JPH05246963A - ε−ポリリジン誘導体 - Google Patents

ε−ポリリジン誘導体

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JPH05246963A
JPH05246963A JP4081684A JP8168492A JPH05246963A JP H05246963 A JPH05246963 A JP H05246963A JP 4081684 A JP4081684 A JP 4081684A JP 8168492 A JP8168492 A JP 8168492A JP H05246963 A JPH05246963 A JP H05246963A
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JP
Japan
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compound
polylysine
fatty acid
epsilon
emulsion
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JP4081684A
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Yasuharu Noushiyou
康晴 納庄
Toshinori Ikehara
俊則 池原
Sachiko Sasaya
祥子 笹谷
Shinichi Hashimoto
愼一 橋本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【構成】一般式(1)で表されるポリリジン誘導体又は
その塩、並びに該ポリリジン誘導体及び/又はその塩を
有効成分として含有する乳化剤、抗菌剤、製パン改良剤
及びスポンジ生地改良剤。 【効果】本発明の化合物は乳化剤としての機能が優れて
いるだけでなく、抗菌作用も持ち合わせており、また風
味の点で、既知の乳化剤のような異味異臭が無いことよ
り、特に食品分野において非常に有用であると考えられ
る。さらに、優れた製パン改良効果を有するため、製パ
ン改良剤又はスポンジ生地改良剤としても有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、乳化機能、抗菌性、製
パン改良効果等の食品分野における各種機能を持った新
規化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術・発明が解決しようとする課題】食品分野
において、乳化剤は重要な役割を果たしている。特に油
脂加工食品、即ち、マーガリン、ショートニング、マヨ
ネーズ、ドレッシング等においては、その乳化機能は油
脂を加工する際に不可欠である。また、製パン分野にお
いても、パンの老化防止効果、ボリューム増大効果等の
機能を果たすなど、乳化剤の重要性は大きい。このよう
な多岐にわたる乳化剤の機能を生かすべく、その機能が
生かせるような種々の食品への応用が検討されている。
さらに、化粧品、医薬品分野においても乳化特性を生か
した様々な乳化剤が研究されている。特に化粧品におい
ては人間の肌との親和性、医薬品においてはドラッグデ
リバリーの手段としてマイクロカプセルの技術等に乳化
剤、いわゆる界面活性剤が利用され注目を集めている。
【0003】近年食品分野においても、様々な機能を有
する乳化剤が注目を集めている。例えば、高含水マーガ
リンにおいては乳化力が強いことを特長とする縮合リシ
ノール酸エステル等がある。しかしながら乳化力が強い
ため、エマルションが小さくなり過ぎ、即ち、水滴径が
小さすぎるため、通常水相に添加する呈味成分が食した
後口中でほとんど感じられ無いといった問題が残されて
いる。また、高含水になればなるほど、保存性、即ち、
日持ちが悪くなる。また、パンの老化防止に有効なグリ
セリン脂肪酸エステル、あるいはボリュームアップ効果
を示す琥珀酸モノグリ、ジアセチル酒石酸モノグリ等は
対粉1%以上で効果を示すが、その使用量では明らかに
異味異臭が感じられる。さらに、最近、シュガーエステ
ル類や、中鎖脂肪酸のモノグリセライド等、抗菌活性を
兼ね備えた乳化剤も注目を集めているが、これらはいず
れも単独では抗菌活性を示すが、食品中に添加して使用
した場合はその抗菌活性が低下してしまったり、著しい
苦味等の異味を呈したりしてなかなか満足のいくものが
ないのが現状である。
【0004】一方、最近の食品産業への要望として、健
康指向が叫ばれている。マーガリンにおいても、油脂含
量を減少させた、即ち、水分含量を増加させたマーガリ
ンの開発が要望されている。この高含水マーガリンの開
発に当たり問題となっているのは、先に述べたように乳
化安定性とカビの問題である。即ち、乳化を強くすれ
ば、呈味成分の口中での味発現が遅くなり、逆に乳化を
弱くすれば水滴が不安定となりカビが生え易くなるとい
った問題が起きる。また、抗菌剤を添加すれば苦味等の
異味が発現するようになり、食品としての価値を著しく
低下させることになる。
【0005】ε−ポリリジンは、島、酒井等によって発
見されたストレプトマイセス属に属する、ストレプトマ
イセス、アルプラス、サブスピーシーズ、リジノポリメ
ラス(Streptomyces albulus subsp. lysinopolymerus
)No.346-D株(微工研菌寄第3834号)が産生する天然
の抗菌性物質である[Agric. Biol. Chem., 41, 1807-9
(1977); 45, 2503-8(1983). 日本農芸化学会誌、57, 22
1-6(1983).]。このε−ポリリジンはグラム陽性菌、グ
ラム陰性菌、真菌など広い範囲で菌の増殖を抑制する。
このものはアミノ酸の一種であるリジンが直鎖状につな
がったポリアミノ酸で水に対する溶解度は高く、単独で
は若干の起泡性は示すものの実用的な乳化活性はほとん
ど示さない。
【0006】抗菌活性を示す乳化剤としては、炭素数が
8〜14程度の脂肪酸からなるモノ脂肪酸グリセリンエ
ステルがある(例えば、理研ビタミン製、ポエムM−1
00,ポエムM−200,ポエムM−300等)。これ
らの抗菌活性は、炭素数が8〜14程度の脂肪酸が菌体
の細胞膜や細胞壁を破壊することによると言われてい
る。ところが、これらはいずれも苦味をはじめとする異
味を有し、一部の例外を除いて実際の食品では使用され
ることは難しい。
【0007】苦味と化学構造の関係は岡井等によって系
統的に検討されている(岡井秀雄等、「動物生理」3
(1)3頁〜、1986年)。それによれば、苦味の発
現にはAH基とX基(AH基はプロトン受容基、X基は
疎水性基)が必要で、これら二点がある程度近づいた状
態(4.5オングストローム以内)で苦味が発現する。
従って、苦味をなくするためには疎水性基であるXを何
らかの形でブロックすることが必要である。従来から苦
味消去の方法としてよく用いられているのは、シクロデ
キストリン等の包接化合物、あるいは他の物質で疎水性
基をブロックし、親水性化することによって行なわれる
ことが多かった。しかしながらこのような方法であると
苦味は減少しても乳化剤としての機能は減少することは
明白である。本発明は上記のような従来の実情に鑑みて
なされたものであって、高含水マーガリンに用いた場
合、非常に有利な特長的な乳化効果を示し、かつ抗菌活
性を示し、さらにその使用範囲内では異味異臭がほとん
ど感じられない従来にない優れた機能を兼ね備えた化合
物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、AH基を
アシル化することにより、その苦味発現作用を阻害し、
しかも乳化作用に悪影響を及ぼすことがなくむしろ好影
響を及ぼし、さらに酸成分を利用することによりAH基
の苦味発現作用を阻害し苦味がブロックされるのではな
いかと考えた。鋭意研究の結果、ε−ポリリジンと炭素
数が8以上の脂肪酸を用いることにより、広い抗菌性を
示し、かつ、高含水油中水型(W/O)エマルションに
おいて水滴が大きく水相部の呈味成分の口中での味の感
じ方が速く、しかも安定であるという特長的な乳化特性
を示し、さらに異味異臭がほとんど無いといった優れた
化合物を見い出し本発明を完成するに到った。
【0009】即ち、本発明の要旨は、 (1)一般式(1)で表されるポリリジン誘導体又はそ
の塩、並びに
【化2】 (式中、Rは水素原子、又は炭素数8以上の飽和もしく
は不飽和脂肪酸由来のアシル基を示し、nは20〜30
である。) (2)前記(1)のポリリジン誘導体及び/又はその塩
を有効成分として含有する乳化剤、抗菌剤、製パン改良
剤、スポンジ生地改良剤に関する。
【0010】本発明で用いるε−ポリリジンは、数平均
分子量2500〜3900であり、一般式(1)におけ
るnは20〜30、好ましくは20〜25程度のものが
使用される。このε−ポリリジンは通常、多分散ポリマ
ーである混合物として得られ、本発明においては単分散
ポリマーとして単離して用いてもよいが、通常混合物の
まま用いる。また、ε−ポリリジンの製造方法は特に限
定されることなく、公知の方法、例えば特公昭59−2
0359号公報に記載の製造法等によって得ることがで
きる。ε−ポリリジンに導入する脂肪酸は、炭素数8以
上の飽和もしくは不飽和脂肪酸であれば特に限定されな
いが、炭素数が8より小さいと乳化性が悪くなり、24
以上になると合成の困難さなどを伴うため、望ましくは
炭素数8〜22程度が適当である。また、脂肪酸は飽和
酸であっても不飽和酸であっても大きな違いはないが乳
化特性、抗菌性の面から飽和酸の方が望ましい。さら
に、導入する脂肪酸の量については、合成の際に脂肪酸
の当量数を調整することによって調整可能であり、用い
る用途に応じて適当なHLBの化合物を得ることが可能
である。従って、その導入量は、10〜100当量%と
いう広範囲にわたり、この範囲内で用途に応じて最適な
導入量の化合物が選択される。また、導入する脂肪酸の
種類は、単一の脂肪酸であってもよく二種以上のものを
用いてもよい。更に、脂肪酸の導入量に関しては、各々
のε−ポリリジンに対し均一量で導入されていてもよ
く、不均一に分布した量で導入されていてもよい。
【0011】従って、本発明のポリリジン誘導体は単分
散もしくは多分散混合物であり、脂肪酸由来のアシル基
も単一種もしくは複数種であり、またその導入量も均一
もしくは不均一なものであり、これらのいずれの態様の
ものであってもよい。
【0012】このように、本発明の化合物は、導入する
脂肪酸の種類、量を任意に変えることが可能なため、様
々な用途に応じた化合物の調製が可能である。脂肪酸の
導入方法は特に限定されるわけではなく、各種のアシル
化に使用される公知の方法を適用することができる。例
えば、各種の活性エステルによって脂肪酸を活性化した
後ε−ポリリジンに導入してもよいし、水溶性カルボジ
イミド等の縮合剤を用いることも出来る。さらに脂肪酸
の酸塩化物を用いて合成することも可能である。本発明
の化合物を得る方法としては、上記方法に限られるわけ
ではなく他の既知の方法も適用できることは言うまでも
ない。また、本発明の化合物は塩の形でも食品に応用す
ることもできる。塩として製造する方法も特に限定され
るものではなく、例えば酢酸、塩酸、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム等を適量添加することにより、Ac
OH、HCl、Na、K等の塩とすることができ、さら
に塩の種類を変えることによって乳化性、味などをコン
トロールすることも可能である。
【0013】本発明の化合物は乳化剤の有効成分として
用いることができ、このとき他の公知の乳化剤例えば、
モノ脂肪酸グリセリンエステル類、シュガーエステル類
等と併用してもよい。特に、本発明の化合物を食品用の
乳化剤として用いた場合、ポリリジン残基および脂肪酸
のメチレン鎖により優れた乳化機能を発揮すると同時
に、ほとんど苦味を持たず、無味無臭であり、呈味の点
で制限を受けずに使用することが出来る。また、本発明
の化合物はカビ、乳酸菌、グラム陽性菌、グラム陰性菌
等に対する優れた抗菌活性を有するため、抗菌剤の有効
成分として用いることができる。このとき他の公知の抗
菌剤、例えばソルビン酸、リゾチーム、プロタミン等と
併用してもよい。さらに、本発明の化合物は、優れた製
パン改良効果を有するため、製パン改良剤又はスポンジ
生地改良剤の有効成分として用いることができる。即
ち、パン及びスポンジ生地に要求されるボリュームアッ
プ及びかたさの経日変化(老化)防止に優れた改良効果
を示す。
【0014】本発明の乳化剤、抗菌剤、製パン改良剤又
はスポンジ生地改良剤において、本発明の化合物は有効
成分として含有されるが、含有される本発明の化合物は
単一種のみならず、導入される脂肪酸の互いに異なる複
数の種類を混合して用いてもよく、また塩として製造し
たものを単独あるいは混合して用いてもよい。以上のよ
うな各種の機能を有する本発明の化合物は、その機能を
生かした各種の食品への適用が有効である。そして、本
発明の化合物は構成成分が天然物であるアミノ酸及び脂
肪酸であることから、人体に対する毒性がほとんど無
く、特に食品分野への適用が有効であると考えられる。
【0015】
【実施例】以下、実施例および試験例により本発明をさ
らに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によ
りなんら限定されるものではない。なお、以下で用いる
「部」はすべて「重量部」を意味する。
【0016】実施例1:α−ポリステアロイル−ε−ポ
リリジン(化合物1)の合成 ε−ポリリジン2.97g(1mmol)(株式会社チ
ッソ製)水溶液に、塩化−n−ステアロイル6.97g
(23mmol)(ナカライテスク製)と水酸化ナトリ
ウム0.96g(23mmol)(ナカライテスク製)
水溶液を室温で攪拌下除々に加えた。1時間攪拌後、生
じた結晶を濾取し、エタノール及び水で洗浄後、凍結乾
燥により炭素数18の脂肪酸塩化物によりアシル化され
た目的物(C18−p−Lys)を得た。得られた化合
物は白色ないし弱黄色の粉末で食塩を若干含んだ形で得
られ、水にも有機溶媒にも難溶である。該化合物のフー
リエ変換赤外線吸収スペクトル(パーキンエルマー製F
T−IR,1720X)のデータを図1に示す。
【0017】実施例2:α−ポリラウロイル−ε−ポリ
リジン(化合物2)の合成 ε−ポリリジン2.97g(1mmol)水溶液に、塩
化−n−ラウロイル5.03g(23mmol)(ナカ
ライテスク製)と水酸化ナトリウム0.96g(23m
mol)水溶液を室温で攪拌下除々に加えた。1時間攪
拌後、生じた結晶を濾取し、エタノール及び水で洗浄
後、凍結乾燥により炭素数12の脂肪酸塩化物によりア
シル化された目的物(C12−p−Lys)を得た。得
られた化合物は白色ないし弱黄色の粉末で食塩を若干含
んだ形で得られ、水にも有機溶媒にも難溶である。該化
合物のフーリエ変換赤外線吸収スペクトル(パーキンエ
ルマー製FT−IR,1720X)のデータを図2に示
す。
【0018】実施例3:α−ポリオクタノイル−ε−ポ
リリジン(化合物3)の合成 ε−ポリリジン2.97g(1mmol)水溶液に、塩
化−n−オクタノイル3.74g(23mmol)(ナ
カライテスク製)と水酸化ナトリウム0.96g(23
mmol)水溶液を室温で攪拌下除々に加えた。1時間
攪拌後、生じた結晶を濾取し、エタノール及び水で洗浄
後、凍結乾燥により、炭素数8の脂肪酸塩化物によりア
シル化された目的物(C8−p−Lys)を得た。得ら
れた化合物は白色ないし弱黄色の粉末で食塩を若干含ん
だ形で得られ、水にも有機溶媒にも難溶である。該化合
物のフーリエ変換赤外線吸収スペクトル(パーキンエル
マー製FT−IR,1720X)のデータを図3に示
す。
【0019】試験例1 乳化特性および乳化液の呈味性について以下のように試
験を行った。被験化合物としては実施例1〜3で得られ
た本発明の化合物1〜3を用い、さらに対照としてモノ
ステアリン酸グリセリンエステルであるエマルジーMS
(理研ビタミン製)、モノオクタン酸グリセリンエステ
ルであるポエムM−100(理研ビタミン製)、高含水
油中水型エマルション(W/O)に有効と言われている
縮合リシノール酸エステルであるCR−ED(坂本薬品
工業製)、及び食品において代表的なイオン性乳化剤で
あるレシチン(ツルーレシチン工業製)を用いた。
【0020】乳化特性については、油分30%エマルシ
ョンにおける乳化特性を試験した。即ち、ナタネ油30
部、水70部に上記の各サンプル0.2部、食塩1部を
加え、60℃で1時間ケミスターラーにて攪拌し、乳化
液を100mlメスシリンダーに計り取り室温(25
℃)で放置し、上部に分離してくる油相及び下部に分離
してくる水相の容量を測定した。その結果を図4、図5
に示す。図4に見られるように、本発明の化合物は同様
の脂肪酸側鎖を有するモノ脂肪酸グリセリンエステルに
比べ明らかに水分離、油分離ともに優れていることがわ
かった。また、本発明の化合物群の中では本試験系にお
いては脂肪酸側鎖が長い方が乳化安定性に優れている傾
向がみられた。図5に見られるように、CR−EDの乳
化性は非常に良いものの若干の水分離が見られたが、本
発明の化合物は水分離は全く見られなかった。
【0021】呈味性については、乳化特性試験において
調製された調製直後のエマルション(乳化液)につい
て、5人の訓練されたパネラーにより塩味の感じ方の速
さ及び異味異臭の有無について官能検査を行なった。そ
の結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】対照として用いたポエムM−100は苦味
が非常に強くエマルジーMSも苦味が感じられた。ま
た、レシチン、CR−EDともに独特の異味異臭が感じ
られたが、本発明の化合物についてはいずれも無味無臭
であった。
【0024】試験例2 高含水マーガリンにおける試験例を次のようにして行っ
た。試験例1で用いたエマルションと同様の配合で水相
部に脱脂粉乳を10部(対全体)加えたもの、油相部と
して硬化魚油(融点33℃)を用い、これらを試験例1
と同様の水準、同様の方法で乳化した。それぞれのエマ
ルションを氷上で5℃のステンレスボール上で冷却した
後、15℃に温調されたセラミック三本ロールミル(井
上製作所製)で冷却捏和することにより高含水マーガリ
ン(油分30%)を作製した。これら高含水マーガリン
の物性比較、ならびに呈味性については5人の訓練され
たパネラーにより塩味等の感じ方の速さ及び異味異臭の
有無について官能検査を行なった。その結果を表2に示
す。
【0025】
【表2】
【0026】表2に示すように、本発明の化合物は高含
水マーガリン作製に有効なCR−EDとほぼ同等の良好
なマーガリン物性を示した。また、味の出方において
は、CR−EDを用いたものはほとんど味が感じられな
いのに対して、本発明の化合物は素早く塩味及び脱脂粉
乳によるミルク味を感じた。CR−EDを用いた高含水
マーガリン及び本発明の化合物1を用いた高含水マーガ
リンの乳化状態を顕微鏡写真により確認したところ、C
R−EDによる高含水マーガリンにおける水滴径は約1
〜4μmと非常に小さいが、本発明の化合物1による高
含水マーガリンにおける水滴径はそれに比べはるかに大
きく、約10〜20μmであった。この水滴径の違いが
味の出方の違いに寄与しているものと思われる。
【0027】試験例3 防カビ効果を比較する為に、試験例2で用いた高含水マ
ーガリンと同様の高含水マーガリンを室温(25℃)で
放置し、カビの生え方をチェックした。ポエムM−10
0、エマルジーMS、レシチンについては、高含水マー
ガリン作製直後から水分離などで商品性を失っていたが
一応試験に供した。その結果を表3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】表3に示すように、エマルジーMS、レシ
チンは6日目にして既にカビが生えはじめた。抗菌活性
を示す乳化剤であるポエムM−100は若干カビが生え
始めるのは延びたが9日目で生え始め、乳化の頑強なC
R−EDにおいても10日目でカビが生え始めた。これ
らに対して、本発明の化合物は、14日後においてもカ
ビの発生は認められず高含水マーガリンとしての商品性
を依然維持していた。
【0030】試験例4 製パン改良効果について表4に示す条件で試験を行っ
た。
【0031】
【表4】
【0032】表4に示すような配合及び製パン法におい
て、試験サンプルとして、ジアセチル酒石酸モノ脂肪酸
グリセリンエステルであるPANODAN−AM(グリ
ンステッド製)、本発明の化合物である化合物1、また
はε−ポリリジン単独((株)チッソ製50%デキスト
リン製剤)を1%(対小麦粉)含むパンに対し、製パン
特性、ボリューム(比容積)ならびにかたさの経日変化
(老化)を比較した。その結果を表5、図6及び図7に
示す。
【0033】
【表5】
【0034】表5が示すように、ε−ポリリジン単独に
おいてはボリュームアップ効果は若干有するものの、老
化防止効果は見い出せなかったが、本発明の化合物はい
ずれの評価項目においてもジアセチル酒石酸モノ脂肪酸
グリセリンエステルと同程度あるいはそれ以上の製パン
改良効果を示し、製パン改良剤として有効であることが
わかった。さらに5人の訓練されたパネラーによるパン
の風味の官能検査の結果、いずれの項目においても本発
明の化合物の方が優れていることが明らかとなった。
【0035】試験例5 パンにおける防カビ効果の試験例を次に示す。試験例4
で用いたパンと同様のパン(ワンローフ)をビニール袋
中で保存し、室温(25℃)で放置したときのパン表面
に現れるカビの経日変化を測定した。その結果を表6に
示す。
【0036】
【表6】
【0037】コントロール(無添加サンプル)およびP
ANODAN−AMについては6日目にして既にカビが
発生し以降カビは増え続けたが、ε−ポリリジンを添加
したものは7日目まではカビの発生は認められなかっ
た。本発明の化合物である化合物1を添加したパンにつ
いては9日目まではカビの発生は認められず、10日目
にカビの発生は認められたものの以降の発育は緩やかな
もので、ε−ポリリジン単独よりも更に抗菌活性が強く
なっていると考えられる。
【0038】
【発明の効果】本発明の化合物は乳化剤としての機能が
優れているだけでなく、抗菌作用も持ち合わせており、
また風味の点で、既知の乳化剤のような異味異臭が無い
ことより、特に食品分野において非常に有用であると考
えられる。さらに、優れた製パン改良効果を有するた
め、製パン改良剤又はスポンジ生地改良剤としても有用
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は化合物1の赤外線吸収スペクトル図を示
す。
【図2】図2は化合物2の赤外線吸収スペクトル図を示
す。
【図3】図3は化合物3の赤外線吸収スペクトル図を示
す。
【図4】図4は試験例1における油分30%エマルショ
ンの乳化特性を示す。
【図5】図5は試験例1における油分30%エマルショ
ンの乳化特性を示す。
【図6】図6は試験例4におけるパンのボリュームの比
較グラフを示す。
【図7】図7は試験例4におけるパンの老化特性の比較
グラフを示す。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(1)で表されるポリリジン誘導
    体又はその塩。 【化1】 (式中、Rは水素原子、又は炭素数8以上の飽和もしく
    は不飽和脂肪酸由来のアシル基を示し、nは20〜30
    である。)
  2. 【請求項2】 請求項1記載のポリリジン誘導体及び/
    又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする
    乳化剤。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のポリリジン誘導体及び/
    又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする
    抗菌剤。
  4. 【請求項4】 請求項1記載のポリリジン誘導体及び/
    又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする
    製パン改良剤又はスポンジ生地改良剤。
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