JPH05270945A - 多孔質セラミック材料の製造方法 - Google Patents

多孔質セラミック材料の製造方法

Info

Publication number
JPH05270945A
JPH05270945A JP3242157A JP24215791A JPH05270945A JP H05270945 A JPH05270945 A JP H05270945A JP 3242157 A JP3242157 A JP 3242157A JP 24215791 A JP24215791 A JP 24215791A JP H05270945 A JPH05270945 A JP H05270945A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
egg white
bone
calcium phosphate
phosphate compound
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP3242157A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH07115972B2 (ja
Inventor
Shigeharu Takagi
茂栄 高木
Shigeru Yamauchi
繁 山内
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Cement Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Cement Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Cement Co Ltd filed Critical Sumitomo Cement Co Ltd
Priority to JP24215791A priority Critical patent/JPH07115972B2/ja
Publication of JPH05270945A publication Critical patent/JPH05270945A/ja
Publication of JPH07115972B2 publication Critical patent/JPH07115972B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C04CEMENTS; CONCRETE; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES
    • C04BLIME, MAGNESIA; SLAG; CEMENTS; COMPOSITIONS THEREOF, e.g. MORTARS, CONCRETE OR LIKE BUILDING MATERIALS; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES; TREATMENT OF NATURAL STONE
    • C04B38/00Porous mortars, concrete, artificial stone or ceramic ware; Preparation thereof
    • C04B38/10Porous mortars, concrete, artificial stone or ceramic ware; Preparation thereof by using foaming agents or by using mechanical means, e.g. adding preformed foam
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C04CEMENTS; CONCRETE; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES
    • C04BLIME, MAGNESIA; SLAG; CEMENTS; COMPOSITIONS THEREOF, e.g. MORTARS, CONCRETE OR LIKE BUILDING MATERIALS; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES; TREATMENT OF NATURAL STONE
    • C04B2111/00Mortars, concrete or artificial stone or mixtures to prepare them, characterised by specific function, property or use
    • C04B2111/00474Uses not provided for elsewhere in C04B2111/00
    • C04B2111/00836Uses not provided for elsewhere in C04B2111/00 for medical or dental applications

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Ceramic Engineering (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Structural Engineering (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Materials For Medical Uses (AREA)
  • Dental Preparations (AREA)
  • Dental Prosthetics (AREA)
  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 特定寸法の空孔と、それらを相互に、かつ外
部空間に連通する毛細管状空隙通路とを有し、生体親和
性が高く、骨の再生その他の医療用途、電子機器、遺伝
子工学用材料として有用な多孔質セラミック材料の製造
方法を提供する。 【構成】 100重量部の卵白を泡立てて、孔径1〜6
00μmの多数の気泡を形成し、卵白気泡体を30〜1
20重量部の燐酸カルシウム化合物粉末と、所望により
長さ5mm以上、直径1〜30μmの有機繊維とに混合
し、この混合物を所望形状寸法の型枠に流し込むことに
より成形し、成形された前記混合物を120〜150℃
の温度に加熱して卵白を硬化させ、次に500〜700
℃の温度に加熱して、卵白(および繊維)を炭化し、次
に、酸素含有雰囲気中で800℃〜1350℃の温度に
加熱して、前記炭化物を燃焼除去するとともに前記燐酸
カルシウム化合物粉末を焼結する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、多孔質セラミック材
料、および、その製造方法に関するものである。更に詳
しく述べるならば、本発明は、多数の特定寸法の空孔
と、少くともこれらを外部空間に連通する、多数の特定
寸法の毛細管状空隙通路とを有し、骨の再生、その他の
医療的用途に用いられる材料、電子材料、および遺伝子
工学用材料として有用な多孔質セラミック材料、および
その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】燐酸カルシウム化合物、例えば、ヒドロ
キシアパタイト、およびその固溶体は、生体との親和性
が良好であって、医療用材料、例えば、骨又は歯根等の
代替材料又は補綴材料として有用である。例えば特開昭
56−54841号公報には、アパタイト型結晶構造リ
ン酸カルシウム化合物粉粒体を用いた骨欠損部、およ
び、空隙部充てん材が開示されている。
【0003】また、特開昭56−166843号公報に
は、リン酸カルシウム化合物の多孔体からなる骨欠損部
および空隙部充てん材が開示されている。このリン酸カ
ルシウム化合物の多孔体に含まれる空孔は、その最大孔
径3.00mm、最小孔径0.05mmであって、生体の骨
形成成分が進入しやすい形状寸度を有し、実質的に連続
した三次元の網状構造を形成しているものである。
【0004】上記のような、従来のリン酸カルシウム化
合物セラミック材料は、充てん、補綴などの外科的手術
を施した後に経時的変形を生じたり、或は、充てん、又
は補綴部分の近傍の軟組織の硬質化を促進し、このため
異常を生じた部分の切除組織を余儀なくされるなどの問
題があった。一般に、生体の硬組織の欠損、例えば、骨
腫瘍部分の切除や、骨の外的損傷による欠損などの治療
において、自然治癒を促進することが最も好ましく、人
工物による代替や補綴は、必ずしも好ましいことではな
い。たとえ、人工物が生体内に充てん、又は補綴された
としても、そのような人工物がやがて生体内で食尽さ
れ、その代りに自然の生体組織が再生して、骨の再生速
度を制御することにより生ずる時間の経過による骨の再
吸収を制御し、欠損部が治癒することが最も望ましいこ
とである。この場合、人工物の生体組織による入れ代わ
り速度(ターンオーバー速度)が適当であることが重要
であって、ターンオーバー速度が過度に速いときは、局
所に炎症等の障害を生じ、それに起因する余病、例え
ば、癌の発生などを併発することがある。また、ターン
オーバー速度が低く、長期間にわたって人工物が生体内
に存在する場合、局所の生体組織(骨)の変形や、その
近傍の軟組織の硬質化などを生じ、このため、切除手術
を要することなどがある。
【0005】上記のような問題点に対処するためには生
体内に挿入される充てん材又は補綴材が生体組織の誘起
と置換に要する要件を、細胞レベルで満足させ得ること
が重要である。すなわち、生体組織に対する骨食細胞
(オステオリーシス)、骨再生細胞(オステオプラス
ト)の活性化を適切に促進し、骨破壊細胞(オクテオク
ラスト)、および軟組織の硬質化を促進するコラーゲン
繊維の侵入、発達並びに骨組織の硬質化を抑制し、か
つ、赤血球、体液などの進入や、毛細血管の発達を阻害
しないことが重要である。
【0006】上記のような要件を満たすためには、生体
内に挿入される充てん材又は補綴材は、生体に対し、良
好な親和性、特に生体的対応性(バイオレスポンシビリ
テイ)を有するとともに、所望細胞の活性化のために良
好な居住増殖空間を与え得るとともに、忌避すべき細胞
の侵入を防止し、かつ、コラーゲン繊維の異常発達によ
る骨組織の硬質化を防止できるものであることが必要で
ある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、生体
内骨組織の再生すなわち新生骨の誘起その他の医療用
途、電子材料、遺伝子工学用材料などの用途に有用な多
孔質セラミック材料、および、その製造方法を提供する
ことである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の多孔質セラミッ
ク材料は、燐酸カルシウム化合物の焼結多孔質体からな
り、前記多孔質体中に、多数の通路状に伸びた毛細管状
空隙と、多数の1〜600μm の孔径を有する空孔とが
形成されており、前記毛細管状空隙通路の径が1〜30
μm の範囲内にあり、少くとも前記空孔と、前記多孔質
体の外部空間との間が、前記多数の毛細管状空隙通路を
少くとも一部によって連通していることを特徴とするも
のである。
【0009】上記多数の毛細管状空隙通路の一部は、上
記多数の空孔を相互に連通していてもよい。上記の多孔
質セラミック材料は、下記の方法によって製造すること
ができる。すなわち、本発明の多孔質セラミック材料の
製造方法は、100重量部の卵白を泡立てて、孔径1〜
600μm の多数の気泡を形成し、卵白気泡体を、30
〜120重量部の燐酸カルシウム化合物粉末に混合し、
この混合物を所望形状寸法の型枠に流し込むことによっ
て成形し、成形された前記混合物を120〜150℃の
温度に加熱して卵白を硬化させ、次に500〜700℃
の温度に加熱して、卵白を炭化し、次に、酸素含有雰囲
気中で800℃〜1350℃の温度に加熱して、前記炭
化物を燃焼除去するとともに前記燐酸カルシウム化合物
粉末を焼結することを特徴とするものである。
【0010】また、本発明の多孔質セラミック材料の他
の製造方法は、100重量部の卵白を泡立てて孔径1〜
600μm の多数の気泡を形成し、この卵白気泡体を、
30〜120重量部の燐酸カルシウム化合物粉末と、1
〜5重量部の長さ5mm以下と直径1〜30μm とを有す
る有機繊維とを混合し、この混合物を所望形状寸法型枠
に流し込むことにより成形し成形された前記混合物を1
20〜150℃の温度に加熱して卵白を硬化させ、次に
500〜700℃の温度に加熱して前記卵白および繊維
を炭化し、次に、酸素含有雰囲気中で800℃〜135
0℃の温度に加熱して、前記炭化物を燃焼除去するとと
もに前記燐酸カルシウム化合物粉末を焼結することを特
徴とするものである。
【0011】また、本発明の多孔質セラミック材料の他
の製造方法は、20〜300重量部の、1〜600μm
の粒径を有する昇華性固体物質粉末を、100重量部の
燐酸カルシウム化合物粉末に混合し、この混合物を所望
形状寸法にプレス成形し、この成形物を300〜500
℃の温度に加熱して前記昇華性物質を昇華除去し、次に
800〜1350℃の温度に加熱して、前記燐酸カルシ
ウム化合物粉末を焼結することを特徴とするものであ
る。
【0012】また、本発明の多孔質セラミック材料の更
に他の製造方法は、20〜300重量部の、1〜600
μm の粒径を有する昇華性固体物質粉末と、1〜5重量
部の5mm以下の長さと1〜30μm の直径を有する有機
繊維とを100重量部の燐酸カルシウム化合物粉末に混
合し、この混合物を所望形状寸法にプレス成形し、この
成形物を200〜800℃の温度に加熱して前記昇華性
物質を昇華除去するとともに前記有機繊維を炭化し、次
に酸素含有雰囲気中で800〜1350℃の温度に加熱
して、前記炭化物を燃焼除去するとともに前記燐酸カル
シウム化合物粉末を焼結することを特徴とするものであ
る。
【0013】また、本発明の多孔質セラミック材料の更
に他の製造方法は、25〜380重量部の、1〜600
μm の粒径を有する、有機合成樹脂粒子を、100重量
部の燐酸カルシウム化合物粉末に混合し、この混合物
を、所望形状寸法にプレス成形し、得られた成形物を2
00〜800℃の温度に加熱して前記有機合成樹脂粒子
を熱分解除去し、次に、酸素含有雰囲気中で800〜1
350℃の温度に加熱して前記燐酸カルシウム化合物粉
末を焼結することを特徴とするものである。
【0014】本発明の多孔性セラミック材料の更に他の
製造方法は、25〜380重量部の、1〜600μm の
粒径を有する有機合成樹脂粒子と、1〜5重量部の5mm
以下の長さと、1〜30μm の直径を有する有機繊維と
を、100重量部の燐酸カルシウム化合物粉末に混合
し、得られた混合物を所望形状寸法にプレス成形し、得
られた成形物を200〜800℃の温度に加熱して、前
記合成樹脂を熱分解除去するとともに前記有機繊維を炭
化し、次に酸素含有雰囲気中で800〜1350℃の温
度に加熱して、前記炭化物を燃焼除去するとともに、前
記燐酸カルシウム化合物粉末を焼結することを特徴とす
るものである。
【0015】本発明の多孔質材料の更に他の製造方法
は、25〜380重量部の、1〜600μm の粒径を有
する有機合成樹脂粒子と、2〜5重量部の、1〜600
μm の粒径を有する昇華性固形物質粒子とを、100重
量部の燐酸カルシウム化合物粉末に混合し、得られた混
合物を所望形状寸法にプレス成形し、得られた成形物を
200〜800℃の温度に加熱して前記合成樹脂粒子を
熱分解除去するとともに前記昇華性物質粒子を昇華除去
し、次に酸素含有雰囲気中で800〜1350℃の温度
に加熱して、前記燐酸カルシウム化合物粉末を焼結する
ことを特徴とするものである。
【0016】本発明の多孔質セラミック材料の別の製造
方法は、25〜380重量部の、1〜600μm の粒径
を有する有機合成樹脂粒子と、2〜5重量部の、1〜6
00μm の粒径を有する昇華性固形物質粒子と、1〜5
重量部の、5mm以下の長さと1〜30μm の直径を有す
る有機繊維とを、100重量部の燐酸カルシウム化合物
粉末に混合し、得られた混合物を、所望形状寸法にプレ
ス成形し、得られた成形物を200〜800℃の温度に
加熱して前記有機合成樹脂粒子を熱分解除去し、前記昇
華性物質粒子を昇華除去し、かつ前記有機繊維を炭化
し、次に酸素含有雰囲気中で800〜1350℃の温度
に加熱して、前記炭化物を燃焼除去するとともに前記燐
酸カルシウム化合物粉末を焼結することを特徴とするも
のである。
【0017】
【作用】本発明の多孔質セラミック材料は、燐酸カルシ
ウム化合物の焼結多孔質体からなるものである。本発明
に使用される燐酸カルシウム化合物は、 CaHPO4 Ca3(PO4)2 Ca5(PO4)3 OH Ca4 O (PO4)2 Ca10(PO4)6(OH)2 CaP4 11 Ca(PO3)2 Ca2 2 7 Ca(H2 PO4)2 ・H2 O などを主成分とするもので、ヒドロキシアパタイトと呼
ばれる一群の化合物を包含する。ヒドロキシアパタイト
は、組成式Ca5 (PO4)3 OH又は、Ca10(PO4)
6(OH)2を有する化合物を基本成分とするもので、Ca
成分の一部分は、Sr,Ba,Mg,Fe,Al,Y,
La,Na,K,Hなどの1種以上で置換されていても
よく、また(PO4 )成分の一部分が、VO4 ,B
3 ,SO4 ,CO3 ,SiO4 などの1種以上で置換
されていてもよく、更に(OH)成分の一部分が、F,
Cl,O,CO3 などの1種以上で置換されていてもよ
い。ヒドロキシアパタイトは、通常の結晶体でもよく、
或は、同型固溶体、置換型固溶体、および侵入型固溶体
のいづれであってもよく、また、非量論的格子欠陥を含
むものであってもよい。
【0018】一般に、本発明に用いる燐酸カルシウム化
合物は、そのカルシウム(Ca)と燐(P)との原子比
が1.30〜1.80の範囲内にあるものが好ましく、
1.60〜1.67の範囲内にあるものがより好まし
い。本発明に用いられる燐酸カルシウム化合物として
は、燐酸三カルシウム〔Ca 3 (PO4)2 〕、ヒドロキ
シアパタイト〔Ca5(PO4)3 OH〕および、Ca
10(PO4)6(OH)2 が好ましく、特にゾルゲル法によ
って合成され凍結乾燥されたものが好ましい。また、燐
酸カルシウム化合物は800〜1350℃の温度で焼結
されたものであることが好ましく、焼結温度は850〜
1200℃より好ましい。
【0019】本発明の多孔質セラミック材料において、
燐酸カルシウム化合物は粉末の形状で焼結されており、
従って互に接触焼結している粉末粒子の間に微細な空隙
を有することができる。本発明の多孔質セラミック材料
の燐酸カルシウム多孔質体は、任意の形状および寸法を
有するものであってもよく、その内部には、多数の通路
状に伸びた毛細管状空隙と、1〜600μm 、好ましく
は3〜300μm の孔径を有する多数の空孔とが形成さ
れていて、この毛細管状空隙通路の径が1〜30μm 、
好ましくは1〜20μm の範囲内にあり、また、少くと
も前記空孔と、前記多孔質体の外部空間との間が、前記
多数の毛細管状空隙通路の少くとも一部によって連通し
ているものである。このとき一般に空孔は互に、多数の
毛細管状空隙通路の一部により連通している。
【0020】焼結多孔質体は、40〜90%の気孔率を
有することが好ましく、60〜70%の気孔率を有する
ことがより好ましい。焼結多孔質体内の空孔は真球又は
それに近い形状を有することが好ましく、また多孔質体
内に均一に分布していることが好ましい。この空孔は、
セラミック材料が、生体内に埋め込まれたとき、骨食細
胞、骨再生細胞などを生物学的に活性化するための居住
空間を提供するものである。骨再生細胞等はこの空孔、
特に球形空孔に滞留するのを非常に好むのである。この
ために空孔の孔径は1〜600μm の範囲にあることが
必要であり、好ましくは10〜300μm である。孔径
が1〜600μm の範囲外の空孔は、上記細胞に対し、
良好な居住空間を与えることができない。
【0021】空孔の形状が真球、又は、これに近い球形
である場合、得られる多孔質材料の機械的強度が高い。
従って、この多孔質材料が、生体内に埋め込まれたと
き、それが新生骨によってリターンオーバーされるま
で、高い機械的強度を保持し続け、その間の骨折を防止
することができる。焼結多孔質体内の毛細管状空隙通路
は、少くとも、空孔と、多孔質体の外部空間とを連通す
るものであって、この通路を通って、前記骨食細胞、骨
再生細胞、赤血球体液などが自由に多孔質体内に進入す
ることができ、かつ毛細血管の発達が促進される。しか
しながら、この毛細管状空隙通路の径は1〜30μm の
範囲、好ましくは1〜20μm の範囲内にあるため骨破
壊細胞やコラーゲン繊維は、多孔質体内の毛細管状空隙
通路へ進入し難く、コラーゲン繊維の異常発達並びに骨
組織の硬質化を防ぐことができる。すなわち、本発明の
多孔質体において、毛細管状空隙通路は、バイオフイル
ターとしての機能を兼ねそなえるものである。
【0022】上記毛細管状空隙通路の径が1μm よりも
小さくなると、骨食細胞、骨再生細胞、赤血球体液など
の多孔質内進入が困難となり、また30μm より大きく
なると、破壊細胞やコラーゲン繊維の侵入および発達を
許し、このため骨の再生を阻害し、また、再生骨組織
や、その近傍の組織の硬質化を招くようになる。本発明
の多孔質セラミック材料において、多孔質体中の空孔
は、多数の毛細管状空隙通路の一部によって相互に連通
していてもよく、これによって、多孔質体の食尽および
生体組織の再成(リターンオーバー)を促進すること、
および骨組織のターンオーバー完了後骨が再生する時か
ら生ずる骨破壊細胞の活性化部分を最初の再生速度から
予見して異常に進み過ぎる骨の侵食行為(骨の再吸収)
を制御することができる。
【0023】本発明の毛細管状空隙通路は(1) 有機繊維
の燃焼により形成される通路および(2) 卵白、昇華性固
体物質粉末、有機合成樹脂粒子等の燃焼および昇華によ
り発生するガスにより形成される通路である。中でも、
有機繊維の燃焼により形成される通路は直径の制御が良
好にできる点で好ましい。本発明の多孔質セラミック材
料は、充てん、又は補綴すべき欠損部又は空隙部の形状
寸法に対応する形状寸法に容易に自由に加工成形するこ
とができる。また、本発明のセラミック材料は粒径0.
05〜5mmの顆粒に成形されていてもよい。
【0024】本発明の多孔質セラミック材料が生体内に
充てん材又は補綴材として埋め込まれたとき、血液、体
液、並びに骨食細胞、骨再生細胞は毛細管状空隙通路を
通って進入し、空孔において増殖した骨食細胞により食
尽され、それと同時に、骨再生細胞によって骨組織が再
生され、所謂ターンオーバーが行われる。このとき、多
孔質体の外部空間に向って空孔を連通している毛細管状
空隙通路は、1〜30μm の径を有しているので、骨破
壊細胞やコラーゲン繊維は、多孔質体内の毛細管状空隙
通路へ侵入し難く、コラーゲン繊維の異常発達並びにそ
の硬質化を防ぐことが出来る。従って再生された骨の軟
組織が配壊されたり、コラーゲン繊維により硬質化する
ことがない。従って、本発明の多孔質セラミック材料
は、新生骨を誘起し生体内で育成された正常な骨組織に
よって置き換えられる。
【0025】上述のように、正常な骨組織によって、リ
ターンオーバーされ得る多孔質セラミック材料は新規で
あり、本発明によって初めて実現することのできたもの
である。本発明の多孔質セラミック材料は、種々の方法
によって製造することのできるものである。
【0026】本発明の多孔質セラミック材料を製造する
ための第1の方法は、100重量部の卵白を泡立てて、
孔径1〜600μm の多数の気泡を形成し、卵白気泡体
を、30〜120重量部の燐酸カルシウム化合物粉末に
混合し、この混合物を所望形状寸法の型枠に流し込み成
形し、成形された前記混合物を120〜150℃の温度
に加熱して卵白を硬化させ、次に500〜700℃の温
度に加熱して、卵白を炭化し、次に、酸素含有雰囲気中
で800℃〜1350℃の温度に加熱して、前記炭化物
を燃焼除去するとともに前記燐酸カルシウム化合物粉末
を焼結することを含むものである。
【0027】一般に、本発明の多孔質セラミック材料を
製造するために用いられる燐酸カルシウム化合物粉末と
しては、0.05〜10μm の粒径を有するものが好ま
しい。特に好ましい燐酸カルシウム化合物粉末は、板状
に発達した結晶部分を含むことが好ましく、SEM(走
査電子顕微鏡)に基く観測結果によれば粉末粒子の30
%以下が1μm 以上の粒径を有し、70%以上が1μm
以下の粒径を有するような粒径分布を有するものが好ま
しい。
【0028】卵白中に所望の孔径の気泡を形成するには
任意の方法、例えば乳化用ミキサーを使用して卵白をホ
イップし、その液面を軽くなでるようにしてスライドガ
ラス上に卵白気泡体のサンプルを採取し、これを顕微鏡
観察して気泡の孔径を測定する。この操作を、所望の孔
径が得られる迄繰り返えす。次に所定量の燐酸カルシウ
ム化合物粉末を加え再び混合を繰り返す。このとき適当
な気孔制御剤、例えばオレイン酸、マレイン酸などの脂
肪酸および/又はイソプロピルアルコール、イソブチル
アルコールなどの脂肪族アルコール、を少量添加しても
よい。
【0029】得られた混合物を所定の形状および寸法に
成形する。成形方法および装置は、焼結用成形工程に用
いられている任意のものを用いることができるが、一般
には型枠を用いる流し込み成形が用いられている。得ら
れた成形物を120〜150℃の温度に、好ましくは6
0〜120分間加熱して卵白を硬化させる。このとき加
熱雰囲気の相対湿度を30〜70%に調節することが好
ましく、また、昇温速度を5〜10℃/分に規制するこ
とが好ましい。この硬化した卵白は気泡のフレームワー
クを強化する。
【0030】次に、成形物を500〜700℃の温度に
好ましくは120〜180分間加熱して卵白を炭化す
る。次に、成形物を酸素含有雰囲気、例えば空気中で、
800〜1350℃、好ましくは850〜1200℃に
加熱し、炭化物を燃焼除去し、燐酸カルシウム化合物粉
末を焼結する。このときの加熱時間は、一般に1〜3時
間程度である。
【0031】上記の卵白硬化、卵白炭化および、炭化物
燃焼の間に発生したガスは、多孔質体外に逃散するが、
このとき多数の毛細管状空隙通路が形成され、また卵白
気泡体の気泡に対応して空孔が形成される。そして、空
孔は毛細管状空隙通路により多孔質体外部空間に連通
し、一般に、空孔相互間も毛細管状空隙通路によって連
通している。
【0032】上記の製造方法において、100重量部の
燐酸カルシウム化合物粉末に対し、1〜5重量部の、5
mm以下の長さと、1〜30μm の直径とを有する有機繊
維を卵白気泡体に追加して混合することができる。この
場合、卵白硬化加熱後に成形物を500〜700℃の温
度に、好ましくは120〜180分間加熱して、卵白を
炭化するとともに有機繊維も炭化する。これの炭化物は
焼結加熱間に燃焼除去される。
【0033】上記方法における有機繊維は、径1〜30
μm の毛細空隙通路の形成を確実にする効果がある。有
機繊維としては、長さ5mm以下と直径1〜30μm とを
有し、完全燃焼し得るものであれば格別の限定はない
が、一般に、猫、タヌキ、マウスなどの動物繊維で、こ
れらの腹の毛が望ましく、或は、絹繊維、セルローズ繊
維を含めたその他の天然有機繊維、並びに、ポリエステ
ル、ポリプロピレン、ポリアシド、ポリアクリル繊維な
どのような有機合成繊維が好ましい。
【0034】本発明の多孔質セラミック材料を製造する
ための他の方法は、20〜300重量部の1〜600μ
m の粒径を有する昇華性固体物質粉末を、100重量部
の燐酸カルシウム化合物粉末を混合し、この混合物を所
望形状寸法にプレス成形し、この成形物を200〜80
0℃の温度に加熱して前記昇華性物質を昇華除去し、次
に、800〜1350℃の温度に加熱して、前記燐酸カ
ルシウム化合物粉末を焼結することを含むものである。
【0035】上記方法において、燐酸カルシウム化合物
粉末は、前述の方法において使用されるものと同一であ
る。また、昇華性固体物質粉末は、多孔質体中に1〜6
00μm の所望寸法の空孔を形成するためのものであっ
て、200〜800℃の温度において、容易に昇華し、
実質的に残渣を残さないものであれば、その種類に格別
の限定はない。一般に、昇華性物質としては、樟脳、薄
荷脳、ナフタレン、および、これらの2種以上の混合物
から選ばれる。
【0036】昇華性物質粉末と燐酸カルシウム化合物粉
末との混合物は、所望の寸法および形状にプレス成形さ
れる。このプレス成形方法には格別の限定はないが、普
通の静圧プレス成形法、例えばラバープレス法、CIP
法などを用いることができる。得られた成形物を200
〜800℃の温度に好ましくは120〜180分間加熱
すると昇華性物質は昇華逃散して空孔を形成するが、こ
のときに、空孔から昇華性物質の微粉末の昇華逃散によ
り多孔質体の外部に連通する毛細管状空隙通路が形成さ
れる。また空孔相互間を連通する毛細管状空隙空間も形
成される。
【0037】次に成形物を再に800〜1350℃、好
ましくは850〜1200℃に好ましくは1〜3時間加
熱して燐酸カルシウム化合物粉末を燃結する。上記の方
法においては、昇華性物質粉末の形状、粒径を調節する
ことにより卵白を使用する方法にくらべて、空孔の形状
や孔径を容易にコントロールすることができる。
【0038】上記昇華性物質粉末を使用する方法におい
て、100重量部の燐酸カルシウム化合物粉末に対し
て、1〜5重量部の、5mm以下の長さと1〜30μm の
直径を有する有機繊維を添加混合してもよい。このよう
な混合物を200〜800℃の温度に好ましくは120
〜180分間加熱すれば、昇華性物質は昇華逃散し、か
つ有機繊維は炭化する。次に、800〜1350℃の温
度に、好ましくは1〜3時間加熱すれば、炭化物は燃焼
消失し、燐酸カルシウム化合物粉末は焼結する。
【0039】この方法において、有機繊維の混用は1〜
30μm の直径を有する毛細管状空隙通路を確実に形成
する上で有効である。この有機繊維は、前述ものと同様
である。有機繊維や昇華性物質粉末を燐酸カルシウム化
合物粉末と混合するとき、メタノール、エタノールなど
の揮発性低級アルコールを添加すると、容易に均一な混
合物が得られるばかりでなく、昇華性物質粒子の粒径を
制御し、かつ昇華性物質粒子と有機繊維との接着を良好
にし、これによって空孔に連通する毛細管状空隙通路の
形成を促進することができる。
【0040】本発明の多孔性セラミック材料を製造する
ための更に他の方法は、25〜380重量部の1〜60
0μm の粒径を有する、有機合成樹脂粒子を、100重
量部の燐酸カルシウム化合物粉末に混合し、この混合物
を、所望形状寸法に成形し、得られた成形物を200〜
800℃の温度に加熱して前記有機合成樹脂粒子を熱分
解除去し、次に、酸素含有雰囲気中で800〜1350
℃の温度に加熱して前記燐酸カルシウム化合物粉末を焼
結することを含むものである。
【0041】上記の方法に用いられる1〜600μm の
粒径を有する有機合成樹脂粒子は、多孔質体中に1〜6
00μm の空孔を形成するために有効なものである。有
機合成樹脂の種類については、それが200〜400℃
の温度において熱分解し、多孔質体から逃散するもので
あれば格別の限定はないが、一般には、メチルメタクリ
レート、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの熱加塑性
合成樹脂から選ばれ、特にメチルメタクリレートが好ま
しい。上記のような有機合成樹脂は担当の硬度を有して
いるので、その粒子を燐酸カルシウム化合物粉末と混合
したり、この混合物をプレス成形するときに球形粒子が
変形や破砕することがなく、従って使用した粒子の寸法
形状に正確に対応した寸法形状の空孔を形成することが
できる。
【0042】有機合成樹脂球形粒子と燐酸カルシウム化
合物粉末との混合物は、所望の寸法および形状を有する
成形物にプレス成形される。このときの成形方法には格
別の限定はなく通常の静圧プレス成形法、たとえばラバ
ープレス法、CIP法などを用いることができる。得ら
れた成形物を、先づ200〜500℃の温度で、好まし
くは300〜350℃で120〜180分間加熱し、有
機合成樹脂粒子を熱分解除去し、対応する空孔を形成す
るとともに、この空孔から伸び出る毛細空隙通路を形成
する。
【0043】次に、この成形物を酸素含有雰囲気中で8
00〜1350℃、好ましくは850〜1200℃で、
好ましくは1〜3時間加熱し、燐酸カルシウム化合物粉
末を焼結する。このとき、有機合成樹脂粒子の熱分解残
渣があっても、これは焼結加熱間に燃焼除去される。上
記有機合成樹脂粒子を使用する方法において、100重
量部の燐酸カルシウム粉末に対し、1〜5重量部の、5
mm以下の長さと、1〜30μm の直径を有する有機繊維
を追加することができる。この有機繊維の種類や効用
は、前述と同じである。
【0044】更に、上記有機合成樹脂粒子を使用する方
法において、100重量部の燐酸カルシウム化合物粉末
に対し、2〜15重量部の、1〜600μm の粒径を有
する昇華性固形物質粒子を追加添合することができる。
この昇華性物質の種類は前述と同一である。この方法に
おいては、昇華性物質粒子は、1〜600μm の粒径を
有するものであって毛細管状空隙通路の形成に有効であ
る。
【0045】更にまた、上記有機合成樹脂粒子を使用す
る方法において、100重量部の燐酸カルシウム化合物
粉末に対し、2〜5重量部の、5mm以下の長さと、1〜
30μm の直径を有する有機繊維と、2〜5重量部の、
1〜600μm の粒径を有する昇華性固形粒子とを追合
混合してもよい。これら有機繊維、および昇華性固形粒
子の種類および効用は前述と同じである。
【0046】本発明において使用する有機繊維の繊維長
は5mm以下であるが、その下限は格別限定されるもので
はなく、約1μm としてもよい。
【0047】
【実施例】実施例1 100gの卵白と3gのオレイン酸との混合物を乳化用
ミキサーを用いてホイップし、時々、その液面をスライ
ドグラスの表面で軽くなでてサンプリングし、これを顕
微鏡で観察し、卵白気泡の最小粒径が3μm となる迄ホ
イップを続けた。上記卵白気泡体に、90gの合成ヒド
ロキシアパタイト(Ca5 (PO4)3 OH、Ca/P原
子比=1.67、粒径0.05〜10μm )を混合し
た。この混合物を枠型に流し込み成形した。成形物を相
対湿度30%の雰囲気中において、10℃/分の昇温速
度で150℃に昇温し、この温度で180分間加熱して
卵白を硬化させ気泡のフレームワークを形成した。次
に、この成形物を徐々に昇温して500℃に120分間
加熱し、卵白を炭化させた。最後に成形物を空気中で1
000℃温度で1時間加熱し、ヒドロキシアパタイト粉
末を焼結した。
【0048】得られた多孔質体は76%の気孔率を有
し、これを顕微鏡で観察したところ孔径10〜500μ
m の多数の空孔と、12μm の径を有する多数の毛細管
状空隙通路が認められ、空孔と外部との間、空孔相互間
は、前記毛細管状空隙通路により連通していた。上記多
孔質成形物から、1×1×1cmの立方体を切り出し、そ
の一軸圧縮強度を測定したところ12kg/cm2 であっ
た。実施例2 実施例1と同様の操作を行った。但し、5gのポリプロ
ピレン繊維(長さ=5〜10μm 、直径=3〜10μm
)を卵白のホイップ工程で追加混合した。得られたヒ
ドロキシアパタイト多孔質体は実施例2のものと同様の
空孔と毛細管状空隙通路を有してたが、直径3〜10μ
m の毛細管状通路が多数認められた。
【0049】また、多孔質体の一軸圧縮強度は10kg/
cm2 であった。実施例3 市販局方樟脳を粉砕して、粒径1〜600μm の粒子1
00gを篩別け採取した。この樟脳粒子に40gのヒド
ロキシアパタイト粉末(実施例1記載のものと同一)を
均一に混合した。この混合物をラバープレス成形機によ
って2kg/cm2の静圧下にプレスし、約10分間放置し
て成形した。この成形物を350℃で180分間加熱
し、次に空気中で1000℃で1時間加熱した。
【0050】得られた多孔質成形物は77%の気孔率を
有しその一軸圧縮強度は30kg/cm 2 であった。この多
孔質体は、100〜500μm (平均約300μm )の
多数の空孔と、直径1〜30μm の多数の毛細管状空隙
通路を有するものであった。 実施例4 実施例3と同様の操作を行った。但し、実施例2記載の
ものと同一のポリプロピレン繊維5gを追加混合し35
0℃の加熱後更に500℃に120分間加熱して、繊維
を炭化した。
【0051】得られた多孔質体中に形成された毛細管状
空隙通路のうち、約5〜10μm の直径を有する毛細管
状空隙通路が多数認められた。得られた多孔質は68%
の気孔率と28kg/cm2 の一軸圧縮強度を有していた。実施例5 60gの真球状メチルメタクリレート粒子(粒径30〜
300μm 、平均粒径約100μm )と、50gのヒド
ロキシアパタイト粒子(実施例1記載のものと同じ)
と、少量のメチルアルコールとを加温しながら均一に混
合した。
【0052】この混合物が十分に乾燥する前にラバープ
レスにより2kg/cm2 の圧力で約10分間静圧成形し
た。この成形物を350℃の温度で180分間加熱して
メチルメタクリレート粒子を熱分解し次に空気中で10
00℃に1時間加熱した。得られた焼結多孔質体は70
%の気孔率と80kg/cm2 の一軸圧縮強度を有してお
り、30〜300μm の孔径を有する多数の真球状空孔
と直径2〜10μmの多数の毛細管状空隙通路を有して
いた。実施例6 実施例5と同様の操作を繰り返えした。但し、メチルメ
タクリレート粒子とヒドロキシアパタイト粉末との混合
物に更に消毒脱脂した猫の腹部の毛(凍結した猫の腹部
の毛をクライスタットで切断して乾燥したもの、直径2
〜10μm 、長さ約5〜10μm )2gを追加混合し、
成形物に対し350℃の加熱工程の後750℃で120
分間の加熱を施して、猫毛を炭化した。
【0053】得られた多孔質成形物は73%の気孔率と
90kg/cm2 の一軸圧縮強度を示した。また実施例5と
同様の球形空孔と毛細管状空隙通路が認められたが2〜
10μm の径を有する多数の毛細管状通路の形成が認め
られた。実施例7 実施例5と同様の操作を行った。但し、メチルメタクリ
レート粒子と、ヒドロキシアパタイト粉末との混合物
に、更に3gの1〜600μm の粒径を有する樟脳粉末
をメチルアルコールと共に混合し、完全に乾燥する前に
ラバープレスで成形し、これを350℃で加熱乾燥した
後更に500℃で120分間加熱し樟脳を昇華した。
【0054】得られた焼結多孔質体は65%の気孔率と
160kg/cm2 の一軸圧縮強度を示した。またこの多孔
質体は、実施例5と同様の球形空孔と、毛細管状空隙通
路とを有していた。実施例8 実施例5と同一の操作を行った。但し、メチルメタクリ
レート粒子とヒドロキシアパタイト粉末との混合物に更
に、実施例6に記載のものと同一の猫の毛2gと、実施
例7記載のものと同一の樟脳粉末3gとを追加混合し、
これにメチルアルコールを混練混合し、混合物をラバプ
レスで成形し成形物を350℃で加熱した後、更に75
0℃で120分間加熱して猫毛を炭化するとともに樟脳
を昇華除去した。
【0055】得られた焼結多孔質体は76%の気孔率
と、110kg/cm2 のすぐれた圧縮強度を示した。また
実施例5と同様の球形空孔と、毛細管状空隙通路とが形
成されていたが、その中に、2〜10μm の直径を有す
る多数の毛細管状通路が認められた。実施例9 前記実施例1〜8の各々で得られた多孔質体を、直径
0.5cm、長さ1cmの円柱状に切り出し、これをビーグ
ル犬の大腿骨の外科手術によって生じた欠損部に充てん
した。2週間後に切開観察したところいづれも球形空孔
中に新生骨のいちじるしい誘起が認められた。また、2
〜3ケ月後には、多孔質体の外周部から内部に新生骨の
発達が認められ、所謂リターンオーバーが順調に進行
し、コラーゲン繊維細胞の異常成長や組織の硬質化など
の現象は認められなかった。
【0056】
【発明の効果】本発明の多孔質セラミック材料は、1〜
600μm 、好ましくは3〜300μの孔径を有する空
孔と1〜30μm 好ましくは1〜20μの径を有する毛
細管状空隙通路とを有するものであるが、この毛細管状
空隙通路は、バイオフイルターとしての機能を果すこと
ができるので、コラーゲン繊維の侵入によるその異常発
達やコラゲン繊維の触媒作用による骨組織の硬質化や、
新生骨の誘起阻害骨破壊細胞の毛細管状空隙通路への侵
入を難かしくし、コラーゲン繊維の異常発達によるコラ
ーゲン繊維自身の硬質化を阻止し、骨食細胞、骨再生細
胞、赤血球、体液などのみを選択的に通過させることが
できる。また特定孔径を有する空孔は、骨食細胞や骨再
生細胞の細胞レベルでの活性化を促進させることができ
る。従って、本発明の多孔質セラミック材料を用いるこ
とによって、生体との良好な親和性を保ちながら親生骨
の誘起を促進し、そして骨の再生速度を制御することに
より生ずる時間の経過による骨の再吸収を制御し、骨の
リターンオーバーを促進することができる。
【0057】又、本発明の多孔質セラミック材料は、空
孔と空孔との間が毛細管状空隙通路で連通され、更にこ
の空孔と本発明多孔体の外部空間が毛細管状空隙通路で
連通されている構造、空孔と本発明多孔体の外部空間が
毛細管状空隙通路と連通している構造の他、本発明多孔
体は空孔と毛細管状空隙通路と本発明多孔体の外部空間
との3者の間の全ての組合せから構成されているが本発
明の特色、構成ばかりでなく、本発明では毛細管状空隙
通路が1〜30μ好ましくは1〜20μと極めて小さい
通路となっているので新生骨の誘起に有効に働き、更に
詳述すると、既に骨に本発明の多孔質セラミック材料を
埋めたとき従来のアパタイト多孔体では孔の粒径および
形状のコントロールが不完全であるばかりか、コラーゲ
ン繊維が孔の中に入る位に大きな孔となっているのでコ
ラーゲン繊維が入り込み、新生骨が誘起されてもコラー
ゲン繊維の触媒効果によりコラーゲンの異常な発達と硬
質化してしまうので埋め込んだ周辺から炎症を発生させ
たりガンの発生が懸念されるが、本発明の多孔質セラミ
ック材料は上記した通り毛細管状空隙通路の径が1〜3
0μ好ましくは1〜20μと極めて小さいのでコラーゲ
ン繊維が毛細管状空隙通路へ侵入し難くコラーゲン繊維
の硬化、硬質化を防止出きると共に、新生骨の誘起に有
効となる蝕細胞、骨再生細胞、赤血球体液のみを選択的
に通過させることが出来るので非常にやわらかい骨を当
初形成させ、それがだんだん外側に向い骨の組織化が可
能である。そして、人、動物の自然骨と同じ構造で中心
部に骨ずい、その周辺に硬質化した骨を形成することが
できる。それ故人・動物の自然骨を全く同じ構造すなわ
ち骨の中心部を骨ずいの形とし、外周部を組織化又骨密
度の増加された骨という構造のものを作ることが出来る
ので、従来の硬質化骨1本やりのアパタイト骨と全く異
なり自然骨と全く同じ構造にして強靱な新生骨を作るこ
とが出来る。これは本発明の多孔質セラミック材料が既
存の骨に埋め込まれると本発明の骨が食いつくされて消
失されながらその代りに自然骨と同じ構造の新生骨が誘
起され、そして、骨組織のターンオーバー完了後骨が再
生する時から生ずる骨破壊細胞の活性化部分を最初の再
生速度から予見して異常に進み過ぎる骨の侵食行為(骨
の再吸収)を制御することができ、長期でも全く無毒の
強靱な柔軟な骨が形成される。前述した通り、本発明の
構造の多孔質セラミック材料はこのような構造のため非
常にやわらかい骨が最初つくられ骨ずいに相当するもの
が最初作られるこれは自然骨と同じで、この骨ずいが外
へ向って組織化・骨密度の増加により人・動物の自然骨
と全く同じく柔軟にして強靱な骨が形成される。
【0058】又は毛細管状空隙通路、球形空孔から成る
本発明の多孔質セラミック材料は上記の生体材料ばかり
でなくICLSI用電子材料、遺伝子工学用媒体材料等
にも利用出来る。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成3年10月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 多孔質セラミック材料の製造方法
【特許請求の範囲】
【請求項】 100重量部の卵白を泡立てて孔径1〜
600μm の多数の球形気泡を形成し、この卵白気泡体
を、30〜120重量部の燐酸カルシウム化合物粉末と
1〜5重量部の、長さ5mm以下と直径1〜30μm とを
有する有機繊維とを混合し、この混合物を所望形状寸法
に成形し、成形された前記混合物を120〜150℃の
温度に加熱して卵白を硬化させ、次に500〜700℃
の温度に加熱して前記卵白および繊維を炭化し、次に、
酸素含有雰囲気中で800℃〜1350℃の温度に加熱
して、前記炭化物を燃焼除去するとともに前記燐酸カル
シウム化合物粉末を焼結し、それによって1〜600μ
mの孔径を有する多数の球形空孔と、それらを相互に、
かつ外部空間に連通し、1〜30μmの、但し、前記球
形空孔よりも小さな径を有する多数の毛細管状空隙通路
を形成することを特徴とする、多孔質セラミック材料の
製造方法。
【請求項10】 前記有機繊維が、動物繊維、絹繊維、
セルローズ繊維および/又は有機合成繊維である、請求
に記載の方法。
【請求項11】 前記有機繊維の長さが1μm 〜5mmで
ある、請求項または請求項10に記載の方法。
【請求項12】 前記卵白硬化加熱工程が、30〜70
%の相対湿度を有する雰囲気内において、5〜10℃/
分の昇温速度で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項13】 前記燐酸カルシウム化合物粉末が0.
05〜10μmの粒径を有する、請求項に記載の方
法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、多孔質セラミック材料
の製造方法に関するものである。更に詳しく述べるなら
ば、本発明は、多数の特定寸法の球形空孔と、これらを
相互に、かつ外部空間に連通する、多数の特定寸法の毛
細管状空隙通路とを有し、骨の再生、その他の医療的用
途に用いられる材料、或いは電子材料、および遺伝子工
学用材料として有用な多孔質セラミック材料の製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】燐酸カルシウム化合物、例えば、ヒドロ
キシアパタイト、およびその固溶体は、生体との親和性
が良好であって、医療用材料、例えば、骨又は歯根等の
代替材料又は補綴材料として有用である。例えば特開昭
56−54841号公報には、アパタイト型結晶構造リ
ン酸カルシウム化合物粉粒体を用いた骨欠損部、およ
び、空隙部充填材が開示されている。
【0003】また、特開昭56−166843号公報に
は、燐酸カルシウム化合物の多孔体からなる骨欠損部お
よび空隙部充填材が開示されている。この燐酸カルシウ
ム化合物の多孔体に含まれる空孔は、その最大孔径3.
00mm、最小孔径0.05mmであって、生体の骨形成成
分が進入しやすい形状寸度を有し、実質的に連続した三
次元の網状構造を形成しているものである。
【0004】上記のような、従来の燐酸カルシウム化合
物セラミック材料は、充填、補綴などの外科的手術を施
した後に経時的変形を生じたり、或は、充填、又は補綴
部分の近傍の軟組織の硬質化を促進し、このため異常を
生じた部分の切除組織を余儀なくされるなどの問題があ
った。一般に、生体の硬組織の欠損、例えば、骨腫瘍部
分の切除や、骨の外的損傷による欠損などの治療におい
て、自然治癒を促進することが最も好ましく、人工物に
よる代替や補綴は、必ずしも好ましいことではない。た
とえ、人工物が生体内に充填、又は補綴されたとして
も、そのような人工物がやがて生体内で食尽され、その
代りに自然の生体組織が再生して、骨の再生速度を制御
することにより生ずる時間の経過による骨の再吸収を制
御し、欠損部が治癒することが最も望ましいことであ
る。この場合、人工物の生体組織による入れ代わり速度
(ターンオーバー速度)が適当であることが重要であっ
て、ターンオーバー速度が過度に速いときは、局所に炎
症等の障害を生じ、それに起因する余病、例えば、癌の
発生などを併発することがある。また、ターンオーバー
速度が低く、長期間にわたって人工物が生体内に存在す
る場合、局所の生体組織(骨)の変形や、その近傍の軟
組織の硬質化などを生じ、このため、切除手術を要する
ことなどがある。
【0005】上記のような問題点に対処するためには生
体内に挿入される充填材又は補綴材が生体組織の誘起と
置換に要する要件を、細胞レベルで満足させ得ることが
重要である。すなわち、生体組織に対する骨食細胞(オ
ステオリーシス)、骨再生細胞(オステオプラスト)の
活性化を適切に促進し、骨破壊細胞(オクテオクラス
ト)、および軟組織の硬質化を促進するコラーゲン繊維
の侵入、発達並びに骨組織の硬質化を抑制し、かつ、赤
血球、体液などの進入や、毛細血管の発達を阻害しない
ことが重要である。
【0006】上記のような要件を満たすためには、生体
内に挿入される充填材又は補綴材は、生体に対し、良好
な親和性、特に生体的対応性(バイオレスポンシビリテ
イ)を有するとともに、所望細胞の活性化のために良好
な居住増殖空間を与え得るとともに、忌避すべき細胞の
侵入を防止し、かつ、コラーゲン繊維の異常発達による
骨組織の硬質化を防止できるものであることが必要であ
り、このような多孔質材料を効率よく製造する方法の開
発が強く望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、生体
内骨組織の再生すなわち新生骨の誘起その他の医療
用途、電子材料、遺伝子工学用材料などの用途に有用な
多孔質セラミック材料の製造方法を提供することであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明方法により製造さ
れる多孔質セラミック材料は、燐酸カルシウム化合物の
焼結多孔質体からなり、前記多孔質体中に、通路状に伸
びた多数の毛細管状空隙と、1〜600μm の孔径を有
する多数の球形空孔とが形成されており、前記毛細管状
空隙通路の径が1〜30μm の範囲内にあり、但し、前
記球形空孔の孔径よりも小さく、前記球形空孔と、前記
多孔質体の外部空間との間、および前記球形空孔相互の
が、前記多数の毛細管状空隙通路によって連通してい
ものである
【0009】上記の多孔質セラミック材料は、下記の
発明方法によって製造することができる。すなわち、本
発明の多孔質セラミック材料の製造方法は、100重量
部の卵白を泡立てて、孔径1〜600μm の多数の球形
気泡を形成し、卵白気泡体を、30〜120重量部の燐
酸カルシウム化合物粉末に混合し、この混合物を所望形
状寸法の型枠に流し込むことによって成形し、成形され
た前記混合物を120〜150℃の温度に加熱して卵白
を硬化させ、次に500〜700℃の温度に加熱して、
卵白を炭化し、次に、酸素含有雰囲気中で800℃〜1
350℃の温度に加熱して、前記炭化物を燃焼除去する
とともに前記燐酸カルシウム化合物粉末を焼結し、それ
によって1〜600μmの孔径を有する多数の球形空孔
と、それらを相互に、かつ外部空間に連通し、1〜30
μmの、但し、前記球形空孔よりも小さな径を有する多
数の毛細管状空隙通路を形成することを特徴とするもの
である。
【0010】また、本発明の多孔質セラミック材料の他
の製造方法は、100重量部の卵白を泡立てて孔径1〜
600μm の多数の球形気泡を形成し、この卵白気泡体
を、30〜120重量部の燐酸カルシウム化合物粉末
と、1〜5重量部の長さ5mm以下と直径1〜30μm と
を有する有機繊維とを混合し、この混合物を所望形状寸
法型枠に流し込むことにより成形し成形された前記混合
物を120〜150℃の温度に加熱して卵白を硬化さ
せ、次に500〜700℃の温度に加熱して前記卵白お
よび繊維を炭化し、次に、酸素含有雰囲気中で800℃
〜1350℃の温度に加熱して、前記炭化物を燃焼除去
するとともに前記燐酸カルシウム化合物粉末を焼結し、
それによって1〜600μmの孔径を有する多数の球形
空孔と、それらを相互に、かつ外部空間に連通し、1〜
30μmの、但し、前記球形空孔よりも小さな径を有す
る多数の毛細管状空隙通路を形成することを特徴とする
ものである。
【0011
【作用】本発明方法により製造される多孔質セラミック
材料は、燐酸カルシウム化合物の焼結多孔質体からなる
ものである。本発明方法に使用される燐酸カルシウム化
合物は、 CaHPO4 Ca3(PO4)2 Ca5(PO4)3 OH Ca4 O (PO4)2 Ca10(PO4)6(OH)2 CaP4 11 Ca(PO3)2 Ca2 2 7 Ca(H2 PO4)2 ・H2 O などを主成分とするもので、ヒドロキシアパタイトと呼
ばれる一群の化合物を包含する。ヒドロキシアパタイト
は、組成式Ca5 (PO4)3 OH又は、Ca10(PO4)
6(OH)2を有する化合物を基本成分とするもので、Ca
成分の一部分は、Sr,Ba,Mg,Fe,Al,Y,
La,Na,K,Hなどの1種以上で置換されていても
よく、また(PO4 )成分の一部分が、VO4 ,B
3 ,SO4 ,CO3 ,SiO4 などの1種以上で置換
されていてもよく、更に(OH)成分の一部分が、F,
Cl,O,CO3 などの1種以上で置換されていてもよ
い。ヒドロキシアパタイトは、通常の結晶体でもよく、
或は、同型固溶体、置換型固溶体、および侵入型固溶体
のいづれであってもよく、また、非量論的格子欠陥を含
むものであってもよい。
【0012】一般に、本発明方法に用いる燐酸カルシウ
ム化合物は、そのカルシウム(Ca)と燐(P)との原
子比が1.30〜1.80の範囲内にあるものが好まし
く、1.60〜1.67の範囲内にあるものがより好ま
しい。本発明に用いられる燐酸カルシウム化合物として
は、燐酸三カルシウム〔Ca 3 (PO4)2 〕、ヒドロキ
シアパタイト〔Ca5(PO4)3 OH〕および、Ca
10(PO4)6(OH)2 が好ましく、特にゾルゲル法によ
って合成され凍結乾燥されたものが好ましい。また、燐
酸カルシウム化合物は800〜1350℃の温度で焼結
されたものであることが好ましく、この焼結温度は85
0〜1200℃であることがより好ましい。
【0013本発明方法により得られる多孔質セラミッ
ク材料において、燐酸カルシウム化合物は粉末の形状で
焼結されており、従って互に接触焼結している粉末粒子
の間に微細な空隙を有することができる。本発明方法に
より得られる多孔質セラミック材料の燐酸カルシウム多
孔質体は、任意の形状および寸法を有するものであって
もよく、その内部には、多数の通路状に伸びた毛細管状
空隙と、1〜600μm 、好ましくは3〜00μm
より好ましくは30〜600μmの孔径を有する多数の
球形空孔とが形成されていて、この毛細管状空隙通路の
径が1〜30μm 、好ましくは2〜30μm の範囲内に
あり、また、前記球形空孔と、前記多孔質体の外部空間
との間が、前記多数の毛細管状空隙通路を介して連通し
ているものである。また球形空孔は互に、毛細管状空隙
通路を介して連通している。
【0014】焼結多孔質体は、40〜90%の気孔率を
有することが好ましく、60〜70%の気孔率を有する
ことがより好ましい。焼結多孔質体内の空孔は真球又は
それに近い形状を有することが好ましく、また多孔質体
内に均一に分布していることが好ましい。この空孔は、
セラミック材料が、生体内に埋め込まれたとき、骨食細
胞、骨再生細胞などを生物学的に活性化するための居住
空間を提供するものである。骨再生細胞等はこの空孔、
特に球形空孔に滞留するのを非常に好むのである。この
ために空孔の孔径は1〜600μm の範囲にあることが
必要であり、好ましくは10〜300μm である。孔径
が1〜600μm の範囲外の空孔は、上記細胞に対し、
良好な居住空間を与えることができない。
【0015】空孔の形状が真球、又は、これに近い球形
である場合、得られる多孔質材料の機械的強度が高い。
従って、この多孔質材料が、生体内に埋め込まれたと
き、それが新生骨によってリターンオーバーされるま
で、高い機械的強度を保持し続け、その間の骨折を防止
することができる。焼結多孔質体内の毛細管状空隙通路
は、球形空孔を相互に、かつ、多孔質体の外部空間に連
するものであって、この通路を通って、前記骨食細
胞、骨再生細胞、赤血球体液などが自由に多孔質体内に
進入することができ、かつ毛細血管の発達が促進され
る。しかしながら、この毛細管状空隙通路の径は1〜3
0μm の範囲、好ましくは2〜30μm の範囲内にある
ため骨破壊細胞やコラーゲン繊維は、多孔質体内の毛細
管状空隙通路へ進入し難く、コラーゲン繊維の異常発達
並びに骨組織の硬質化を防ぐことができる。すなわち、
本発明の多孔質体において、毛細管状空隙通路は、バイ
オフイルターとしての機能を兼ねそなえるものである。
【0016】上記毛細管状空隙通路の径が1μm よりも
小さくなると、骨食細胞、骨再生細胞、赤血球体液など
の多孔質内進入が困難となり、また30μm より大きく
なると、破壊細胞やコラーゲン繊維の侵入および発達を
許し、このため骨の再生を阻害し、また、再生骨組織
や、その近傍の組織の硬質化を招くようになる。本発明
方法により得られる多孔質セラミック材料において、多
孔質体中の球形空孔は、多数の毛細管状空隙通路を介し
て相互に連通されており、これによって、多孔質体の食
尽および生体組織の再成(ターンオーバー)を促進する
こと、および骨組織のターンオーバー完了後骨が再生す
る時から生ずる骨破壊細胞の活性化部分を最初の再生速
度から予見して異常に進み過ぎる骨の侵食行為(骨の再
吸収)を制御することができる。
【0017本発明方法において毛細管状空隙通路は
(1) 有機繊維の燃焼により形成される通路および(2)
硬化卵白の燃焼により発生するガスにより形成される通
路である。中でも、有機繊維の燃焼により形成される通
路は直径の制御が良好にできる点で好ましい。本発明方
法により得られる多孔質セラミック材料は、充填、又は
補綴すべき欠損部又は空隙部の形状寸法に対応する形状
寸法に容易に自由に加工成形することができる。また、
本発明のセラミック材料は粒径0.05〜5mmの顆粒に
成形されていてもよい。
【0018本発明方法により製造された多孔質セラミ
ック材料が生体内に充材又は補綴材として埋め込まれ
たとき、血液、体液、並びに骨食細胞、骨再生細胞は毛
細管状空隙通路を通って進入し、空孔において増殖した
骨食細胞により食尽され、それと同時に、骨再生細胞に
よって骨組織が再生され、所謂ターンオーバーが行われ
る。このとき、多孔質体の外部空間に向って空孔を連通
している毛細管状空隙通路は、1〜30μm の径を有し
ているので、骨破壊細胞やコラーゲン繊維は、多孔質体
内の毛細管状空隙通路へ侵入し難く、コラーゲン繊維の
異常発達並びにその硬質化を防ぐことが出来る。従って
再生された骨の軟組織が配壊されたり、コラーゲン繊維
により硬質化することがない。従って、本発明の多孔質
セラミック材料は、新生骨を誘起し生体内で育成された
正常な骨組織によって置き換えられる。
【0019】上述のように、正常な骨組織によって、
ーンオーバーされ得る多孔質セラミック材料は新規であ
り、本発明方法によって初めて実現することのできたも
のである。
【0020】本発明の多孔質セラミック材料を製造する
ための第1の方法は、100重量部の卵白を泡立てて、
孔径1〜600μm の多数の球形気泡を形成し、卵白気
泡体を、30〜120重量部の燐酸カルシウム化合物粉
末に混合し、この混合物を所望形状寸法の型枠に流し込
み成形し、成形された前記混合物を120〜150℃の
温度に加熱して卵白を硬化させ、次に500〜700℃
の温度に加熱して、卵白を炭化し、次に、酸素含有雰囲
気中で800℃〜1350℃の温度に加熱して、前記炭
化物を燃焼除去するとともに前記燐酸カルシウム化合物
粉末を焼結することを含むものである。
【0021】一般に、本発明の多孔質セラミック材料製
造方法に用いられる燐酸カルシウム化合物粉末として
は、0.05〜10μm の粒径を有するものが好まし
い。特に好ましい燐酸カルシウム化合物粉末は、板状に
発達した結晶部分を含むことが好ましく、SEM(走査
電子顕微鏡)に基く観測結果によれば粉末粒子の30%
以下が1μm 以上の粒径を有し、70%以上が1μm 以
下の粒径を有するような粒径分布を有するものが好まし
い。
【0022】卵白中に所望の孔径の気泡を形成するには
任意の方法、例えば乳化用ミキサーを使用して卵白をホ
イップし、その液面を軽くなでるようにしてスライドガ
ラス上に卵白気泡体のサンプルを採取し、これを顕微鏡
観察して気泡の孔径を測定する。この操作を、所望の孔
径が得られる迄繰り返えす。次に所定量の燐酸カルシウ
ム化合物粉末を加え再び混合を繰り返す。このとき適当
な気孔制御剤、例えばオレイン酸、マレイン酸などの脂
肪酸および/又はイソプロピルアルコール、イソブチル
アルコールなどの脂肪族アルコール、を少量添加しても
よい。
【0023】得られた混合物を所定の形状および寸法に
成形する。成形方法および装置は、焼結用成形工程に用
いられている任意のものを用いることができるが、一般
には型枠を用いる流し込み成形が用いられている。得ら
れた成形物を120〜150℃の温度に、好ましくは6
0〜120分間加熱して卵白を硬化させる。このとき加
熱雰囲気の相対湿度を30〜70%に調節することが好
ましく、また、昇温速度を5〜10℃/分に規制するこ
とが好ましい。この硬化した卵白は気泡のフレームワー
クを強化する。
【0024】次に、成形物を500〜700℃の温度に
好ましくは120〜180分間加熱して卵白を炭化す
る。次に、成形物を酸素含有雰囲気、例えば空気中で、
800〜1350℃、好ましくは850〜1200℃に
加熱し、炭化物を燃焼除去し、燐酸カルシウム化合物粉
末を焼結する。このときの加熱時間は、一般に1〜3時
間程度である。
【0025】上記の卵白硬化、卵白炭化および、炭化物
燃焼の間に発生したガスは、多孔質体外に逃散するが、
このとき多数の毛細管状空隙通路が形成され、また卵白
気泡体の球形気泡に対応して球形空孔が形成される。そ
して、空孔は毛細管状空隙通路を介して多孔質体外部空
間に連通し、また、空孔相互間も毛細管状空隙通路を介
して連通している。このようにして形成される毛細管状
空隙通路の径は、球形空孔の孔径よりも小さい。
【0026】上記の製造方法において、100重量部の
燐酸カルシウム化合物粉末に対し、1〜5重量部の、5
mm以下の長さと、1〜30μm の直径とを有する有機繊
維を卵白気泡体に追加して混合することができる。この
場合、卵白硬化加熱後に成形物を500〜700℃の温
度に、好ましくは120〜180分間加熱して、卵白を
炭化するとともに有機繊維も炭化する。これの炭化物は
焼結加熱間に燃焼除去される。
【0027】上記方法における有機繊維は、径1〜30
μm の毛細空隙通路の形成を確実にする効果がある。有
機繊維としては、長さ5mm以下と直径1〜30μm とを
有し、完全燃焼し得るものであれば格別の限定はない
が、一般に、猫、タヌキ、マウスなどの動物繊維で、こ
れらの腹の毛が望ましく、或は、絹繊維、セルローズ繊
維を含めたその他の天然有機繊維、並びに、ポリエステ
ル、ポリプロピレン、ポリアシド、ポリアクリル繊維な
どのような有機合成繊維が好ましい。
【0028
【実施例】本発明を下記実施例により更に説明する。
【0029】実施例1 100gの卵白と3gのオレイン酸との混合物を乳化用
ミキサーを用いてホイップし、時々、その液面をスライ
ドグラスの表面で軽くなでてサンプリングし、これを顕
微鏡で観察し、卵白の球形気泡の最小径が3μm と
なる迄ホイップを続けた。上記卵白気泡体に、90gの
合成ヒドロキシアパタイト(Ca5 (PO4)3 OH、C
a/P原子比=1.67、粒径0.05〜10μm )を
混合した。この混合物を枠型に流し込み成形した。成形
物を相対湿度30%の雰囲気中において、10℃/分の
昇温速度で150℃に昇温し、この温度で180分間加
熱して卵白を硬化させ気泡のフレームワークを形成し
た。次に、この成形物を徐々に昇温して500℃に12
0分間加熱し、卵白を炭化させた。最後に成形物を空気
中で1000℃温度で1時間加熱し、ヒドロキシアパタ
イト粉末を焼結した。
【0030】 得られた多孔質体は76%の気孔率を有
し、これを顕微鏡で観察したところ孔径0〜500μ
m の多数の球形空孔と、12μm の径を有する多数の毛
細管状空隙通路が認められ、空孔と外部との間、空孔相
互間は、前記毛細管状空隙通路により連通していた。上
記多孔質成形物から、1×1×1cmの立方体を切り出
し、その一軸圧縮強度を測定したところ12kg/cm2
あった。
【0031】実施例2 実施例1と同様の操作を行った。但し、5gのポリメチ
ルメタアクリレート繊維(長さ=5〜10μm 、直径=
3〜10μm )を卵白のホイップ工程で追加混合した。
得られたヒドロキシアパタイト多孔質体は実施例2のも
のと同様の球形空孔と毛細管状空隙通路を有してたが、
直径3〜10μm の毛細管状通路が多数認められた。
【0032】実施例3 前記実施例1〜の各々で得られた多孔質体を、直径
0.5cm、長さ1cmの円柱状に切り出し、これをビーグ
ル犬の大腿骨の外科手術によって生じた欠損部に充
た。2週間後に切開観察したところいづれも球形空孔
中に新生骨のしい誘起が認められた。また、2〜3ケ
月後には、多孔質体の外周部から内部に新生骨の発達が
認められ、所謂ターンオーバーが順調に進行し、コラー
ゲン繊維細胞の異常成長や組織の硬質化などの現象は認
められなかった。
【0033
【発明の効果】本発明方法によって得られる多孔質セラ
ミック材料は、1〜600μm 、好ましくは30〜60
0μmの孔径を有する球形空孔と1〜30μm 好まし
くは2〜30μmの径を有する毛細管状空隙通路とを有
するものであるが、この毛細管状空隙通路は、バイオフ
イルターとしての機能を果すことができるので、コラー
ゲン繊維の侵入によるその異常発達やコラーゲン繊維の
触媒作用による骨組織の硬質化や、新生骨の誘起阻害骨
破壊細胞の毛細管状空隙通路への侵入を困難にし、コラ
ーゲン繊維の異常発達によるコラーゲン繊維自身の硬質
化を阻止し、骨食細胞、骨再生細胞、赤血球、体液など
のみを選択的に通過させることができる。また特定孔径
を有する球形空孔は、骨食細胞や骨再生細胞の細胞レベ
ルでの活性化を促進させることができる。従って、本発
明の多孔質セラミック材料を用いることによって、生体
との良好な親和性を保ちながら親生骨の誘起を促進し、
そして骨の再生速度を制御することにより生ずる時間の
経過による骨の再吸収を制御し、骨のターンオーバーを
促進することができる。本発明方法は、上記の生体材料
ばかりでなくICLSI用電子材料、遺伝子工学用媒体
材料等にも有用な多孔質セラミック材料を効率よく生産
することを可能にするものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C04B 35/00 S 8924−4G

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 100重量部卵白を泡立てて、孔径1〜
    600μm の多数の気泡を形成し、卵白気泡体を30〜
    120重量部の燐酸カルシウム化合物粉末に混合し、こ
    の混合物を所望形状寸法の型枠に流し込むことにより成
    形し、成形された前記混合物を120〜150℃の温度
    に加熱して卵白を硬化させ、次に500〜700℃の温
    度に加熱して、卵白を炭化し、次に、酸素含有雰囲気中
    で800℃〜1350℃の温度に加熱して、前記炭化物
    を燃焼除去するとともに前記燐酸カルシウム化合物粉末
    を焼結することを特徴とする多孔質セラミック材料の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 前記卵白硬化加熱工程が、30〜70%
    の相対湿度を有する雰囲気内において、5〜10℃/分
    の昇温速度で行われる、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記燐酸カルシウム化合物粉末が0.0
    5〜10μm の粒径を有する、請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 100重量部の卵白を泡立てて孔径1〜
    600μm の多数の気泡を形成し、この卵白気泡体を、
    30〜120重量部の燐酸カルシウム化合物粉末と1〜
    5重量部の、長さ5mm以下と直径1〜30μm とを有す
    る有機繊維とを混合し、この混合物を所望形状寸法に成
    形し、成形された前記混合物を120〜150℃の温度
    に加熱して卵白を硬化させ、次に500〜700℃の温
    度に加熱して前記卵白および繊維を炭化し、次に、酸素
    含有雰囲気中で800℃〜1350℃の温度に加熱し
    て、前記炭化物を燃焼除去するとともに前記燐酸カルシ
    ウム化合物粉末を焼結することを特徴とする、多孔質セ
    ラミック材料の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記有機繊維が、動物繊維、絹繊維、セ
    ルローズ繊維および/又は有機合成繊維である、請求項
    4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記有機繊維の長さが1μm 〜5mmであ
    る、請求項4または請求項5に記載の方法。
JP24215791A 1991-09-21 1991-09-21 多孔質セラミック材料の製造方法 Expired - Lifetime JPH07115972B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP24215791A JPH07115972B2 (ja) 1991-09-21 1991-09-21 多孔質セラミック材料の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP24215791A JPH07115972B2 (ja) 1991-09-21 1991-09-21 多孔質セラミック材料の製造方法

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP12408783A Division JPS6016879A (ja) 1983-07-09 1983-07-09 多孔質セラミツク材料

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH05270945A true JPH05270945A (ja) 1993-10-19
JPH07115972B2 JPH07115972B2 (ja) 1995-12-13

Family

ID=17085179

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP24215791A Expired - Lifetime JPH07115972B2 (ja) 1991-09-21 1991-09-21 多孔質セラミック材料の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH07115972B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100892906B1 (ko) * 2003-11-27 2009-04-15 호야 가부시키가이샤 다공성 인산칼슘 세라믹 및 그것의 제조 방법

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100892906B1 (ko) * 2003-11-27 2009-04-15 호야 가부시키가이샤 다공성 인산칼슘 세라믹 및 그것의 제조 방법

Also Published As

Publication number Publication date
JPH07115972B2 (ja) 1995-12-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR910001352B1 (ko) 다공성 세라믹물질 및 그의 제조방법
KR101187578B1 (ko) 아파타이트/콜라겐 복합체 섬유를 함유하는 다공체의제조방법
US6221477B1 (en) Material and process for producing the same
US20180000987A1 (en) Porous bone substitutes and method of preparing the same
NL8102354A (nl) Vulstof voor het implanteren in een defekt of hol gedeelte van been.
JPH0359703B2 (ja)
US8399009B2 (en) Bioceramic and biopolymer composite
JPH05305134A (ja) 骨形成用多孔質燐酸カルシウム材
JPH0254303B2 (ja)
CN100591365C (zh) 无机的可再吸收性骨替代材料
KR101762580B1 (ko) 다공성 골이식재 제조방법
JPH0526504B2 (ja)
JPH05270940A (ja) 多孔質セラミック材料の製造方法
JPH05270945A (ja) 多孔質セラミック材料の製造方法
CN109331222B (zh) 可原位形成3d多孔支架的骨修复材料及其制备和应用
JPH05246773A (ja) 多孔質セラミック材料の製造方法
JPH0566909B2 (ja)
KR20110129007A (ko) 과립형 다공성 뼈이식재 및 그 제조 방법
JPH0470026B2 (ja)
JP3470038B2 (ja) 骨修復材およびその製造方法
JPH026375A (ja) 多孔質セラミックス材料の製造方法及び該方法に用いる圧粉体
US20200108179A1 (en) Bone substitute and method for producing bone substitute
Fadli et al. Porous Bioceramics use Albumin as a Pore-Forming Material
KR950010812B1 (ko) 인산 칼슘계 다공질 세라믹스 소결체의 제조방법
JPS6389164A (ja) ブロツク状人工骨