JPH05276938A - 細胞培養試験用基材およびその製造方法 - Google Patents

細胞培養試験用基材およびその製造方法

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JPH05276938A
JPH05276938A JP4095918A JP9591892A JPH05276938A JP H05276938 A JPH05276938 A JP H05276938A JP 4095918 A JP4095918 A JP 4095918A JP 9591892 A JP9591892 A JP 9591892A JP H05276938 A JPH05276938 A JP H05276938A
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JP
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fixed
cell
adhesive substance
sea
cells
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JP4095918A
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English (en)
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Manabu Yamazaki
学 山崎
Yuichi Mori
森  有一
Michiko Tsuchida
路子 土田
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WR Grace and Co
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】細胞の接着性と機能維持に優れ、かつその特性
の再現性が良い特定のパターンを簡単に判定できる細胞
培養試験用基材およびその製造方法を提供すること。 【構成】基材表面に、細胞接着性物質が固定されている
部分とされていない部分の構造が異なる複数の領域か、
同一構造であるが細胞接着性物質が固定されている部分
とされていない部分のパターンが異なる複数の領域が存
在し、前記細胞接着性物質が固定されている部分とされ
ていない部分の構造は、海島構造、海海構造および層状
構造からなる群より選択され、前記細胞接着性物質が固
定されている部分とされていない部分の構造が海島構造
である領域では、島のサイズと島と島の間の距離の両方
が、培養する細胞のサイズ以下であり、前記細胞接着性
物質が固定されている部分とされていない部分の構造が
海海構造または層状構造である領域では、その周期が、
培養する細胞のサイズの2倍以下であることを特徴とす
る細胞培養試験用基材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、細胞培養に適した基材
を簡単に判定することができる細胞培養試験用基材に関
する。さらに詳しくは、接着依存性細胞の機能性維持
や、分化の誘発に適した細胞培養用基材を簡単に判定す
ることができる細胞培養試験用基材に関する。また、本
発明はかかる細胞培養試験用基材の製造方法にも関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、細胞培養技術は、1)細胞産生物
の生産、2)生体病変部や欠損部へ補綴材、3)薬剤の
毒性および薬理活性評価用のシュミレーターなどの分野
で、研究、応用されている。
【0003】今日、細胞培養に用いられている動物細胞
は2種類に分類される。即ち、接着非依存性細胞(anch
orage independent cells)と接着依存性細胞(anchora
gedependent cells)である。前者の接着非依存性細胞
は、生存、増殖、物質産生能などの細胞機能が細胞の足
場である基質が存在しなくても正常に発現される細胞で
ある。典型的な例としてミエローマ細胞、リンホーマ細
胞などから形成されるハイブリドーマが挙げられる。
【0004】一方、後者の接着依存性細胞は、生存、増
殖、物質産生などの細胞機能が細胞の足場である基質が
存在しなくては正常に発現されない細胞である。初代培
養細胞をはじめとした正常二倍体細胞の大部分は接着依
存性である。さらに無限に増殖可能な樹立細胞系にも、
接着依存性を示すものが数多く知られている。例えば、
インターフェロン、インターロイキンなどのサイトカイ
ン類、エリスロポエチン、コロニー・ステュミレイティ
ング・ファクター、トロンボボエチンなどの各種分化成
長ホルモン、ティッシュ・プラスミノーゲン・アクチべ
ーター、ワクチンなどの有用な細胞産生物を生産する樹
立細胞系にも接着依存性を示すものが多く知られてい
る。従って、これら有用な細胞産生物の生産のためにも
接着依存性細胞の培養技術の確立は非常に重要である。
【0005】一般に細胞を物質生産のために利用する場
合、細胞の機能を生体内の状態と同じレベルで維持し、
かつ高密度に培養することが重要である。このような分
野において、従来接着依存性動物細胞の培養は、ガラ
ス、プラスチック製のシャーレ、試験管、培養ビンなど
を用いて行われてきた。また、最近マイクロキャリアや
中空糸を培養用基材として用い、より高密度の培養や長
期の培養を行う試みがなされつつある。接着依存性動物
細胞を培養用基材上に接着させ、増殖させるには、該基
材表面と細胞の接着性が良好であるとともに、接着した
細胞の形態、配列が、細胞の伸展、増殖に適した状態に
なっていることが必要である。しかしながら、従来から
細胞培養用基材として用いられている高分子材料、特に
ポリスチレンは、賦形性、耐久性、透明性、無毒性、低
コストの点で優れているものの、ポリスチレン表面は疎
水性のため、上記接着性の点に関して不適当であった。
そこで、ポリスチレン表面をコロナ放電処理することに
より表面にのみ陰イオン基を導入し、親水性を付与する
ことにより、細胞の接着性、増殖性を改善した細胞培養
用基材が開発され広く用いられている。しかしながら、
この程度の改善では細胞のもつ特異的な機能を発現さ
せ、かつ、それを長期間維持させることは困難であるこ
とがわかってきた。そこで最近では、培養細胞の環境
を、細胞が生体内に存在するときと同じ状態にできるだ
け近づけることにより、細胞の接着、増殖、分化、物質
産生などの機能を向上させる研究が行われて来た。すな
わち、細胞外マトリクスを培養用基材表面に固定する方
法である。
【0006】ところで、生体内での細胞外マトリクスの
機能についての研究が近年急速に進み、従来から知られ
ていた細胞を支持、固定化するという単純な受動的な役
割だけではなく、細胞の機能を能動的に制御する機能も
有していることがわかってきた。
【0007】例えば、細胞外マトリクスの主成分である
コラーゲンには10種以上あることが発見されており、
それぞれのコラーゲンは決まった細胞によって合成さ
れ、一定の組織に局在し、そして異なる細胞機能を制御
する役割を有していることが解明されつつある。また、
同一タイプのコラーゲンでも、高次構造の変性あるいは
種々の官能基を導入するなどの改質によっても細胞機能
に影響があることがわかってきた。
【0008】また、細胞外マトリクスの第2成分であ
る、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、プ
ロテオグリカン、グリコサミノグリカンなどは、コラー
ゲンおよび細胞膜に対して特異的な結合部位を有し、細
胞の基質への接着に重要な役割を果たしている。なお、
接着性タンパク質はそれぞれ一定種の細胞、コラーゲン
に特異的に結合する。例えば、フィブロネクチンは主と
して繊維芽細胞およびI型、II型のコラーゲンに、ラミ
ニンは上皮、内皮細胞およびIV型コラーゲンにそれぞれ
特有の結合部位を有している。さらに上記の細胞外マト
リクス以外にも細胞機能に大きな影響を与えるものとし
てコラーゲンの熱変性物であるゼラチン、細胞膜上の糖
鎖に特異的に結合するレクチン、フィブロネクチンなど
の結合部位である接着性オリゴペプチド、イガイから得
られた細胞接着タンパク質などが知られている。上記の
細胞の接着、増殖を制御する因子を培養用基材に組合せ
た例としては、コラーゲンをコートした培養用基材(K.
Yoshizato.et al..Annals ofPlastic Surgery. Vol.13,
No.1, 1984年7月)、またフィブロネクチンをコートし
た基材(F.Grinnell.Expl.Cell Res.,102.51.1984)、
またイガイから得られた細胞接着蛋白をコートした基材
(P.T.Picciano.et al, In Vitro Cellularand Develop
mental Biology 22(3).24A.1986)などが開発され、細
胞接着および増殖効果の改善が認められている。さらに
は生体由来の細胞外マトリクスの代わりにガラクトース
末端を側鎖に有するポリスチレンをコートした基材(赤
池敏宏ら、人工臓器、17,227, 1988)が開発され、特に
肝細胞の接着性の向上および生存性の維持が認められて
いる。従来、培養条件が厳しく接着が非常に困難であっ
た細胞も上記したような方法で表面を処理した培養用基
材を用いることによって培養が可能になってきた。以上
述べてきた基材のほとんどが、既に市販されており、こ
の他にも現在研究が進行しているものもいくつかある。
しかしながら、これらの基材を用いても生体内で細胞が
持っていた機能をすべて再現することは不可能であっ
た。その原因の一つは、前にも述べたように、細胞外マ
トリクスの高次構造の変化である。コラーゲンを例にと
ると、生体内と同じ高次構造を形成させたときと、熱や
紫外線で変性させて、高次構造形成能を消失させた場合
では、細胞の形態や増殖能に差があることが知られてい
る(K. Toshizato, et al.,Biomedical Research, Vol
9, No.1, 33-45, 1988)。しかしながら、基材表面に固
定された細胞外マトリクスの高次構造を生体外で再現す
ることは必ずしも容易なことではないし、それを再現性
良く実現することはかなり困難なことである。このよう
な問題を解決する手段として、細胞外マトリクスをパタ
ーン化して固定する方法が提案されている(特開昭63
−196272号)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
従来技術では、必ずしも細胞の接着性と機能維持に優れ
た再現性の良い基材が提供できるとは限らなかった。本
発明者らがその原因について検討したところ、細胞の接
着性や機能維持といった特性を実現するためには、細胞
外マトリクスをただ固定するだけでは不十分であり、あ
る特定のパターンにすることが必要であることが初めて
明らかになった。さらに、この点について検討を進めた
ところ、その特定のパターンは細胞の種類や大きさによ
り異なることもわかってきた。
【0010】本発明は、細胞の接着性と機能維持に優
れ、かつ、その特性の再現性が良い特定のパターンを簡
単に判定できる細胞培養試験用基材およびその製造方法
を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的は、基材表面
に、細胞接着性物質が固定されている部分とされていな
い部分の構造が異なる複数の領域か、同一構造であるが
細胞接着性物質が固定されている部分とされていない部
分のパターンが異なる複数の領域が存在し、前記細胞接
着性物質が固定されている部分とされていない部分の構
造は、海島構造、海海構造および層状構造からなる群よ
り選択され、前記細胞接着性物質が固定されている部分
とされていない部分の構造が海島構造である領域では、
島のサイズと島と島の間の距離の両方が、培養する細胞
のサイズ以下であり、前記細胞接着性物質が固定されて
いる部分とされていない部分の構造が海海構造または層
状構造である領域では、その周期が、培養する細胞のサ
イズの2倍以下であることを特徴とする細胞培養試験用
基材を提供することにより達成された。
【0012】細胞培養試験用基材表面の細胞接着性物質
の固定されている部分とされていない部分の構造は、海
島構造、海海構造または層状構造のいずれかでなければ
ならない。これらのいずれかの構造をとっていれば、そ
の構造は規則性を持っていても良いし不規則なものであ
っても良い。したがって、海島構造の海と島の位置に規
則性を持たせてもよいし、海島構造の領域と海海構造の
領域を規則的に変える構造にしてもよい。また海島構造
の場合は、海、島どちらの部分に、細胞接着性物質が固
定されていても良い。
【0013】細胞接着性物質の固定されている部分とさ
れていない部分の構造が海島構造である領域では、島の
サイズと島と島の間の距離の両方が、培養する細胞のサ
イズ以下でなければならない。島のサイズと島と島の間
の距離は、50μm以下であるのが望ましく、30μm
以下であればより望ましい。また、細胞接着性物質の固
定されている部分とされていない部分の構造が海海構造
または層状構造である領域では、その周期が、培養する
細胞のサイズの2倍以下でなければならない。一般には
100μm以下であるのが望ましく、60μm以下であ
ればより望ましい。また、島のサイズ、島と島の距離お
よび周期は、通常0.2μm以上にする。
【0014】なお、本明細書において周期とは、細胞培
養試験用基材をある一線で切ったときに、隣あう2つの
部分(固定されている部分とされていない部分)の距離
の平均値をいう。また、島のサイズ、島と島の間の距離
も、それぞれの平均値を指す。
【0015】本発明の細胞培養試験用基材の表面には、
細胞接着性物質が固定されている部分とされていない部
分の構造が異なる複数の領域か、同一構造であるが細胞
接着性物質が固定されている部分とされていない部分の
パターンが異なる複数の領域が存在することを特徴とす
る。したがって、本発明の細胞培養試験用基材には、海
島構造、海海構造および層状構造からなる群より選択さ
れる2種以上の構造をそれぞれ有する領域からなるもの
が含まれる。また、海島構造、海海構造または層状構造
のいずれか1種の構造のみからなり、それぞれの領域の
パターンが異なるなるものも含まれる。さらに、海島構
造、海海構造および層状構造からなる群より選択される
2種以上の構造を有し、かつ、その構造の一部または全
部が互いにパターンの異なる2以上の領域からなるもの
も含まれる。また、「パターンが異なる」とは、細胞接
着性物質の固定されている部分とされていない部分から
形成される構成の規則性や模様が異なるものを広く含む
意味である。したがって、島のサイズや島と島の間の距
離を変えたもの、層状構造の周期を変えたもの、島の形
を変えたもの、散在する島の規則性を変えたもの、島と
海を反転させたものなどが、異なるパターンとされる。
【0016】このような構造を有する本発明の細胞培養
試験用基材を用いれば、培養する細胞の機能、分化の発
現に最も適した基材を簡単に判定することができる。
【0017】一般に、細胞は細胞膜表面にモザイク状に
存在する結合サイトにより基材に接着して増殖する。こ
の接着様式は多点接着であるため、細胞培養用基材の表
面には全体にわたって細胞接着性物質が固定されている
必要はない。また、培養細胞は基材に接着している側か
ら培養液中の養分を接種する方が生体内の状態に近いと
いわれている。したがって、細胞接着性物質の固定され
ている部分が海島構造、海海構造または層状構造をとっ
ている方が、細胞が基材に接着する面積を制御して、接
着している側から培養液中の養分を摂取することができ
るので、より生体内に近い状態で培養しうる。本発明の
細胞培養試験用基材は、その中でも特に培養する細胞の
機能、分化の発現に最も適したパターンを簡便に判定す
ることができるため極めて有用である。
【0018】本発明の細胞培養試験用基材に固定されて
いる細胞接着性物質の量は、培養する細胞に適した量で
あれば特に限定されない。しかしながら、上記のような
細胞の性質を考慮に入れるならば、細胞接着性物質が固
定されている部分の総面積は、細胞の増殖面積に対して
70%以下であることが望ましい。さらに望ましくは、
50%以下である。
【0019】本発明の細胞培養試験用基材に使用する細
胞接着性物質は、試料として与えられた細胞を変性する
ことなく接着する物質を1以上含み、コラーゲンを50
%以上含有するものを意味する。細胞を変性させること
なく接着する物質としては、コラーゲン、フィブロネク
チン、ビトロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン、
グリコサミノグリカンなどの細胞外マトリクス成分や、
コラーゲンの熱変性物質であるゼラチンやその他コラー
ゲン誘導体、細胞膜上の糖鎖に親和力を有するコンカナ
バリンAなどのレクチン、イガイ由来の接着タンパク
質、フィブロネクチンと細胞との接着部位に対応する接
着性オリゴペプチドなどがあげられる。一方、細胞接着
性物質に含有させることができるコラーゲンの種類は、
特に限定されない。したがって各種タイプのコラーゲン
やそれらの混合物を広く用いることができる。
【0020】本発明の細胞培養試験用基材に使用される
細胞接着性物質は、架橋構造をとっていることが望まし
い。一般に、化学結合によって基材表面に固定された細
胞接着性物質を除き、単純に基材表面にコートされた細
胞接着性物質は、その一部が培養操作中に培養液中に溶
解してしまう。このため、コートした量と実質的に固定
されている量が異なっていて、期待される効果を十分に
得ることができない場合がある。そこで細胞接着性物質
に架橋構造を形成させることにより、培養液に対し不溶
化することができる。さらにこの架橋化細胞接着性物質
をパターン固定することにより、高次構造を形成させる
のと同様の効果を得ることができる。
【0021】細胞接着性物質へ架橋を導入する方法は、
特に限定されるものではなく、一般的に用いられる方法
であればいかなる方法であっても良い。例えば、グルタ
ールアルデヒドなどを用いた化学処理法、オゾン処理
法、紫外線処理法、電子線処理法、プラズマ処理法など
を用いることができるが、操作の簡便さからいえば、化
学処理法、紫外線処理法が適していると思われる。
【0022】本発明の細胞培養試験用基材の製造方法は
特に限定されないが、本発明の製造方法にしたがえば効
率良く製造することができる。本発明の製造方法は、
(a)細胞培養試験用基材表面に細胞接着性物質を含有
する層を形成する工程、(b)細胞接着性物質が固定さ
れている部分とされていない部分の構造が異なる複数の
領域か、同一構造であるが細胞接着性物質が固定されて
いる部分とされていない部分のパターンが異なる複数の
領域が存在するように、前記細胞接着性物質を細胞培養
試験用基材表面に固定する工程、(c)未固定の細胞接
着性物質を洗浄する工程からなる。
【0023】工程(a)では、キャスト法やディップ法
など層を形成させることができる方法を広く採用するこ
とができる。
【0024】工程(b)でも、細胞接着性物質を基材表
面に固定する方法を広く採用することができる。細胞接
着性物質が固定されている部分とされていない部分の構
造が異なる複数の領域か、同一構造であるが細胞接着性
物質が固定されている部分とされていない部分のパター
ンが異なる複数の領域が存在するように形成する。経済
性を考慮すれば、特定のパターンを有するマスクを用
い、紫外線により架橋を導入して固定することが望まし
い。例えば、紫外線透過部分の構造または規則性が相互
に異なる複数個のマスクを用いてもよいし、紫外線透過
部分の構造または規則性が異なる複数の部分からなる単
一のマスクを用いてもよい。前者のマスクを使用する場
合は、マスクを換えて紫外線照射を複数回行う必要があ
り、後者のマスクを使用する場合は紫外線照射は1回で
済ませることもできる。もちろん後者のマスクを紫外線
強度を換えながら複数回使用して製造することもでき
る。さらに、複数の部分からなるマスクを2種以上用い
て紫外線照射することによって製造することもできる。
これらの態様はいずれも本発明の方法に含まれる。紫外
線の照射量(照射強度×照射時間)は、細胞接着性物質
の種類によって異なるが、コラーゲンを例にとると、2
54nmの紫外線で2,500J/m2以上の照射量があ
れば、基材表面にコラーゲンを確実に固定することがで
きる。紫外線の波長は、使用した細胞接着性物質を架橋
固定するのに適した波長を用いるのが望ましい。紫外線
の照射は1回であっても複数回であっても良い。
【0025】工程(c)の洗浄液としては、未固定の細
胞接着性物質を洗浄することができる溶液であればどの
ようなものでも使用することができる。ただし、洗浄液
が微量残留したときに細胞に毒性を与えないものが望ま
しい。一般的には、酢酸や、塩酸でpHを調整した水溶
液を用いるのが望ましい。
【0026】以上述べたように、本発明の細胞培養試験
用基材は、細胞接着性物質を複数種のパターンで基材表
面に固定することにより、細胞の接着性、特異的な機能
維持、分化の誘発に優れ、かつ、その特性の再現性が良
い特定のパターンを簡単に判定できるところに特徴があ
る。さらに、本発明の細胞培養試験用基材の製造方法に
よれば、性能が安定した細胞培養試験用基材を簡便で経
済的な方法で製造することができる。
【0027】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的
に説明する。本発明の範囲は特許請求の範囲により特定
されるものであり、以下の実施例により限定されるもの
ではない。実施例1 1.コートディッシュの作製 0.5%(w/v)牛真皮ペプシン可溶化タイプIコラ
ーゲン溶液(pH3)(KOKEN CELLGEN I-PC,(株)高
研製)400μlを、市販の疎水性のφ35mmディッシ
ュ(Falcon #1008、日本ベクトン製)に分注し、すばや
く均一にのばしてコーティングした。その後、10℃の
インキュベーター内で約5時間乾燥させた。乾燥後のコ
ート層の厚みは約2μmであった。また、ディッシュに
は、あらかじめ面積が均等に4分割になるような線を引
いておいた。
【0028】次に、図1に示すような4分割した中の1
つの場所だけが紫外線が透過できるような窓をもったマ
スクをつくり、この窓の部分に表1に示したようなサイ
ズのメッシュをはり、これをディッシュにのせて紫外線
照射装置(XX−100、波長254nm、フナコシ製)
で約5分間紫外線を照射した。このときの紫外線のエネ
ルギーは5,000J/m2であった。マスクを換えてこの
操作を3回繰り返した。未架橋のコラーゲンを洗浄する
ために、このディッシュにpH3の蒸留水を2ml加
え、4℃のインキュベーター内に2時間放置した。その
後、この蒸留水を取り除き、10℃のインキュベーター
内で乾燥させた。これらの操作は、無菌的な環境下で行
った。なお、コラーゲンはメッシュの開口部分と同じよ
うに島状に固定された。また、対照として、エリア1は
紫外線を照射しないで洗浄した部分、エリア2はコラー
ゲンをコートした後にメッシュを用いないで紫外線照射
してコラーゲンを固定した部分とした。以上のような手
順で作製したディッシュを用い、以下に示すような実験
を行った。
【0029】 表 1 ──────────────────────────────────── エリア メッシュ 線幅 開口幅 開口率 コラーゲンの No No (μm) (μm) (%) 固定化率(%) ──────────────────────────────────── 1 ー ー ー ー 0 2 ー ー ー ー 100 3 500 18 32 41 41 4 460 32 22 16 16 ──────────────────────────────────── 2.培養評価実験 ヒト真皮由来の線維芽細胞をダルベッコ改変イーグル培
地(D−MEM、10%牛胎児血清含有、GIBCO社
製)を用いて、最終細胞濃度が、5×104細胞/ml
になるように細胞分散液を作成し、37℃に保温した。
この細胞分散液の2mlを上記の方法で作製したサンプ
ルディッシュに注入した。これを素早く37℃の炭酸ガ
スインキュベーター(5%炭酸ガス)に移し培養した。
なお、培養液の交換は、1週間に2回の割合で行った。
【0030】細胞の形態および接着性、増殖性を位相差
顕微鏡下で観察した。細胞播種後2時間目では、エリア
1(コラーゲンをすべて洗浄した部分)、エリア2(コ
ラーゲンをパターン化せずに固定した部分)、エリア4
(460メッシュを用いてコラーゲンを固定した部分)
では、細胞は伸展を開始しているにも拘わらず、エリア
3(500メッシュを用いてコラーゲンを固定した部
分)では、細胞はまったく伸展していなかった。その
後、培養日数1日目、2日目、4日目にも観察を行っ
た。エリア1、2、4には差がなく、細胞は増殖してい
た。一方、エリア3では、細胞の形が細かく、増殖の遅
れが観察された。培養日数7日目では、エリア1、2、
4では、細胞は増殖し100%コンフルエントに達して
いるにもかかわらず、エリア3では50%コンフルエン
ト程度の増殖性であった(図2)。
【0031】一般に、細胞の増殖性が抑制されると細胞
の機能発現、分化の誘発が促進されるといわれている。
したがって、この実験に用いた細胞では、500メッシ
ュを用いてコラーゲンを固定した部分で増殖性が抑制さ
れているので、このパターンがこの細胞の機能発現の促
進、機能の長時間の維持、分化の誘発に適していること
が判定できた。
【0032】
【発明の効果】本発明の細胞培養試験用基材は、細胞接
着性物質が複数種のパターンで基材表面に固定されてい
るため、細胞の接着性、特異的な機能維持、分化の誘発
に優れ、かつその特性の再現性が良い特定のパターンを
簡単に判定することができる。さらに本発明の細胞培養
試験用基材の製造方法によれば、性能が安定した細胞培
養試験用基材を簡便かつ経済的な方法で製造することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の一実施態様において使用す
るフォトマスクを示したものである。 a:紫外線透過部分 b:紫外線不透過部分
【図2】細胞播種2時間後、1日後、2日後、4日後、
7日後の細胞の接着性、増殖性およびそのときの細胞の
形態を示す位相差顕微鏡写真である。 Area 1:コラーゲンをすべて洗浄した部分 Area 2:コラーゲンをパターン化せずに固定した部分 Area 3:500メッシュを用いてコラーゲンを固定し
た部分 Area 4:460メッシュを用いてコラーゲンを固定し
た部分 2 hours:細胞播種2時間後 Day 1:細胞播種1日後 Day 2:細胞播種2日後 Day 4:細胞播種4日後 Day 7:細胞播種7日後
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 土田 路子 神奈川県厚木市戸室671−1 SATII I ATSUGI 306

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基材表面に、細胞接着性物質が固定されて
    いる部分とされていない部分の構造が異なる複数の領域
    か、同一構造であるが細胞接着性物質が固定されている
    部分とされていない部分のパターンが異なる複数の領域
    が存在し、 前記細胞接着性物質が固定されている部分とされていな
    い部分の構造は、海島構造、海海構造および層状構造か
    らなる群より選択され、 前記細胞接着性物質が固定されている部分とされていな
    い部分の構造が海島構造である領域では、島のサイズと
    島と島の間の距離の両方が、培養する細胞のサイズ以下
    であり、 前記細胞接着性物質が固定されている部分とされていな
    い部分の構造が海海構造または層状構造である領域で
    は、その周期が、培養する細胞のサイズの2倍以下であ
    ることを特徴とする細胞培養試験用基材。
  2. 【請求項2】基材表面に、細胞接着性物質が固定されて
    いる部分とされていない部分の構造が異なる複数の領域
    か、同一構造であるが細胞接着性物質が固定されている
    部分とされていない部分のパターンが異なる複数の領域
    が存在し、 前記細胞接着性物質が固定されている部分とされていな
    い部分の構造は、海島構造、海海構造および層状構造か
    らなる群より選択され、 前記細胞接着性物質が固定されている部分とされていな
    い部分の構造が海島構造である領域では、島のサイズと
    島と島の間の距離の両方が50μm以下であり、 前記
    細胞接着性物質が固定されている部分とされていない部
    分の構造が海海構造または層状構造である領域では、そ
    の周期が100μm以下であることを特徴とする細胞培
    養試験用基材。
  3. 【請求項3】前記細胞接着性物質が架橋構造をとってい
    ることを特徴とする請求項1または2の細胞培養試験用
    基材。
  4. 【請求項4】(a)培養試験用基材表面に細胞接着性物
    質を含有する層を形成する工程、(b)細胞接着性物質
    が固定されている部分とされていない部分の構造が異な
    る複数の領域か、同一構造であるが細胞接着性物質が固
    定されている部分とされていない部分のパターンが異な
    る複数の領域が存在するように、前記細胞接着性物質を
    培養試験用基材表面に固定する工程、(c)未固定の細
    胞接着性物質を洗浄する工程からなる請求項1、2また
    は3の細胞培養試験用基材の製造方法。
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