JPH05276941A - フラビウイルス科に属するウイルスの表面抗原タンパク質を含む非感染性の構造物粒子の製造方法 - Google Patents

フラビウイルス科に属するウイルスの表面抗原タンパク質を含む非感染性の構造物粒子の製造方法

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JPH05276941A
JPH05276941A JP4043682A JP4368292A JPH05276941A JP H05276941 A JPH05276941 A JP H05276941A JP 4043682 A JP4043682 A JP 4043682A JP 4368292 A JP4368292 A JP 4368292A JP H05276941 A JPH05276941 A JP H05276941A
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virus
protein
infected
flavivirus
cells
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Takanori Sato
隆則 佐藤
Chizuko Takamura
千鶴子 高村
Kanji Yasuda
斡司 安田
Koichi Kamogawa
幸市 鴨川
Kotaro Yasui
孝太郎 保井
Michiko Miyamoto
道子 宮本
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TOKYO MET GOV SHINKEI KAGAKU SOGO KENKYUSHO
Zeon Corp
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TOKYO MET GOV SHINKEI KAGAKU SOGO KENKYUSHO
Nippon Zeon Co Ltd
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    • Y02ATECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
    • Y02A50/00TECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE in human health protection, e.g. against extreme weather
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 日本脳炎の生ワクチンを大量製造する方法
を提供。 【構成】 フラビウイルス科に属するウイルスを予め
感染させた細胞にフラビウイルス科に属するウイルス由
来のprM(M)タンパク質の実質的に全部と表面抗原
タンパク質を実質的に全部をコードするcDNAを組み
込んだ組み換えワクチニアウイルスを感染させ、培養す
ることにより大量に非感染性の構造物粒子をうる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、予めフラビウイルス科
に属するウイルスを感染させた細胞にフラビウイルス科
に属するウイルス由来のprM(M)タンパク質と表面
抗原タンパク質(以下Eタンパク質という)をコードす
るcDNAを組み込んだ組み換えワクチニアウイルスを
感染させ、培養上清からフラビウイルス科に属するウイ
ルスのEタンパク質を含む非感染性の構造物粒子を単離
することを特徴とする非感染性の構造物粒子、好ましく
は沈降係数が100S以下である非感染性の構造物粒子
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在フラビウイルスのワクチンとしては
黄熱病ウイルスの弱毒生ワクチン、不活化日本脳炎ウイ
ルスを有効成分とするワクチンが実用化されているが、
より安全で効果的なワクチンが求められている。例えば
現行の日本脳炎ワクチンは、健康なマウス脳内に日本脳
炎ウイルス北京株を接種し、発症したマウスから脳を無
菌的に採取し、アルコール・プロタミン法により精製、
不活化してワクチン原液を得ている(国立予防衛生研究
所学友会編「日本のワクチン」改訂2版、昭和52年1
月20日丸善株式会社発行)。
【0003】このようなワクチンの製造法においては、
大量の日本脳炎ウイルスそのものを取り扱うわけで、ワ
クチン製造担当者にとっては危険性が極めて高い上、製
造コストも高かった。
【0004】フラビウイルスは、一本鎖RNAをゲノム
(ウイルスの遺伝情報を担う本体)としたウイルスであ
る。このRNAをもとに翻訳された一本のポリペプチド
が感染細胞内において、シグナラーゼやプロテアーゼに
よって切断され10個のタンパク質となることが知られ
ている。10個のタンパク質とは、順にC、PrM
(M)、E、NS1、NS2A、NS2B、NS3、N
S4A、NS4B、NS5である(Annu.Rev.
Microbiol,44、649−688(199
0))。これらのタンパク質のうちprM(M)は、p
reMとMに分けて表現されることもある。
【0005】フラビウイルス感染培養細胞や乳のみマウ
ス脳に感染したフラビウイルスは子孫ウイルス以外に非
感染性へマグルチニン(以下SHAと略す)粒子を細胞
外に放出する。
【0006】ワクチンは、ウイルスそのもの以外に、ウ
イルスの抗原性を有する抗原タンパク質を用いて製造す
ることもできる。このような観点から、組み換えDNA
技術によって原核細胞や真核細胞を用いて抗原タンパク
質を製造する方法が検討されている。特にワクチニアウ
イルスやバキュロウイルスをベクターとして作製した組
み換えウイルスは、正しくプロセスされた抗原性のよい
Eタンパク質を発現することを我々は見い出した(特開
昭64−74982、特開平1−285198)。
【0007】Eタンパク質はヘマグルチニン活性を示す
タンパク質であり、前述のSHA粒子はヘマグルチニン
活性を示すことから、この粒子がEタンパク質を有する
ことがわかる。このSHA粒子は、フラビウイルスが培
養細胞や乳のみマウス脳に感染すると、感染細胞から子
孫ウイルスと共に放出される非感染性の粒子であり、そ
の直径は14nmのリング状あるいはドーナツ状の形状を
示し、そしの沈降係数は70Sである(“The To
ga Viruses”pp503−529、R.W.
Schlesinger編、Acadenic Pre
ss.,Inc.など)。
【0008】このようなSHA粒子を有効成分としたワ
クチンは、ウイルスと類似の構造を有するために、高い
抗原性を有することが期待される。
【0009】前述の組み換えワクチニアウイルスや組み
換えバキュロウイルスを用いたEタンパク質の製造方法
において、フラビウイルス科に属するウイルスのEタン
パク質からなる構造物粒子が、組み換えウイルス感染細
胞培養上清にごく少量放出される。しかし、ほとんどの
構造物粒子は、組み換えウイルス感染細胞に内包されて
しまい、多量の粒子を得るためには抽出・精製という工
程を必要とし、操作が煩雑である。
【0010】この構造物粒子は、SHA粒子と同様にヘ
マグルチニン活性を有し、非感染性であるが、SHA粒
子そのものであるか否かは、SHA粒子の同定方法が確
定していない現在では、不明である。そこで、本願で
は、SHA粒子と同様の性質を示す粒子を総称してSH
A様粒子と表現する。もちろん、SHA様粒子の中には
SHA粒子も含まれる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者らは、
かかる従来技術や知見の下で、組み換えワクチニアウイ
ルス感染細胞の培養上清にフラビウイルス科に属するウ
イルスのEタンパク質を大量に産生させる方法の開発を
目指して鋭意検討を進めた結果、フラビウイルスのpr
M(M)とEタンパク質をコードするcDNAを組み込
んだ組み換えワクチニアウイルスを予めフラビウイルス
を感染させた細胞に重感染させると、その培養上清に多
量の本質的にフラビウイルス科に属するウイルスのEタ
ンパク質を含む非感染性の構造物粒子、好ましくはEタ
ンパク質を構成タンパク質のひとつとする沈降係数10
0S以下の粒子を産生することを見い出し、本発明を完
成させるに至った。
【0012】
【課題を解決するための手段】かくして本発明によれ
ば、フラビウイルス科に属するウイルスを予め感染させ
た細胞に、フラビウイルスのprM(M)、Eタンパク
質をコードするcDNAを組み込んだ組み換えワクチニ
アウイルスを感染させて培養し、その培養上清から超遠
心分離によって本質的にフラビウイルス科に属するウイ
ルスのEタンパク質を含む非感染性の構造物粒子、好ま
しくは沈降係数100以下の非感染性の構造物粒子を製
造する方法が提供される。
【0013】本発明において組み換えワクチニアウイル
スの作製に供されるウイルスはワクチニアウイルスに分
類されるウイルスであればいかなるものでもよく、例え
ばWR株(Journal of Virology
49,p.857(1984))、リスター株、リスタ
ー株の温度感受性変異株(米国特許第4,567,14
7号、特開昭62−44178号参照)、New Yo
rk Board of Health株、LC16m
8株などの種痘ワクチン株)などが例示される。
【0014】これらのウイルスの中でも孵化鶏卵しょう
尿膜上でのポックスサイズが3mm以下でかつウサギ腎臓
細胞での増殖不能温度が41℃以下のものが好適であ
り、その具体例としては前記特開昭62−44178号
記載の弱毒痘そう株LA株および、LB株(CNTM−
1−423)、前記LC16m8株などが弱毒性であり
安全性の面で有利である。
【0015】また、本発明においてワクチニアウイルス
に組み込まれるcDNAは、少なくともフラビウイルス
に属するウイルスのprM(M)タンパク質、およびE
タンパク質の実質的に全部をコードするcDNAであれ
ば特に限定されず、このようなcDNAは、公知の技術
(“Molecular Cloning”T.Man
iatisら編、Cold Spring Harbo
r Loboratory Press,(198
9))を用いて調製することができる。
【0016】また、cDNAの由来となるフラビウイル
スは、フラビウイルス科に属するウイルスの中から任意
に選択することができるが、その具体例として、日本脳
炎ウイルス、デングウイルス、ウエストナイルウイルス
などが挙げられる。
【0017】例えば日本脳炎ウイルスSagayama
株(米国コネチカット州のエール大学アーボウイルスリ
サーチユニット)から調製されたcDNA5037は特
開昭64−74982号の実施例で開示されているが、
本発明においては上記cDNAと実質的に同一の機能を
有する範囲において、修飾されたcDNA(即ち、塩基
配列が置換、挿入、欠失したもの)であってもよい。も
ちろん、実質的に同一の機能を有するかぎり、アミノ酸
配列が異なる程度に修飾されたものであってもよい。
【0018】フラビウイルス科に属するウイルスのpr
M(M)タンパク質とEタンパク質をコードするcDN
Aを組み込んだ組み換えワクチニアウイルスの作製方法
は特に限定されないが、例えば、以下の方法によって作
製することができる。
【0019】まずワクチニアウイルスの増殖に非必須な
DNA領域が組み込まれた、さらにそのDNA領域にフ
ラビウイルスのタンパク質をコードするcDNAが挿入
された第一の組み換えベクターが作製される。第一の組
み換えベクターの具体例としては、例えば日本脳炎ウイ
ルスのcDNAが挿入された特開昭64−74982号
の実施例で開示されたプラスミドpAKJ6が例示され
る。
【0020】次いで第一の組み換えベクターに、ワクチ
ニアウイルスで作用するプロモーターをフラビウイルス
科に属するウイルスのprM(M)タンパク質とEタン
パク質をコードする。cDNAの前に挿入した第二の組
み換えベクターが作製される。
【0021】プロモーターは、挿入されるcDNAの転
写を調節するために有効である。ワクチニアウイルスが
本来有するプロモーターの支配下に、フラビウイルスに
属するウイルスのprM(M)タンパク質をコードする
cDNAとEタンパク質をコードするcDNAが組み込
めれば、特にプロモーターを組み込む必要はない。しか
し、それ以外の場合は、プロモーターをフラビウイルス
に属するウイルスのprM(M)タンパク質とEタンパ
ク質をコードするcDNAと共に組み込むことが好まし
い。
【0022】組み込むプロモーターは、ワクチニアウイ
ルス内で機能する限りにおいて特に限定されないが、好
ましくは7.5Kプロモーターの2倍以上、より好まし
くは10倍以上、特に好ましくは15倍以上の活性を有
するプロモーターである。このようなプロモーターの具
体例としては、J.Mol.Biol.210、771
−784(1982)記載の合成プロモーターや、7.
5Kプロモーターの約20倍の活性を持つ下記の合成プ
ロモーターSL (配列番号1)が挙げられる。
【化1】
【0023】次ぎに、予めワクチニアウイルスを感染さ
せた動物培養細胞に第二の組み換えベクターを移入し、
ベクターDNAとウイルスゲノムDNA間に相同組み換
えを起こさせ、組み換えワクチニアウイルスを作製す
る。組み換えワクチニアウイルスの作製にあたっては常
法(例えば“DNA cloning Vol.IIa
practical approach”pp.19
1−211,D.M.Glover編、IRLプレス、
オックスフォード、ワシントン)の記述に従って実施で
きる。
【0024】すなわちワクチニアウイルスを感染させた
RK13細胞にリン酸カルシウム共沈法により第二の組
み換えベクターを移入させ、得られる組み換えウイルス
を含むウイルス集団をチミジンキナーゼ欠損細胞に感染
させBUdR存在下生育してくるプラークを選択し、組
み換えウイルス候補株とする。これら候補株の中から日
本脳炎ウイルスのcDNAが組み込まれたウイルスを選
択する方法は、該cDNAをプローブとするハイブリダ
イゼーション法を利用してプラーク純化をすれば良い。
【0025】このようにして純化した組み換えワクチニ
アウイルスを細胞、通常哺乳動物細胞に感染させるが、
本発明においては、組み換えワクチニアウイルスを感染
させる前に、この細胞にフラビウイルス科に属するウイ
ルスを感染させる(以下、前感染という)必要がある。
用いるウイルスは、フラビウイルス科に属するウイルス
であれば特に限定されない。具体例としては、デングウ
イルス、日本脳炎ウイルスなどが挙げられるが、前感染
したウイルスの量が少ない方が目的とする構造物粒子の
単離が容易であり、その観点からはウイルスの増殖が遅
いデングウイルスがより好適である。
【0026】培養に用いる哺乳動物細胞は、フラビウイ
ルスおよびワクチニアウイルスが感染する限りにおいて
特に限定されないが、特にサル腎細胞由来樹立培養株V
ero細胞が好ましい。
【0027】前感染所定の時間が経過した後、さらに組
み換えワクチニアウイルスを重感染させ、常法により適
当な条件下で培養させる。前感染から組み換えワクチニ
アウイルスを感染させるまでの時間は、前感染に用いた
ウイルスにより多少異なるが、通常5時間以上経過後、
好ましくは、10〜48時間後、更に好ましくは、20
〜36時間後である。
【0028】前感染せずに組み換えワクチニアウイルス
を感染させたり、前感染から組み換えワクチニアウイル
スの感染までの時間が短すぎると細胞上清中に放出され
るEタンパク質がきわめて少なくなる。また、前感染か
ら組み換えワクチニアウイルスを感染させるまでの時間
が長すぎると前感染させたウイルスの産生量が増加して
目的とする構造物粒子の精製が困難になるという問題を
生じる。
【0029】前感染した細胞に組み換えワクチニアウイ
ルスを感染させた後の細胞の適当な培養条件は、予備実
験により容易に決定できるが、通常は、培地として5%
牛胎児血清を含むイーグルMEMを用い、培養温度は3
7℃で培養することが望ましい。
【0030】そして、適当な培養時間後、培養上清から
超遠心分離などの方法により構造物粒子を回収する。超
遠心分離により得られた沈澱物をさらに密度勾配遠心分
離すれば、フラビウイルスのEタンパク質を含む沈降係
数100S以下の非感染性の構造物粒子、好ましくは沈
降係数約70Sの非感染性の構造物粒子(SHA様粒
子)を得ることができる。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、本質的にフラビウイル
スのEタンパク質を含む非感染性の構造物粒子、好まし
くは沈降係数100S以下の非感染性の構造物粒子、更
に好ましくは沈降係数約70Sの非感染性の構造物粒子
(SHA様粒子)を得ることができる。このような非感
染性の構造物粒子は、ワクチンとして利用できると期待
される。
【0032】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的
に説明する。 (参考例1) プロモーター、および日本脳炎ウイルス
由来prM(M)タンパク質およびEタンパク質をコー
ドするcDNAを組み込んだ組み換えベクター(pAK
J6−SL )の作製
【0033】特開昭64−74982号公報、第24
頁、実施例1(7)3記載のpAKJ6(前述、プロモ
ーターが7.5Kプロモーターであり、日本脳炎ウイル
スのprM(M)、Eタンパク質をコードするcDNA
を含んでいる。)を制限酵素PstIとSalIで処理
し、配列番号1に記載のプロモーターSL を、7.5K
プロモーターの代わりに挿入し、約6.2Kbpのプラ
スミドを得た。このプラスミドをpAKJ6−SL と命
名した。
【0034】このプラスミドに組み込まれた合成プロモ
ーターのプロモーター活性は、7.5Kプロモーターの
約20倍である。
【0035】(参考例2) 組み換えワクチニアウイル
スの作製 25cm2 のカルチャーボトルに培養されたRK−13細
胞に弱毒痘そうウイルス株(特開昭62−44178号
公報記載の弱毒痘そう株LA、ウサギ腎細胞における増
殖不能温度41℃、孵化鶏卵しょう尿膜上でのポックサ
イズ2〜3mm)を0.1p.f.u./細胞の割合で接
種し、45分後、参考例1で得た組み換えプラスミドp
AKJ6−SL を10μgを2.2mlの滅菌水に溶解
し、樋高ら(蛋白・核酸・酵素・27、340(198
5))の方法によってDNA−リン酸カルシウム共沈物
をつくり、その0.5mlを感染RK−13細胞上に滴
下した。30分間、37℃、7%CO2 インキュベータ
ーに静置し、5%牛胎児血清を含むイーグルMEM4.
5mlを加えた。その3時間後、培養液を交換し、48
時間、37℃、7%CO2 インキュベーター内で培養
し、培養細胞ごとに3度凍結融解した。
【0036】組み換え体選択のために、10cmペトリ皿
に培養されたTK−143細胞に上記のウイルス液を接
種し、30分後、1%アガロース、5%牛胎児血清、2
5μg/mlBUdR加イーグルMEMを積層し、3日
間培養後、感染細胞を0.01%中性紅で染色した。出
現したプラークからパスツールピペットでウイルスを抜
取り、これを2%ゼラチンを含むPBSに懸濁し、一部
はドットハイブリダイゼーションをするため、セルロー
スメンブレンにスポットし、残りは−20℃で保存し
た。スポットしたメンブレンは、0.5N水酸化ナトリ
ウムで10分間、1Mトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)
で5分間の処理を3回繰り返したのち、1.5M Na
Cl、0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)で5分
間処理した。2倍SSC(0.15M NaCl、0.
015Mクエン酸ナトリウム)で飽和させ、80℃、2
時間焼き付けた。
【0037】4倍SET(0.6M NaCl、0.0
8Mトリス−塩酸、4mM EDTA、(pH7.8))
−10倍Denhardt−0.1%SDSで68℃、
2時間処理した。4倍SET−10倍Denhardt
−0.1%SDS−0.1%Na4 2 4 −50μg
/ml変性サケ精子DNAとニックトランスレーション
によって32Pで標識した日本脳炎ウイルスのEタンパク
質のcDNAを入れて68℃、14時間ハイブリダイゼ
ーションした。
【0038】洗浄後、メンブレンとX線フィルムを重
ね、オートラジオグラフィーを行い、フィルムが黒化す
るスポットを選択した。黒化したスポットに対応するウ
イルス液を再度TK- 143の細胞に接種し、30分
後、1%アガロース、5%牛胎児血清、25μg/ml
BUdR加イーグルMEMを積層し、3日間培養後、感
染細胞を0.01%中性紅で染色した。
【0039】出現したプラークについて、上記と同様な
操作を行い、出現するプラークがすべて、ドットハイブ
リダイゼーションで黒化するまで純化の操作を繰り返し
た。こうして得られたウイルスは、目的の組み換えワク
チニアウイルスである。この組み換えワクチニアウイル
スをLAJ6−SL と命名した。
【0040】(実施例1) 組み換えワクチニアウイル
スによるEタンパク質の発現と培養上清中のEタンパク
質の測定 ワクチニアウイルスの感染24時間前に、Vero細胞
にデング2型ウイルスをm.o.i.2で予め感染させ
た。
【0041】この前感染させたVero細胞4×106
に、参考例2で得た組み換えワクチニアウイルス(LA
J6−SL )およびLAJ6(参考例1で使用したpA
KJ6から得られる組み換えワクチニアウイルス、特開
昭64−74982号公報、第24〜27頁、実施例1
(8)参照)をm.o.i.2で感染させ18時間培養
した。
【0042】これらの培養上清をポアサイズ0.2μm
のフィルターで濾過し、150,000×g、2時間の
超遠心分離を行なった。得られた沈澱物をPBSバッフ
ァー洗浄後、10mM炭酸バッファー(pH9.8)10
0μlで懸濁し更に同バッファーで2倍ずつ段階希釈し
ていきELISAプレートに50μl/wellずつ乗
せ4℃終夜放置してコーティングした。
【0043】1次抗体として1:10,000倍希釈し
たモノクローナル抗体204(J.Gen.Viro
l.67,2663−2672)を、2次抗体としてア
ルカリフォスファターゼ結合抗マウスIgG(TAG
O,Inc.)を用いてELISAを行った。ELIS
Aにおけるエンドポイント(吸光度0.1)を示す希釈
度からEタンパク質の発現量を測定した。
【0044】(比較例1) 前感染なしの組み換えワク
チニアウイルスによるEタンパク質の発現と培養上清中
のEタンパク質の測定 参考例2で得た組み換えワクチニアウイルスの感染に使
用するVero細胞として予め前感染させていないもの
を用いる以外は実施例1と同様の方法により、Eタンパ
ク質を発現させ、Eタンパク質量を測定した。
【0045】(比較例2) デング2型ウイルスと同時
に組み換えワクチニアウイルスを宿主細胞に感染させた
場合のEタンパク質の発現と培養上清中のEタンパク質
の測定 参考例2で得た組み換えワクチニアウイルスをVero
細胞に感染させるときに同時にデング2型ウイルスを感
染させること(以下、同時感染という。)以外は実施例
1と同様の方法により、Eタンパク質を発現させ、Eタ
ンパク質量を測定した。
【0046】ELISAにおけるエンドポイント(吸光
度0.1)を示す希釈度について実施例1、比較例1、
2の結果をまとめて表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】表1から明らかなように、デング2型ウイ
ルスを前感染させておくと、前感染させなかった場合や
同時感染させた場合と比較して、prM(M)タンパク
質をコードするcDNAおよびEタンパク質をコードす
るcDNAを組み込んだ組み換えワクチニアウイルスは
効率よくEタンパク質を細胞外へ放出することがわかっ
た。とくに、7.5Kプロモーターよりも強いプロモー
ター活性を有する組み換えワクチニアウイルスLAJ6
−SL 感染細胞外のEタンパク質の量が飛躍的に増大し
た。
【0049】(実施例2) 培養上清中の粒子状Eタン
パク質の精製 参考例2で得た組み換えワクチニアウイルスLAJ6−
L を感染させた細胞の培養上清をポアサイズ0.2μ
mのフィルターで濾過し、150,000×g、2時間
の超遠心分離を行った。沈澱物をPBSバッファーで懸
濁し、3−30%アンギオコンレイ(第一製薬製)、2
0mM Tris−塩酸(pH8.0)、0.15M N
aClの密度勾配遠心分離を150,000×g、1時
間の条件で行った。遠心後遠心チューブの底から一定量
ずつ分画し、各フラクションを十分なPBSバッファー
で希釈後再度超遠心分離して沈降させた。
【0050】各フラクションの沈澱物を実施例1と同様
な方法でELISAプレートにコーティングし、ELI
SAにてEタンパク質がどのフラクションに沈降したか
を確認した。その結果を図1に示す。またコントロール
としてデング2型ウイルスを密度勾配遠心分離で分画し
た場合も図1に示す。
【0051】図1から組み換えワクチニアウイルス感染
細胞培養上清中のEタンパク質はデングウイルスよりも
遅く沈降する、即ちデングウイルスよりも小さい沈降係
数の粒子であることが判った。フラビウイルスの沈降係
数は小さいものでおよそ130Sであるが、ウイルスよ
り遅く沈降する粒子状Eタンパク質の沈降係数はおよそ
70Sであった。尚、ワクチニアウイルスの沈降係数は
フラビウイルスよりも更に大きい。
【0052】
【図面の簡単な説明】
【図1】密度勾配遠心分離した各フラクション中のEタ
ンパク質の分布パターンを示した説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安田 斡司 神奈川県川崎市川崎区夜光一丁目2番1号 日本ゼオン株式会社研究開発センター内 (72)発明者 鴨川 幸市 神奈川県川崎市川崎区夜光一丁目2番1号 日本ゼオン株式会社研究開発センター内 (72)発明者 保井 孝太郎 東京都立川市若葉町2−26−32 (72)発明者 宮本 道子 東京都府中市本宿町1−32−1 サンライ ズビル−202

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フラビウイルス科に属するウイルスを予
    め感染させた細胞にフラビウイルス科に属するウイルス
    由来のprM(M)タンパク質の実質的に全部と表面抗
    原タンパク質を実質的に全部をコードするcDNAを組
    み込んだ組み換えワクチニアウイルスを感染させ、培養
    上清からフラビウイルス科に属するウイルスのEタンパ
    ク質を含む非感染性の構造物粒子を単離することを特徴
    とする非感染性の構造物粒子の製造方法。
  2. 【請求項2】 予め感染させるウイルスがデング2型ウ
    イルスである請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 ワクチニアウイルスに組み込むcDNA
    が日本脳炎ウイルスのタンパク質をコードするものであ
    る請求項1または2記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 得られる非感染性の構造物粒子が沈降係
    数100S以下の粒子である請求項1、2、または3記
    載の製造方法。
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