JPH0524863Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案に係るメタルシリンダヘツドガスケツ
トは、内燃機関のシリンダヘツド下面とシリンダ
ブロツク上面との間に挟持して、両面間の気密及
び液密を保持するのに利用する。

（従来の技術） 内燃機関のシリンダヘツド下面とシリンダブロ
ツク上面との間にはシリンダヘツドガスケツトを
挟持して、シリンダ内で発生する高圧の燃焼ガ
ス、或はシリンダブロツクとシリンダヘツドとの
間を流通する冷却水や潤滑油が外部に漏洩するの
を防止している。

第２図は、この様なシリンダヘツドガスケツト
１の１例を示している。このシリンダヘツドガス
ケツト１には、シリンダ頂部の開口形状に合わせ
た円形のボア孔２，２、シリンダヘツドをシリン
ダブロツクに固定する為のボルトを挿通する小円
孔３，３、冷却水や潤滑油を通す為の透孔４，４
が穿設されている。５は各ボア孔２，２の内周縁
部に装着した金属薄板製のグロメツトである。

この様なシリンダヘツドガスケツト１は、従来
はフツク付鉄板或は金網の様な芯材に表裏面に、
アスベスト或は炭素等を主成分とするコンパウン
ドを刷り込んだり、或はこれらのシートを貼着し
て造つていた。ところが、近年ターボチヤージヤ
の普及等により、エンジンの熱負荷が高くなる傾
向が強くなつて、耐熱性の良好なメタルシリンダ
ヘツドガスケツトを使用する場合が多くなつた。
メタルシリンダヘツドガスケツトは、ボア孔２等
を打ち抜き形成した亜鉛メツキ鋼板、ステンレス
鋼板等の金属薄板を複数枚重ね合わせ、ボア孔２
の内周縁部にグロメツト５を装着する事で構成さ
れている。

第３図は、この様な従来のメタルシリンダヘツ
ドガスケツトの１例を示している。この第３図に
例示したメタルシリンダヘツドガスケツトは、１
枚の第一の金属薄板６と２枚の第二の金属薄板
７，７とを、サンドイツチ状に積層する事で構成
されている。この内、２枚の第二の金属薄板７，
７の表裏両面には、ニトリルブタジエンゴム
（NBR）、シリコンゴム等のシール材８，８の層
を、焼き付け等の手段により形成している。

そして、各第二の金属薄板７，７には、ボア孔
２、シリンダヘツド１１をシリンダブロツク１０
に固定する為のボルトを挿通する小円孔、冷却水
や潤滑油を通す為の透孔４を、それぞれ穿設して
いる。又、第一の金属薄板６には、上記第二の金
属薄板７，７と同様、ボア孔２，小円孔、透孔４
を穿設している。更に、第一の金属薄板６に形成
したボア孔２の周縁部には、金属薄板製のグロメ
ツト５を設けている。

上記第一の金属薄板６に穿設した、ボア孔２及
び液体を通す透孔４の周囲部分には、環状の突条
９，９を設けて、各孔２，４周囲部分の押圧力が
高くなる様にしている。

又、上記第一、第二の両金属薄板６，７に穿設
した液体を通す為の透孔４の内、少なくとも一部
の透孔４の大きさは、シリンダブロツク１０の上
面及びシリンダヘツド１１の下面に開口する水孔
１２，１２よりも小さく形成し、この様なメタル
シリンダヘツドガスケツトをシリンダブロツク１
０の上面とシリンダヘツド１１の下面との間で挟
持した際、シリンダブロツク１０の水孔１２から
送り出された冷却水が、上記透孔４によつて流量
を絞られる様にしている。

即ち、シリンダブロツク１０及びシリンダヘツ
ド１１に形成する水孔１２，１２の開口部は、上
記シリンダブロツク１０及びシリンダヘツド１１
の鋳造時に、これら水孔１２，１２を形成する必
要上、本来必要とされる以上に開口面積を有する
場合がある。そこで、この様な水孔１２，１２の
開口に整合する透孔４の大きさを、上記水孔１
２，１２の開口よりも小さくして、冷却水の流量
を適正値に調整している。

（考案が解決しようとする課題） ところが上述の様に構成される従来のメタルシ
リンダヘツドガスケツトに於いては、以下に述べ
る様な不都合を生じた。

即ち、冷却水を通す為の透孔４部分で冷却水の
流量を調節する手段として、上述した様に、メタ
ルシリンダヘツドガスケツトを構成する第一、第
二の両金属薄板６，７に穿設した透孔４を、シリ
ンダブロツク１０の上面及びシリンダヘツド１１
の下面に開口する水孔１２，１２の大きさよりも
小さく形成しているが、この結果として、冷却水
の流れが第二の金属薄板７，７の表面に衝突する
様になり、この衝突によつて第二の金属薄板７，
７の表裏両面に形成したシール材８，８の一部が
剥離してしまう事が避け難い。

特に、エンジンの運転時に高温となる冷却水中
に存在する水蒸気が、シール材８，８を透過し
て、このシール材８，８と第二の金属薄板７，７
との間に入り込み、上記シール材８，８を浮き上
がらせて、シール材８，８の剥離を助長してしま
う。

即ち、シール材８，８として使用されるニトリ
ルブタジエンゴムやシリコンゴムは、完全なガス
バリヤー性（気体不透過性）がない為、高温の冷
却水中に含まれる水蒸気を、僅かとは言え通過さ
せてしまう。シール材８，８と第二の金属薄板
７，７との境界面に入り込んだ水蒸気が気体のま
まであれば、上記境界面に入り込む水蒸気の量と
境界面から外に出る水蒸気の量とが平衡して、特
に問題を生じる事はないが、エンジンの運転停止
に伴なつて境界面に存在する水蒸気が凝縮して水
滴となると、この水滴がシール材８，８を浮き上
がらせてしまう。シール材８，８が浮き上がる
と、この部分からシール材８，８の剥離が進んで
しまう。

この様にシール材８の一部が剥離し、更に剥離
したシール材８の破片が冷却水中に混入すると、
この冷却水を送る為のポンプを故障させる原因と
なつてしまう。

本考案は上述の様な不都合を解消し、シール材
が剥離してポンプを故障させる事のないメタルシ
リンダヘツドガスケツトを提供するものである。

（課題を解決する為の手段） 本考案にメタルシリンダヘツドガスケツトは、
前述した従来のメタルシリンダヘツドガスケツト
と同様に、シリンダヘツドの下面及びシリンダブ
ロツクの上面に開口する水孔に整合する位置に第
一の透孔を形成し、表裏面の何れにもシール材の
層を形成していない第一の金属薄板と、表裏両面
にシール材の層を形成すると共に、上記水孔に整
合する位置に第二の透孔を形成し、上記第一の金
属薄板をサンドイツチ状に挟む２枚の第二の金属
薄板とから構成されている。

上記第一、第二の両金属薄板の互いに整合する
位置にはボア孔を形成している。

更に、本考案のメタルシリンダヘツドガスケツ
トに於いては、上記第一の透孔の大きさを上記水
孔よりも小さくして、上記第一の透孔全体を上記
水孔の内側に位置させ、且つ、第二の透孔の大き
さを上記水孔と同等以上として、上記第二の透孔
の周縁部を上記水孔の内側に突出させなくしてい
る。

（作用） 上述の様に構成される本考案のメタルシリンダ
ヘツドガスケツトの作用自体は、従来のメタルシ
リンダヘツドガスケツトと同様であるが、本考案
のメタルシリンダヘツドガスケツトに於いては、
表裏両面にシール材の層を有する、第二の金属薄
板に形成した第二の透孔の大きさを、シリンダヘ
ツドの下面及びシリンダブロツクの上面に開口す
る水孔と同等以上として、上記第二の透孔の周縁
部を上記水孔の内側に突出させなくした為、上記
シリンダブロツクの上面に開口する水孔から送り
出された冷却水の流れが、上記第二の透孔の周囲
部分に衝突する事がなくなる。

又、冷却水中に存在する水蒸気が各シール材と
第二の金属薄板との境界面に入り込む事が殆どな
くなる。しかも、各シール材は、第二の金属薄板
の表裏面と、シリンダヘツドの下面、シリンダブ
ロツクの上面、第一の金属薄板の表裏面との間で
強く挟持された状態となる為、仮に上記境界面に
水蒸気が入り込み、この境界面で凝縮しても、上
記シール材が浮き上がる事はない。

この結果、上記第二の透孔の周囲部分に被覆し
たシール材が剥離する事がなくなり、剥離したシ
ール材の破片が冷却水を送る為のポンプ内に入り
込み、このポンプを故障させる事がなくなる。

冷却水の流量は、表裏面にシール材の層のない
第一の金属薄板に形成された第一の透孔により、
調節される。

（実施例） 次に、本考案のメタルシリンダヘツドガスケツ
トを、図示の実施例を説明しつつ、更に詳細に説
明する。

第１図は本考案のメタルシリンダヘツドガスケ
ツトの実施例を示す、第２図のＡ−Ａ拡大断面に
相当する図である。

本考案のメタルシリンダヘツドガスケツトは第
一の金属薄板６と、この第一の金属薄板６をサン
ドイツチ状に挟む２枚の第２の金属薄板７，７と
から構成されている。

この内、第一の金属薄板６は、亜鉛メツキ鋼板
或はステンレス鋼板等の金属薄板に、シリンダヘ
ツド１１の下面及びシリンダブロツク１０の上面
に開口する水孔１２，１２に整合自在な第一の透
孔４ａを形成したものである。この第一の金属薄
板６の表裏面には何れも、下述する第二の金属薄
板７，７の場合の様な、シール材の層を形成して
いない。

又、２枚の第二の金属薄板７，７は何れも、亜
鉛メツキ鋼板或はステンレス鋼板等の金属薄板の
表裏両面にシール材８，８の層を、焼付け等の手
段により形成したものを使用している。そして、
この２枚の第二の金属薄板７，７にも、シリンダ
ヘツド１１の下面及びシリンダブロツク１０の上
面に開口する水孔１２，１２に整合自在な、第二
の透孔４ａ，４ｂを形成している。

これら第一、第二の両金属薄板６，７の、シリ
ンダ孔１３に整合する位置には、ボア孔２を設け
ている。又、図示はしないが、各金属薄板６，７
にはボルト挿通用の小円孔を形成している。

更に、本考案のメタルシリンダヘツドガスケツ
トに於いては、上記第一の金属薄板６に形成した
第一の透孔４ａの大きさを、上記シリンダヘツド
１１の下面及びシリンダブロツク１０の上面に開
口する水孔１２，１２よりも小さくして、上記第
一の透孔４ａ全体を上記水孔１２，１２の内側に
位置させている。且つ、上記第二の金属薄板７，
７に形成した第二の透孔４ｂ，４ｂの大きさを、
上記水孔１２，１２と同等以上として、上記第二
の透孔４ｂ，４ｂの周縁部が、水孔１２，１２の
内側に突出しない様にしている。

上記した様な第一、第二の両金属薄板６，７
は、中間に第一の金属薄板６が、この第一の金属
薄板６の表裏両面側に第二の金属薄板７，７が、
それぞれ位置し、これら各金属薄板６，７に形成
した各孔２，４が互いに整合する様に、サンドイ
ツチ状に積層する事で、本考案のメタルシリンダ
ヘツドガスケツトとしている。

更に、第１図に示した実施例に於いては、第一
の金属薄板６のボア孔２の周囲及び第一の透孔４
ａの周囲に環状の突条９，９を形成し、メタルシ
リンダヘツドガスケツトをシリンダヘツド１１の
下面とシリンダブロツク１０の上面との間で挟持
した場合に、この突条９，９形成部分の押圧力が
高くなる様にする事で、より良好なシール性を得
られる様にしている。但し、各突条９，９は、メ
タルシリンダヘツドガスケツトの使用時に於いて
は、シリンダブロツク１０の上面とシリンダヘツ
ド１１の下面との間で完全に押し潰され、第二の
金属薄板７，７の表裏面に設けたシール材８，８
は、第二の金属薄板７，７の表裏面と、シリンダ
ヘツド１１の下面、シリンダブロツク１０の上
面、第一の金属薄板６の表裏面との間で強く挟持
される。

又、ボア孔２の周縁には金属薄板製のグロメツ
ト５を装着し、このグロメツト５装着部の押圧力
が高くなる様にして、ボア孔２の周囲の気密をよ
り良好に保持出来る様にしている。

上述の様に構成される本考案のメタルシリンダ
ヘツドガスケツトは、従来のメタルシリンダヘツ
ドガスケツトと同様、シリンダヘツド１１の下面
とシリンダブロツク１０の上面との間で強く挟持
して使用する。又、その作用自体も従来のメタル
シリンダヘツドガスケツトと同様である。

即ち、本考案のメタルシリンダヘツドガスケツ
トをシリンダヘツド１１の下面とシリンダブロツ
ク１０の上面との間で強く挟持する事により、上
記シリンダヘツド１１の下面及びシリンダブロツ
ク１０の上面が、メタルシリンダヘツドガスケツ
トの表裏面を成す第二の金属薄板７，７の表裏面
に形成されたシール材８，８の層やグロメツト５
の表面と密に当接する。

その結果、シリンダブロツク１０の上面に開口
したシリンダ孔１３内で発生する高圧の燃焼ガス
や、水孔１２，１２内を流通する冷却水が外部に
漏洩する事を防止出来る。

又、各金属薄板６，７の間から流体が漏洩す
る、所謂層間漏れも、各金属薄板６，７の間に存
在するシール材８，８の層によつて、有効に防止
される。

更に、本考案のメタルシリンダヘツドガスケツ
トに於いては、第二の金属薄板７，７に形成した
透孔４ｂ，４ｂの大きさを、上記シリンダヘツド
１１の下面及びシリンダブロツク１０の上面に開
口する水孔１２，１２と同等以上とした為、第二
の金属薄板７，７の表裏面に被覆されたシール材
８，８が冷却水の流れに曝される事がなる。

又、水孔１２内を流通する冷却水中に存在する
水蒸気が、各シール材８，８と第二の金属薄板
７，７の表裏面との境界面に入り込む事が殆どな
くなる。即ち、各シール材８，８と冷却水とは、
極く薄い（例えば20〜50μm程度）シール材８，
８の内周縁のみでしか、冷却水と接触しない為、
このシール材８，８を透過して上記境界面に入り
込む水蒸気の量は殆ど無視出来る程度に僅少にな
る。

しかも、各シール材８，８は、第二の金属薄板
７，７の表裏面と、シリンダヘツド１１の下面、
シリンダブロツク１０の上面、第一の金属薄板６
の表裏面との間で強く挟持されている為、仮に上
記境界面に水蒸気が入り込み、この境界面で凝縮
しても、上記シール材８，８が浮き上がる事はな
い。

この結果、第二の金属薄板７，７の表裏面に形
成されたシール材８，８が剥離して、その破片が
冷却水を送る為のポンプ内に入り込み、このポン
プを故障させる様な事がなくなる。冷却水の流量
調節は、表裏両面の何れにもシール材の層を形成
していない、第一の金属薄板６に形成した、第一
の透孔４ａによつて図られる。

（考案の効果） 本考案のメタルシリンダヘツドガスケツトは以
上に述べた様に構成され作用する為、従来のメタ
ルシリンダヘツドガスケツトと同様の気密性、液
密性を有すると共に、使用に伴なつて金属薄板に
貼着したシール材が剥離し、その破片がポンプ内
に入り込んでこのポンプを故障させる等の事故が
なくなり、エンジンの安定運転に果す効果が大き
い。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案のメタルシリンダヘツドガスケ
ツトの実施例を示す、第２図のＡ−Ａ拡大断面に
相当する図、第２図は従来のシリンダヘツドガス
ケツトの１例を示す平面図、第３図は従来のメタ
ルシリンダヘツドガスケツトの１例を示す第１図
同様の図である。 １……シリンダヘツドガスケツト、２……ボア
孔、３……小円孔、４……透孔、４ａ……第一の
透孔、４ｂ……第二の透孔、５……グロメツト、
６……第一の金属薄板、７……第二の金属薄板、
８……シール材、９……突条、１０……シリンダ
ブロツク、１１……シリンダヘツド、１２……水
孔、１３……シリンダ孔。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シリンダヘツドの下面及びシリンダブロツクの
   上面に開口する水孔に整合する位置に第一の透孔
   を形成し、表裏面の何れにもシール材の層を形成
   していない第一の金属薄板と、表裏両面にシール
   材の層を形成すると共に、上記水孔に整合する位
   置に第二の透孔を形成し、上記第一の金属薄板を
   サンドイツチ状に挟む２枚の第二の金属薄板とか
   ら成り、第一、第二の両金属薄板の互いに整合す
   る位置にボア孔を形成すると共に、上記第一の透
   孔の大きさを上記水孔よりも小さくして、上記第
   一の透孔全体を上記水孔の内側に位置させ、且
   つ、第二の透孔の大きさを上記水孔と同等以上と
   して、上記第二の透孔の周縁部を上記水孔の内側
   に突出させなくした、メタルシリンダヘツドガス
   ケツト。