JPH0523826Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ＜産業上の利用分野＞ 本考案は、内燃機関の燃料噴射率制御装置に関
するものである。

＜従来の技術＞ 内燃機関の燃料噴射は、噴射ポンプより圧送さ
れる燃料圧で燃料噴射弁のニードル弁軸を押し上
げて噴孔を開口し、燃料を噴孔から霧にして噴射
している。２段開弁圧式燃料噴射弁は、燃料圧の
低、高に基づいてニードル弁軸の開弁リフトが制
御される。

＜考案が解決しようとする課題＞ 前記ニードル弁軸を押し上げる圧力、すなわ
ち、噴射開始の圧力はノズルスプリングの張力を
調整ねじで調整することによつて設定されてい
る。この場合、燃料噴射の初期、中期及び後期に
渡つて噴射率を変更することができず燃費、排煙
に影響を及ぼしている。ことに初期噴射率を低く
押さえることが困難であり、エンジン騒音が大き
くなる。また、噴射終りの噴射切れが悪く、
HC、白煙の排出が大となる等の問題がある。

＜課題を解決するための手段＞ 本考案は、上記従来の問題点を解決した燃料噴
射制御装置を提供するもので、その構成は、ノズ
ル本体の噴孔に噴射ポンプから圧送される燃料を
導く燃料通路と、前記燃料通路の燃料圧によつて
押し上げられ前記噴孔を開閉するニードル弁軸
と、このニードル弁軸の先端部周囲に設けられた
燃料溜り室と、前記ニードル弁軸と同軸線で連結
した第１プレツシヤ軸と、ノズル本体に設けられ
た第１スプリング室に備えられ前記第１プレツシ
ヤ軸を押圧し前記ニードル弁軸に第１開弁圧を付
与する第１スプリングと、前記第１プレツシヤ軸
と同軸線で上下動可能に設けた第２プレツシヤ軸
と、前記第１スプリング室と通路を介して連通
し、かつ低圧側に連通している第２スプリング室
に備えられ前記第２プレツシヤ軸を押圧し前記第
１プレツシヤ軸の上昇で第２プレツシヤ軸に当接
後に前記ニードル弁軸に第２開弁圧を付与する第
２スプリングとからなる内燃機関の２段開弁圧式
燃料噴射装置において、前記ニードル弁軸並びに
第１プレツシヤ軸に設けられた前記燃料溜り室と
第１スプリング室とを連通するリーケージ通路
と、このリーケージ通路に設けたオリフイスと、
前記第１プレツシヤ軸の上端面に設けられ、前記
第２プレツシヤ軸の下端が嵌脱して前記第１プレ
ツシヤ軸のリーケージ通路を開閉する凹穴と、前
記第１スプリング室と第２スプリング室とを連通
している通路を開閉するために前記第２プレツシ
ヤ軸に設けたフランジとを備えたものである。

＜作用＞ 本考案は、燃料噴射の初期の燃料圧が低いとき
には燃料の一部がオリフイスを介してリーケージ
通路より第１スプリング室に燃料リークし、初期
噴射率を低くしてニードル弁軸及び第１プレツシ
ヤ軸を徐々に上昇する。

噴射中期で燃料圧が第１段開弁圧より高くなる
と燃料リークが止められ、燃料溜り室の圧力が急
上昇し噴孔から燃料が急激に噴射する。そして、
第１スプリング室内のリーク燃料は第２スプリン
グ室に入り、リターン通路よりタンクの低圧側へ
排出され、第１スプリング室の圧力を大気圧近辺
まで急低下する。

噴射後期では、ニードル弁軸の下降によりリー
ケージ通路が負圧となり燃料溜り室から燃料をオ
リフイスを介して吸い戻し、噴射終りの燃料切れ
を良好にする。

＜実施例＞ 以下本考案の実施例を図面に基づいて説明す
る。第１図及び第２図において、１はノズル本体
であり、その先端に噴孔３が設けられている。

２は噴射ポンプより圧送される燃料を噴孔３に
導くための燃料通路である。４は燃料通路２の燃
料圧によつて押し上げられ噴孔３を開閉するニー
ドル弁軸であり、このニードル弁軸４の先端部周
囲には燃料溜り室５が設けられている。

６は第１プレツシヤ軸であり、その下端はニー
ドル弁軸４と連結している。第１プレツシヤ軸６
の上端はノズル本体１に設けられている第１スプ
リング室７内に臨み、第１スプリング室７内に介
装した第１スプリング８によつて下方に押圧さ
れ、ニードル弁軸４に第１開弁圧を付与してい
る。

９は前記第１プレツシヤ軸６の直上で同軸線上
に設けられ上下動可能な第２プレツシヤ軸であ
る。この第２プレツシヤ軸９の上端はノズル本体
１に設けられている第２スプリング室１０内に臨
み、第２スプリング室１０内に介装した第２スプ
リング１１により下方に押圧されている。

この第２スプリング１１により押し下げられる
第２プレツシヤ軸９の下降端位置では第２プレツ
シヤ軸９の下端と第１プレツシヤ軸６の上端との
間に所定のギヤツプを有している。

従つて、このギヤツプ分だけ第１プレツシヤ軸
６、すなわちニードル弁軸４が上昇すると、第１
プレツシヤ軸６は第２プレツシヤ軸９に当接し、
第２スプリング１１はニードル弁軸４に対し第２
開弁圧を付与する。

本考案は前記の２段開弁圧式燃料噴射弁におい
て次のような構成としたものである。前記ニード
ル弁軸４並びに第１プレツシヤ軸６に燃料溜り室
５と第１スプリング室７とを連通するリーケージ
通路１２を設け、このリーケージ通路１２にオリ
フイス１３を設ける。

また、第３図で示すように第１プレツシヤ軸６
の上端には第２プレツシヤ軸９の下端１５が嵌り
込む凹穴１４が形成され、第１プレツシヤ軸６が
上昇したときに第２プレツシヤ軸９の下端１５が
嵌合し、リーケージ通路１２を閉じるようになつ
ている。

さらに第１スプリング室７と第２スプリング室
１０との間は、第４図でも示すように第２プレツ
シヤ軸９が摺動自在に貫通するスリーブ１６の内
周面に軸線方向に設けた溝通路１７を介して連通
している。この溝通路１７は第２プレツシヤ軸９
の下降端位置で第２プレツシヤ軸９に形成された
フランジ２０によつて閉じられている。そして、
第２スプリング室１０はノズル本体１の上端に設
けたリターンパイプ１８と連通する通路１９が設
けられている。前記リターンパイプ１８は燃料タ
ンクの低圧側に通じている。

次に本考案の作用について説明する。燃料ポン
プから燃料通路２に圧送される燃料圧が第１スプ
リング７の押圧力より大となつたところでニード
ル弁軸４は上昇し噴孔３より燃料を噴射する。こ
のとき、燃料の一部がオリフイス１３を介してリ
ーケージ通路１２を通り第１スプリング室７内に
燃料リークし、噴射初期の燃料噴射率を低下して
ニードル弁軸４並びに第１プレツシヤ軸６は徐々
に上昇する。

次いで、噴射中期の燃料圧が第１スプリング８
の押圧力より大きくなると、第１プレツシヤ軸６
はさらに上昇して第２プレツシヤ軸９に当接し、
第１プレツシヤ軸６の上端の凹穴１４に第２プレ
ツシヤ軸９の下端が嵌合され、リーケージ通路１
２を閉じて燃料リークが止められる。これにより
燃料溜り室５の圧力が急上昇して噴孔３から燃料
が急激に噴射される。

その次に燃料圧が第２スプリング１１の押圧力
よりさらに大きくなると第２プレツシヤ軸９が上
昇しフランジ２０が溝通路１７を開くため、第１
スプリング室７内にリークされた燃料が溝通路１
７より第２スプリング室１０に入り、さらに第２
スプリング室１０からリターンパイプ１８を通つ
て低圧側へ排出される。これによつて第１スプリ
ング室７の圧力は大気圧の近辺まで急低下し、２
段開弁圧のニードル弁軸４の上昇速度を早める。

このようにして噴射中期より後期になると、燃
料通路２の圧力が低下し、これに伴い燃料溜り室
５の圧力が低下する。従つてニードル弁軸４は下
降し、第２プレツシヤ軸９のフランジ２０が溝通
路１７を閉じた時点から第１スプリング室７並び
にリーケージ通路１２は負圧となる。この負圧に
よつて燃料溜り室５の燃料をオリフイス１３を介
して第１スプリング室７に吸い戻し作用を行い噴
孔３の噴射切れを良好にし、燃料滴れを防止し、
ニードル弁軸４の着座で噴射が終了する。

次の噴射サイクルまでの間に、燃料通路２、燃
料溜り室５、リーケージ通路１２及び第１スプリ
ング室７の圧力はオリフイス１３のサイズに応じ
てバランスする。従つて、次の噴射サイクルは、
オリフイス１３による圧力降下量に応じて第１段
目の開弁圧のアツプとなり、また、低速回転時の
開弁圧のアツプが図られる。

＜考案の効果＞ 以上のように本考案によると、ニードル弁軸並
びに第１プレツシヤ軸に設けた燃料溜り室と第１
プレツシヤ室とを連通するリーケージ通路のオリ
フイスによつて、燃料溜り室から第１プレツシヤ
室に燃料を絞つてリークするため、ニードル弁軸
並びに第１プレツシヤ軸は徐々に上昇し、初期噴
射の急激な噴射圧の上昇が抑制され、第５図にお
ける従来の初期、中期、後期の噴射率の曲線Ａに
対し本考案の噴射率曲線Ｂで示すように、初期噴
射率を低く抑え、噴射中期の頂点を噴射後期側へ
ずらすことができ、エンジン騒音の低減、燃費、
排煙の改善が得られる。

また、噴射後期に第２プレツシヤ軸に設けたフ
ランジにより第１スプリング室と第２スプリング
室とを連通する通路を閉じてリーケージ通路を負
圧にして燃料溜り室の燃料を第１スプリング室に
吸い戻しを行うため、噴射後期の噴射切れを向上
し、HC、白煙の排出を低減する効果を有してい
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案装置の断面図、第２図は第１図
矢印部分の拡大断面図、第３図は第１図矢印
部分の拡大断面図、第４図は第１図矢印部分の
拡大断面図、第５図は従来と本考案との燃料噴射
率の比較曲線図である。 １……ノズル本体、２……燃料通路、３……噴
孔、４……ニードル弁軸、５……燃料溜り室、６
……第１プレツシヤ軸、７……第１スプリング
室、９……第２プレツシヤ軸、１０……第２スプ
リング室、１２……リーケージ通路、１３……オ
リフイス、１４……凹穴、１６……溝通路、１８
……リターンパイプ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ノズル本体の噴孔に噴射ポンプから圧送される
   燃料を導く燃料通路と、前記燃料通路の燃料圧に
   よつて押し上げられ前記噴孔を開閉するニードル
   弁軸と、このニードル弁軸の先端部周囲に設けら
   れた燃料溜り室と、前記ニードル弁軸と同軸線で
   連結した第１プレツシヤ軸と、ノズル本体に設け
   られた第１スプリング室に備えられ前記第１プレ
   ツシヤ軸を押圧し前記ニードル弁軸に第１開弁圧
   を付与する第１スプリングと、前記第１プレツシ
   ヤ軸と同軸線で上下動可能に設けた第２プレツシ
   ヤ軸と、前記第１スプリング室と通路を介して連
   通し、かつ低圧側に連通している第２スプリング
   室に備えられ前記第２プレツシヤ軸を押圧し前記
   第１プレツシヤ軸の上昇で第２プレツシヤ軸に当
   接後に前記ニードル弁軸に第２開弁圧を付与する
   第２スプリングとからなる内燃機関の２段開弁圧
   式燃料噴射装置において、前記ニードル弁軸並び
   に第１プレツシヤ軸に設けられた前記燃料溜り室
   と第１スプリング室とを連通するリーケージ通路
   と、このリーケージ通路に設けたオリフイスと、
   前記第１プレツシヤ軸の上端面に設けられ、前記
   第２プレツシヤ軸の下端が嵌脱して前記第１プレ
   ツシヤ軸のリーケージ通路を開閉する凹穴と、前
   記第１スプリング室と第２スプリング室とを連通
   している通路を開閉するために前記第２プレツシ
   ヤ軸に設けたフランジとを備えたことを特徴とす
   る燃料噴射率制御装置。