JP2574067B2 - 噴射率制御機構付燃料噴射ノズル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はエンジンに燃料を噴射す
る噴射ノズルに関する。更に詳しくはいわゆる副噴射が
可能な噴射ノズルに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】燃料噴射ノズルとして、プレッシャスプ
リングによりプレッシャピンを介してニードルバルブが
ノズル先端部のシート面に圧接され、このニードルバル
ブの周囲に形成された燃料溜り室に燃料噴射ポンプから
圧送された燃料が貯えられ、この燃料溜り室の圧力がプ
レッシャスプリングの押下げ力を越えるときニードルバ
ルブがシート面から離れて燃料溜り室に貯えられた燃料
を燃料溜り室から噴射するように構成されたものが知ら
れている。従来、エンジンの吸入行程で少量の燃料を副
噴射した後に、圧縮行程で残余の燃料を主噴射すると、
エンジンのシリンダ内での燃焼が向上し、排気ガス中の
窒素酸化物の発生が低減することを利用して、１つのエ
ンジンに対して燃料噴射ポンプを２つ設け、１つのシリ
ンダに対して副噴射用ノズル及び主噴射用ノズルをそれ
ぞれ設けた燃料噴射を２系統で行う装置が提案されてい
る。

【０００３】しかし、上記装置は２つの燃料噴射ポンプ
や１シリンダ当り２つの噴射ノズルを必要とし、コスト
を増大させ、かつ構造が複雑になる問題点があった。

【０００４】これらの点を解消するために、内燃機関用
燃料噴射弁が開示されている（特開昭62-240467）。こ
の装置ではニードルバルブの上端にプレッシャスプリン
グが圧接され、ニードルバルブの上端より所定の間隔を
あけて上方にプレッシャピンが配設され、プレッシャピ
ンの上端に第２スプリングが圧接されるように構成され
る。またニードルバルブを押下げる方向の圧力を保持す
る背圧室がニードルバルブの上端に形成され、燃料噴射
ポンプからニードルバルブの周囲に形成された燃料溜り
室に連通する燃料通路が更にこの背圧室に連通するよう
に形成される。この燃料通路の途中の背圧室への流入部
付近に開閉弁が設けられ、開閉弁をバイパスするバイパ
ス通路の途中にバイパス絞りが設けられている。この装
置は開閉弁の開閉により背圧室内の圧力が調整され、副
噴射と主噴射によりシリンダに順次燃料が噴射されるの
で、シリンダ内での燃焼が向上するようになっている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記装置はバ
イパス通路のバイパス絞りを極めて小さく形成しても、
燃料圧が燃料内を極めて高速で伝播するため、副噴射及
び主噴射を所望のタイミングと噴射率で行うことが難し
い不具合があった。また上記装置は開閉弁の開閉により
騒音が増大する問題点があった。

【０００６】本発明の目的は、簡単な構造で騒音を増大
させずに副噴射及び主噴射を適切に行うことができ、エ
ンジン内での燃焼を向上させて窒素酸化物の排出を低減
することのできる噴射率制御機構付燃料噴射ノズルを提
供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、ニードルバル
ブ１７がプレッシャピン２４を介してプレッシャスプリ
ング２６によりノズルボデー１２の先端近傍のシート面
１２ａに圧接され、ニードルバルブ１７の周囲に形成さ
れた燃料溜り室１８に燃料噴射ポンプから燃料入口２０
ａとフィードホール２３を介して圧送された燃料が貯え
られ、燃料溜り室１８の圧力がスプリング２６の押下げ
力を越えるときニードルバルブ１７がシート面１２ａを
離れて燃料溜り室１８に貯えられた燃料を燃料溜り室１
８から噴射する燃料噴射ノズルの改良である。その特徴
ある構成は、スプリング２６により上方に付勢され所定
の距離ｄだけ下降可能に設けられたフリーピストン２７
と、燃料入口２０ａより供給された燃料をフリーピスト
ン２７の上面に導く燃料導入通路２０ｂと、フリーピス
トン２７に形成されフリーピストン２７の最下降時に燃
料導入通路２０ｂとフィードホール２３とを連通する第
１燃料通路２１と、フリーピストン２７の第１燃料通路
２１より所定の距離Ｈだけ下部に形成されフリーピスト
ン２７の最上昇時に燃料導入通路２０ｂとフィードホー
ル２３とを連通する第２燃料通路２２とを備えたところ
にある。

【０００８】

【作用】先ず燃料噴射ポンプより燃料入口２０ａ及び燃
料導入通路２０ｂに燃料が圧送されると、フリーピスト
ン２７が下降する前では第２燃料通路２２及びフィード
ホール２３が連通しているため、燃料溜り室１８に燃料
が供給されニードルバルブ１７が上昇して副噴射が始ま
る。次いで燃料圧によりフリーピストン２７が下降し第
２燃料通路２２がフィードホール２３に連通しなくなる
と、フィードホール２３及び燃料溜り室１８内が減圧
し、圧縮されて弾性力が増大したプレッシャスプリング
２６がニードルバルブ１７を押下げてシリンダ内への燃
料の副噴射が終了する。更に燃料が加圧されて供給さ
れ、フリーピストン２７が所定の距離ｄだけ下降する
と、第１燃料通路２１とフィードホール２３が連通して
燃料圧が燃料溜り室１８に伝播され、プレッシャスプリ
ング２６の弾性力に抗してニードルバルブ１７が押上げ
られ、主噴射が開始する。燃料噴射ポンプが燃料を圧送
しなくなると、ニードルバルブ１７が瞬時に下降し、主
噴射が終了する。また燃料噴射ポンプが燃料を圧送しな
くなると、フリーピストン２７がプレッシャスプリング
２６の弾性力により押上げられる。

【０００９】

【実施例】次に本発明の一実施例を図面に基づいて詳し
く説明する。図１に示すように、この例は直接噴射式エ
ンジンに用いられるホール型ノズルである。ノズルボデ
ー１２がリテーニングナット１３によりノズルホルダ１
４の先端部に固定され、ノズルボデー１２内に形成され
たガイドホール１６にはニードルバルブ１７が昇降自在
に設けられる。ニードルバルブ１７の周囲には燃料溜り
室１８が形成され、この燃料溜り室１８はノズルボデー
１２及びノズルホルダボデー１９に形成されたフィード
ホール２３に連通する。このフィードホール２３は後述
するフリーピストン２７、燃料導入通路２０ｂ及び燃料
入口２０ａを介して図外の噴射ポンプの噴射管に接続さ
れる。ニードルバルブ１７の上端にはニードルジャーナ
ル部１７ａが設けられ、下端にはニードルシート部１７
ｂが設けられる。ニードルジャーナル部１７ａはプレッ
シャピン２４の下端に当接し、このプレッシャピン２４
の上端にはプレッシャスプリング２６が圧接される。ニ
ードルバルブ１７のニードルシート部１７ｂはノズルボ
デー１２の下端近傍のシート面１２ａにプレッシャスプ
リング２６により押付けられる。ノズルボデー１２の下
端には噴孔１２ｂが形成される。また、プレッシャピン
２４が挿入されたノズルホルダボデー１９のスプリング
挿入孔１９ａにはオーバフロー孔１９ｂが連通して設け
られ、このオーバフロー孔１９ｂには図外のオーバフロ
ーパイプが接続される。本実施例の特徴ある構成は、プ
レッシャスプリング２６により上方に付勢されたフリー
ピストン２７が所定の距離ｄだけ下降可能に設けられ、
燃料入口２０ａより供給された燃料が燃料導入通路２０
ｂによりフリーピストン２７の上面に導かれ、フリーピ
ストン２７に燃料導入通路２０ｂとフィードホール２３
とを連通する第１燃料通路２１が形成され、第１燃料通
路２１より所定の距離Ｈだけ下部のフリーピストン２７
に燃料導入通路２０ｂとフィードホール２３とを連通す
る第２燃料通路２２が形成されたところにある。燃料入
口２０ａはキャップ２０の上端に形成され、キャップ２
０はノズルホルダボデー１９の上端に取付けられ、キャ
ップ２０内に燃料導入通路２０ｂが形成される。第１燃
料通路２１はＬ字状に形成され、その下端がフリーピス
トン２７の周面に貫通する部分にはリング状に凹溝２７
ａが形成される。また第２燃料通路２２もＬ字状に形成
され、その上端は第１燃料通路２１の垂直部の下端に接
続され、その下端がフリーピストンの周面に貫通する部
分にはリング状に凹溝２７ｂが形成される。凹溝２７ａ
と凹溝２７ｂとの距離はＨである。フィードホール２３
は略鍵状に形成され、ほぼ垂直な垂直孔部２３ａと、こ
の垂直孔部２３ａの上端に形成された第１水平孔部２３
ｂと、この第１水平孔部２３ｂより所定の距離ｈだけ下
部に第２水平孔部２３ｃとを有する。フリーピストン２
７の最上昇時には第２燃料通路２２が燃料導入通路２０
ｂ及びフィードホール２３の第２水平孔部２３ｃ間を連
通し、フリーピストン２７が下降すると燃料導入通路２
０ｂ及びフィードホール２３間を遮断し、フリーピスト
ン２７の最下降時には第１燃料通路２１が燃料導入通路
２０ｂ及びフィードホール２３の第１水平孔部２３ｂ間
を連通するように構成される。

【００１０】このように構成された噴射率制御機構付燃
料噴射ノズルの動作を図１〜図４に基づいて説明する。
先ず、燃料噴射ポンプにより圧送された燃料が燃料入口
２０ａ、燃料導入通路２０ｂを介してフリーピストン２
７の上面に至ると、第２燃料通路２２とフィードホール
２３の第２水平孔部２３ｃは連通しているため、フィー
ドホール２３の垂直孔部２３ａを介して燃料溜り室１８
に至る。このとき燃料のニードルバルブ１７を押上げる
押上げ面積の方が燃料のフリーピストン２７を押下げる
押下げ面積より小さいため、ニードルバルブ１７の上昇
速度の方がフリーピストン２７の下降速度より大きくな
る。このため、ニードルバルブ１７が上昇して燃料が噴
孔１２ｂからシリンダ内に噴射されて副噴射が開始す
る。フリーピストン２７がプレッシャスプリング２６を
圧縮しながら下降すると、図２に示すように第２燃料通
路２２とフィードホール２３の第２水平孔部２３ｃとが
遮断される。このため、フィードホール２３及び燃料溜
り室１８内の燃料圧が減少するので、プレッシャスプリ
ング２６の弾性力によりニードルバルブ１７が図２の実
線矢印の方向に押下げられてシリンダ内への燃料の副噴
射が終了する。更に、フリーピストン２７が所定の距離
ｄだけ下降すると（図３）、第１燃料通路２１とフィー
ドホール２３の第１水平孔部２３ｂが連通して燃料噴射
ポンプにより更に加圧された燃料圧が燃料溜り室１８に
伝播され、プレッシャスプリング２６の弾性力に抗して
ニードルバルブ１７を図３の実線矢印の方向に押上げ
る。この結果、噴孔１２ｂからシリンダ内に燃料が噴射
され、主噴射が開始する。燃料噴射ポンプが燃料を圧送
しなくなると、プレッシャスプリング２６の弾性力によ
りニードルバルブ１７が瞬時に下降し、主噴射が終了す
る。また燃料噴射ポンプが燃料を圧送しなくなると、フ
リーピストン２７がプレッシャスプリング２６の弾性力
により押上げられる。このため、プレッシャスプリング
２６のニードルバルブ１７の押付け力は初期の値に戻
る。従って図４に示すようなタイミングで副噴射及び主
噴射の噴射率が得られ、シリンダ内での燃料の燃焼を向
上させることができる。またこの後は上記動作が繰返さ
れる。

【００１１】なお、実施例では副噴射時に第２燃料通路
とフィードホールの第２水平孔部が連通し、フリーピス
トンが下降して主噴射時に第１燃料通路とフィードホー
ルの第１水平孔部が連通するように構成したが、これは
一例であってフリーピストンの燃料通路を１本にして副
噴射時にこの燃料通路とフィードホールの第２水平孔部
が連通し、フリーピストンが下降して主噴射時にこの燃
料通路とフィードホールの第１水平孔部が連通するよう
にしてもよい。またフィードホールの水平孔部を１本に
して副噴射時にフリーピストンの第２燃料通路とこの水
平孔部が連通し、フリーピストンが下降して主噴射時に
フリーピストンの第１燃料通路とこの水平孔部が連通す
るようにしてもよい。

【００１２】

【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、プ
レッシャスプリングにより上方に付勢されたフリーピス
トンが所定の距離だけ下降可能に設けられ、燃料入口よ
り供給された燃料が燃料導入通路によりフリーピストン
の上面に導かれ、フリーピストンに燃料導入通路とフィ
ードホールとを連通する第１燃料通路が形成され、第１
燃料通路より所定の距離だけ下部のフリーピストンに燃
料導入通路とフィードホールとを連通する第２燃料通路
が形成されたので、シリンダ内に最初に燃料が副噴射さ
れ、その後に燃料が主噴射されてシリンダ内での燃料の
燃焼を向上させることができる。この結果、窒素酸化物
の排出が低減される。また構造が簡単なので、コストを
大幅に押上げることはない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明一実施例噴射率制御装置付燃料噴射ノズ
ルが副噴射する前の状態を示す断面図。

【図２】その燃料噴射ノズルが副噴射している状態を示
す図１に対応する断面図。

【図３】その燃料噴射ノズルが主噴射する前の状態を示
す図１に対応する断面図。

【図４】その燃料噴射ポンプの噴射タイミングと燃料の
噴射率の関係を示す図。

【符号の説明】

１２ ノズルボデー １２ａ シート面 １７ ニードルバルブ １８ 燃料溜り室 ２０ａ 燃料入口 ２０ｂ 燃料導入通路 ２１ 第１燃料通路 ２２ 第２燃料通路 ２３ フィードホール ２４ プレッシャピン ２６ プレッシャスプリング ２７ フリーピストン

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ニードルバルブ(17)がプレッシャピン(2
   4)を介してプレッシャスプリング(26)によりノズルボデ
   ー(12)の先端近傍のシート面(12a)に圧接され、前記ニ
   ードルバルブ(17)の周囲に形成された燃料溜り室(18)に
   燃料噴射ポンプから燃料入口(20a)とフィードホール(2
   3)を介して圧送された燃料が貯えられ、前記燃料溜り室
   (18)の圧力が前記スプリング(26)の押下げ力を越えると
   き前記ニードルバルブ(17)がシート面(12a)を離れて前
   記燃料溜り室(18)に貯えられた燃料を前記燃料溜り室(1
   8)から噴射する燃料噴射ノズルにおいて、前記スプリン
   グ(26)により上方に付勢され所定の距離(d)だけ下降可
   能に設けられたフリーピストン(27)と、前記燃料入口(2
   0a)より供給された燃料を前記フリーピストン(27)の上
   面に導く燃料導入通路(20b)と、前記フリーピストン(2
   7)に形成され前記フリーピストン(27)の最下降時に前記
   燃料導入通路(20b)と前記フィードホール(23)とを連通
   する第１燃料通路(21)と、前記フリーピストン(27)の前
   記第１燃料通路(21)より所定の距離(H)だけ下部に形成
   され前記フリーピストン(27)の最上昇時に前記燃料導入
   通路(20b)とフィードホール(23)とを連通する第２燃料
   通路(22)とを備えたことを特徴とする噴射率制御機構付
   燃料噴射ノズル。