JPH0538460Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、磁気テープカセツトに関し、特に、
上下一対のハーフケースと、該ハーフケースによ
り形成されるカセツト中空内部にあつて、このカ
セツト前面開口部の附近に突設するガイド突壁及
び該ガイド突壁に一体成形された隔離壁からなる
仕切部材とを具備した磁気テープカセツトの改良
に関する。

従来、磁気テープカセツト（以下、単に「カセ
ツト」と称する。）は、上下一対のハーフケース
が重ね合わされて形成されており、一対の巻芯に
巻回された磁気テープ（以下、単に「テープ」と
称する。）を前記カセツトの前方側壁に形成され
た開口部に沿つて走行させ、カセツト外方より該
開口部に挿入される磁気ヘツドに前記テープを当
接させて記録再生等が行われる。

このようなカセツトにおいて、前記ハーフケー
スの平面性が悪いと、該ハーフケースの内面に突
設されて前記テープを走行案内するガイド部材の
垂直度が低下することによつて前記テープが巾方
向にズレを生じ、該テープを磁気ヘツドに対して
適正位置に案内保持されることが難しくなつて電
磁変換特性が低下する。

特に、前記テープ巾方向のズレに関して高レベ
ルのものが要求される。例えばデジタル信号を高
密度に記録する所謂PCM方式デジタルオーデイ
オ方式の記録方法では、前記テープがマルチ・ト
ラツク化されて用いられており、従来のアナログ
方式のトラツク配列がステレオ記録で４トラツク
であるのに対し、同一テープ巾に20〜36トラツク
が録音される方式が提案されている。このような
方式ではトラツク幅が100μm、実効的なトラツク
ピツチが100μm程度のテープ幅方向に対し高密度
な記録がなされる。そのため、磁気ヘツドに対す
る前記テープの巾方向の僅かなズレも、記録時や
再生時に同一トラツクをトレースしなくなつてト
ラツクエラーが生じるし、また異機種間の記録再
生時（Ａのテープレコーダーで記録、Ｂのテープ
レコーダーで再生）に互換性を保つことが非常に
困難となる。したがつて、上述の如き特にトラツ
ク巾が狭いものにあつてはトラツクエラー等（テ
ープ巾方向のズレ）が発生する問題を解決するた
め、前記カセツトの平面性を保つことは重要な課
題であつた。

前記カセツトの平面性を向上させるために、従
来、ハーフケースの内面に突出するように該ハー
フケースと一体成型されて、カセツト中空内部を
二分する隔離壁を該ハーフケースとは別体に成形
して着脱可能に設けたテープカセツトが公知であ
る（特開昭第53−131817号公報）。

すなわち、この公報に開示されたものは、カセ
ツト中空内部にあつて、前記カセツトの前方開口
部の附近に設けられる比較的狭い記録再生領域
と、該カセツトの後方で大きなスペースを占める
テープ巻芯収納領域とに区画する前記隔離壁をハ
ーフ内面から取り除いた構成とし、この構造で前
記ハーフケースを成形することにより、ハーフケ
ースの成形性が著るしく向上し該ハーフケースの
成形後の平面性を高めたものである。そして、別
体として成形された隔離壁がハーフケース間に嵌
着保持されることで磁気テープカセツトが構成さ
れるものである。

なお、この公報に示された構成のものは前記隔
離壁の前面側に、更に、複数対のガイド突壁が突
設されて仕切部材として構成されている。

前記ガイド突壁は、前記ハーフケースの底部内
面に対し垂直になるように設けられており、その
突出先端で前記テープを走行案内している。

上述の如く構成されたカセツトによつて前記ハ
ーフケースの成型後の平面性が向上し、前記テー
プの走行性もある程度の向上が見られた。

しかしながら、前記カセツトは、前面開口部
（カセツト平面方向から見て台形状の段差部分）
はその前面側壁に複数個の開口を形成したり、カ
セツト位置決めピンが入る孔や、キヤプスタン用
の孔を設けるために、金型の特定部分を多数のブ
ロツク部材にて構成するいわゆる入子方式の構造
が採用される。このため、金型構造の制約上から
均一なプラスチツク樹脂の射出や冷却などが行え
ず、成形歪をなくすことが難しく、そのためにこ
の台形状の段差部分は平坦不良が生じ易かつた。

しかも、この段差部分に仕切部材が配設される
と、この仕切部材はその上下端部が前記カセツト
の段差部分の内壁面と密着し、前記上下ハーフケ
ースのビス締めによつて上下から押えつけられて
組立られているために該ハーフケースの歪変形の
影響を直接受けることになる。すなわち、仕切部
材はその上下から平坦性の悪い部分（段差部分の
内面）を無理やり押しつけられた状態となり、該
仕切部材の上下端部に不均一な押圧力が加えられ
る。そして、特にガイド突壁の先端部分側におい
て例えばその上下方向から該ガイド突壁ごとに異
なつた向きの圧力を受けときは、仕切部材を捩じ
るような力が作用する。このとき仕切部材の隔離
壁よりもガイド突壁の方が変形し易いために該ガ
イド突壁の先端部分に傾き等が発生する。

このように仕切部材をハーフケースと別体にす
ることでハーフケース全体の成形性は向上して該
ハーフケース全体としての成形精度を良くするこ
とができるものの、段差部分の変形を完全に無く
すことはできないために、ガイド突壁が段差部分
の変形の影響を受け易いという問題があつた。

本考案の目的は、前述した従来カセツトの欠点
を除去し、前記テープの走行性を悪化させない仕
切部材を備えたカセツトを提供することであり、
しかも、ハーフケースの歪、特にカセツトの前面
開口部を形成する段差部分の歪を許容できるカセ
ツトを提供することにある。

すなわち本考案のかかる目的は、上下一対のハ
ーフケースと、該ハーフケースの合体により形成
されるカセツトの前面開口部の附近に突設するガ
イド突壁及び隔離壁が一体成型される仕切部材と
を具備してなる磁気テープカセツトにおいて、前
記仕切部材は前記隔離壁にカセツト内方よりカセ
ツト前面側へ向かつて突出する複数のガイド突壁
を左右対称に備え、少なくとも磁気テープに接し
てテープ走行を案内する前記ガイド突壁がその上
下端縁を前記ハーフケースの底部内面に非接触と
するように狭巾化されており、さらに前記隔離壁
の上下端面が前記上下ハーフケースの前記開口部
を構成する段差部分にて挟持されていると共に、
前記隔離壁の左右両端部分の前後面が前記段差部
分から外れた所でカセツト左右両側に少なくとも
夫々一対設けられた係止部材により位置規制され
ていることを特徴とする磁気テープカセツトによ
り達成される。

以下、添付した図面に基いて、本考案のカセツ
トの一実施態様につき詳述する。

第１図、本考案に基くカセツトの平面図であ
る。

第１図において、上下一対のハーフケース１，
１′の重ね合わせにより形成されるカセツトの中
空内部は、着脱自在に設けられた仕切部材２によ
り二つの領域に仕切られる。

前記仕切部材２は、第２図に図示する如く、中
空内部を記録再生域３とテープ巻芯収納域４に二
分するようにカセツト左右方向に延びた隔離壁５
及びこの隔離壁５の前面で前記記録再生域３側に
突出した複数のガイド突壁６，７，８が形成され
ている。

前記ガイド突壁６，７，８は、一対のキヤプス
タン挿入孔９、位置決め孔１０及びシールド板１
１が配設された前記記録再生域３の底部内面の各
領域を夫々区分するように、前記隔離壁５に、突
出して左右対称に並設されている。

又、第３図は本考案カセツトの要部の概略横断
面図を図示したもので、前記ガイド突壁６，７，
８は、その突出基部近くから突出先端にかけて若
干段差６′，７′，８′を設けて狭巾化されており、
前記仕切部材２が前記上下ハーフケース１，１′
内に配置された際に、前記狭巾化された部分が該
ハーフケース１，１′の底部内面と非接触に形成
されて該底部内面との間に僅かな間隙を形成して
いる。従つて、このガイド突壁６，７，８は前記
上下ハーフケース１，１′の内面（段差部分の内
面）に変形があつても不測の押圧力を受けること
が回避されて成形精度の悪影響を受けないように
なつている。

又、前記隔離壁５の前面において最も中央寄り
に対設せしめた前記ガイド突壁８，８は、その突
出先端に縦スリツト１２，１２が切り込まれ、該
縦スリツト１２，１２よりも前方の側面でテープ
Ｔを案内支持するガイドポール部１３，１３を形
成している。

又、前記隔離壁５の両端１４，１４も若干段差
を付けて狭巾化されており、且つ後述する係止部
材１５，１５と係合するために延長されている。

一方、前記上下ハーフケース１，１′は前記仕
切部材２によつてカセツト前方に比較的狭い前記
記録再生域３と、その後方で大きなスペースを占
める前記巻芯収納域４とに区画されるとともに、
前記巻芯収納域４の一部を含む前記記録再生域３
全体が、前記巻芯収納域４の他の部分の底部内面
よりも若干段落した底部内面を有して成型されて
いる。

又、前記巻芯収納域４の底部内面には、カセツ
ト前方近くで、且つ前記中心線Ｃに関して左右対
称位置に一対の回転ガイドローラ１６，１６及び
一対の固定ガイドポール１７，１７が配設されて
いる。

又、前記回転ガイドローラ１６，１６と前記記
録再生域３の間にある前記巻芯収納域４に前記仕
切部材２を係合可能にする縦スリツト１８，１８
を形成した係止部材１５，１５が設けられてい
る。

前記係止部材１５，１５は、前記上下ハーフケ
ース１，１′の各底部内面に対して夫々垂直に設
けられており、その縦スリツト１８，１８に前記
仕切部材２の隔離壁５の両端１４，１４を挿入し
て該仕切部材２を保持している。

第４図は、更に本考案による前記仕切部材２
に、シールド板１１と該シールド板１１に組み合
わされる加圧パツト１９、及び板バネ２０が配置
された状態を示す。

すなわち、従来と同様なコ字状に折曲加工され
たシールド板１１が、その折り曲げ両端を前記ガ
イド突壁８，８の突出先端に切り込まれた前記縦
スリツト１２，１２まで延長されており、前記突
壁８，８の対向する内側に設けられている。

又、前記加圧パツト１９を保持した板バネ２０
はその折曲した両端が前記突壁８，８の対向する
外側で、且つその折曲先端を後方にして前記縦ス
リツト１２，１２に夫々落し込まれている。

以上のように構成される本考案カセツトの組み
立て操作手順を説明すると、先ず、フリクシヨン
シート２１、回転ガイドローラ１６，１６を順次
前記下ハーフケース１′の底部内面における所定
位置に装着後、前記仕切部材２の隔離壁５の両端
１４，１４を前記係止部材１５，１５の縦スリツ
ト１８，１８内に挿入する。

次に、前記仕切部材２に前記シールド板１１及
び加圧パツド１９を備えた前記板バネ２０を配設
した後、巻芯２２，２２に夫々巻回されたテープ
Ｔを所定の走行路に案内して前記突壁６，７，８
の突出先端に装架するとともに、前記上下ハーフ
ケース１を前記下ハーフケース１′上に載置し、
重ね合わせてビス締めすることによりカセツトの
組立が終了する。

このように形成されたカセツト中空内部は前記
仕切部材２により前記記録再生域３及び巻芯収納
域４に確実に二分されるとともに、前記突壁６，
７，８の上下端縁が前記ハーフケース１，１′の
底部内面より若干の間隙を有して設けられてい
る。

以上記述した本考案カセツトは、カセツト中空
内部を仕切る前記仕切部材２が前記上、下ハーフ
ケース１，１′と独立して成型されることにより、
金型からの抜取性が良好になり、又、成形後の樹
脂冷却の樹脂ヒケも改善されて成形歪が低減さ
れ、よつて該ハーフケース１，１′の平面性が向
上できる。しかも、このように成形しても、尚且
つ生じる前記ハーフケース１，１′の断差部分に
おける成形歪に対しては、前記仕切部材２が該ハ
ーフケース１，１′の底部内面と当接する接触面
を減らす構造によつて、悪影響を受けないように
対応されている。

すなわち、本考案は、前記テープＴをその突出
先端で支持し、テープ走行性に大きな作用を及ぼ
す前記突壁６，７，８がその上下端縁をハーフケ
ースの段差部分において、特にカセツト前後方向
の接触長さを小さくするべく巾狭化したことによ
り達成されるものである。

上述の如き突壁６，７，８の巾狭化による作用
について述べる。

突壁が装着されて上下カセツトハーフがビス締
めされた場合、従来の仕切部材においては各突壁
にも段差部分の内面が当接したベタ置き状態であ
ることから、ビス締めによるケース内面による押
圧は各突壁の先端部分にまでおよび、該段差部分
の内面が完璧な平面性を備えていない限り、該段
差部分の成形精度（平面性精度）によつて、例え
ば仕切部材をその長手方向に沿つて捩じるような
力が作用し、各突壁の先端部分（自由端で変形し
易い）の変形を誘発する。

しかし、本考案において前記仕切部材２はケー
ス内面（段差部分の内面）に対する接し方が、従
来のように突壁も含めた広範囲に広がるベタ置き
状態から、隔離壁５の巾にほぼ等しい極めて巾狭
な線接触とも言える状態となつていることから、
ビス締めによる締結力は隔離壁５の上下端面部分
に集中して働くこととなる。これは、上下ハーフ
ケースの段差部分が変形していても、接触してい
ないのであるからガイド突壁６，７，８は不測の
押圧を受けることがなく、又、隔離壁５を捩じる
ようなモーメントを受けることも回避される。ま
た、この隔離壁５の高さ方向（カセツト厚み方
向）の剛性はハーフケースの厚み方向の剛性より
も高い（カセツト厚み方向の肉厚が大きく相違す
る）ので、上下ハーフケース１，１′がビス締め
されたときに段差部分の変形そのものが該隔離壁
５により矯正される作用も期待できる。

このように、ハーフケースの平坦性の悪さが要
因となるガイド突壁の垂直性の低下を可能な限り
回避することができ、これに加えて、垂直性等の
成形精度の出しやすい係止部材１５，１５により
仕切部材が位置決め保持されるので、仕切部材２
は変形することなく垂直性よく保持される。

なお、前記係止部材１５，１５は、第１図及び
第４図から明らかなように、成形時の変形が生じ
易いハーフケースの段差部分から外れた箇所に設
けられていることでその垂直性が確実に保たれて
いる。

このように、本考案によれば前記仕切部材はそ
の隔離壁が垂直性が良好に保たれ、さらにガイド
突壁の垂直度も良好に維持されるので、安定した
テープ走行ができる磁気テープカセツトを提供す
ることができる。

なお、前記実施態様では、前記突壁６，７，８
を全て狭巾化したものとして形成したが、カセツ
ト内に挿入される磁気ヘツドに最も近設して前記
テープを該ヘツドの適正位置に案内走行する上で
影響の大きい、最も中央寄りに対設した前記突壁
８，８のみを狭巾化するだけでも本考案の目的は
達成できる。

又、本考案カセツトは特にデジタルオーデイオ
方式に効果的なものとなるが、従来のアナログ録
音においても好適に作用するものであることは無
論である。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案によるカセツトの概略を説明
する平面図、第２図は、本考案による仕切部材を
示した斜視図、第３図は、本考案カセツトを説明
する横断面図、第４図は本考案カセツトの要部を
示す斜視図。 図中符号、１……上ハーフケース、１′……下
ハーフケース、２……仕切部材、５……隔離壁、
６，７，８……ガイド突壁、６′，７′，８′……
段差、１５……係止部材。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 上下一対のハーフケースと、該ハーフケースの
   合体により形成されるカセツトの前面開口部の附
   近に突設するガイド突壁及び隔離壁が一体成型さ
   れる仕切部材とを具備してなる磁気テープカセツ
   トにおいて、 前記仕切部材は前記隔離壁にカセツト内方より
   カセツト前面側へ向かつて突出する複数のガイド
   突壁を左右対称に備え、少なくとも磁気テープに
   接してテープ走行を案内する前記ガイド突壁がそ
   の上下端縁を前記ハーフケースの底部内面に非接
   触とするように狭巾化されており、さらに前記隔
   離壁の上下端面が前記上下ハーフケースの前記開
   口部を構成する段差部分にて挟持されていると共
   に、前記隔離壁の左右両端部分の前後面が前記段
   差部分から外れた所でカセツト左右両側に少なく
   とも夫々一対設けられた係止部材により位置規制
   されていることを特徴とする磁気テープカセツ
   ト。