JPH0528331Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の目的〕 （産業上の利用分野） 本考案は吸気通路を開閉制御する２サイクルエ
ンジンのリードバルブ装置に関する。

（従来の技術） ２サイクルエンジンには、吸気通路の開閉をリ
ードバルブ装置によつて制御するものがある。吸
気通路はシリンダに繋るクランク室に開通され、
その下流端に、クランク室側に面した額縁状のバ
ルブシートがＶ字状に組み合されて設置される。
各バルブシートいはリードバルブの一端が固定さ
れ、リードバルブは周縁が弾接されて吸気通路を
塞ぐように備えられる。

このようなリードバルブ装置においては、ピス
トンが上昇するとクランク室が負圧になり、リー
ドバルブの自由端が押し開かれて吸気がクランク
室に吸入される。一方、ピストンが下降するとク
ランク室内は正圧に変り、リードバルブが元に復
して吸気通路を塞ぎ、クランク室内の吸気は圧縮
される。

このようにリードバルブ装置は、ピストンの上
下運動に応動して吸気通路を開閉制御し、吸気効
率すなわちエンジン出力性能を大きく左右する重
要な作用を有するので、応答性や吸入抵抗等を考
慮して、大きさ、形状、姿勢、材質等が設定され
る。

（考案が解決しようとする問題点） リードバルブはピストンの移動サイクルに順応
してエンジンの吸気時のみ開くように動作しなけ
ればなららない。そのため、従来は第４図に示す
ようにリードバルブ１の先端から固定側方向に切
欠き２が形成され、切欠き２によつて仕切られた
各バルブエレメント３の厚さを変更することによ
り、各バルブエレメント３のばね定数、固有振動
数を変え、ピストンの低速域から高速域に至るま
での広い範囲に亘つてリードバルブ１の開閉が追
従できるようにしている。

第５図はバルブエレメント３の厚さを0.4mmと
0.5mmの２つに分けた場合のエンジン回転数と出
力の関係を示す特性図である。この図から解るよ
うに薄い方のバルブエレメント３はピストンの低
速域におけるバルブ開閉動作に追従し、厚い方の
バルブエレメント３は高速域のバルブ開閉に追従
し、総合的にエンジンの出力が上昇している。

しかしながら、従来のリードバルブ装置におい
ては、リードバルブ１の各バルブエレメント３の
厚さがそれぞれ異なるため、製造工程が煩雑とな
る。そのため、簡易な形状を備えたリードバルブ
１により高出力を得ることができるようなリード
バルブ装置が求められている。

本考案は上記の事情を考慮してなされたもの
で、リードバルブの各リードの厚さを変えること
なく、ピストンの低速域から高速域に至るまでの
広い範囲に亘つて高い出力を得ることができる２
サイクルエンジンのリードバルブ装置を提供する
ことを目的とする。

〔考案の構成〕

（問題点を解決するための手段） 本考案に係る２サイクルエンジンのリードバル
ブ装置は、クランク室に通じる吸気通路を横切つ
てバルブシートが配設され、このバルブシートに
リードバルブの一端が固定され、このリードバル
ブは先端から固定側方向に切欠きが形成された２
サイクルエンジンのリードバルブ装置において、
上記リードバルブは先端から固定部分までの長さ
のほぼ1/3の長さの切欠きが形成されたものであ
る。

（作用） リードバルブに先端から固定部分までの長さの
１／３の長さの切欠きが形成されたから、リードバ
ルブの各リードの厚さを変えることなく、ピスト
ンの低速域から高速域に至るまでの広い範囲に亘
つて高い出力を得ることができる。

（実施例） 以下、本考案の実施例を図面を用いて説明す
る。

第１図において、クランク室５に通じる吸気通
路６の下流端にＶ字面によつて吸気通路６を塞ぐ
ように形成したバルブハウジング７が介装され
る。バルブハウジング７のＶ字両面にはそれぞれ
複数の通孔８が並列し、その通孔８周りに複数の
額縁状バルブシート９が設けられる。各バルブシ
ート９のそれぞれクランク室５側、シリンダ室１
０側にはリードバルブ１１が配設され、各リード
バルブの上流端がビス１２によりバルブシート９
に固定される。リードバルブ１１は図示しないピ
ストンが下降するときに、クランク室５が正圧に
なることから、その周縁部が弾接して吸気通路６
を塞ぐようにバルブシート９に密着し、ピストン
が上昇するときに、クランク室５が負圧となるこ
により、符号１１′のように、その周縁部が開い
て、吸気通路６からクランク室５へ吸気するよう
になつている。

リードバルブ１１は、一様の厚さを有し、第２
図に示すように、先端から固定部分までの長さｌ
に対し、先端から固定側方向にほぼ1/3ｌの長さ
の切欠き１５が形成される。切欠き１５によつて
分割された各バルブエレメント１６は、同一の厚
さを有する。

第３図は上記実施例のリードバルブ装置を備え
たエンジンの回転数と出力との関係を示す特性図
である。この図はリードバルブ１１の厚さを0.35
mmとした場合の特性を示しており、従来のように
厚さを0.4mmと0.5mmに分けた場合に比較してエン
ジンの低回転域から高回転域に至る広い範囲に亘
つて、高い出力を得られることがわかる。

一般に、リードバルブの板厚とエンジン出力特
性との関係は、例えば第５図のように表わされ
る。リードバルブの板厚が薄いとバネ定数が下が
り、吸気流速の遅いエンジン低速時にもリードバ
ルブが容易に開き、吸気量不足を防止でき、エン
ジン低速時における出力アツプとなる。しかし、
このリードバルブをエンジン高速時で使用する
と、高回転域（高振動数）への追従性が悪く、リ
ードバルブの開閉タイミングに遅れが生じ、出力
ダウンの要因となる。

リードバルブは、エンジン低速時にはバネ定数
を下げ、エンジン高速時にバネ定数を上げること
が望ましいが、従来のリードバルブ装置では、リ
ードバルブにスリツトが先端から固定部分までほ
ぼ全長に亘つて入つているため、一様厚さのリー
ドバルブでは高速対応と低速対応の双方に好まし
い特性を得ることが困難である。このため、従来
のリードバルブ装置はリードバルブの各バルブエ
レメントの肉厚を変化させて主に高速対応用と低
速対応用とに区別している。

これに対し、本考案のリードバルブ装置では、
リードバルブ１１に先端から固定部分までの長さ
のほぼ1/3の長さ切欠き１５を形成して、この切
欠きにより各バルブエレメント１６を画成したの
で、従来のリードバルブ装置ではスリツトで分離
していた各バルブエレメント１６の中央部分を相
互に連結し、この中央部分での剛性を高め、バネ
定数を上げて固有振動数を上げ、高速対応とする
とともに、各バルブエレメント（バルブプレー
ト）１６の先端部（自由端部）はスリツトである
切欠き１５により相互に分離させてその部分の剛
性を下げ、低速対応としたものである。

このリードバルブ装置では、低速時にリードバ
ルブ１１のバネ定数が低い各バルブエレメント１
６の先端部分が主として撓み、開閉する。この場
合、リードバルブ１１の開口面積は比較的小さい
が、エンジン低回転では吸気量も少ないので、問
題がない。

また、高速時では、リードバルブ１１は中央部
から固定部分にかけてのバネ定数が高い部分が主
に撓み、高速回転域（高振動数）でのリードバル
ブ１１の追従性を高めている。

このように上記実施例によれば、リードバルブ
１１の板厚を変えることなく、エンジンの低回転
域から高回転域に至る広い範囲に亘つて高い出力
を得ることができる。

〔考案の効果〕

本考案に係る２サイクルエンジンのリードバル
ブ装置は、リードバルブに先端から固定部分まで
の長さの1/3の長さの切欠きが形成され、この切
欠きにより各バルブエレメントが画成されたの
で、リードバルブの中央部分から固定部分に切欠
きが形成されず、この部分の各バルブエレメント
は相互に連結され、この中央部分から固定部分で
剛性を高めバネ定数を大きくして主に高速対応用
とするとともに、各バルブエレメントの先端部分
は切欠きにより相互に分離されて剛性を下げ、バ
ネ定数を小さくして主に低速対応用に設定し、リ
ードバルブの板厚を変えることなく、エンジン低
回転域から高回転域に至る広い範囲に亘つて高い
出力を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る２サイクルエンジンのリ
ードバルブ装置の一実施例を示す構成図、第２図
は上記実施例に備えられるリードバルブを示す構
成図、第３図は上記実施例を備えたエンジンの回
転数と出力との関係を示す特性図、第４図は従来
のリードバルブ装置に備えられるリードバルブを
示す構成図、第５図は従来のリードバルブ装置を
備えたエンジンの回転数と出力の関係を示す特性
図である。 ５……クランク室、６……吸気通路、７……バ
ルブハウジング、９……バルブシート、１０……
シリンダ室、１１，１１′……リードバルブ、１
２……ビス、１５……切欠き、１６……バルブエ
レメント。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クランク室に通じる吸気通路を横切つてバルブ
   シートが配設され、このバルブシートにリードバ
   ルブの一端が固定され、このリードバルブは先端
   から固定側方向に切欠きが形成された２サイクル
   エンジンのリードバルブ装置において、上記リー
   ドバルブは先端から固定部分までの長さのほぼ1/
   ３の長さの切欠が形成され、この切欠きにより各
   バルブエレメントが画成されたことを特徴とする
   ２サイクルエンジンのリードバルブ装置。