JPH05225554A - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JPH05225554A
JPH05225554A JP2640892A JP2640892A JPH05225554A JP H05225554 A JPH05225554 A JP H05225554A JP 2640892 A JP2640892 A JP 2640892A JP 2640892 A JP2640892 A JP 2640892A JP H05225554 A JPH05225554 A JP H05225554A
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JP
Japan
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magnetic
magnetic layer
powder
recording
coercive force
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JP2640892A
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Takeo Ito
武男 伊藤
Yasutake Kurata
健剛 倉田
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 広範囲にわたる波長領域において高出力が得
られ、かつオーバーライト時の磁化の残留が低減して広
い温度範囲において一定した記録再生特性を有する高密
度磁気記録媒体を提供する。 【構成】 非磁性基体上に、長波長記録用磁性粉と樹脂
バインダとを含む下層磁性層、および短波長記録用磁性
粉と樹脂バインダとを含む上層磁性層を形成してなる磁
気記録媒体において、前記下層磁性層と前記上層磁性層
の保磁力の温度係数の符号が互いに異なるようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、オーディオ分野、ビデ
オ分野、コンピュータ分野などで使用される磁気テープ
やフロッピーディスクなどの高密度磁気記録媒体に関す
る。
【0002】
【従来の技術】磁気記録媒体は、オーディオ、ビデオ、
コンピュータなどの幅広い分野で多くの情報を記録・再
生する記録媒体として使用されている。従来、塗布型の
磁気記録媒体は、γ−フェライトや鉄粉などの磁性粉と
樹脂バインダを主体としてなる磁性塗料を、ポリエステ
ルフィルムなどの非磁性基体上に塗布することにより得
られる。この磁性塗料には必要に応じて、さらに潤滑
剤、研磨材、分散剤、帯電防止剤、あるいは硬化剤など
が添加される。
【0003】ところで、近年、記録すべき情報量が著し
く増大し、これにともない磁気記録媒体の一層の高密度
化と高信頼化が要求されるようになってきている。磁気
記録媒体の記録容量が増大するにつれ、媒体の重要性、
価値も高まり、それだけ耐久性やデータの保存信頼性に
対する要求も厳しくなってきている。
【0004】このような磁気記録媒体に対する高記録密
度化の要求に応える方法の一つとして、磁性粉の粒径を
小さくし、しかもその保磁力(Hc)を高くすることが試み
られている。このように微粒子化により高記録密度化に
対応した磁気記録媒体用の磁性粉としては、現在のとこ
ろ粒径が 0.3μm 以下の金属粉やBa−フェライトなどの
超微粒六方晶系粉末が適している。なぜならば、これら
の磁性粉を高い充填率で平滑に塗布した媒体は、磁性粉
が微細であることに加えて、反磁界効果の影響も受けに
くいため高密度記録が可能になるからである。
【0005】しかしながら一般に、小粒径・高保磁力の
磁性粉を用いた磁性層は、短波長域での記録再生出力は
大きいものの、長波長域での記録再生出力が低下すると
いう欠点を有している。
【0006】このような欠点を補うための一手段とし
て、高保磁力のCo−γフェライト粉を使用した磁性層を
上層磁性層として設け、その下側に、たとえば低保磁力
のCo−γフェライト粉を使用した磁性層を下層磁性層と
して設け、下層磁性層をオーディオなど長波長記録用
に、上層磁性層をビデオなど短波長記録用に、それぞれ
使い分けすることを試みた重層塗布型磁気記録媒体も提
案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うに構成した磁気記録媒体においても、現在のところ、
未だ満足すべき高周波特性が得られていないこと、ある
いは上層磁性層が加圧減磁しやすいことなどの難点があ
った。
【0008】ところで、一般に、磁性粉の保磁力(Hc)に
は温度依存性が存在することが知られている。このた
め、磁性粉としてたとえばBa−フェライト粉のように、
正の温度係数(ΔHc)を有する磁性粉を用いた媒体に情
報を記録する際、情報を一旦記録した後記録時より高い
温度条件でオーバーライトする場合には、先に記録した
情報が十分に消去されずに残ってしまうという現象が生
じていた。
【0009】通常、Ba−フェライト粉においては、室温
付近における保磁力の温度係数は正の値を有している
が、Feの一部をSnで置換することにより、温度係数を小
さくして、0からさらに負の値を有するまでに制御する
ことが可能である。したがって、Feの一部をSnで置換し
たBa−フェライト粉を使用して、磁性層の保磁力の温度
依存性を小さくすることはある程度可能である。しかし
ながら、このようなSn置換により上層磁性層の保磁力の
温度係数を0に近づけたとしても、組み合わせる下層磁
性層によって影響を受けてしまう。そのため、重層塗布
型磁気記録媒体においては、保磁力の温度安定性を向上
させることが困難であった。
【0010】このように、上記した小粒径、高保磁力の
磁性粉を用いた磁性層を有する重層塗布型磁気記録媒体
は、長波長域での記録再生出力が劣るだけでなく、保磁
力の温度依存性に起因して、オーバーライト時に前の情
報が消えずに残り易い、すなわち広い温度範囲における
一定した記録再生特性が得られない、という難点を有し
ていた。
【0011】本発明は、このような従来の難点を解消す
べくなされたものであり、短波長域から長波長域までの
広範囲にわたる波長領域において高出力が得られ、かつ
広い温度範囲において一定した記録再生特性を有する高
密度磁気記録媒体を提供することを、その目的としてい
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気記録媒体
は、非磁性基体上に、長波長記録用磁性粉と樹脂バイン
ダとを含む下層磁性層、および短波長記録用磁性粉と樹
脂バインダとを含む上層磁性層を形成してなる磁気記録
媒体において、前記下層磁性層と前記上層磁性層の保磁
力の温度係数の符号が互いに異なることを特徴としてい
る。
【0013】本発明の磁気記録媒体はポリエステルフィ
ルムのような可とう性を有する非磁性支持体上に、多層
の磁性層を設けて構成したものであり、たとえば磁気テ
ープ、フロッピーディスク、磁気カードなどの形態で実
用に供される。
【0014】上記磁性層は磁性粉と樹脂バインダとを主
体として構成され、必要に応じさらに潤滑剤、研磨材、
分散剤、帯電防止剤、あるいは硬化剤などが添加された
ものである。
【0015】本発明の上下両層磁性層に使用可能な磁性
粉としては、たとえばマグネタイト、γ−フェライト、
Co変成−γ−フェライト、Co被着−γ−フェライト、Fe
を主体とする金属粉末、CrO、あるいはBa−フェライト
に代表される六方晶系フェライト粉を主成分とする磁性
粉末、およびこれらの混合物などがあげられるが、高密
度記録に適した磁性粉であれば、特にこれらに限定され
るものではない。
【0016】また、これら磁性粉の形状は、高密度磁気
記録に適したものであれば特に限定されるものではない
が、比表面積20〜60 m2 /g 、平均粒子径30〜150 nmの
磁性粉を使用する場合に、磁性粉の高分散、高充填が達
成され、本発明による効果が顕著に得られる。なかでも
当該範囲の比表面積および平均粒子径のBa−フェライト
は特に好ましく使用される。
【0017】本発明においてこれら磁性粉は、互いに保
磁力の温度係数の符号が異なるようなものが選択され、
上層磁性層用磁性粉、および下層磁性層用磁性粉として
組み合わされる。
【0018】下層磁性層に使用する磁性粉としては、通
常300 〜1,200 Oe の範囲の保磁力を有するものが好ま
しい。上層磁性層に使用する磁性粉としては、下層磁性
層に使用する磁性粉より大きな保磁力、通常800 〜3,00
0 Oe の範囲の保磁力を有するものが、広い周波数領域
での特性を確保する上で好ましい。
【0019】上記したこれら磁性粉のなかで、上層磁性
層用磁性粉としては下記の一般式に示される六方晶系フ
ェライトの微粉末が好適に使用され、なかでもとくにBa
−フェライトが好ましい。
【0020】一般式:AO・ n(Fe2 3 ) (式中、AはBa、Sr、CaおよびPbからなる群から選ばれ
る少なくとも1種の元素を、n 5〜6の数を表す。ま
た、Feの一部はTi、Co、Zn、In、Mn、Cu、Ge、Nb、Snな
どの遷移金属で置換されていてもよい。) このような六方晶系フェライトの微粉末は六角板状の結
晶であり、その磁化容易軸は板面と垂直な方向にある。
これらは、たとえばガラス結晶化法(特開昭56-67904
号、同 56-155022 号)により製造することが可能であ
る。
【0021】上層磁性層に用いるBa−フェライト粉とし
ては、保磁力の温度係数が、+0〜+5 Oe/℃の範囲
のものが好ましい。さらに好ましくは+0〜+3 Oe/
℃の範囲である。先に述べたように、通常Ba−フェライ
ト粉においては、Feの一部をSnで置換することにより、
保磁力の温度係数を正の値から0に、0からさらに負の
値にまで制御することが可能である。上層磁性層に用い
るBa−フェライト粉末の保磁力の温度係数が+5 Oe/
℃を越える場合には、下層磁性層用磁性粉の選択範囲が
狭くなり、適切な磁性粉を選び難くなるため好ましくな
い。
【0022】Ba−フェライト粉を上層磁性層に使用した
場合の下層磁性層用磁性粉としては、負の保磁力の温度
係数を有するCo−γ−フェライト粉やマグネタイトが好
適である。なかでも、保磁力の温度係数が−0〜−3
Oe/℃の範囲にあるこれら磁性粉はとくに好ましい。
【0023】また、正の保磁力の温度係数を示すBa−フ
ェライト粉を下層磁性層に使用しても構わないが、その
場合には上層磁性層用磁性粉として、保磁力が大きく負
の保磁力の温度係数を有する金属粉末を使用することが
好ましい。
【0024】本発明において使用される樹脂バインダ
は、磁性粉を分散、保持し、かつ非磁性支持体上に結合
させるために必要な成分であって、磁性粉および非磁性
支持体と親和性のある樹脂バインダであれば特に材料限
定されるものではない。
【0025】このような樹脂バインダとしては、たとえ
ば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸
ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸
ビニル−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−アクリ
ル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル
共重合体、塩化ビニリデン重合体およびその共重合体、
ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ
ビニルホルマール系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、ポ
リブタジエン共重合体、ポリエーテル系樹脂、ポリカー
ボネート系樹脂、フェノキシ樹脂、ケトン樹脂、フラン
樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、
メラミン樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、フ
ェノール系樹脂、エポキシ系樹脂などの高分子材料が例
示される。また、これらに水酸基、スルホン基、アミノ
基、カルボキシル基、その他の官能基およびこれらの塩
を分子鎖に導入した高分子材料は、とくに好適に使用さ
れる。 これらの樹脂バインダは、単独または2種以上
を混合して用いることができる。 本発明において樹脂
バインダは、磁性粉 100重量部に対し、4〜30重量部の
範囲、より好ましくは6〜20重量部の範囲となるように
使用する。樹脂バインダ量が30重量部を超えると磁性層
内部の空孔率が著しく減少し、当該範囲の潤滑剤や分散
剤などを添加した場合表面層への湧出が顕著となり、か
えって良好な走行性や耐久性を得ることが困難になる。
また、磁性層中の磁性粉の充填率も低下するため、高密
度記録が達成が難しくなる。
【0026】なお、塗膜を硬化させるために、上記した
樹脂バインダとともに多価イソシアネートのような硬化
剤を添加することが好ましい。あるいは、光硬化型樹
脂、放射線硬化型樹脂などの添加によっても、塗膜を硬
化させることができる。
【0027】研磨材は磁気ヘッドが媒体上を高速で周接
する際の耐久性向上のために添加される成分であり、本
発明で使用可能な研磨材としては、酸化クロム、アルミ
ナ、α−酸化鉄、炭化ケイ素、酸化チタン、酸化セリウ
ム、コランダム、ダイヤモンドなど、モース硬度6以上
の微粉末があげられる。なかでも、酸化クロム、アルミ
ナは本発明に好適である。また、上記した研磨材は、平
均粒径0.05〜2μm の範囲のものが好ましい。平均粒径
が2μm をこえる大粒径の研磨材の使用は、高密度磁気
記録においてノイズの増加、ヘッドクラッシュの原因、
媒体表面粗さの増加につながる。平均粒径が0.05μm よ
り小さい場合には研磨材の使用効果が得られない。
【0028】本発明において、上記研磨材の磁性層中に
おける含有量は、磁性粉を 100重量部に対して、 0.5〜
20重量部の範囲が好ましい。さらに好ましくは、 2〜10
重量部の範囲である。 0.5重量部より少ない場合にはヘ
ッド研磨性の不足、媒体強度の低下が著しく、幅広い使
用環境下で安定した走行性や耐久性を示すことができな
い。また、20重量部を超える量の添加は、磁性層中の磁
化の減少に繋がり、良好な高密度記録を行うことができ
なくなる。
【0029】潤滑剤は、たとえばテープなどの媒体走行
時に、シリンダ、テープガイド、ヘッドなどと接触する
際の摩擦抵抗を小さくするために使用される。走行時に
媒体表面の摩擦抵抗が大きい場合には、媒体がダメージ
を受け、記録・再生出力に乱れを生じたり、出力の低下
を引起こしたりするなどの不都合を生じる。本発明で使
用可能な潤滑剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂
肪酸アミド、シリコーンオイル、フッ素化シリコーンオ
イル、油脂、などが例示される。これらを単独で使用し
ても、あるいはこれらを混合して使用してもよい。本発
明においては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド
の組合せが好ましい。
【0030】ここで用いる脂肪酸としては炭素数12〜22
の飽和ないし不飽和脂肪酸をあげることができるが、具
体的にはカプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ス
テアリン酸、オレイン酸、などがあげられる。また、脂
肪酸エステルとしてはこれら脂肪酸と炭素数1〜22の飽
和ないし不飽和脂肪族アルコール、エチレングリコール
エーテル類、カルビトール類、グリセリン、ペンタエリ
スリトール、ネオペンチルグリコールとのエステルがあ
り、具体例としては、カプリル酸ブチル、ミリスチン酸
ブチル、ミリスチン酸オクチル、ミリスチン酸セチル、
パルミチン酸ブチル、パルミチン酸オクチル、パルミチ
ン酸オレイル、パルミチン酸ブトキシエチル、パルミチ
ン酸ブトキシエトキシエチル、ステアリン酸ブチル、ス
テアリン酸ペンチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリ
ン酸ヘプチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ブ
トキシエチル、ステアリン酸ブトキシエトキシエチル、
オレイン酸、オレイン酸ブチル、オレイン酸オクチル、
オレイン酸ミリスチル、オレイン酸オレイル、オレイン
酸トリグリセリド、オレイン酸ブトキシエチル、オレイ
ン酸ブトキシエトキシエチルなどがあげられる。
【0031】また、脂肪酸アミドとしてはこれら炭素数
1〜22の飽和ないし不飽和脂肪酸のアミドがあり、具体
例としては、カプリル酸アミド、ミリスチン酸アミド、
パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸
アミドなどがあげられる。これらの各種脂肪酸、脂肪酸
エステル、脂肪酸アミドはそれぞれ単独でも、あるいは
複数の組合せで用いることもできる。
【0032】本発明において、使用する潤滑剤量の総量
としては、磁性層中に含有される磁性粉 100重量部に対
し 0.5〜15重量部の範囲が好ましい。
【0033】本発明の重層型磁気記録媒体は、常法に従
い以下のようにして得られる。まず、適切に選択され
た、磁性粉、樹脂バインダおよび必要に応じて使用され
る各種添加剤を、ニーダや3本ロールなどの混練機を使
用して溶剤とともに十分に混合する。そしてボールミル
やサンドミルに移し、さらに分散させることが高分散を
達成するために有効である。このようにして得られた上
層磁性層あるいは下層磁性層の塗料を、ろ過フィルタに
通した後、ポリイソシアネートのような硬化剤を添加
し、ポリエステルフィルムや、アラミドフィルム、ポリ
イミドフィルムなどの非磁性支持体の上に塗布される。
【0034】本発明の上下層磁性塗料の塗布に際して
は、スロットダイコータの使用が最も適しており、特に
下層が乾燥する前に上層を塗布するウェットオンウェッ
ト法(同時塗布法ともよばれる)の実施には最適であ
る。
【0035】本発明においては、媒体の短波長出力と長
波長出力の双方を確保する観点から、上層磁性層の塗膜
厚さを 0.1〜 1.0μm の範囲、下層磁性層の塗布厚さを
1〜5μm の範囲に設定することが好ましい。塗布厚さ
は、スロットダイコータのスロットノズルへの塗料の供
給量を増減することにより、制御可能である。
【0036】ウェットオンウェット法においては、支持
体上に塗布された重層塗布膜中の有機溶剤が蒸発しない
うちに、支持体に対して面内長手方向の磁場配向を施す
ことにより、面内配向媒体とすることができる。あるい
はまた、下層磁性層に面内長手方向に磁場配向を施した
のち乾燥し、その後上層磁性層を塗布し、垂直配向を行
って再度乾燥を施すことによって、下層磁性層は面内配
向、上層磁性層は垂直配向にそれぞれ配向した重層媒体
を得ることができる。
【0037】上記の工程を経て支持体上に塗膜を形成し
た後、カレンダーにより表面の平滑化を図り、次いで40
〜60℃のオーブン中で1〜4日間キュアし、これを所望
の幅にスリットすることにより、本発明の磁気記録媒体
が得られる。
【0038】
【作用】本発明においては、上層磁性層と下層磁性層の
それぞれの保磁力の温度係数(ΔHc)の符号を異なるよ
うにすることにより、媒体全体としての保磁力の温度係
数を小さくしている。磁性層の保磁力の温度係数は、磁
性粉の保磁力の温度係数によってほぼ決められるので、
適切な磁性粉の組み合わせを選択することにより、2つ
の磁性層の保磁力の温度係数の符号を異なるように調節
することが可能である。
【0039】したがって、媒体が広い温度範囲に亘って
一定の記録再生特性を示すようになり、記録時と異なる
温度環境下での再生によって磁化が残留する現象が防止
される。
【0040】
【実施例】以下実施例にしたがってさらに詳細に本発明
を説明する。
【0041】実施例1 まず、<下層磁性層用塗料>材料として以下に示す配合
組成物を混合し、サンドミルを用いて分散して、磁性塗
料を得た。得られた塗料はさらに、ポアサイズ0.5 μm
フィルタを通してろ過した後、ポリイソシアネート系硬
化剤(日本ポリウレタン社製、商品名:コロネートL)
を、磁性粉 100重量部あたり 3重量部を加えて混合し、
これを<下層磁性層用塗料>として使用した。
【0042】<下層磁性層用塗料>組成 Co−γフェライト粉 100重量部 (Hc:650 Oe ,比表面積42 m2 /g ) カーボンブラック 3重量部 (平均粒径:45 nm ,比表面積 160 m2 /g ) スルホン基含有ポリウレタン樹脂 6重量部 (分子量18,000) スルホン基含有塩化ビニル系樹脂 10重量部 (分子量21,000) アルミナ 6重量部 (粒径0.4 μm ) パルミチン酸オクチル 2重量部 メチルエチルケトン 100重量部 トルエン 100重量部 このようにして得られた下層磁性層用塗料を、厚さ10μ
m のポリエステルフィルム上に乾燥後の膜厚が3 μm に
なるように塗布し、4 kOe の対向磁石を用いて面内配
向処理をおこなったのち、乾燥させて下層磁性層を形成
した。この磁性層の、−20℃〜+40℃の範囲の保磁力の
温度係数(ΔHc)をVSM(振動試料型測定装置)で測
定したところ、−2.6 Oe/℃であった。
【0043】次に、<上層磁性層用塗料>材料として以
下に示す配合組成物を混合し、サンドミルを用いて2時
間分散し、<上層磁性層用塗料>を得た。得られた塗料
に、硬化剤(日本ポリウレタン社製、商品名:C−30
41)を、磁性粉 100重量部あたり3重量部加えて混合
し、これを<上層磁性層用塗料>として使用した。
【0044】<上層磁性層用塗料>組成 Nb置換Ba−フェライト粉末 100重量部 (Nb置換量 0.4、保磁力1030 Oe 、粒径 0.05 μm 、
比表面積44 m2 /g ) アルミナ粉末 3重量部 (粒径 0.3 μm ) レシチン 2重量部 ステアリン酸 2重量部 ステアリン酸ブトキシエチル 1重量部 スルホン基含有ポリウレタン樹脂 4重量部 (分子量 25,000) スルホン基、エポキシ基含有塩化ビニル系樹脂8重量部 かくして、得られた上層磁性層用塗料を、厚さ10μm の
ポリエステルフィルム上に乾燥後の膜厚さが 2.5μm に
なるように塗布し、4 kOe の対向磁石を用いて面内配
向処理をおこなったのち、乾燥させて上層磁性層用塗料
の単層塗布による磁性層を形成した。この磁性層の保磁
力の−20℃〜+40℃の範囲の温度係数(ΔHc)をVSM
(振動試料型測定装置)で測定したところ、+4.8 Oe/
℃であった。
【0045】ついで、上記した<下層磁性層用塗料>と
<上層磁性層用塗料>に硬化剤を加え、これを2つのス
リットを有する重層用ノズルを用いて押し出し、流量を
制御することによって上層磁性層の乾燥後膜厚 0.5μm
、および下層磁性層の乾燥後膜厚 1.5μm の重層磁性
層を形成した。
【0046】この重層磁性層を形成した後、75℃、線圧
250 kg/cmの条件でカレンダー処理を施した。そのの
ち、50℃で2日間エージングし放冷した。そしてこれを
3.8 mm幅にスリットして、デジタルオーディオテープを
得た。この重層磁性層の、−20〜+40℃の範囲における
保磁力の温度係数(ΔHc)をVSMで測定したところ、
−0.3 Oe/℃であった。
【0047】次いで、このようにして得られたテープの
特性を評価した。その評価結果を、上下単層膜と重層膜
の保磁力Hc およびその温度係数(ΔHc)と併せて表1
に示す。また、上下単層膜と重層膜のHc と温度の関係
を図1に示す。かくして得た重層テープのブロックエラ
ーレートは、−20℃〜+40℃の範囲において10-4台で
あり、デジタルオーディオテープとして十分な性能を有
していた。
【0048】実施例2〜4 上層磁性層用磁性粉として、Feの一部がSnで置換され
た、保磁力の温度係数の異なる3種のBa−フェライト粉
を用いた他は実施例1と同様にして、実施例2〜4のテ
ープ試料を作成した。そして、デジタルオーディオテー
プとしての出力、オーバーライト特性の評価を行った。
その評価結果を、上下単層膜と重層膜の保磁力Hc およ
びその温度係数(ΔHc)とあわせて表1に示す。
【0049】実施例5 上層磁性層用磁性粉としてCo−Ti置換Ba−フェライト粉
を使用した他は実施例1〜4と同様にして、テープ試料
を作成した。そして、デジタルオーディオテープとして
の出力、オーバーライト特性の評価を行った。その評価
結果を、上下単層膜と重層膜の保磁力Hc およびその温
度係数(ΔHc)とあわせて表2に示す。
【0050】実施例6 下層磁性層用磁性粉としてCrO2 粉(Hc:560 Oe ,比
表面積34 m2 /g )を使用し、下層磁性層の乾燥後膜厚
を 2.5μm とした他は実施例1と同様にしてテープ試料
を作成した。そして、デジタルオーディオテープとして
の出力、オーバーライト特性の評価を行った。その評価
結果を、上下単層膜と重層膜の保磁力Hc およびその温
度係数(ΔHc)とあわせて表2に示す。
【0051】比較例 磁性粉として、実施例5の上層磁性層用磁性粉と同じCo
−Ti置換Ba−フェライト粉を用いた磁性層を、単層膜と
して備えたテープ試料を作製した。
【0052】そして、デジタルオーディオテープとして
の出力(4.7 MHz )、オーバーライト特性の評価を行っ
た。その評価結果を、単層膜の保磁力とあわせて表2に
示す。
【0053】なお、オーバーライト特性の評価にあたっ
ては、最初5℃において 1.176 MHzの周波数の信号を記
録した後、40℃において 4.704 MHzの周波数の信号をオ
ーバーライトし、しかるのちに 1.176 MHzの周波数の信
号の出力を測定することを行った。
【0054】
【表1】
【表2】 表1および表2からも明らかなように、従来例と比較し
て実施例1〜6の出力−温度特性、ならびにオーバーラ
イト特性は改善されていた。
【0055】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、重
層磁気記録媒体において、各磁性層の保磁力の温度係数
の符号が互いに異なるようにすることにより、媒体全体
としての温度係数を小さくコントロールすることができ
る。その結果、広い温度範囲にわたって一定の記録再生
特性が得られ、オーバーライト時の磁化の残留も大幅に
改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における上層磁性層、下層磁性層、お
よび上下重層磁性層の温度と保磁力の関係を示した図で
ある。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性基体上に、長波長記録用磁性粉と
    樹脂バインダとを含む下層磁性層、および短波長記録用
    磁性粉と樹脂バインダとを含む上層磁性層を形成してな
    る磁気記録媒体において、前記下層磁性層と前記上層磁
    性層の保磁力の温度係数の符号が互いに異なるようにし
    たことを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記下層磁性層が、長波長記録用磁性粉
    として針状磁性粉末を含み保磁力の温度係数が−0〜−
    3 Oe/℃の磁性層であり、前記上層磁性層が、短波長
    記録用磁性粉として六方晶系フェライト粉を主成分とし
    て含み、保磁力の温度係数が+0〜+5 Oe/℃の磁性
    層であることを特徴とする特許請求の範囲請求項1記載
    の磁気記録媒体。
JP2640892A 1992-02-13 1992-02-13 磁気記録媒体 Withdrawn JPH05225554A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011170920A (ja) * 2010-02-19 2011-09-01 Dainippon Printing Co Ltd 磁気記録媒体及び磁気記録方法

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