JPH0638731A - 細胞培養用基材およびその製造方法 - Google Patents

細胞培養用基材およびその製造方法

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JPH0638731A
JPH0638731A JP4087631A JP8763192A JPH0638731A JP H0638731 A JPH0638731 A JP H0638731A JP 4087631 A JP4087631 A JP 4087631A JP 8763192 A JP8763192 A JP 8763192A JP H0638731 A JPH0638731 A JP H0638731A
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cell
sea
fixed
adhesive substance
cells
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JP4087631A
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Manabu Yamazaki
学 山崎
Yuichi Mori
森  有一
Michiko Tsuchida
路子 土田
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WR Grace and Co
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 細胞の接着性と機能維持に優れ、かつ、その
特性の再現性が良い培養用基材およびその製造方法を提
供すること。 【構成】 細胞接着性物質が固定されている部分とされ
ていない部分の構造が海島構造、海海構造、層状構造ま
たはこれらのうち2種以上が混在する構造をとるよう
に、該細胞接着性物質が基材の表面に固定されている細
胞培養用基材において、前記細胞接着性物質が固定され
ている部分とされていない部分の構造が海島構造である
領域では、島のサイズと島と島の間の距離の両方が、培
養する細胞のサイズ以下であり、前記細胞接着性物質が
固定されている部分とされていない部分の構造が海海構
造または層状構造である領域では、その周期が、培養す
る細胞のサイズの2倍以下であることを特徴とする細胞
培養用基材。

Description

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】本発明は、細胞培養に適した基材
に関する。さらに詳しくは、接着依存性細胞の機能性維
持や、分化の誘発に適した細胞培養用基材に関する。ま
た、本発明は細胞培養用基材の製造方法にも関する。
【従来の技術】近年、細胞培養技術は、1)細胞産生物
の生産、2)生体病変部や欠損部へ補綴材、3)薬剤の
毒性および薬理活性評価用のシュミレーターなどの分野
で、研究、応用されている。今日、細胞培養に用いられ
ている動物細胞は2種類に分類される。即ち、接着非依
存性細胞(anchorage independent cells)と接着依存
性細胞(anchoragedependent cells)である。前者の接
着非依存性細胞は、生存、増殖、物質産生能などの細胞
機能が細胞の足場である基質が存在しなくても正常に発
現される細胞である。典型的な例としてミエローマ細
胞、リンホーマ細胞などから形成されるハイブリドーマ
が挙げられる。一方、後者の接着依存性細胞は、生存、
増殖、物質産生などの細胞機能が細胞の足場である基質
が存在しなくては正常に発現されない細胞である。初代
培養細胞をはじめとした正常二倍体細胞の大部分は接着
依存性である。さらに無限に増殖可能な樹立細胞系に
も、接着依存性を示すものが数多く知られている。例え
ば、インターフェロン、インターロイキンなどのサイト
カイン類、エリスロポエチン、コロニー・ステュミレイ
ティング・ファクター、トロンボボエチンなどの各種分
化成長ホルモン、ティッシュ・プラスミノーゲン・アク
チべーター、ワクチンなどの有用な細胞産生物を生産す
る樹立細胞系にも接着依存性を示すものが多く知られて
いる。従って、これら有用な細胞産生物の生産のために
も接着依存性細胞の培養技術の確立は非常に重要であ
る。一般に細胞を物質生産のために利用する場合、細胞
の機能を生体内の状態と同じレベルで維持し、かつ高密
度に培養することが重要である。このような分野におい
て、従来接着依存性動物細胞の培養は、ガラス、プラス
チック製のシャーレ、試験管、培養ビンなどを用いて行
われてきた。また、最近マイクロキャリアや中空糸を培
養用基材として用い、より高密度の培養や長期の培養を
行う試みがなされつつある。接着依存性動物細胞を培養
用基材上に接着させ、増殖させるには、該基材表面と細
胞の接着性が良好であるとともに、接着した細胞の形
態、配列が、細胞の伸展、増殖に適した状態になってい
ることが必要である。しかしながら、従来から細胞培養
用基材として用いられている高分子材料、特にポリスチ
レンは、賦形性、耐久性、透明性、無毒性、低コストの
点で優れているものの、ポリスチレン表面は疎水性のた
め、上記接着性の点に関して不適当であった。そこで、
ポリスチレン表面をコロナ放電処理することにより表面
にのみ陰イオン基を導入し、親水性を付与することによ
り、細胞の接着性、増殖性を改善した細胞培養用基材が
開発され広く用いられている。しかしながら、この程度
の改善では細胞のもつ特異的な機能を発現させ、かつ、
それを長期間維持させることは困難であることがわかっ
てきた。そこで最近では、培養細胞の環境を、細胞が生
体内に存在するときと同じ状態にできるだけ近づけるこ
とにより、細胞の接着、増殖、分化、物質産生などの機
能を向上させる研究が行われて来た。すなわち、細胞外
マトリクスを培養用基材表面に固定する方法である。と
ころで、生体内での細胞外マトリクスの機能についての
研究が近年急速に進み、従来から知られていた細胞を支
持、固定化するという単純な受動的な役割だけではな
く、細胞の機能を能動的に制御する機能も有しているこ
とがわかってきた。例えば、細胞外マトリクスの主成分
であるコラーゲンには10種以上あることが発見されて
おり、それぞれのコラーゲンは決まった細胞によって合
成され、一定の組織に局在し、そして異なる細胞機能を
制御する役割を有していることが解明されつつある。ま
た、同一タイプのコラーゲンでも、高次構造の変性ある
いは種々の官能基を導入するなどの改質によっても細胞
機能に影響があることがわかってきた。また、細胞外マ
トリクスの第2成分である、フィブロネクチン、ラミニ
ン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、グリコサミノ
グリカンなどは、コラーゲンおよび細胞膜に対して特異
的な結合部位を有し、細胞の基質への接着に重要な役割
を果たしている。なお、接着性タンパク質はそれぞれ一
定種の細胞、コラーゲンに特異的に結合する。例えば、
フィブロネクチンは主として繊維芽細胞およびI型、II
型のコラーゲンに、ラミニンは上皮、内皮細胞およびIV
型コラーゲンにそれぞれ特有の結合部位を有している。
さらに上記の細胞外マトリクス以外にも細胞機能に大き
な影響を与えるものとしてコラーゲンの熱変性物である
ゼラチン、細胞膜上の糖鎖に特異的に結合するレクチ
ン、フィブロネクチンなどの結合部位である接着性オリ
ゴペプチド、イガイから得られた細胞接着タンパク質な
どが知られている。上記の細胞の接着、増殖を制御する
因子を培養用基材に組合せた例としては、コラーゲンを
コートした培養用基材(K.Yoshizato.et al..Annals of
Plastic Surgery. Vol.13, No.1, 1984年7月)、またフ
ィブロネクチンをコートした基材(F.Grinnell.Expl.Ce
ll Res.,102.51.1984)、またイガイから得られた細胞
接着蛋白をコートした基材(P.T.Picciano.et al, In V
itro Cellularand Developmental Biology 22(3).24A.1
986)などが開発され、細胞接着および増殖効果の改善
が認められている。さらには生体由来の細胞外マトリク
スの代わりにガラクトース末端を側鎖に有するポリスチ
レンをコートした基材(赤池敏宏ら、人工臓器、17,22
7, 1988)が開発され、特に肝細胞の接着性の向上およ
び生存性の維持が認められている。従来、培養条件が厳
しく接着が非常に困難であった細胞も上記したような方
法で表面を処理した培養用基材を用いることによって培
養が可能になってきた。以上述べてきた基材のほとんど
が、既に市販されており、この他にも現在研究が進行し
ているものもいくつかある。しかしながら、これらの基
材を用いても生体内で細胞が持っていた機能をすべて再
現することは不可能であった。その原因の一つは、前に
も述べたように、細胞外マトリクスの高次構造の変化で
ある。コラーゲンを例にとると、生体内と同じ高次構造
を形成させたときと、熱や紫外線で変性させて、高次構
造形成能を消失させた場合では、細胞の形態や増殖能に
差があることが知られている(K. Toshizato, et al.,B
iomedical Research, Vol 9, No.1, 33-45, 1988)。し
かしながら、基材表面に固定された細胞外マトリクスの
高次構造を生体外で再現すうことは必ずしも容易なこと
ではないし、それを再現性良く実現することはかなり困
難なことである。このような問題を解決する手段とし
て、細胞外マトリクスをパターン化して固定する方法が
提案されている(特開昭63−196272号)。
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
従来技術では、必ずしも細胞の接着性と機能維持に優れ
た再現性の良い基材が提供できるとは限らなかった。本
発明者らがその原因について検討したところ、細胞の接
着性や機能維持といった特性を実現するためには、細胞
外マトリクスをただ固定するだけでは不十分であり、あ
る特定のパターンにすることが必要であることが初めて
明らかになった。本発明は、細胞の接着性と機能維持に
優れ、かつ、その特性の再現性が良い培養用基材および
その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】上記目的は、細胞接着性
物質が固定されている部分とされていない部分の構造が
海島構造、海海構造、層状構造またはこれらのうち2種
以上が混在する構造をとるように、該細胞接着性物質が
基材の表面に固定されている細胞培養用基材において、
前記細胞接着性物質が固定されている部分とされていな
い部分の構造が海島構造である領域では、島のサイズと
島と島の間の距離の両方が、培養する細胞のサイズ以下
であり、前記細胞接着性物質が固定されている部分とさ
れていない部分の構造が海海構造または層状構造である
領域では、その周期が、培養する細胞のサイズの2倍以
下であることを特徴とする細胞培養用基材を提供するこ
とにより達成された。ここでいう周期とは、細胞培養用
基材をある一線で切ったときに、隣あう2つの部分(固
定されている部分とされていない部分)の距離の平均値
をいう。また、島のサイズ、島と島の間の距離も、それ
ぞれの平均値を指す。細胞接着性物質の固定されている
部分とされていない部分の構造が海島構造である領域で
は、島のサイズと島と島の間の距離の両方が、培養する
細胞のサイズ以下でなくてはならない。島のサイズと島
と島の間の距離は、50μm以下であるのが望ましく、
30μm以下であればより望ましい。また、細胞接着性
物質の固定されている部分とされていない部分の構造が
海海構造または層状構造である領域では、その周期が、
培養する細胞のサイズの2倍以下でなくてはならない。
一般には100μm以下であるのが望ましく、60μm
以下であればより望ましい。また、島のサイズ、島と島
の距離および周期は、通常0.2μm以上にする。細胞
培養用基材表面の細胞接着性物質の固定されている部分
とされていない部分の構造は、海島構造、海海構造、層
状構造またはこれらのうち2種以上が混在する構造のい
ずれかでなければならない。これらのいずれかの構造を
とっていれば、その構造は規則性を持っていても良いし
不規則なものであっても良い。したがって、海島構造の
海と島の位置に規則性を持たせてもよいし、海島構造の
領域と海海構造の領域を規則的に変える構造にしてもよ
い。また海島構造の場合は、海、島どちらの部分に、細
胞接着性物質が固定されていても良い。このような構造
を有する本発明の細胞培養用基材を用いれば、生体内の
状態に近い状態で細胞を培養することができる。一般
に、細胞は細胞膜表面にモザイク状に存在する結合サイ
トにより基材に接着して増殖する。この接着様式は多点
接着であるため、細胞培養用基材の表面には全体にわた
って細胞接着性物質が固定されている必要はない。ま
た、培養細胞は基材に接着している側から培養液中の養
分を接種する方が生体内の状態に近いと言われている。
したがって、細胞接着性物質の固定されている部分が海
島構造、海海構造または層状構造をとっている方が、細
胞が基材に接着する面積を制御して、接着している側か
ら培養液中の養分を摂取することができるので、より生
体内に近い状態で培養しうるのである。本発明の細胞培
養用基材に固定されている細胞接着性物質の量は、培養
する細胞に適した量であれば特に限定されない。しかし
ながら、上記のような細胞の性質を考慮に入れるなら
ば、細胞接着性物質が固定されている部分の総面積は、
細胞の増殖面積に対して70%以下であることが望まし
い。さらに望ましくは、50%以下である。本発明の細
胞培養用基材に使用する細胞接着性物質は、試料として
与えられた細胞を変性する事なく接着する物質を1以上
含み、コラーゲンを50%以上含有するものを意味す
る。細胞を変性させることなく接着する物質としては、
コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミ
ニン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンなどの
細胞外マトリクス成分や、コラーゲンの熱変性物質であ
るゼラチンやその他コラーゲン誘導体、細胞膜上の糖鎖
に親和力を有するコンカナバリンAなどのレクチン、イ
ガイ由来の接着タンパク質、フィブロネクチンと細胞と
の接着部位に対応する接着性オリゴペプチドなどがあげ
られる。一方、細胞接着性物質に含有させることができ
るコラーゲンの種類は、特に限定されない。したがって
各種タイプのコラーゲンやそれらの混合物を広く用いる
ことができる。本発明の細胞培養用基材に使用される細
胞接着性物質は、架橋構造をとっていることが望まし
い。一般に、化学結合によって基材表面に固定された細
胞接着性物質を除き、単純に基材表面にコートされた細
胞接着性物質は、その一部が培養操作中に培養液中に溶
解してしまう。このため、コートした量と実質的に固定
されている量が異なっていて、期待される効果を十分に
得ることが出来ない場合がある。そこで細胞接着性物質
に架橋構造を形成させることにより、培養液に対し不溶
化することができる。さらにこの架橋化細胞接着性物質
をパターン固定することにより、高次構造を形成させる
のと同様の効果を得ることができる。細胞接着性物質へ
架橋を導入する方法は、特に限定されるものではなく、
一般的に用いられる方法であればいかなる方法であって
も良い。例えば、グルタールアルデヒドなどを用いた化
学処理法、オゾン処理法、紫外線処理法、電子線処理
法、プラズマ処理法などを用いることができるが、操作
の簡便さから言えば、化学処理法、紫外線処理法が適し
ていると思われる。本発明の細胞培養用基材の製造方法
は特に限定されないが、本発明の製造方法にしたがえば
効率良く製造することができる。本発明の製造方法は、
(a)培養用基材表面に細胞接着性物質を含有する層を
形成する工程、(b)細胞接着性物質が固定されている
部分とされていない部分の構造が海島構造、海海構造、
層状構造またはこれらのうち2種以上が混在する構造に
なるように、該細胞接着性物質を培養用基材表面に固定
する工程、(c)未固定の細胞接着性物質を洗浄する工
程からなる。工程(a)では、キャスト法やディップ法
など層を形成させることができる方法を広く採用するこ
とができる。工程(b)でも、細胞接着性物質を基材表
面に固定する方法を広く採用することができる。基材表
面に、細胞接着性物質が固定されている部分とされてい
ない部分とを海島構造状、海海構造状または層状構造状
に形成させ、さらに経済性を考慮すれば、上記のような
構造を有したマスクを用い、紫外線により架橋を導入し
て固定することが望ましい。紫外線の照射量(照射強度
×照射時間)は、細胞接着性物質の種類によって異なる
が、コラーゲンを例にとると、図1に示すように、25
4nmの紫外線で2.500J/m2以上の照射量があれ
ば、基材表面にコラーゲンを確実に固定することができ
る。紫外線の波長は、使用した細胞接着性物質を架橋固
定するのに適した波長を用いるのが望ましい。紫外線の
照射は1回であっても複数回であっても良い。工程
(c)の洗浄液としては、未固定の細胞接着性物質を洗
浄することができる溶液であればどのようなものでも使
用することができる。ただし、洗浄液が微量残留したと
きに細胞に毒性を与えないものが望ましい。一般的に
は、酢酸や、塩酸でpHを調整した水溶液を用いるのが
望ましい。以上述べたように、本発明の細胞培養用基材
は、細胞接着性物質をある特定のパターンで基材表面に
固定することにより、細胞の接着性と機能維持能を上
げ、かつその特性の再現性を良くしたところに特徴があ
る。さらに本発明の培養用基材の製造方法によれば、性
能が安定した培養用基材を簡便な方法で製造することが
できる。
【実施例】以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的
に説明する。本発明の範囲は特許請求の範囲により特定
されるものであり、以下の実施例により限定されるもの
ではない。実施例1 1.コートディッシュの作製 0.5%(w/v)牛真皮ペプシン可溶化タイプIコラ
ーゲン溶液(pH3)(KOKEN CELLGEN I-PC,(株)高
研製)400μlを、市販の疎水性のφ35mmディッシ
ュ(Falcon #1008、日本ベクトン製)に分注し、すばや
く均一にのばしてコーティングした。その後、10℃の
インキュベーター内で約5時間乾燥させた。乾燥後のコ
ート層の厚みは約2μmであった。このディッシュにス
テンレス製のメッシュ(500メッシュ)をのせ、紫外
線照射装置(XX−100、波長254nm、フナコシ
製)で約5分間紫外線を照射した。このときの紫外線の
エネルギーは5,000J/m2であった。未架橋のコラ
ーゲンを洗浄するために、このディッシュにpH3の蒸
留水を2ml加え、4℃のインキュベーター内に2時間
放置した。その後、この蒸留水を取り除き、10℃のイ
ンキュベーター内で乾燥させた。これらの操作は、無菌
的な環境下で行った。以上のような手順で作製したディ
ッシュを用い、以下に示すような実験を行った。 2.固定化されたコラーゲンのパターンの確認 クマジーブリリアントブルー(R−250)の2mlを
サンプルディッシュに入れ、2時間放置し、固定された
コラーゲンを染色した。その後、脱色液(体積比、酢
酸:メタノール:水=1:8:8)で洗浄し、未反応の
染色液を取り除いた。乾燥した後顕微鏡下で紫外線照射
により固定化したコラーゲンを乾燥した。結果は図2に
示すとおりであった。メッシュのパターン状に未照射部
分はほとんど染色されず照射部分だけが濃紺に染色され
た。このことにより、海島構造状にコラーゲンを固定す
ることができることが証明された。この実験で使用した
メッシュ(500メッシュ)を用いたコラーゲンを固定
すると、コラーゲンは1辺が約30μmの四角形が約2
0μm間隔で規則正しく並んだパターンに固定され、固
定されたところの総面積は約40%であった。 3.培養評価実験 ヒト真皮由来の線維芽細胞をダルベッコ改変イーグル培
地(D−MEM、10%牛胎児血清含有、GIBCO社
製)を用いて、最終細胞濃度が、5×104細胞/ml
になるように細胞分散液を作成し、37℃に保温した。
この細胞分散液の2mlを上記の方法で作製したサンプ
ルディッシュに注入した。これを素早く37℃の炭酸ガ
スインキュベーター(5%炭酸ガス)に移し培養した。
これと同時に対照実験として、以下のディッシュについ
ても培養実験を行った。 (対照1)コラーゲンをコートしていない親水性ディッ
シュ(Falcon #3001) (対照2)疎水性ディッシュ(Falcon #1008)にコラー
ゲンをコートした後、メッシュを用いないで紫外線照射
し、コラーゲンを固定したディッシュ (対照3)コラーゲンをコートした後、紫外線照射しな
いで洗浄したディッシュなお培養液の交換は1週間に2
回の割合で行った。 細胞の形態及び接着性、培養性を位相差顕微鏡下で観察
した。細胞播種後2時間目では、対照1、2、3のディ
ッシュの細胞は伸展を開始しているにもかかわらず、本
発明のサンプルディッシュの細胞はまったく伸展してい
なかった(図3)。その後、24時間後、48時間後、
96時間後にも観察を行った。対照1、2、3のディッ
シュには差がなく、細胞は増殖していた。一方、サンプ
ルディッシュでは、細胞の形が細く増殖の遅れが観察さ
れた。培養日数7日目では、対照1、2、3のディッシ
ュでは、細胞は増殖し100%コンフルエントに達して
いるにもかかわらず、サンプルディッシュでは、50%
コンフルエント程度の増殖性であった(図4)。一般に
細胞の増殖性が抑制されると細胞の機能発現、分化の誘
発が促進される。従って、細胞の増殖性が抑制されてい
ることが確認された本発明のサンプルディッシュは、細
胞の機能発現の促進、機能の長時間の維持、分化の誘発
に適していることが期待される。比較例1 100メッシュのステンレスメッシュを用い、実施例1
に示したのと同様の方法でサンプルを作製し同様の実験
を行った。コラーゲンは約150μmの四角形が約10
0μm間隔で規則正しく並んだパターンに固定され、固
定されたところの総面積は約36%であった。このサン
プルを用い細胞培養実験を行った。対照として実施例1
と同じものを使用した。実施例1と同様に、細胞の形態
及び接着性、増殖性を位相差顕微鏡下で観察したが、培
養日数にかかわらず、サンプルと対照の間に差は認めら
れなかった。このことから、島のサイズと島と島の間の
距離が培養する細胞のサイズ以上であると、増殖性が抑
制されず本発明の顕著な効果は得られないことが明らか
になった。
【発明の効果】本発明の細胞培養用基材は、細胞接着性
物質をある特定のパターンで基材表面に固定することに
より、細胞の接着性、特異的な機能維持、分化の誘発に
優れている点に特徴がある。また、架橋により細胞接着
性物質を固定しているために、その特性の再現性が良い
という特徴もある。さらに本発明の培養用基材の製造方
法によれば、性能が安定した培養用基材を簡便で経済的
な方法で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】紫外線照射量とコラーゲンの固定化率の関係を
示すグラフである。基材にコラーゲンをコートし、任意
の紫外線照射量でコラーゲンを架橋固定した。その後、
未固定のコラーゲンをpH3の蒸留水で洗浄し、基材上
に固定されたコラーゲンをハイドロキシプロリン法(I.
Bergman, R. Loxley, AnalyticalChemistry 35, 1961,
1963)により定量し、コラーゲンの固定化率を求めた
ものである。
【図2】コラーゲンの固定パターンを示す顕微鏡写真で
ある。 a:使用したステンレスメッシュ(500メッシュ、線
幅18μm) b:コラーゲンをコートしメッシュを用いて紫外線照射
した後、未架橋のコラーゲンを洗浄して、クマジーブリ
リアントブルー(R−250)で固定したコラーゲンを
染色したもの。黒く見える部分がコラーゲンを示してい
る。
【図3】細胞播種後2時間目の位相差顕微鏡写真であ
る。 c:対照1ディッシュ d:対照2ディッシュ e:対照3ディッシュ f:サンプルディッシュ
【図4】培養日数7日目の位相差顕微鏡写真である。 g:対照1ディッシュ h:対照2ディッシュ i:対照3ディッシュ j:サンプルディッシュ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森 有一 神奈川県横浜市金沢区釜利谷町1642−212 B−4 (72)発明者 土田 路子 神奈川県厚木市戸室671−1 SATII I ATSUGI 306

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】細胞接着性物質が固定されている部分とさ
    れていない部分の構造が海島構造、海海構造、層状構造
    またはこれらのうち2種以上が混在する構造をとるよう
    に、該細胞接着性物質が基材の表面に固定されている細
    胞培養用基材において、 前記細胞接着性物質が固定されている部分とされていな
    い部分の構造が海島構造である領域では、島のサイズと
    島と島の間の距離の両方が、培養する細胞のサイズ以下
    であり、 前記細胞接着性物質が固定されている部分とされていな
    い部分の構造が海海構造または層状構造である領域で
    は、その周期が、培養する細胞のサイズの2倍以下であ
    ることを特徴とする細胞培養用基材。
  2. 【請求項2】細胞接着性物質が固定されている部分とさ
    れていない部分の構造が海島構造、海海構造、層状構造
    またはこれらのうち2種以上が混在する構造をとるよう
    に、該細胞接着性物質が基材の表面に固定されている細
    胞培養用基材において、 前記細胞接着性物質が固定されている部分とされていな
    い部分の構造が海島構造である領域では、島のサイズと
    島と島の間の距離の両方が、50μm以下であり、 前
    記細胞接着性物質が固定されている部分とされていない
    部分の構造が海海構造または層状構造である領域では、
    その周期が100μm以下であることを特徴とする細胞
    培養用基材。
  3. 【請求項3】前記細胞接着性物質が架橋構造をとってい
    ることを特徴とする請求項1または2の細胞培養用基
    材。
  4. 【請求項4】(a)培養用基材表面に細胞接着性物質を
    含有する層を形成する工程、(b)細胞接着性物質が固
    定されている部分とされていない部分の構造が海島構
    造、海海構造、層状構造またはこれらのうち2種以上が
    混在する構造になるように、該細胞接着性物質を培養用
    基材表面に固定する工程(c)未固定の細胞接着性物質
    を洗浄する工程からなる請求項1、2または3の細胞培
    養用基材の製造方法。
JP4087631A 1992-03-11 1992-03-11 細胞培養用基材およびその製造方法 Pending JPH0638731A (ja)

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JP4087631A Pending JPH0638731A (ja) 1992-03-11 1992-03-11 細胞培養用基材およびその製造方法

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JP (1) JPH0638731A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6336032B1 (en) 1997-12-23 2002-01-01 Telefonaktiebolaget Lm Ericsson (Publ) Method and device for phase regulation
JP2002142752A (ja) * 2000-11-13 2002-05-21 Asahi Techno Glass Corp コラーゲンコート細胞培養容器及びその製造方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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