JPH0532771A - 熱液晶ポリエステルおよびそれからなるフイルム - Google Patents

熱液晶ポリエステルおよびそれからなるフイルム

Info

Publication number
JPH0532771A
JPH0532771A JP29671191A JP29671191A JPH0532771A JP H0532771 A JPH0532771 A JP H0532771A JP 29671191 A JP29671191 A JP 29671191A JP 29671191 A JP29671191 A JP 29671191A JP H0532771 A JPH0532771 A JP H0532771A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
structural unit
mol
polyester
film
liquid crystal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP29671191A
Other languages
English (en)
Inventor
Tsugifumi Kashiwamura
次史 柏村
Tetsuya Hara
哲也 原
Mitsuo Matsumoto
光郎 松本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP29671191A priority Critical patent/JPH0532771A/ja
Publication of JPH0532771A publication Critical patent/JPH0532771A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【構成】 下記化1で示される構成単位(1)、下記化
2で示される構成単位(2)、下記化3で示される構成
単位(3)および下記化4で示される構成単位(4)よ
りなり、(1)+(2)+(3)が20〜75モル%、
(2)が0.1〜10モル%、(4)が25〜80モル
%である熱液晶ポリエステル。 【化1】 【化2】 【化3】 【化4】 (上記式中、Arは1,4−ナフチレン基または2,6
−ナフチレン基を表し、Rは炭素数2〜10の2価の脂
肪族基を表す。) 【効果】 このポリエステルは低温での成形性および延
伸性に優れ、力学物性の異方性が小さい高弾性率のフイ
ルムを与えることから、磁気記録媒体などのベースフイ
ルムの素材として有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は成形性、特に延伸性の改
良された光学的に異方性の溶融相を形成する共重合ポリ
エステル、およびそれからなるフイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、各種のポリマーからフイルム形態
の成形品が製造されるようになり、その用途は多岐に亘
っている。特に高弾性フイルムに関しては、機械分野、
電子機器分野のみならず、応力に対する変形が小さいと
いう利点を利用して、オーディオテープ、ビデオテープ
などの磁気テープとして大量に使用されている。従来、
汎用の高弾性フイルムとしてはポリエチレンテレフタレ
ートの延伸フイルムが用いられているが、弾性率を高め
る目的で高倍率の延伸、あるいは延伸フイルムの再延伸
などの方法がとられているために、フイルムの破断や残
留延伸歪などの問題を伴うことが多い。
【0003】一方、押出し成形をするだけで高度に配向
した弾性フイルムが得られることから、光学的に異方性
の溶融相を形成するいわゆるサーモトロピック液晶ポリ
マー、特にサーモトロピック液晶ポリエステルをフイル
ム材料として用いる方法も提案されている。例えば、特
開昭56−46728号公報、特開昭61−24382
6号公報にはチューブラー同時二軸延伸法(いわゆるイ
ンフレーション法)による液晶ポリマーフイルムの製造
法が開示されており、また、特開昭58−89323号
公報には液晶ポリマーをその等方性相への転移温度以上
の温度で溶融押出しして無配向のフイルムを製造する方
法が開示されている。しかしながら、チューブラー同時
二軸延伸法でも得られるフイルムの力学物性の異方性は
十分には改善されず、また、等方性相への転移温度以上
の温度で溶融押出しする方法では、使用し得るポリマー
が等方性相への転移を示すポリマーに限定されることお
よび非常に高い温度でポリマーを溶融するためにポリマ
ーの熱分解が起こりやすいことなどの問題点がある。
【0004】力学物性の異方性の小なる成形品を与える
全芳香族サーモトロピック液晶ポリマーに関する提案も
なされている。例えば、特開昭60−28428号公報
には、テレフタロイル基、1,3−ジオキシフェニレン
基および2−置換−1,4−ジオキシフェニレン基から
なる全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルが提案
されている。このように、分子鎖中へのイソ骨格および
置換基の導入により、サーモトロピック液晶ポリマーの
成形性が向上し、必ずしも十分ではないが各種の成形体
を製造することは容易となる傾向がある。
【0005】また、特開昭63−238137号公報に
は、異方性を緩和させる成分を共重合した液晶ポリエス
テルのフイルムを少なくとも一方向に延伸して得られる
弾性フイルムが開示されている。該公報中にはフイルム
の均一性、平滑性を向上させるために好ましい共重合成
分として炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸、イソフ
タル酸、ビスフェノールA、レゾルシン、ジエチレング
リコールおよびエチレングリコールモノハイドロキノン
エーテルが例示されている。そして、具体的に記載され
ている唯一の液晶ポリエステルであるイソフタル酸とビ
スフェノールA(4,4′−イソプロピリデンジフェノ
ール)の両成分が共重合されたポリエチレンテレフタレ
ート系ポリエステルをp−アセトキシ安息香酸と反応さ
せて得られた液晶ポリエステルでは、該液晶ポリエステ
ルから得られた押出しフイルムの延伸を180〜190
℃の温度で行っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来提
案されているサーモトロピック液晶ポリマーを溶融成形
して得られるフイルムは概して結晶化度が高く、その結
果多くの場合、実質的には延伸が不可能である。例え
ば、上述の特開昭60−28428号公報に記載の、テ
レフタロイル基、1,3−ジオキシフェニレン基および
2−置換−1,4−ジオキシフェニレン基からなる全芳
香族サーモトロピック液晶ポリエステルではイソ骨格お
よび置換基の導入により、結晶化度の低い成形品を得る
ことは可能となるものの、あとの比較例から明らかなよ
うに、該全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルか
ら得られるフイルム形態の成形品でさえも延伸性は実質
的には発現しないことが判明した。
【0007】また上述の特開昭63−238137号公
報において唯一具体的に記載されているイソフタル酸お
よびビスフェノールAを共重合せしめたポリエチレンテ
レフタレート(48モル%)とp−アセトキシ安息香酸
(52モル%)との反応により得られる熱液晶ポリエス
テルの溶融押出しフイルムを二軸延伸して得られる延伸
フイルムでの弾性率は従来のポリエチレンテレフタレー
トの延伸フイルムでの値を大幅に改善するレベルである
とは言い難いものである。なお、本発明者等の検討によ
れば、あとの比較例からも明らかなように、イソフタル
酸のみを共重合したポリエチレンテレフタレートとp−
アセトキシ安息香酸との反応により得られる熱液晶ポリ
エステルではフイルムの延伸性はまったく認められなか
った。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような状況に鑑み、
本発明者等は、従来の熱液晶ポリマーが達成し得ない優
れた低温成形性、延伸性、均一性を有し、その結果力学
物性の異方性の小なる高弾性フイルムを与える熱液晶ポ
リマーを提供すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の炭素
数を有する脂肪族ジカルボン酸成分を共重合させた特定
の熱液晶ポリマーがこれらの要求性能を満足することを
見出だし、この知見に基づいて本発明を完成するに至っ
た。
【0009】すなわち本発明は、第一に新規な熱液晶ポ
リエステルを提供するものであり、それは、実質的に下
記化5
【0010】
【化5】
【0011】(化5中Arは、1,4−フェニレン基ま
たは2,6−ナフチレン基を表す。)
【0012】で示される構成単位(1)、下記化6
【0013】
【化6】
【0014】(化6中Rは炭素数2〜10の2価の脂肪
族基を表す。)
【0015】で示される構成単位(2)、下記化7
【0016】
【化7】
【0017】で示される構成単位(3)および下記化8
【0018】
【化8】
【0019】で示される構成単位(4)からなり、構成
単位(1)および構成単位(2)のモル数の和と構成単
位(3)のモル数とが実質的に等しく、構成単位
(1)、構成単位(2)および構成単位(3)の合計量
が20〜75モル%、構成単位(4)の量が25〜80
モル%であり、かつ構成単位(2)の量が0.1〜10
モル%である熱液晶ポリエステルである。
【0020】本発明は、第二に力学物性の異方性の小な
る高弾性フイルムを提供するものであり、それは上記の
新規な熱液晶ポリエステルからなるフイルムである。
【0021】以下本発明を具体的に説明する。本発明の
熱液晶ポリエステルの構成単位(1)は、芳香族ジカル
ボン酸成分であり、具体的にはテレフタロイル基および
/またはナフタレン−2,6−ジカルボニル基である。
構成単位(1)の一部、好ましくは構成単位(1)の2
0モル%以下は、他の芳香族ジカルボン酸成分に置き換
えられていてもよい。他の芳香族ジカルボン酸成分とし
ては、例えば、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカ
ルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4′
−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−オキシジ安息香
酸、4,4′−メチレンジ安息香酸、4,4′−スルホ
ニルジ安息香酸、ジフェン酸などの芳香族ジカルボン酸
に対応するものが挙げられる。
【0022】また、本発明の熱液晶ポリエステルにおけ
る構成単位(2)とは、炭素数4〜12の脂肪族ジカル
ボン酸成分である。前記化6中のRが表す炭素数2〜1
0の2価の脂肪族基としては、イソプロピリデン基、エ
チレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、1−メ
チルテトラメチレン基、ペンタメチレン基、1,1−ジ
メチルトリメチレン基、1,1−ジエチルエチレン基、
ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン
基、ノナメチレン基、デカメチレン基等の炭素数2〜1
0のアルキレン基などが例示される。脂肪族基Rの炭素
数が11以上の場合には生成するポリエステルが熱液晶
を形成しない場合があり、またそのポリエステルを用い
て得られるフイルムの弾性率が低下することから好まし
くない。脂肪族基Rとしては、得られる熱液晶ポリエス
テルからなるフイルムの延伸性、弾性率等の点から、エ
チレン基、テトラメチレン基、ヘプタメチレン基、オク
タメチレン基などの炭素数2〜8の直鎖アルキレン基が
好ましい。
【0023】また得られるポリエステルが溶融成形可能
である範囲内の量であれば、構成単位(1)の一部をト
リメリット酸、トリメシン酸、ビロメリット酸などの3
価以上のカルボン酸成分に置き換えることも可能であ
る。
【0024】本発明の熱液晶ポリエステルにおける構成
単位(3)とは、エチレングリコールにより導入される
ようなエチレンジオキシ基であるが、その一部、好まし
くは構成単位(3)の20モル%以下は、他のグリコー
ル成分に置き換えられていてもよい。エチレングリコー
ル以外のグリコール成分としては、例えば、1,2−プ
ロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−
ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル
−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオー
ル、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオー
ル、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−
シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、
トリエチレングリコール、o−、m−、またはp−キシ
リレングリコールなどが挙げられる。また得られるポリ
エステルが溶融成形可能である範囲内の量であれば、構
成単位(3)の一部をグリセリン、トリメチロールプロ
パン、トリエチロールプロパン、ペンタエリスリトール
などの多価アルコール成分に置き換えることも可能であ
る。
【0025】本発明の熱液晶ポリエステルにおける構成
単位(1)、構成単位(2)および構成単位(3)は、
通常はテレフタル酸および脂肪族ジカルボン酸またはそ
れらのエステル形成性誘導体とエチレングリコールとを
主たる出発物質とする反応、2,6−ナフタレンジカル
ボン酸および脂肪族ジカルボン酸またはそれらのエステ
ル形成性誘導体とエチレングリコールとを主たる出発物
質とする反応、またはテレフタル酸、2,6−ナフタレ
ンジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸の混合物、も
しくはそれらのエステル形成性誘導体とエチレングリコ
ールとを主たる出発物質とする反応によって得られるポ
リエステルを原料のひとつとして用いることによって本
発明の熱液晶ポリエステルの分子中に導入される。
【0026】本発明の熱液晶ポリエステルの製造におい
て用いる脂肪族ジカルボン酸を共重合したポリエチレン
テレフタレート、脂肪族ジカルボン酸を共重合したポリ
エチレンナフタレートあるいはこれらの共重合体のごと
き原料ポリエステルは、従来ポリエチレンテレフタレー
ト等の通常のポリエステルの製造法として提案されてい
る方法に準じて製造することができる。例えば、ジカル
ボン酸とグリコールとをエステル化反応したあと重縮合
する方法、ジカルボン酸エステルとグリコールとをエス
テル交換したあと重縮合する方法等によって原料ポリエ
ステルが得られる。その際、エステル化触媒、エステル
交換触媒、重縮合触媒、安定剤等を使用することが好ま
しい結果を与える場合があるが、これらの触媒、安定剤
等としては、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタ
レートの製造において使用しうる触媒、安定剤等として
知られているものを用いることができる。例えば、これ
らの反応を促進する触媒としては、ナトリウム、マグネ
シウム、カルシウム、亜鉛、マンガン、錫、タングステ
ン、ゲルマニウム、チタン、アンチモン等の金属の化合
物が、また安定剤としてはリン酸、リン酸エステル類、
亜リン酸、亜リン酸エステル類などのリン化合物を例示
することができる。さらに、必要に応じて他の添加剤
(着色剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、帯電防止剤、難
燃剤、結晶化促進剤等)を添加することもできる。
【0027】本発明の熱液晶ポリエステルを製造する際
に用いる原料ポリエステルの重合度に関しては、特に規
定はないが、フェノール/テトラクロロエタン等重量混
合溶媒中、30℃で測定した極限粘度が0.01〜1.
5dl/gのものを用いることが好ましい。
【0028】構成単位(1)、構成単位(2)および構
成単位(3)は、それらの合計量において熱液晶ポリエ
ステル中、20〜75モル%の範囲内、好ましくは25
〜50モル%の範囲内、より好ましくは30〜45モル
%の範囲内で存在する。
【0029】また、本発明の熱液晶ポリエステルにおい
て、低温成形性、低温延伸性、弾性率の点から構成単位
(2)は0.1〜10モル%、好ましくは0.3〜8モ
ル% 、より好ましくは0.5〜5モル%の範囲で存在
する。0.1モル%未満であると低温成形性および低温
延伸性が十分に発現せず、10モル%を越えると組成に
よっては得られるポリマーが熱液晶を形成しないことが
あり、また得られるフイルムの弾性率が著しく低下する
ために好ましくない。
【0030】一方、本発明の熱液晶ポリエステルにおけ
る構成単位(4)は、4−オキシベンゾイル基である。
構成単位(4)の一部、好ましくは10モル%以下は、
他のヒドロキシカルボン酸成分に置き換えられていても
よい。4−オキシベンゾイル基以外のヒドロキシカルボ
ン酸成分としては、例えば、3−オキシベンゾイル基、
2−オキシベンゾイル基などのオキシベンゾイル基;6
−オキシ−2−ナフトイル基、7−オキシ−2−ナフト
イル基、4−オキシ−1−ナフトイル基、5−オキシ−
1−ナフトイル基などのオキシナフトイル基などが挙げ
られる。
【0031】また、本発明の熱液晶ポリエステルにおい
て、構成単位(4)の含有量は、25〜80モル%の範
囲である。構成単位(4)の含有量が80モル%を越え
ると、溶融重合が困難になること、成形性が著しく損な
われることなどの不都合が生じ、25モル%未満である
と、得られるポリエステルは熱液晶を形成しない場合が
あり、得られるフイルムの弾性率が大きく低下するので
好ましくない。得られるフイルムに高度の弾性率を付与
するためには、液晶形成性構成単位である構成単位
(4)の含有量をできる限り高めることが好ましい。弾
性率と成形性との両面を考慮すると、構成単位(4)の
含有量としては、50〜75モル%の範囲が好ましく、
55〜70モル%の範囲が特に好ましい。
【0032】本発明の熱液晶ポリエステルにおける構成
単位(4)は、通常対応するアシルオキシカルボン酸を
原料として用いることによりポリマー分子中に導入され
る。アシルオキシカルボン酸としては、対応するヒドロ
キシカルボン酸と無水酢酸との反応によって得られるア
セトキシカルボン酸が好ましい。
【0033】本発明の熱液晶ポリエステルは高い弾性率
を有するフイルムを得る目的において、溶融相において
液晶を形成する(すなわち光学的異方性を示す)性質を
有することが必要である。溶融相におけるこのような光
学的異方性の確認は、当業者によく知られているよう
に、加熱装置を備えた偏光顕微鏡を用いて、直交ニコル
下で試料の薄片、好ましくは厚み5〜20μm程度の薄
片をカバーグラス間にはさみ一定の昇温速度下で観察
し、一定温度以上で光を透過することを見ることにより
行ない得る。尚、本観察においては高温度下でカバーグ
ラス間にはさんだ試料に軽く圧力を加えるか、あるいは
カバーグラスをずり動かすことによってより確実に偏光
の透過を観察し得る。本観察において偏光の透過し始め
る温度が、光学的に異方性の溶融相ヘの転移温度であ
る。溶融成形の容易さの点から、この転移温度は350
℃以下、より好ましくは300℃以下であることが望ま
しい。本発明の熱液晶ポリエステルの光学的に異方性の
溶融相への転移温度は、従来提案されている熱液晶ポリ
エステルとは異なり、示差走査熱量計により決定するこ
とは難しい。すなわち、あとの実施例から明らかなよう
に、本発明の熱液晶ポリエステルを示差走査熱量計によ
り測定した場合には、通常明確な吸熱ピークは観測され
ない。
【0034】本発明の熱液晶ポリエステルの製造は、例
えば先ず原料ポリエステルを4−アシルオキシ安息香酸
でアシドリシスすることによってポリエステルフラグメ
ントを調製し、引き続いてこのポリエステルフラグメン
トの重合度を上昇させることによって目的とする熱液晶
ポリエステルを調製する方法で行なわれる。第一段階の
アシドリシスは、通常、窒素、アルゴン、二酸化炭素の
ような不活性ガス雰囲気下250〜300℃で行なわれ
る。
【0035】原料化合物として4−アシルオキシ安息香
酸の代わりに4−ヒドロキシ安息香酸を用いることもで
きる。その場合には、4−ヒドロキシ安息香酸と低級脂
肪族酸無水物、好ましくは無水酢酸を反応させ実質的に
すべてのヒドロキシル基をアシルオキシ基、好ましくは
アセトキシ基に変換(アシル化)したのちに、生成した
対応するアシルエステルを単離することなく、所定の原
料ポリエステルと反応させることにより本発明の熱液晶
ポリエステルが製造される。この場合、原料ポリエステ
ルは、4−ヒドロキシ安息香酸のアシル化反応の前後の
任意の時期に系に加えることができる。
【0036】4−アシルオキシ安息香酸と原料ポリエス
テルとのアシドリシス反応の段階で生成する低級脂肪族
酸は理論留出量の大半が系外に出る。次いで系中に残存
するアシドリシス反応の生成物を減圧下250〜350
℃でさらに脱低級脂肪族酸させて、所望の物品を成形す
るのに好適な、好ましくは0.1dl/g以上の対数粘
度にまで重合度を増大させる。この場合、重合温度は反
応速度の点から270℃以上、またポリエステルの分解
を抑制する点から350℃以下の温度であることが好ま
しいが、特に好ましくは270〜320℃である。この
重合段階においては減圧度を徐々に高め、最終的に1m
mHg以下、好ましくは0.5mmHg以下にすること
が望ましい。またさらに分子量を高める方法として、業
界周知の固相重合法等を用いることも可能である。
【0037】本発明の熱液晶ポリエステルの、ペンタフ
ルオロフェノール中、60℃で測定した対数粘度は、得
られる成形品の力学強度の点から、0.1dl/g以
上、好ましくは0.3dl/g以上、より好ましくは
0.4dl/g以上であることが望ましい。また、対数
粘度に臨界的な上限値はないが、溶融重合の容易さ、成
形性等の点から3.0dl/g以下、好ましくは2.0
dl/g以下であることが望ましい。
【0038】尚、本発明の熱液晶ポリエステルの構成単
位(1)、(2)、(3)および(4)の組成比に関し
ては、NMRスペクトルにより決定され、通常、仕込み
原料組成比と実質的に同一の組成比を有するポリマーが
得られる。
【0039】本発明の熱液晶ポリエステルは、従来の公
知の熱液晶ポリマーと異なり、溶融状態から急冷して得
られる成形品の結晶化度が極めて低く、通常の場合には
X線回折により求められる結晶化度は20%以下であ
る。このため、本発明の熱液晶ポリエステルから得られ
るフイルム形態などの成形品は、従来提案されている熱
液晶ポリエステルとは異なり、一軸方向および二軸方向
の熱延伸が可能であり、多くの場合2×2倍以上または
3×3倍以上の同時、あるいは逐次二軸延伸が可能であ
る。
【0040】本発明の熱液晶ポリエステルは、通常のポ
リエステルに関して従来知られている方法により溶融成
形が可能であり、それによって各種の成形品を得ること
が可能である。本発明の熱液晶ポリエステルは、熱延伸
が可能であることから特にシートやフイルムなどの成形
品の製造に適している。本発明の熱液晶ポリエステルか
らフイルムを製造する方法としては、熱プレス法、押出
し成形法、インフレーション法などの溶融成形法を採用
することができ、必要に応じてさらに延伸、熱処理など
の処理を施すことも可能である。力学物性の異方性の小
さい高弾性フイルムを得る目的においては、本発明の熱
液晶ポリエステルを溶融成形して得られるフイルムを二
軸延伸することが望ましい。
【0041】さらに、本発明の熱液晶ポリエステルは、
他のポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等
のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、
ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレー
ト等のポリエステル樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂
等と積層することも可能であり、共押出し、ドライラミ
ネーション、サンドイッチラミネーションなどによりフ
イルム状、シート状、チューブ状などの積層体とし、さ
らに射出成形、ブロー成形、二軸延伸ブロー成形、真空
成形、圧縮成形などによりカップ状、ボトル状などの積
層体の容器とすることができる。
【0042】本発明の熱液晶ポリエステルは従来の熱液
晶ポリマーと比較して飛躍的に改善された成形性を有し
ており、延伸も可能であり、とりわけ比較的低い温度で
の成形と延伸が可能である。しかも得られるフイルムは
力学物性の異方性が小さく、かつ高い弾性率を有する。
【0043】さらに、本発明の熱液晶ポリマーは、繊
維、コーティング剤等として利用することができ、また
従来の熱液晶ポリマーと比較して特異的に優れた低温流
動性を利用して、接着剤などとして用いることも可能で
ある。
【0044】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明す
る。本実施例中の物性値の測定は次の方法に従った。
【0045】1) 対数粘度(η↓inh) ペンタフルオロフェノール溶媒を用いて0.1g/dl
の濃度で60℃で測定した。
【0046】 η↓inh=〔ln(t↓1/t↓0)〕/c
【0047】〔式中、η↓inhは対数粘度(dl/
g)を表し、t↓0は溶媒の流下時間(秒)を表し、t
↓1は試料溶液での流下時間(秒)を表し、cは溶液中
の試料の濃度(0.1g/dl)を表す。〕
【0048】2) 熱分析 示差走査熱量計(DSC;メトラー社製、TA−300
0型)を用いて、溶融状態から急冷した試料に対し、1
0℃/分の昇温速度にて融点およびガラス転移点を測定
した。
【0049】3) 延伸性 温度260〜290℃で厚さ約350μmの熱プレスフ
イルムを作製し、このフイルムを柴山科学器械製作所製
二軸延伸装置を用いて100〜250℃の温度で3×3
倍の二軸延伸に付した。尚、延伸性の評価に関しては、
厚みむらの少ない均一な二軸延伸フイルムが得られたも
のを「良好」、延伸性が全く認められず、フイルムが破
断したものを「延伸不可」と評価した。
【0050】4) 延伸フイルムの引張り試験 島津製作所製オートグラフを用いて引張り速度1mm/
分、20℃にて3×3倍に二軸延伸して得られた延伸フ
イルムの縦方向および横方向の引張り弾性率を測定し
た。
【0051】5) ポリマー組成 得られたポリマーをトリフルオロ酢酸溶液とし、500
MHz ↑1H−NMR(日本電子製、JNM GX−
500型)にて測定した。尚、本測定の結果、実施例お
よび比較例でそれぞれ得られた熱液晶ポリエステルの構
成単位の組成は、いずれの場合も仕込み原料組成と分析
精度内で一致していることが確認された。
【0052】合成例1(原料ポリエステルAの合成) テレフタル酸ジメチル1290g(6.65モル)、ア
ジピン酸ジメチル61g(0.35モル)、エチレング
リコール977g(15.75モル)およびチタニウム
テトライソプロボキシド0.24gを攪拌機、蒸留塔お
よび窒素ガス吹き込み口を備えた内容積81の反応器に
仕込み、反応系内を3回窒素置換したのち窒素気流下1
40℃〜240℃まで約3時間かけて徐々に昇温し、理
論量の99%以上のメタノールを留去した。引き続き反
応系内を280℃まで昇温し、0.5mmHg以下の高
真空下で約2時間重縮合せしめたのち生成したポリエス
テルを取り出した。本ポリエステルの、フェノール/テ
トラクロロエタン等重量混合溶媒を用いて30℃で測定
した極限粘度は0.55dl/gであった。
【0053】合成例2(原料ポリエステルBの合成) 合成例1において、アジピン酸ジメチルの代わりにアゼ
ライン酸ジメチル76g(0.35モル)を用いた以外
は合成例1と同様にしてポリエステルを得た。本ポリエ
ステルの、フェノール/テトラクロロエタン等重量混合
溶媒を用いて30℃で測定した極限粘度は0.59dl
/gであった。
【0054】合成例3(原料ポリエステルCの合成) 合成例1において、テレフタル酸ジメチルの代わりに
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル1623g
(6.65モル)を用いた以外は合成例1と同様にして
ポリエステルを得た。本ポリエステルの、フェノール/
テトラクロロエタン等重量混合溶媒を用いて30℃で測
定した極限粘度は0.61dl/gであった。
【0055】合成例4(原料ポリエステルDの合成) 合成例1において、アジピン酸ジメチルの代わりにイソ
フタル酸ジメチル68g(0.35モル)を用いた以外
は合成例1と同様にしてポリエステルを得た。本ポリエ
ステルの、フェノール/テトラクロロエタン等重量混合
溶媒を用いて30℃で測定した極限粘度は0.66dl
/gであった。
【0056】実施例1 合成例1で合成した原料ポリエステルA573g(3.
0モル)および4−アセトキシ安息香酸1260g
(7.0モル)を、攪拌機、蒸留塔および窒素ガス吹き
込み口を備えた内容積81の反応器に仕込み、反応系内
を3回窒素置換したのち窒素気流下280℃にて1時間
攪拌加熱し、その後徐々に系内を減圧にして約30mm
Hgで約2時間反応させた。本操作の結果、理論留出酢
酸量の約90%が留出した。次いで反応系内の真空度を
さらに上昇させ、1mmHg以下で5時間反応させたの
ち生成ポリエステルを取り出した。
【0057】得られたポリマーをトリフルオロ酢酸に溶
解させ↑1H−NMRスペクトルを測定した結果、本ポ
リマーの各構成単位のモル%は、構成単位(1)/構成
単位(2)/構成単位(3)/構成単位(4)の順で2
1.9モル%/1.2モル%/23.1モル%/53.
8モル%であり、仕込みの原料組成比と実質的に同一で
あることが判明した。得られたポリマーの微小片をリン
カム(Linkam)社製、顕微鏡用加熱装置TH−6
00内で窒素雰囲気下、10℃/分の速度で昇温し、偏
光顕微鏡直交ニコル下で観察したところ、110℃付近
から光を透過し始め、その後昇温に伴って透過光量はさ
らに増大し、最終的に350℃まで昇温しても光学的に
異方性の溶融相を形成したままであった。また、本ポリ
マーを溶融状態から急冷した試料を10℃/分の昇温速
度でDSCで分析した結果、71℃にガラス転移点が観
測された以外、吸熱ピークは全く観測されなかった。さ
らに本ポリマーを溶融状態から急冷した試料の結晶化度
をX線広角散乱で測定した結果、結晶化度は8%であっ
た。
【0058】次に、本ポリマーを280℃で溶融熱プレ
スしたのち水冷式冷却プレスで急冷することにより得ら
れた厚み約350μmのフイルムを、柴山科学器械製作
所製二軸延伸装置を用いて130℃で3×3倍の同時二
軸延伸に付した結果、厚み約40μmの均一なフイルム
が得られた。
【0059】本ポリマーの対数粘度、プレスフイルムの
延伸性(3×3倍同時二軸延伸)の評価結果および延伸
フイルムの引張り試験結果を表1に示す。
【0060】実施例2 実施例1において、原料ポリエステルAの代わりに合成
例2で合成した原料ポリエステルB(3.0モル)を用
いた以外は実施例1と同様にしてポリエステルを得た。
得られたポリエステルの各構成単位のモル%は、構成単
位(1)/構成単位(2)/構成単位(3)/構成単位
(4)の順で22.0モル%/1.1モル%/23.3
モル%/53.6モル%であった。本ポリマーを、実施
例1で用いた装置により偏光顕微鏡直交ニコル下で観察
したところ、100℃付近から光を透過し始め、その後
昇温に伴って透過光量はさらに増大し、最終的に350
℃まで昇温しても光学的に異方性の溶融相を形成したま
まであった。また、本ポリマーを溶融状態から急冷した
試料を10℃/分の昇温速度でDSCで分析した結果、
68℃にガラス転移点が観測された以外、吸熱ピークは
全く観測されなかった。さらに本ポリマーを溶融状態か
ら急冷した試料の結晶化度をX線広角散乱で測定した結
果、結晶化度は7%であった。
【0061】本ポリマーの対数粘度、プレスフイルムの
延伸性(3×3倍同時二軸延伸)の評価結果および延伸
フイルムの引張り試験結果を表1に示す。
【0062】実施例3 実施例1において、原料ポリエステルAの代わりに合成
例3で合成した原料ポリエステルC(3.0モル)を用
いた以外は実施例1と同様にしてポリエステルを得た。
得られたポリエステルの各構成単位のモル%は、構成単
位(1)/構成単位(2)/構成単位(3)/構成単位
(4)の順で22.2モル%/1.2モル%/23.4
モル%/53.2モル%であった。本ポリマーを、実施
例1で用いた装置により偏光顕微鏡直交ニコル下で観察
したところ、80℃付近から光を透過し始め、その後昇
温に伴って透過光量はさらに増大し、最終的に350℃
まで昇温しても光学的に異方性の溶融相を形成したまま
であった。また、本ポリマーを溶融状態から急冷した試
料を10℃/分の昇温速度でDSCで分析した結果、7
3℃にガラス転移点が観測された以外、吸熱ピークは全
く観測されなかった。さらに本ポリマーを溶融状態から
急冷した試料の結晶化度をX線広角散乱で測定した結
果、結晶化度は10%であった。
【0063】本ポリマーの対数粘度、プレスフイルムの
延伸性(3×3倍同時二軸延伸)の評価結果および延伸
フイルムの引張り試験結果を表1に示す。
【0064】実施例4 4−ヒドロキシ安息香酸1104g(8.0モル)、無
水酢酸918g(9.0モル)および原料ポリエステル
A382g(2.0モル)を、攪拌機、蒸留塔および窒
素ガス吹き込み口を備えた内容積81の反応器に仕込
み、反応系内を3回窒素置換したのち窒素気流下、還流
条件下で約2時間攪拌加熱した。その後、約3時間かけ
て290℃まで昇温した後、徐々に系内を減圧にして約
30mmHgで約2時間反応させた結果、理論留出量の
約95%の酢酸および無水酢酸が留出した。次に反応系
内の真空度をさらに上昇させ、1mmHg以下で1時間
反応させたのち生成ポリエステルを取り出した。
【0065】得られたポリエステルの各構成単位のモル
%は、構成単位(1)/構成単位(2)/構成単位
(3)/構成単位(4)の順で15.9モル%/0.8
モル%/16.9モル%/66.4モル%であった。本
ポリマーを、実施例1で用いた装置により偏光顕微鏡直
交ニコル下で観察したところ、80℃付近から光を透過
し始め、その後昇温に伴って透過光量はさらに増大し、
最終的に350℃まで昇温しても光学的に異方性の溶融
相を形成したままであった。また、本ポリマーを溶融状
態から急冷した試料を10℃/分の昇温速度でDSCで
分析した結果、75℃にガラス転移点が観測された以外
は吸熱ピークは全く観測されなかった。さらに本ポリマ
ーを溶融状態から急冷した試料の結晶化度をX線広角散
乱で測定した結果、結晶化度は9%であった。
【0066】本ポリマーの対数粘度、プレスフイルムの
延伸性(3×3倍同時二軸延伸)の評価結果および延伸
フイルムの引張り試験結果を表1に示す。
【0067】比較例1 実施例1において、原料ポリエステルAの代わりに合成
例4で合成した原料ポリエステルD(3.0モル)を用
いた以外は実施例1と同様にしてポリエステルを得た。
得られたポリエステルの各構成単位のモル%は、構成単
位(1)/イソフタロイル単位/構成単位(3)/構成
単位(4)の順で22.1モル%/1.2モル%/2
3.4モル%/53.3モル%であった。本ポリマー
を、実施例1で用いた装置により偏光顕微鏡直交ニコル
下で観察したところ、150℃付近から光を透過し始
め、その後昇温に伴って透過光量はさらに増大し、最終
的に350℃まで昇温しても光学的に異方性の溶融相を
形成したままであった。また、本ポリマーを溶融状態か
ら急冷した試料を10℃/分の昇温速度でDSCで分析
した結果、72℃にガラス転移点が観測された以外、吸
熱ピークは全く観測されなかった。さらに本ポリマーを
溶融状態から急冷した試料の結晶化度をX線広角散乱で
測定した結果、結晶化度は14%であった。次に、本ポ
リマーを280℃で溶融熱プレスしたのち水冷式冷却プ
レスで急冷し、厚み約350μmのフイルムを作製し
た。このフイルムに対して、柴山科学器械製作所製二軸
延伸装置を用いて100℃〜150℃の温度範囲で3×
3倍の同時二軸延伸を試みたが、いずれの温度において
も延伸性は全く認められず、すべてフイルムが破断し
た。
【0068】本ポリマーの対数粘度、プレスフイルムの
延伸性(3×3倍同時二軸延伸)の評価結果および延伸
フイルムの引張り試験結果を表1に示す。
【0069】比較例2 実施例1において、原料ポリエステルA/4−アセトキ
シ安息香酸のモル比を40/60にした以外は実施例1
と同様にしてポリエステルを得た。得られたポリエステ
ルの各構成単位のモル%は、構成単位(1)/構成単位
(2)/構成単位(3)/構成単位(4)の順で27.
1モル%/1.5モル%/28.4モル%/43.0モ
ル%であった。本ポリマーを、実施例1で用いた装置に
より偏光顕微鏡直交ニコル下で観察したが、350℃以
下のいかなる温度においても光学的に異方性の溶融相を
形成しなかった。また、本ポリマーを溶融状態から急冷
した試料を10℃/分の昇温速度でDSCで分析した結
果、75℃にガラス転移点が観測された以外、吸熱ピー
クは全く観測されなかった。さらに本ポリマーを溶融状
態から急冷した試料の結晶化度をX線広角散乱で測定し
た結果、結晶化度は7%であった。
【0070】本ポリマーの対数粘度、プレスフイルムの
延伸性(3×3倍同時二軸延伸)の評価結果および延伸
フイルムの引張り試験結果を表1に示す。
【0071】比較例3 実施例1において、原料ポリエステルAの代わりに、フ
ェノール/テトラクロロエタン等重量混合溶媒を用いて
30℃で測定した極限粘度が0.65dl/gのポリエ
チレンテレフタレート(3.0モル)を用いた以外は実
施例1と同様にしてポリエステルを得た。得られたポリ
エステルの各構成単位のモル%は、構成単位(1)/構
成単位(3)/構成単位(4)の順で23.0モル%/
23.2モル%/53.8モル%であった。本ポリマー
を、実施例1で用いた装置により偏光顕微鏡直交ニコル
下で観察したところ、210℃付近から光を透過し始
め、その後昇温に伴って透過光量はさらに増大し、最終
的に350℃まで昇温しても光学的に異方性の溶融相を
形成したままであった。また、本ポリマーを溶融状態か
ら急冷した試料を10℃/分の昇温速度でDSCで分析
した結果、ガラス転移点は明確には観測されず、215
℃に吸熱ピークが観測されたのみであった。さらに本ポ
リマーを溶融状態から急冷した試料の結晶化度をX線広
角散乱で測定した結果、結晶化度は27%であった。次
に、本ポリマーを280℃で溶融熱プレスしたのち水冷
式冷却プレスで急冷し、厚み約350μmのフイルムを
作製した。このフイルムに対して、柴山科学器械製作所
製二軸延伸装置を用いて100℃〜210℃の温度範囲
で3×3倍の同時二軸延伸を試みたが、いずれの温度に
おいても延伸性は全く認められず、すべてフイルムが破
断した。
【0072】本ポリマーの対数粘度、プレスフイルムの
延伸性(3×3倍同時二軸延伸)の評価結果および延伸
フイルムの引張り試験結果を表1に示す。
【0073】比較例4 実施例1において、原料ポリエステルAの代わりに、フ
ェノール/テトラクロロエタン等重量混合溶媒を用いて
30℃で測定した極限粘度が0.60dl/gのポリエ
チレンナフタレート(3.0モル)を用い、重合温度を
290℃に変更した以外は比較例2と同様にしてポリエ
ステルを得た。得られたポリエステルの各構成単位のモ
ル%は、構成単位(1)/構成単位(3)/構成単位
(4)の順で23.4モル%/23.3モル%/53.
3モル%であった。本ポリマーを、実施例1で用いた装
置により偏光顕微鏡直交ニコル下で観察したところ、2
60℃付近から光を透過し始め、その後昇温に伴って透
過光量はさらに増大し、最終的に350℃まで昇温して
も光学的に異方性の溶融相を形成したままであった。ま
た、本ポリマーを溶融状態から急冷した試料を10℃/
分の昇温速度でDSCで分析した結果、ガラス転移点は
観測されず、264℃に吸熱ピークが観測されたのみで
あった。さらに本ポリマーを溶融状態から急冷した試料
の結晶化度をX線広角散乱で測定した結果、結晶化度は
29%であった。次に、本ポリマーを290℃で溶融熱
プレスしたのち水冷式冷却プレスで急冷し、厚み約35
0μmのフイルムを作製した。このフイルムに対して、
柴山科学器械製作所製二軸延伸装置を用いて100℃〜
250℃の温度範囲で3×3倍の同時二軸延伸を試みた
が、いずれの温度においても延伸性は全く認められず、
すべてフイルムが破断した。
【0074】本ポリマーの対数粘度、プレスフイルムの
延伸性(3×3倍同時二軸延伸)の評価結果および延伸
フイルムの引張り試験結果を表1に示す。
【0075】比較例5 テレフタル酸166g(1.0モル)、レゾルシノール
ジアセテート100g(0.52モル)、およびメチル
ハイドロキノンジアセテート104g(0.5モル)
を、攪拌機、蒸留塔および窒素ガス吹き込み口を備えた
反応器に仕込み、反応系内を3回窒素置換したのち窒素
気流下攪拌しながら5時間かけて200℃〜320℃に
昇温し、理論留出酢酸量の約90%を留出させた。その
後、反応系内の真空度をさらに上昇させ、1mmHg以
下で1時間反応させたのち生成したポリマーを取り出し
【0076】本ポリマーを、実施例1で用いた装置によ
り偏光顕微鏡直交ニコル下で観察したところ、200℃
付近から光を透過し始め、その後昇温に伴って透過光量
はさらに増大し、最終的に350℃まで昇温しても光学
的に異方性の溶融相を形成したままであった。また、本
ポリマーを溶融状態から急冷した試料を10℃/分の昇
温速度でDSCで分析した結果、127℃にガラス転移
点、200℃に吸熱ピークが観測された。さらに本ポリ
マーを溶融状態から急冷した試料の結晶化度をX線広角
散乱で測定した結果、結晶化度は10%であった。次
に、本ポリマーを290℃で溶融熱プレスしたのち水冷
式冷却プレスで急冷し、厚み約350μmのフイルムを
作製した。このフイルムに対して、柴山科学器械製作所
製二軸延伸装置を用いて130℃〜190℃の温度範囲
で3×3倍の同時二軸延伸を試みたが、いずれの温度に
おいても延伸性は全く認められず、すベてフイルムが破
断した。
【0077】本ポリマーの対数粘度、プレスフイルムの
延伸性(3×3倍同時二軸延伸)の評価結果および延伸
フイルムの引張り試験結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【発明の効果】本発明の熱液晶ポリエステルは優れた低
温成形性および低温延伸性を有しており、得られた延伸
フイルムは力学物性の異方性が小さく、かつ高い弾性率
を有する。従って本発明の熱液晶ポリエステルは、オー
ディオテープ、ビデオテープ、フロッピーディスク等の
磁気記録材料や熱転写記録媒体用ベースフイルム、重包
装用フイルム等の高い弾性率が要求されるフイルムの素
材として有用である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的に下記化1 【化1】 (化1中Arは1,4−フェニレン基または2,6−ナ
    フチレン基を表す。)で示される構成単位(1)、下記
    化2 【化2】 (化2中Rは炭素数2〜10の2価の脂肪族基を表
    す。)で示される構成単位(2)、下記化3 【化3】 で示される構成単位(3)および下記化4 【化4】 で示される構成単位(4)からなり、構成単位(1)お
    よび構成単位(2)のモル数の和と構成単位(3)のモ
    ル数が実質的に等しく、構成単位(1)、構成単位
    (2)および構成単位(3)の合計量が20〜75モル
    %、構成単位(4)の量が25〜80モル%であり、か
    つ構成単位(2)の量が0.1〜10モル%である熱液
    晶ポリエステル。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の熱液晶ポリエステルか
    らなるフイルム。
JP29671191A 1991-08-01 1991-08-01 熱液晶ポリエステルおよびそれからなるフイルム Pending JPH0532771A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29671191A JPH0532771A (ja) 1991-08-01 1991-08-01 熱液晶ポリエステルおよびそれからなるフイルム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29671191A JPH0532771A (ja) 1991-08-01 1991-08-01 熱液晶ポリエステルおよびそれからなるフイルム

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH0532771A true JPH0532771A (ja) 1993-02-09

Family

ID=17837100

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP29671191A Pending JPH0532771A (ja) 1991-08-01 1991-08-01 熱液晶ポリエステルおよびそれからなるフイルム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0532771A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100676008B1 (ko) 신규한 액정 중합체
US5326848A (en) Thermotropic liquid crystal polyester
JP2001200034A (ja) 伸縮自在なポリマーを製造するための組成物および方法ならびにそれらによって製造される造形物品
US5093025A (en) Cholesteric liquid crystal polyester containing optically active group
JPH0433291B2 (ja)
JPH04494B2 (ja)
KR100846028B1 (ko) 연신가능한 액정 중합체 조성물
EP0218369B1 (en) Cholesteric liquid crystal copolyesters
JP3178737B2 (ja) ポリエステルフィルム
JP2001226471A (ja) 高度な伸縮性を有する非晶質異方性溶融体形成ポリマーを製造するための方法およびそれによって製造されるポリマー
EP0466085B1 (en) Thermotropic liquid crystal polyester
JPS636021A (ja) コレステリック液晶性ポリエステルの製造法
JPH0532771A (ja) 熱液晶ポリエステルおよびそれからなるフイルム
JP3185988B2 (ja) 熱液晶ポリエステルおよびそれからなる成形品
JP3119453B2 (ja) 熱液晶ポリエステルおよびそれからなる成形品
JPH05186578A (ja) 熱液晶ポリエステルの製造方法
JP3147315B2 (ja) 熱液晶ポリエステルおよびそれからなる成形品
JPH03126718A (ja) 芳香族ポリエステル
JPH05186575A (ja) 熱液晶ポリエステルおよびそれからなる成形品
JPH055028A (ja) ガスバリヤー性容器
JPH05186671A (ja) 熱液晶ポリエステル組成物
JP3089685B2 (ja) 共重合ポリエステルの製造方法
JPS63146927A (ja) 芳香族コポリエステルアミド
JPH05186577A (ja) 熱液晶ポリエステルおよびその製造方法
JPH06157735A (ja) 新規ポリエステルおよびその繊維