推進力を付与する。
【0021】より具体的に説明すると,筒状の容器1は
絶縁材料の円筒体が使用され,その円筒の下端開口の全
面積が円板状の陰極板2で閉塞されている。すなわち円
筒容器1の下端フランジ7に環状パッキン8をはさんで
陰極板2を取り付けたものであり,陰極板2のさらに外
側には底板9を配し, この底板9からフランジ7に貫通
するボルトをナットで締め付けて固定したものである。
回転翼5は, 円筒容器1の軸芯に同軸的に配置された回
転軸10に取り付けられている。回転軸10は容器1の外に
設置されたモーター (図示されていない)によって軸回
りの回転動力が付与される。回転翼5は陰極2の表面よ
り所定の距離をもって液中に存在しており,その回転に
よって陰極2の表面に向かう旋回推力を液に付与する。
【0022】整流板6は,その軸が容器1の半径よりも
小さな幅 (好ましくは半径の1/10〜1/20程度の幅) をも
つ細長い板であり, その板の一方の長辺が容器1の内壁
に垂直方向に取り付けられている。図例では四枚の整流
板6が容器1の内壁に等間隔(90o間隔) で配置されてお
り, 各整流板6の面の方向はいずれも容器1の半径方向
である。但しこの整流板6の枚数および方向は容器内壁
に沿う上昇流が得られるのであればどのようなものであ
ってもよい。各整流板6の下縁は陰極板2の表面より若
干離れているのがよく,各整流板6の上縁は液面近くに
設置される陽極の下端8よりも下方に位置していること
が必要である。
【0023】陽極3は,容器内の旋回流に出来るだけ乱
れを起こさないように,円筒形のものを使用するのがよ
い。図例では,取り付けの関係で二分割された半円筒を
使用し,これを組み合わせて円筒状にした陽極3を容器
軸と同心的に設置してある。そして,少なくともめっき
液に接する陽極表面にはアノードパック12が取り付けて
ある。このアノードパック12としては絶縁性の織布が好
適であり,これによって液との導通を図りながら液中の
粉末が陽極に接触するのを防止することができる。
【0024】この構成になる装置は,めっき液に被めっ
き品の粉末とセラミックス製ビーズの混合分を装入して
回転翼5を回転すると,その回転によって陰極表面に向
かう旋回推力が付与され,陰極表面に向かう懸濁流が形
成される。そして陽極表面に旋回しながら衝突した懸濁
流は容器1の内壁の方向に流れたあと整流板6に沿って
上方に向かう流れとなり, 整流板6の上縁を越えたあた
りから粉末の自重と回転翼5による背圧によって容器の
中心下方に向かう方向に流れを変え, 再び回転翼5によ
って陰極板の表面に向かう流れとなる。この場合, 整流
板6の上縁を陽極3の下端8よりも下方に位置させるこ
とよって, 陽極3に懸濁流が接することなく容器内に循
環させ得る。この回転翼5の回転を続行すれば陰極の全
表面に対して液中の粉末が直角方向の速度成分をもって
衝突する状態が維持される。粉末が陰極表面に衝突する
さいの直角方向の速度成分の調整は回転翼5の回転速度
の制御によって行なうことができ, その懸濁流の粉末濃
度はめっき液との相対容量を調整することによって行い
得る。
【0025】さて,従来の通説によれば0.1μmから10μ
m程度の大きさの粉末を含む電気めっき液から電析を行
うと, これらの粉末が陰極上に析出した状態で,電析金
属にとり込まれつつ分散めっき皮膜を形成するといわれ
ている。これは,化学吸着による共析, 静電気的引力に
よる共析, 機械的攪拌によるめっき皮膜への共析, の三
つの形式が考えられるが,その反応機構に関しては必ず
しも明確ではない。粉末に電気めっきを行なうためには
粉末が分散めっき皮膜中に析出するのを防止せねばなら
ず,またその一方では陰極板から粉末懸濁流に電荷の移
動をスムーズに行わなければならない,という矛盾する
問題を同時に解決しなければならない。本発明によると
このような問題が解決され,粉末への電気めっきが良好
に行なえる。その理由としては粉末の接触説やクラスタ
ー生成説も考えられるが,主として粉末同志の衝突の繰
り返しによって電荷移動が起こり,粉末への電気めっき
が進行するという衝突説によると考えられる。この場
合,粒子に流れる電流iは次式で示される。
【0026】i=x・Dp2・v・c・Δφm ただし, Dp:粒子径 v:単位面積および時間当りの粒子の衝突速度 c:粒子表面の電気二重層容量 Δφm:衝突による粒子のポンテンシャルの変化
【0027】この式によると粒子径が小さくなるほど2
乗効果で電流は流れにくくなり,かつ粒子の衝突頻度が
少ないほど電流は流れにくくなる。したがって0.1μmか
ら10μmの範囲の極めて小さな粒径の粉末に電気めっき
を行なうには,粒子の衝突頻度を著しく増加させるこ
と,具体的には粒子の懸濁濃度をできるだけ高くし且つ
十分な垂直方向の速度をもって陰極に衝突させることが
必要となる。
【0028】粒子の懸濁濃度については, 球形粒子の最
密充填モデルの計算結果などから,単位体積中の粒子の
濃度が74.05vol%の時に六方系の最密充填となり52.35v
ol%の時に立方系の最密充填になるといわれている。こ
の考え方を進めると62.0vol%が実験的な粉末の最密充
填であることになる。さらに空間的に配置された粒子群
の斥力および凝集力から算出されたAlder転移論による
と,55.0vol%以上で粉末は秩序状態 (固体) にあり 5
5.0vol%から50.0vol%の範囲で過度状態 (転移域), 5
0.0vol%以下で無秩序状態 (液体) であるといわれてい
る。 55.0vol%以上では固体状であるから静止してお
り,粉末の攪拌は不可能である。一方, 55.0vol%以下
であれば液体状であるから粉末の攪拌流動化は可能であ
るが,粉末の体積濃度が小さくなるほど粉末同志の衝突
頻度は減少するので好ましくない。このことから粉末同
志の衝突頻度をできるだけ多くしかつ攪拌流動化もあわ
せて実現するためには30vol%から55vol%の範囲が最も
望ましく, このことは本発明者らの行った本発明の実験
例によっても実証された。
【0029】他方, 本発明の実施にさいし,「粉末の懸
濁濃度」と「陰極板への垂直方向の速度成分」とは互い
に影響しあう。すなわち粉末の懸濁濃度が30vol%の場
合で垂直方向の速度成分が0.6m/分以下の場合には,粉
末への電気めっきは全く進行せずにすべて陰極板上に電
析する。また垂直方向への速度成分が6.0m/分以上の場
合には,粉末への電気めっきも進行するが, 効率が悪く
陰極板上への電析が多く見られ電気めっき皮膜の剥離も
一部進行する。これは粉末と陰極板との衝突が激しす
ぎ, かつ接触時間があまりにも短いために, 電荷の移動
もスムーズに進行しにくいためと考えられる。
【0030】一方, 粉末の懸濁濃度が55vol%以上の場
合で,垂直方向の速度成分が0.6m/分以下の場合には粉
末への電気めっきは可能でかつ陰極板上への電析は全く
見られないが,めっき粉末が凝集状態になるために不め
っきの粉末が多く残留し,個々の粉末の周囲に全面均一
なめっきを行なうことは難しい上, 大きな電流が流れ
ず, 無理に通電すると正常な電析反応が進まないで水素
ガスの発生を伴うという水の電気分解が進行して電流効
率を著しく低下させる現象が起こる。また垂直方向の速
度濃度が6.0m/分以上ということは極めて粘稠なスラリ
ーを高速流動させる状態を意味しており, 技術的に実施
が困難である。
【0031】以上のことから粉末懸濁流中の粉末の懸濁
濃度を30vol%から55vol%の範囲としたうえ,陰極板へ
の垂直方向の速度成分を0.6m/分から6.0m/分の範囲とす
るのがよい。
【0032】このような状態を保持した上でさらに, 粉
末一粒づつに電気めっきを行なうには,粒径が1mm以上
5mm以下のアルミナ,ジルコニア,サイアロンおよびガ
ラスビーズなどの電気絶縁性のビーズを該粉末と共存さ
せることが重要である。すなわちこれらのビーズ同志の
衝突や電気めっき容器との衝突によって電気めっき時の
粉末の凝集が極めて簡単にかつ効率的に防止できる事実
を見出した。最適なビーズの添加量は粉末の0.5〜2.0倍
量の体積が望ましい。添加量がこれ以下だと凝集防止効
果があまり認められず, 添加量がこれ以上だと攪拌抵抗
が必要以上に大きくなるので望ましくない。また粒径は
1mm以上5mm以下が最適であり,この範囲以外では凝集
防止効果があまり認められない。
【0033】さらに粉末一粒づつに電気めっきを行なう
ためは,電気めっき時の電流密度もまた重要である。陰
極板の電流密度としては1A/dm2から10A/dm2の範囲が最
適であり,これ以下では粉末の凝集は少ないが,粉末表
面への電気めっきの電流効率が悪くなり, 製造コストが
高くなる。またこれ以上では粉末への電気めっきの電流
効率は良好であるが,粉末表面の局部的に電気めっきが
つきやすいので,電気めっき中の粉末の凝集が著しくな
るという問題がある。
【0034】
【実施例1】平均粒径が10.0μmの市販のタングステン
粉末 (添川理化学, Soekawa Chemicals (株) 製) 1kg
を濃度100g/L(グラム/リットル)の水酸化カリウム
水溶液中で25℃で10分間攪拌して酸化膜の除去および表
面調整を行った。
【0035】この粉末に粒径が1mmのジルコニア製のビ
ーズ1kgを混合した。この混合粉末を図1〜2に示す粉
末電気めっき装置に投入した。図1〜2に示す装置にお
いて,円筒容器1は塩化ビニル樹脂で構成し,陽極3は
銅の陽極板3をテトロン製の布からなるアノードバック
12で覆った状態で使用した。陰極板2はチタンからな
り,その表面の内径が円筒容器1のそれと等しい円板で
ある。整流板6は円筒容器1の内壁にそって垂直に設置
され, これは45度間隔に合計4枚取り付けられた。各整
流板6の1枚の幅は,円筒容器1の直径のほぼ10%であ
った。整流板6の上縁は陽極3の下端8より下方に位置
させた。回転翼としては,三枚羽根のスクリュー型回転
子を使用した。
【0036】めっき液としては,ピロりん酸銅:19g/
L, ピロりん酸カリウム:254g/L,クエン酸カリウム:
23g/Lの組成の電気銅めっき液1Lを使用し,前記のタ
ングステン粉末全量を使用し,該装置において,粉末の
懸濁濃度が50vol.%で粉末懸濁流の陰極板に対する垂直
方向の速度成分が約0.6m/分となるように回転翼の回転
数を調整した。陽極3には粉末懸濁流が触れないように
循環液が定常的に形成されていることを確認したうえ
で,陰極電流密度10A/dm2,電圧12Vで通電を開始し,液
温を25℃に維持した状態で24時間の連続運転を開始し
た。
【0037】この稼動によって, タングステン粉末表面
に20重量%の銅めっきが施されためっき粉末を得た。こ
のめっき粉末の平均粒径は10.2μmであり, 図3のSE
M写真で示したように,ほとんど粉末の凝集は認められ
なかった。電流効率は95%であり,めっき粉末の収率は
98%であった。そしてチタン陰極板上には銅の電析は皆
無であった。
【0038】
【比較例1】ジルコニア製ビーズを使用しなかった以外
は,実施例1と同じ条件で平均粒径が10.0μmのタング
ステン粉末に20重量%の電気銅めっき行った。その結
果,実施例1とほぼ同様に電流効率が95%,めっき粉末
の収率が96%, チタン陰極板上への銅の電析は皆無であ
った。しかし,めっき粉末の平均粒径は25.0μmと2倍
以上となり,図4のSEM写真で示すように粉末の凝集
が相当に認められた。
【0039】
【実施例2】平均粒径が0.3μmの市販のα−アルミナ粉
末 (住友化学 (株) 製) 1kgを塩化第一錫溶液 (SnCl
2・2H2O:158g/L,pH:2.0)を用いて室温で2分間
センシタイジンク処理を行ったのち,この粉末をよく水
洗後に塩化パラジウム溶液0.5L ( PdCl2:0.2g/L,
pH:2.0)の中で,40℃で3分間のアクチベーテイング
処理を行い,水洗した。その後,日本カニゼン (株) 製
の無電解めっき液「シューマー−680」を用いて60℃で1
0分間無電解めっきを行い, α−アルミナ粉末に約1000
オングストローム厚みの無電解ニッケル−リン皮膜を形
成した。この粉末を本発明で使用する電気めっき対象粉
末とし,この粉末に,粒径5mmのガラスビーズ1.5kgを
混合し, この混合粉末を図1〜2に示した粉末電気めっ
き装置に装入した。
【0040】めっき液としては,硫酸ニッケル150g/
L,塩化アンモニウム:15g/L, ホウ酸:15g/Lの組成
の電気ニッケルめっき液1Lを使用した。この粉末懸濁
流が陰極表面に衝突するさいの垂直方向の速度成分が約
6.0m/分となるように回転翼の回転数を調整した。陰極
表面に衝突した粉末懸濁流は整流板6の上縁までの容器
内壁に沿って上昇し,陽極3には触れることなく再び回
転翼によって陰極表面に向かう定常的な循環液が形成さ
れた。この定常状態において粉末懸濁流の陰極表面近傍
での懸濁濃度は30vol.%であった。
【0041】この定常的な循環液が形成されていること
を確認したうえ,陰極電流密度1A/dm2, 電圧2Vで通
電を開始し,液温を25℃に維持した状態で250時間の連
続運転を開始した。
【0042】この稼動によってα−アルミナ粉末表面の
無電解ニッケル−リンめっき皮膜の周囲に,さらにニッ
ケルめっきが施されためっき粉末を得た。このめっき粉
末の平均粒径は0.4μmであり,凝集はほとんど認められ
なかった。
【0043】電流効率は90%であり,電気ニッケルめっ
き皮膜はアルミナ粉末の重量に対し10重量%の割合で形
成されており, このめっき粉末の収率は97%であった。
そしてチタン陰極板上へのニッケルの電析は皆無であっ
た。
【0044】
【比較例2】粒径が7μmのガラスビーズを使用した以
外は,実施例2と同じ条件で平均粒径が0.3μmのα−ア
ルミナ粉末に10重量%の電気ニッケルめっきを行った。
その結果, 実施例2に比べて電流効率が88%, めっき粉
末の収率が93%とやや低下したもののチタン陰極板上へ
のニッケルの電析は皆無であった。しかしめっき粉末の
平均粒径は2.1μmと増大し,凝集が著しく認められた。
【0045】
【実施例3】実施例1と同じ装置を用いて,平均粒径が
5.0μmの塩化ビニル樹脂の粉末に錫−鉛合金の電気めっ
きを施した。電気めっきに供する前の塩化ビニル樹脂の
粉末の表面に予め厚みが3000オングストローム厚みの銅
無電解めっき層を形成させておいた。この粉末に粒径が
3.0mmのアルミナ製ビーズを混合した。電気めっきに際
し, 粉末懸濁流の懸濁濃度および陰極表面に対する垂直
方向の速度成分は約40vol.%および3.0mm/分に設定し
た。その他の条件は次のとおりである。
【0046】めっき液組成:ホウフッ化第一錫:150g/
L,ホウフッ化鉛:50g/L, ホウフッ酸:11g/L, ニカ
ワ:5g/L めっき液量:1L, 粉末量:100g, 電流密度:3A/dm2, 電圧5V, 液温:30〜40℃, めっき時間:30時間。
【0047】このめっき処理によって,塩化ビニル樹脂
粉末の周囲に30重量%の錫一鉛合金(錫:鉛の比重量=7
0:30である)のめっき膜が施された本発明の粉末が得
られた。このめっき粉末の平均粒径は5.5μmであり,凝
集はほとんど認められなかった。電流効率は90%でめっ
き粉末の収率は99%であった。なお,陰極板上には錫−
鉛合金の電析は皆無であった。
【0048】
【比較例3】粒径が0.5mmのアルミナ製ビーズを使用し
た以外は,実施例3と同じ条件で平均粒径が5.0μmの塩
化ビニル樹脂粉末に30重量%の電気錫−鉛合金めっきを
行った。その結果,実施例3に比べて電流効率が85%,
めっき粉末の収率は95%とやや低下したもののチタン陰
極板上への錫−鉛合金めっきの電析が皆無であった。し
かし,めっき粉末の平均粒径は18.3μmと増大し,凝集
が著しく認められた。
【0049】以上の実施例1〜3と比較例1〜3で得ら
れた電気めっき粉末の凝集の状態を各々平均粒径の大小
で比較してみると, 粒径が1mm以上5mm以下の各種セラ
ミックス製ビーズを使用することによって,めっき粉末
の凝集を効率良く防止できることがわかる。
【0050】勿論同時に粉末の懸濁濃度,陰極に対する
直角方向の粉末の衝突速度および電流密度などの要因に
ついても一定範囲内に管理することが必要である。本発
明によって得られたほとんど凝集していない電気めっき
粉末は触媒用,装飾用,粉末冶金用および電磁シールド
用の導電フイラー材などの用途で優れた性能を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に従う粉末電気めっき装置の概略断面
図である。
【図2】 図1の装置の平面図である。
【図3】 実施例1作製した電気銅めっきタングステン
粉末のSEM写真である。
【図4】 比較例1で作製した電気銅めっきタングステ
ン粉末のSEM写真である。
【符号の説明】
1 円筒容器 2 陰極 3 陽極 4 電源装置 5 回転翼 6 整流板 12 アノードバック

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無機物質または有機物質の粉末の表面に
    電気伝導性の皮膜を形成させた導電性粉末もしくはそれ
    自体が導電性を有する金属粉末を,陰極と陽極を配した
    電気めっき浴中に懸濁させつつ陰極側に衝突させること
    により,該粉末の表面にめっき浴中の金属イオンを析出
    させる粉末の電気めっき法において,該電気めっき浴中
    に該粉末より径大の絶縁体粒子を共存させることを特徴
    とする粉末の電気めっき法。
  2. 【請求項2】絶縁体粒子は,1mm以上5mm以下の粒径の
    セラミックス製ビーズである請求項1に記載の粉末の電
    気めっき法。
  3. 【請求項3】被めっき品である粉末は, 粒径が0.1μmか
    ら10μmの範囲にあり,電気めっき浴中において陰極と
    衝突するさいの懸濁濃度が30〜55voL%であって且つこの
    懸濁流に該絶縁体粒子が混在した状態で陰極に対して直
    角方向の速度成分が0.6m/分〜6.0m/分の範囲で繰返
    し衝突する流動状態が維持される請求項1または2に記
    載の粉末の電気めっき法。
  4. 【請求項4】陰極は,電流密度1A/dm2から10A/dm2
    維持される請求項1,2または3に記載の粉末の電気め
    っき法。
JP22640491A 1991-08-13 1991-08-13 粉末の電気めつき法 Withdrawn JPH0544083A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP22640491A JPH0544083A (ja) 1991-08-13 1991-08-13 粉末の電気めつき法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP22640491A JPH0544083A (ja) 1991-08-13 1991-08-13 粉末の電気めつき法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH0544083A true JPH0544083A (ja) 1993-02-23

Family

ID=16844591

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP22640491A Withdrawn JPH0544083A (ja) 1991-08-13 1991-08-13 粉末の電気めつき法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0544083A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002322595A (ja) * 2001-04-25 2002-11-08 Sekisui Chem Co Ltd 導電性微粒子及び微粒子のめっき方法及び接続構造体
JP2011074482A (ja) * 2009-09-04 2011-04-14 Hitachi Metals Ltd メッキ装置
JP2011236473A (ja) * 2010-05-11 2011-11-24 Hitachi Metals Ltd メッキ装置
JP2012062566A (ja) * 2010-08-16 2012-03-29 Hitachi Metals Ltd メッキ装置
KR20190080608A (ko) * 2017-12-28 2019-07-08 엔트리움 주식회사 금속파우더의 전해도금 방법 및 장치
JPWO2018189916A1 (ja) * 2017-04-14 2019-11-07 Ykk株式会社 電気めっき方法及び装置
WO2024070235A1 (ja) * 2022-09-27 2024-04-04 株式会社村田製作所 めっき装置

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002322595A (ja) * 2001-04-25 2002-11-08 Sekisui Chem Co Ltd 導電性微粒子及び微粒子のめっき方法及び接続構造体
JP2011074482A (ja) * 2009-09-04 2011-04-14 Hitachi Metals Ltd メッキ装置
JP2011236473A (ja) * 2010-05-11 2011-11-24 Hitachi Metals Ltd メッキ装置
JP2012062566A (ja) * 2010-08-16 2012-03-29 Hitachi Metals Ltd メッキ装置
JPWO2018189916A1 (ja) * 2017-04-14 2019-11-07 Ykk株式会社 電気めっき方法及び装置
KR20190080608A (ko) * 2017-12-28 2019-07-08 엔트리움 주식회사 금속파우더의 전해도금 방법 및 장치
WO2024070235A1 (ja) * 2022-09-27 2024-04-04 株式会社村田製作所 めっき装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2628184B2 (ja) 微粉末に金属を電気めっきする方法
Vidrine et al. Composite Electrodeposition of Ultrafine γ-Alumina Particles in Nickel Matrices; Part I: Citrate and chloride electrolytes
Chandrasekar et al. Pulse and pulse reverse plating—Conceptual, advantages and applications
Hovestad et al. Electroplating of metal matrix composites by codeposition of suspended particles
US6010610A (en) Method for electroplating metal coating(s) particulates at high coating speed with high current density
Stroumbouli et al. Codeposition of ultrafine WC particles in Ni matrix composite electrocoatings
Ahmad et al. Electrodeposition of nanostructured nickel-ceramic composite coatings: a review
US20090178933A1 (en) Method for Making Nanoparticles or Fine Particles
CN100567587C (zh) Zn-Ni-Al2O3纳米复合镀层及其制备方法
US3654098A (en) Electrochemical process of coating using a fluidized bed
JP2534280B2 (ja) 亜鉛系複合めっき金属材料およびめっき方法
JPH0544083A (ja) 粉末の電気めつき法
US3400012A (en) Process of plating metal objects
CN109183102A (zh) 一种重质粉体的分散脉冲电镀方法
CN104088002A (zh) 一种复合涂层的制备装置及制备方法
US3884772A (en) Method for producing a heat exchanger element
US5911865A (en) Method for electroplating of micron particulates with metal coatings
US3779873A (en) Process for metal coating diamonds
CN113502518B (zh) 一种耐磨损铝合金复合材料
US4645580A (en) Process for galvanic deposition of a dispersion coating, application of said process and device for performing said process
JPS5941489A (ja) 粉粒体への電気めつき方法
JPH032393A (ja) 銅被覆鉄粉の製造法
US3168457A (en) Apparatus for producing composite electroplated articles
JPH032392A (ja) 粉末のコーティング方法および装置
JPS59123796A (ja) 高耐食性電気亜鉛めつき鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 19981112