JP2000011355A - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JP2000011355A
JP2000011355A JP11135699A JP11135699A JP2000011355A JP 2000011355 A JP2000011355 A JP 2000011355A JP 11135699 A JP11135699 A JP 11135699A JP 11135699 A JP11135699 A JP 11135699A JP 2000011355 A JP2000011355 A JP 2000011355A
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Kazuhiko Nakiri
和彦 菜切
Kenji Tanaka
憲司 田中
Yoshiyuki Makita
義幸 蒔田
Teruhisa Miyata
照久 宮田
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Hitachi Maxell Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高密度磁気記録媒体、とくに高トラツク密
度、高線記録密度の高密度磁気デイスクとして、高い電
磁変換特性とすぐれた走行耐久性が得られるもの、とく
にシ―ク耐久性および温度サイクル耐久性にすぐれたも
のを提供する。 【解決手段】 非磁性支持体上に下塗り層と磁性層とが
この順に形成され、磁性層の厚さが0.20μm以下、
磁性層に含まれる磁性粉がCoを含有する強磁性鉄系合
金粉からなり、磁性層と下塗り層とからn−ヘキサンに
より抽出される成分中に脂肪酸と脂肪酸エステルの中か
ら選ばれる少なくとも1種の潤滑剤を含有し、この潤滑
剤の抽出量が30mg/cm3 以上、磁性層の鋼球摩耗体積
が0.5×10-4〜5.0×10-4mm3 であることを特
徴とする磁気記録媒体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高密度磁気記録媒
体に関し、とくに電磁変換特性および走行耐久性にすぐ
れた磁気デイスクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁気記録媒体は、オ―デイオテ―プ、ビ
デオテ―プ、コンピユ―タ―テ―プ、デイスクなど種々
の用途があるが、とくにデジタル方式に代表される磁気
記録媒体では年々高密度化され、たとえば磁気デイスク
においては、従来の酸化物磁性粉を用いた1MBの容量
から、大幅に容量をアツプした100MB以上の容量を
もつ磁気デイスクが提案されている。
【0003】このような高密度磁気デイスクが用いられ
るドライブは、大容量のデ―タを短時間で記録再生する
ため、デイスク回転速度を従来の300rpmから72
0rpmの倍速にしたり、さらに3,000rpm以上
の高速回転を行う必要があり、今後はさらなる高密度、
大容量化のため、回転速度の高速化の方向で開発が進め
られている。また、高速回転時に安定した記録再生特性
および信頼性の確保を行うため、ヘツドの媒体への最適
な接触機構の開発が進められている。
【0004】このような高密度化に対応する磁気記録媒
体としては、強磁性粉の磁気特性の改善や、強磁性粉の
均一分布などの手段、さらに媒体−ヘツド間のスペ―シ
ングロスを小さくする手段などが必要となつてきてい
る。
【0005】強磁性粉の磁気特性の改善としては、磁気
記録媒体に残留する磁化の度合いが大きい方が、高出力
化に望ましいため、磁性粉としては従来の酸化物磁性粉
や、コバルト含有酸化鉄磁性粉に代わり、強磁性鉄系合
金粉が主流になりつつあり、保磁力1,500Oe以上
の強磁性鉄系合金粉が提案されている。たとえば、特開
平5−234064号公報、特開平6−25702号公
報、特開平6−139553号公報などに開示されてい
る。
【0006】また、強磁性粉の分散性を上げるための手
段としては、スルホン酸基、リン酸基またはこれらのア
ルカリ金属塩などの極性官能基を有する結合剤を用いた
り、結合剤とともに低分子量の分散剤を併用したり、ま
た磁性塗料の混練分散工程を連続的に行つたり、分散後
に潤滑剤を後添加するなどの手段が提案されている。た
とえば、特開平62−23226号公報、特開平2−1
01624号公報、特開平3−216812号公報、特
開平3−17827号公報、特開平4−47586号公
報、特開平8−235566号公報などに開示されてい
る。
【0007】さらに、媒体−ヘツド間のスペ―シングロ
スを小さくする手段としては、上記の磁性粉の分散性を
上げる手段のほか、カレンダ―工程において高温、高圧
条件で磁性層の平滑化処理を行つたり、磁性層の下に非
磁性の下塗り層を設けて、非磁性支持体の表面性による
磁性層表面への影響を抑制するなどの手段が提案されて
いる。たとえば、特公昭64−1297号公報、特公平
7−60504号公報、特開平4−19815号公報な
どに開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の手段に
より作製された従来の磁気記録媒体は、100MB以上
の容量に対応した高密度磁気記録再生装置では、電磁変
換特性および走行耐久性を満足させることができなかつ
た。高密度磁気デイスクでは、トラツク密度と線記録密
度の両方を高めるため、従来の磁性粉の飽和磁化や保磁
力程度では出力が数分の1程度しか得られず、また極め
て短い記録波長を使用するため、従来それほど問題とな
らなかつた記録再生時の自己減磁損失や磁性層の厚さに
起因する厚み損失の影響が大きくなり、十分な分解能が
得られない。
【0009】これに対して、たとえば、特開平5−10
9061号公報などでは、磁性粉として保磁力1,00
0Oe以上の強磁性鉄系合金粉を使用するとともに、表
面性に起因するスペ―ス損失や厚み損失を低減するため
に、非磁性支持体と磁性層との間に非磁性層を設け、磁
性層の厚さを0.5μm以下にすることが提案されてい
る。しかし、トラツク幅が10μm以下、最短記録波長
が1.0μm以下にもなる高密度磁気デイスクでは、磁
性粉の飽和磁化および保磁力をより高めたり、上記のス
ペ―ス損失や厚み損失をさらに低減する必要がある。
【0010】また、走行耐久性においても、高密度磁気
デイスクでは、従来の低速回転では問題とならなかつた
走行耐久性が、高速回転になると極端に劣るという問題
がある。最近ではとくに、磁気デイスクの信頼性を向上
するため、磁気ヘツドを接触させたまま数トラツク間を
移動させるシ―ク耐久性を満足する必要があるが、高飽
和磁化の強磁性鉄系合金粉を用いた磁性層は、塗膜の凝
集力の相違などから、酸化物磁性粉を用いた磁性層と比
較して、高速回転時に摺動傷が入りやすく、これが出力
低下やドロツプアウトなどの要因となり、デイスクの信
頼性を低下させることになる。
【0011】さらに、パソコンの普及に伴い、ドライブ
がパソコンに内蔵されることも多くなつてきており、そ
れに伴つて様々な環境で媒体が使用されるため、低温低
湿から高温高湿までのサイクル環境下での耐久性および
信頼性試験においても、出力の劣化やドロツプアウトの
発生がないことが必要とされ、このような過酷な条件下
でのより一層の走行耐久性、信頼性が望まれている。
【0012】本発明は、上記の事情に照らし、高密度磁
気記録媒体、とくに高トラツク密度および高線記録密度
の高密度磁気デイスクにおいて、高い電磁変換特性とす
ぐれた走行耐久性が得られるもの、とくにシ―ク耐久性
および温度サイクル耐久性にすぐれたものを提供するこ
とを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的に対し、鋭意検討した結果、非磁性支持体と磁性層と
の間に下塗り層を設け、かつ磁性粉として特定の強磁性
鉄系合金粉を使用するとともに、磁性層の厚さ、潤滑剤
の種類と量および磁性層の鋼球摩耗体積を特定したとき
に、高い電磁変換特性とすぐれた走行耐久性、とくに満
足できるシ―ク耐久性と温度サイクル耐久性が得られる
ことを知り、本発明を完成した。
【0014】すなわち、本発明は、非磁性支持体上に下
塗り層と磁性層とがこの順に形成され、磁性層の厚さが
0.20μm以下、磁性層に含まれる磁性粉がCoを含
有する強磁性鉄系合金粉からなり、磁性層と下塗り層と
からn−ヘキサンにより抽出される成分中に脂肪酸と脂
肪酸エステルの中から選ばれる少なくとも1種の潤滑剤
を含有し、この潤滑剤の抽出量が30mg/cm3 以上、磁
性層の鋼球摩耗体積が0.5×10-4〜5.0×10-4
mm3 であることを特徴とする磁気記録媒体に係るもので
ある。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明においては、高密度磁気記
録媒体、とくに高トラツク密度および高線記録密度の高
密度磁気デイスクとして、高い電磁変換特性を達成する
ために、磁性層中に含ませる磁性粉として、強磁性鉄系
合金磁性粉の中でも、とくに高保磁力および高飽和磁化
が達成可能なCoを含有する強磁性鉄系合金粉、つまり
コバルトを固溶した強磁性鉄系合金磁性粉が用いられ
る。
【0016】Coを含有する強磁性鉄系合金粉は、ゲ
―サイト粉末を焼成してマグネタイト粉末とし、これを
コバルトイオン含有水溶液中で2価の鉄イオンとコバル
トイオンをイオン交換して、加熱還元する方法、鉄塩
とコバルト塩のアルカリの水系懸濁液から得られるコバ
ルト含有針状ゲ―サイト粉末を加熱還元する方法、蓚
酸水溶液中に添加した鉄塩とコバルト塩から得た共沈物
を還元する方法、表面にコバルトを被着させた酸化鉄
粉末を加熱還元する方法、鉄塩とコバルト塩を含む溶
液に還元剤を添加する方法、不活性ガス中で金属を蒸
発させ、ガス分子と衝突させて合金磁性粉を得る方法、
水素と窒素やアルゴンとの混合ガス中で鉄やコバルト
の塩化物の蒸気を流しながら、金属に還元する方法など
により、製造できる。これらの中でも、高いコバルト量
の固溶が可能で、また耐腐食性能にすぐれるおよび
の方法を併用するのが好ましい。
【0017】Coを含有する強磁性鉄系合金粉におい
て、コバルトの量は、多いほど高飽和磁化および高保磁
力を達成できるが、あまりに多すぎると磁性鉄金属との
合金化ができず、余剰分が酸化物となるため、上記特性
を達成できない。したがつて、コバルトの量は、Co/
Feの重量比が0.1〜0.5となる範囲が好ましく、
とくに0.2〜0.4となる範囲がより好ましい。
【0018】このようなCoを含有する強磁性鉄系合金
粉には、他の元素として、たとえば、Zn、Sn、N
i、Mn、Ti、Cr、Cu、Nd、La、Sm、Yな
どの遷移金属、希土類元素などを添加することもでき
る。しかし、アルカリ金属、とくにCaが強磁性合金磁
性粉中に存在すると、これが磁性層中の脂肪酸と反応し
て磁性層表面に脂肪酸塩を生成するため、磁性粉の製造
時に洗浄により上記アルカリ金属の混入を避けるように
するのが好ましい。
【0019】また、Coを含有する強磁性鉄系合金粉
は、加熱還元時の焼結防止、磁性塗料中での分散性改善
の目的で、粒子表面を無機酸化物で被覆するのが望まし
い。無機酸化物には、アルミニウム酸化物やケイ素酸化
物などがあるが、アルミニウム酸化物が硬さにおいてす
ぐれており、磁性粉の耐摩耗性も向上できるのでとくに
好ましい。上記被覆を行うには、原料酸化鉄粉に対しあ
らかじめアルミニウム、ケイ素などのアルコ―ル溶液に
水を作用させて加水分解によりこれらの化合物を粒子表
面に被着生成させる方法が用いられる。被覆量は、焼結
防止や分散性改善のため、Feに対する重量比で0.0
01以上とするのが好ましく、またあまりに多すぎる
と、磁性粉の飽和磁化量が低下するため、0.06以下
が好ましい。つまり、粒子表面をアルミニウム酸化物で
被覆する場合、Al/Feの重量比が0.001〜0.
06の範囲となるようにするのがよい。
【0020】さらに、このようなCoを含有する強磁性
鉄系合金粉は、高い飽和磁化のため磁気凝集を起こしや
すく、粒子表面が非常に活性となるため、磁性塗料中に
含まれる溶剤の変成や、結合剤として使用される架橋剤
中のイソシアネ―ト成分の変成などを引き起こす触媒と
して作用することから、pHが10未満、とくに8未満
であるのが好ましい。Coを含有する強磁性鉄系合金粉
のpH値を10未満とすることにより、磁性塗料中の変
成物の生成を抑制することができ、磁性層形成時に高速
回転時の摺動に耐えうる塗膜とすることができる。
【0021】また、Coを含有する強磁性鉄系合金粉の
粒子径は、平均長軸長が0.01〜0.2μm、好まし
くは0.01〜0.15μm、さらに好ましくは0.0
2〜0.1μmであるのがよい。平均長軸長が0.01
μm未満となると、磁性粉が微粒子化しすぎて、その生
産性が困難になり、また磁性粉の凝集力が増大するため
塗料中への分散が困難となり、出力を劣化させる。0.
2μmより大きいと、保磁力や飽和磁化が低下し、また
粒子ノイズが大きくなる。なお、上記の平均長軸長は、
走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影した写真の粒子サ
イズを実測し、100個の平均値により求められるもの
である。また、上記と同様の理由から、この強磁性鉄系
合金粉のBET比表面積は、35m2/g以上が好まし
く、40m2/g以上がより好ましく、50m2/g以上が
最も好ましい。
【0022】このようなCoを含有する強磁性鉄系合金
粉の保磁力は、高線記録密度における短波長記録で高出
力および高分解能を得るため、1,700〜3,500
Oe、とくに1,900〜2,800Oeであるのが好
ましい。飽和磁化量は、高トラツク密度において良好な
再生出力を得るため、また磁性粉の耐食性を維持するた
め、120〜200emu/g、とくに130〜160
emu/gであるのが好ましい。角形比としては、σr
/σsが0.46以上、とくに0.48以上、さらには
0.49以上であるのが望ましい。
【0023】本発明において、上記のCoを含有する強
磁性鉄系合金粉を使用した磁性層の磁気特性としては、
保磁力が1,700〜3,500Oe、とくに2,00
0〜3,000Oeであるのが望ましい。また、本発明
においては、磁性層中の強磁性鉄系合金粉の充填性を極
めて高くし、高出力の磁気記録媒体とするため、磁性層
の残留磁化が0.020emu以上、とくに0.025
emu以上、0.060emu以下とするのが好まし
い。このような高残留磁化の磁性層は、前記の強磁性鉄
系合金粉を用いるとともに、磁性粉の充填性を高めるな
どの後述の手段により達成できる。なお、この磁性層の
磁気特性と、前記のCoを含有する強磁性鉄系合金粉の
磁気特性は、いずれも試料振動形磁束計で室温中、外部
磁場10kOeでの測定値をいい、磁性層の保磁力と残
留磁化は、直径8mmで磁性層面20面を有する試料を貼
り合わせたものを測定したときの更正後の値である。
【0024】本発明では、上記のCoを含有する強磁性
鉄系合金粉を使用することにより、磁性層の高残留磁化
化と高保磁力化による自己減磁損失の低減ができ、トラ
ツク幅10μm以下の高トラツク密度における出力向上
をはかることが可能となる。一方、最短記録波長1.0
μm以下の高線記録密度において磁性層の厚さが厚い場
合には、長波長出力は厚さに応じて大きくなるものの、
短波長出力は厚み損失の影響によりあまり変化しない。
このため、長波長出力に比べて短波長出力が相対的に低
くなつて分解能が著しく低下し、高保磁力化による自己
減磁損失の低減効果による改善だけでは不十分になる。
【0025】このような分解能の問題を解決するため、
検討した結果、最短記録波長1.0μm以下の高線記録
密度においては、磁性層の厚さを従来の磁気デイスクの
5分の1以下である0.20μm以下にしたとき、高分
解能の磁気デイスクが得られることを見い出した。すな
わち、本発明では、上記のCoを含有する強磁性鉄系合
金粉を用いるとともに、磁性層の厚さを0.20μm以
下とすることにより、磁性層の高残留磁化、高保磁力を
達成でき、高トラツク密度における自己減磁損失を低減
でき、かつ最短記録波長1.0μm以下の高線記録密度
においても厚み損失を低減し、良好な電磁変換特性を達
成できるものである。
【0026】本発明における磁性層の厚さは、上記の観
点から、0.20μm以下とすることが必要であるが、
あまりに薄くなりすぎると、磁性層の形成時に塗膜厚さ
の均一性を維持することが困難になり、また磁性層中に
充填しうる磁性粉が減少し、磁性層の磁気特性が低下す
る。このため、磁性層の厚さは、0.05μm以上、と
くに0.08〜0.20μmであるのが望ましい。
【0027】一方、高密度磁気デイスクは、大容量のデ
―タを短時間で記録再生するため、高速デ―タ転送を行
う必要があり、従来の磁気デイスクで使用されている3
00rpmの2倍以上である720rpmあるいは3,
000rpm以上の、ヘツドコンタクト型またはニアコ
ンタクト型の高速回転のドライブが利用される。しか
し、上記のCoを含有する強磁性鉄系合金粉を用いた磁
気デイスクでは、上記磁性粉および磁性層の厚さから、
摺動時に磁性層が傷つきやすく、ドロツプアウトや出力
変動が発生しやすく、十分な走行耐久性が得られない。
【0028】これに対して、本発明では、非磁性支持体
と磁性層との間に下塗り層を設けるとともに、磁性層お
よび下塗り層からn−ヘキサンにより抽出される成分中
に脂肪酸と脂肪酸エステルの中から選ばれる少なくとも
1種の潤滑剤を含有させ、この潤滑剤の抽出量を30mg
/cm3 以上とし、また磁性層の鋼球摩耗体積を0.5×
10-4〜5.0×10-4mm3 とすることにより、上記高
速回転における磁気デイスクの走行耐久性を改善できる
ことを見い出した。すなわち、本発明の磁気デイスクは
高速回転するドライブで使用されるため、磁性層の下側
に下塗り層を設けることにより、摺動時における磁気ヘ
ツドからの荷重を分散できるとともに、磁性層の厚さが
薄層化されたことによる潤滑剤の減少を補うことができ
る。
【0029】本発明において、上記の下塗り層の厚さ
は、上記のような効果を得るために、0.5〜5μm、
とくに1〜3μmであるのが好ましい。このような下塗
り層を設けることにより、カレンダ時での磁性層の表面
性も向上でき、出力向上に寄与させることができる。な
お、この下塗り層の厚さと、磁性層の厚さとは、塗膜の
断面を透過型電子顕微鏡(5万倍)で観察した断面写真
を1cm間隔で10点測定したときの5箇所の断面の平均
値から求められるものである。
【0030】従来より、磁気記録媒体では、磁気ヘツド
との摺接や接触物との摩擦を低減するため、磁性層中に
潤滑剤を添加し、磁性層の内部から層表面に潤滑剤を浸
出させるようにしている。しかし、高密度磁気デイスク
では、高速回転時に磁気ヘツドに対し潤滑剤切れによる
走行耐久性の低下が多数確認された。これは、おそら
く、高密度磁気デイスクでは、磁性層の高残留磁化を達
成するために、磁性層中の磁性粉の充填率を高くする必
要がある一方、厚み損失の低減のために磁性層の厚さを
0.20μm以下と薄くしなければならないため、潤滑
剤が磁性層表面に浸出しにくくなること、また磁性層と
磁気ヘツドや不織布などのデイスクジヤケツト構成部材
との接触時間が長くなることが原因ではないかと考えら
れる。
【0031】この問題に対し、本発明は、前記のとお
り、非磁性支持体と磁性層との間に下塗り層を設け、か
つ磁性層と下塗り層からn−ヘキサンにより抽出される
成分中に脂肪酸と脂肪酸エステルの中から選ばれる少な
くとも1種の潤滑剤を含有させ、この潤滑剤の抽出量を
30mg/cm3 以上とすることにより、走行耐久性の低下
の問題を解決することができた。すなわち、上記構成に
より、磁性層と下塗り層中に上記十分な潤滑剤が存在す
ることにより、磁性層表面の潤滑剤不足を助け、さらに
クツシヨン効果をもたらすことができる。また、磁性層
表面の平滑化や磁性粉の高充填化のため、カレンダ処理
を行つて磁性層中の空孔が減少した場合でも、潤滑剤の
磁性層表面への浸出が容易になり、良好な耐久性が得ら
れる。
【0032】なお、潤滑剤の抽出量は、多いほど高速時
の摩擦係数を低減できるが、あまりに多いと磁性粉の充
填性を低減して電磁変換特性の低下を招いたり、磁性層
の塗膜の脆弱化を招くおそれがあるため、250mg/cm
3 以下であるのが好ましい。また、本発明における潤滑
剤としては、脂肪酸と脂肪酸エステルの中の少なくとも
1種を含有するものであるが、両者を併用するのが好ま
しい。さらに、上記2種の潤滑剤を併用する場合、後述
のように、炭素数10以上の脂肪酸と融点35℃以下の
脂肪酸エステルとを併用するのが好ましく、n−ヘキサ
ンで抽出される潤滑剤の抽出重量比は、上記脂肪酸と上
記脂肪酸エステルとで0.3/99.7〜10/90、
好ましくは0.5/99.5〜6/94であるのがよ
い。このような範囲とすることにより、磁性層表面の油
膜強度を維持しつつ、摩擦係数を低減し、走行耐久性を
向上することができる。
【0033】本発明において、n−ヘキサンにより抽出
される潤滑剤の量とは、磁気記録媒体600cm2 を切り
出し、これをn−ヘキサン1リツトルに10分間浸漬す
る作業を2回繰り返し、60℃で5分間乾燥した抽出後
の試料の重量を30秒以内に測定し、その浸漬前後の重
量差から求めた値を磁性層と下塗り層の総体積で除した
値をいう。また、抽出される潤滑剤の組成比は、ガスク
ロマトグラフイにより、温度150℃から200℃ま
で、昇温速度10℃/分で測定したものを検量線法によ
り求めた値をいう。
【0034】また、磁気ヘツドと磁気デイスクが摺接す
る際、磁気ヘツドに対して磁性層の硬度があまりに弱い
と磁性層削れを生じ、走行耐久性低下の原因となる。本
発明は、磁性層の厚さを0.20μm以下とする場合
に、高速回転時の走行耐久性を改善するための自己研磨
能を検討した結果、磁性層の鋼球摩耗体積を特定範囲に
規定したときに、シ―ク耐久性においてもすぐれた走行
耐久性が得られた。
【0035】すなわち、高密度磁気デイスクでは、磁性
層の鋼球摩耗体積が0.5×10-4mm3 未満となつた場
合、従来の300rpm程度の低速回転では問題となら
なかつた磁性層の損傷が、高速回転では顕著となり、回
転後ただちに出力低下やドロツプアウトの増大を生じる
こともある。このため、磁性層の鋼球摩耗体積を0.5
×10-4mm3 以上、好ましくは1.0×10-4mm3 以上
とすることにより、高速回転時においても磁気ヘツドと
の摺接による磁性層削れを少なくできる。また、鋼球摩
耗体積が5.0×10-4mm3 より大きくなると、磁性層
の自己研磨能が高くなりすぎて、磁気ヘツドを傷つけ、
出力の低下を招くこととなる。このため、鋼球摩耗体積
を5.0×10-4mm3 以下、好ましくは3.5×10-4
mm3 以下とすることにより、長時間走行後においても磁
気ヘツド摩耗とヘツド目詰まりを低減することができ
る。
【0036】本発明における鋼球摩耗体積は、以下に述
べるように、摺動面の位置を移動させながら、回転摺動
試験により測定されるものであつて、従来の同一部分を
往復摺動させて測定されるものとは異なり、高速時に磁
気ヘツドと摺接する磁性層表面の性状を反映したもので
ある。すなわち、従来の往復摺動試験では、同一箇所を
短い距離で摺動するにすぎないため、磁性層表面に存在
する耐久性に寄与しない内部の研磨成分まで考慮してし
まうことになるのに対し、高速摺動時における実際の耐
久性は、そのような研磨成分全体ではなく、磁性層表面
近傍のみの塗膜の凝集力、研磨剤、摩擦低下成分などの
要素が影響するものと考えられる。
【0037】この観点より、本発明における鋼球摩耗体
積は、磁性層面が高速で磁気ヘツドと摺接する場合の磁
性層の表面性状を耐久性との関係において精密に反映で
きることを見い出したものである。すなわち、本発明に
おける磁性層の鋼球摩耗体積の測定では、図1に示すよ
うに、ドライブ1の上キヤリツジを取り外し、上ヘツド
に代えて先端に鋼球3〔高炭素クロム軸受鋼製、直径
6.35mm(JISB−1501)〕を固定した天秤4
を取り付け、下キヤリツジ2のヘツド表面に厚さ0.2
mm程度のSUS製の金属板5を貼り付けて鋼球の受け面
とし、20℃,50%RHの環境下で、カ―トリツジに
組み込んだ試料デイスクをセツトし、鋼球に10gの荷
重をかかるように天秤に分銅をのせ、この状態で半径3
0mmの位置で、10秒間、デイスクを720rpmで回
転させる。
【0038】つぎに、荷重をかけたまま鋼球を1mm外周
部まで移動して10秒間回転させ、さらに1mm外周部に
鋼球を移動して10秒間回転させるという、移動・回転
の動作を順次繰り返し、合計で60秒間回転させて、デ
イスクを止める。この後、鋼球を取り外して、光学顕微
鏡(100倍)で観察し、摺動によつて生じた円形の摩
耗面の半径(r)と鋼球の半径(R)とから、下記の式
にしたがい、磁性層の鋼球摩耗体積(V)を算出する。
図1中、6はドライブ基板、7はドライブコントロ―
ラ、8はスピンドル、9はステ―タである。 V=(π/3)×{2R3 −√(R2 −r2 )×〔2R
2 +r2 〕}
【0039】本発明の磁気記録媒体の構成について、以
下、磁性層、下塗り層および非磁性支持体の順に説明す
る。まず、磁性層の構成成分には、前記のCoを含有す
る強磁性鉄系合金粉のほかに、この合金粉の結合剤、潤
滑剤、研磨剤、カ―ボンブラツクなどがあり、その他、
上記合金粉の分散性を高めるために、アルコ―ル、脂肪
酸、脂肪族アミン、界面活性剤などの分散剤が用いられ
る。
【0040】磁性層に使用する結合剤には、塩化ビニル
樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル
−ビニルアルコ―ル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニ
ル−無水マレイン酸共重合樹脂、ニトロセルロ―スなど
の中から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂と
の組み合わせがある。中でも、塩化ビニル−酢酸ビニル
−ビニルアルコ―ル共重合樹脂とポリウレタン樹脂を併
用するのが好ましい。ポリウレタン樹脂には、ポリエス
テルポリウレタン、ポリエ―テルポリウレタン、ポリエ
―テルポリエステルポリウレタン、ポリカ―ボネ―トポ
リウレタン、ポリエステルポリカ―ボネ―トポリウレタ
ンなどがある。
【0041】これらの結合剤は、Coを含有する強磁性
鉄系合金粉の分散性を向上し、充填性を上げるために、
官能基を有するものが好ましい。官能基としては、−C
OOM、−SO3 M、−OSO3 M、−P(OM)3
−O−P=O(OM)2 (Mは水素原子またはアルカリ
金属塩基)、−OH、−NR2 、−N+ 3 (Rは炭化
水素基)、エポキシ基などがある。2種以上の樹脂を併
用する場合には、官能基を一致させるのが好ましく、中
でも−SO3 M基が好ましい。
【0042】これらの結合剤は、Coを含有する強磁性
鉄系合金粉100重量部に対して、5〜50重量部、好
ましくは10〜35重量部の範囲で用いられる。とく
に、結合剤として塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜
30重量部、ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜20
重量部の範囲とし、これらの両樹脂を上記の使用割合で
組み合わせて用いるのが最も好ましい。
【0043】これらの結合剤とともに、結合剤中に含ま
れる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤
を併用するのが望ましい。この架橋剤としては、トリレ
ンジイソシアネ―ト、ヘキサメチレンジイソシアネ―
ト、メチレンジイソシアネ―トなどや、これらのイソシ
アネ―ト類とトリメチロ―ルプロパンなどの水酸基を複
数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネ―ト類
の縮合生成物などの各種のポリイソシアネ―トが好まし
い。これらの架橋剤は、結合剤100重量部に対して、
通常15〜70重量部の割合で用いられる。
【0044】磁性層に使用する潤滑剤には、従来公知の
脂肪酸と脂肪酸エステルの中から、1種または2種以上
を混合して用いられ、またこれらのほかに、炭化水素な
どの他の潤滑剤を併用してもよい。これらの中でも、炭
素数10以上、好適には12〜30の脂肪酸と、融点3
5℃以下、好ましくは10℃以下の脂肪酸エステルとを
併用するのが好ましい。これらの潤滑剤は、一部が強磁
性鉄系合金粉に吸着して磁性粉の分散性を助け、また初
期摩耗において媒体−ヘツド間の接触を和らげ、摩耗係
数を低下させてヘツド汚れの低減に寄与する。
【0045】炭素数10以上の脂肪酸としては、直鎖、
分岐、シス・トランスなどの異性体のいずれでもよい
が、潤滑性能にすぐれる直鎖型が好ましい。このような
脂肪酸としては、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン
酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、オレイン
酸、リノ―ル酸などが挙げられる。これらの中でも、ミ
リスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などが好まし
い。
【0046】融点35℃以下の脂肪酸エステルには、オ
レイン酸n−ブチル、オレイン酸ヘキシル、オレイン酸
n−オクチル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイ
ン酸オレイル、ラウリン酸n−ブチル、ラウリン酸ヘプ
チル、ミリスチン酸n−ブチル、オレイン酸n−ブトキ
シエチル、トリメチロ―ルプロパントリオレ―ト、ステ
アリン酸n−ブチル、ステアリン酸s−ブチル、ステア
リン酸イソアミル、ステアリン酸ブチルセロソルブなど
がある。これら脂肪酸エステルは、分子量や構造の違
い、融点の違いにより、油膜強度や抽出量を制御できる
ので、組み合わせによる最適化を行つてもよい。上記融
点を有することにより、低温低湿下にさらされても、磁
性層と磁気ヘツドとの高速摺接時に磁性層表面に容易に
滲出移行し、そのすぐれた潤滑作用を効果的に発揮させ
ることができる。
【0047】これらの潤滑剤を磁性層中に含ませるに
は、磁性粉と結合剤を混合する際に、上記両成分と一緒
に添加するか、上記混合の前または後に添加するか、あ
るいはあらかじめ形成された磁性層の表面に潤滑剤溶液
などを塗布または噴霧すればよい。その際、潤滑剤の使
用量は、Coを含有する強磁性鉄系合金粉100重量部
に対して、1〜15重量部、好ましくは2〜12重量
部、さらに好ましくは4〜10重量部とするのがよい。
炭素数10以上の脂肪酸と融点35℃以下の脂肪酸エス
テルを併用する場合、両者の添加比率は、重量比で10
/90〜80/20、好ましくは20/80〜60/4
0とするのがよい。
【0048】磁性層に使用する研磨剤は、磁性層の鋼球
摩耗体積を調整するために、好ましく用いられる。研磨
剤には、粒状、角状、針状のα化率90%以上のα−ア
ルミナ(Al2 3 )、β−アルミナ、γ−アルミナ、
クロム、α−酸化鉄、炭化ケイ素、酸化チタン、酸化セ
リウム、二酸化ケイ素、ダイヤモンドなどがある。中で
も、硬度が高く、磁性層の表面に存在して摩耗係数低減
の効果が大きいα−アルミナがとくに好ましい。研磨剤
の粒径は、媒体−ヘツド間のスペ―シングを小さくし、
鋼球摩耗体積を本発明の範囲内とするためにも、0.3
μm以下、とくに0.2μm以下であるのが好ましい。
しかし、あまりに小さいと、磁気ヘツドとの摩耗係数が
増大し、走行耐久性が低下するため、0.02μm以
上、とくに0.1μm以上であるのが好ましい。
【0049】研磨剤を磁性層中に含ませるには、磁性粉
と結合剤をニ―ダなどで混練する工程または予備攪拌工
程で添加するか、あるいはあらかじめ研磨剤分散液をつ
くつておき、これを磁性塗料中に添加すればよい。生産
性の点からいえば、別工程を設ける必要のない前者の方
が、より好ましい。研磨剤の添加量は、電磁変換特性お
よびヘツド汚れの観点から、Coを含有する強磁性鉄系
合金粉100重量部に対し、5〜25重量部、好ましく
は10〜20重量部とするのがよい。
【0050】磁性層に使用するカ―ボンブラツクとして
は、嵩比重の大きな粒径0.01〜0.03μm小粒径
のカ―ボンブラツクと、粒径0.2〜0.4μmの大粒
径のカ―ボンブラツクを併用するのが好ましい。嵩比重
の大きな小粒径のカ―ボンブラツクを磁性層中に添加す
ると、潤滑剤を保持できる空孔を確保でき、また高速回
転時での摩擦係数を低減できる。また、大粒径のカ―ボ
ンブラツクを磁性層中に添加すると、起動トルクを低減
できる。とくに、本発明では、磁気ヘツドからの荷重を
分散させるとともに、磁気ヘツドを傷つけずに、自己研
磨能を確保する観点から、磁性層の厚さより大きな粒径
のカ―ボンブラツクを使用するのが好ましい。
【0051】嵩比重の大きな小粒径のカ―ボンブラツク
には、Cabot社製の「BLACK PEARLS
800」、「Mogul−L」、「VULCAN XC
−72」、「Regal 660R」、コロンビアン・
カ―ボン社製の「Raven1255」、「Condu
ctex SC」などがある。大粒径のカ―ボンブラツ
クには、コロンビアン・カ―ボン社製の「SEVACA
RB・MTCI」、カンカ―ブ社製の「TermaxP
owder・N−991」などがある。
【0052】カ―ボンブラツクの磁性層中への添加量と
しては、Coを含有する強磁性鉄系合金粉100重量部
に対して、通常0.5〜5重量部、とくに1〜3重量部
とするのが好ましい。また、嵩比重の大きな小粒径のカ
―ボンブラツクと大粒径のカ―ボンブラツクとの添加比
率としては、重量比で10/90〜80/20、とくに
20/80〜50/50とするのが好ましい。
【0053】磁性層の形成にあたり、磁性塗料や潤滑剤
溶液などの調製に用いる溶剤としては、従来から使用さ
れている溶剤をいずれも使用できる。たとえば、ベンゼ
ン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、アセト
ン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケト
ン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶
剤、エタノ―ル、イソプロパノ―ルなどのアルコ―ル系
溶剤のほか、ヘキサン、テトラヒドロフラン、ジメチル
ホルムアミドなどが挙げられる。
【0054】つぎに、下塗り層の構成成分には、無機粉
末、結合剤、潤滑剤、カ―ボンブラツクなどがある。無
機粉末には、非磁性粉、磁性粉のいずれも使用できる。
非磁性粉としては、α−化率90%以上のα−アルミ
ナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、TiO
2 (ルチル、アナタ―ゼ)、TiOX、酸化セリウム、
酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2 、Si
2 、Cr2 3 、ゲ―タイト、コランダム、窒化珪
素、チタンカ―バイト、酸化マグネシウム、窒化硼素、
二硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3 、CaCO3
BaCO3 、SrCO3 、BaSO4 、炭化珪素、炭化
チタンなどが単独でまたは組み合わせて使用される。磁
性粉としては、γ−Fe2 3 、Co含有γ−Fe2
3 、Baフエライトなどの保磁力300Oe以下の低保
磁力の磁性粉が用いられる。
【0055】これらの無機粉末は、針状、粒状、板状の
いずれの形状であつてもよい。針状の無機粉末は、下塗
り層の表面性を向上して上層の磁性層の表面性に好結果
を与え、粒状の無機粉末は、下塗り層で磁気ヘツドから
の応力を分散させるうえで有効に作用するため、針状の
無機粉末と粒状の無機粉末を併用するのが好ましい。こ
れらの無機粉末の粒径(針状の場合は長軸長、粒状の場
合は最大直径、板状の場合は板径)は、あまりに大きす
ぎると、下塗り層の表面性が低下し、磁性層表面に影響
を与えるため、0.5μm以下であるのが好ましい。ま
た、あまりに小さすぎると、下塗り層の無機粉末の充填
性が上がり、潤滑剤を保持できる空孔が減少するととも
に、クツシヨン効果も低下するため、0.05μm以上
であるのが好ましい。無機粉末の使用量は、上記粒径と
同様の理由から、下塗り層全体の60〜90重量%、と
くに70〜80重量%であるのが好ましい。
【0056】下塗り層に使用する結合剤には、磁性層を
構成する前記の結合剤と同様の樹脂が用いられ、好まし
くは磁性層の結合剤と同種の樹脂を用いるのがよい。と
くに塩化ビニル系樹脂とポリウレタン樹脂との併用系で
一致させると、下塗り層と磁性層との弾性が近くなり、
磁気ヘツドからの荷重を良好に分散させることができ
る。また、下塗り層の結合剤は、磁性層の結合剤と同種
の官能基を有しているのが望ましい。とくに塩化ビニル
系樹脂とポリウレタン樹脂との併用系において、下塗り
層と磁性層で官能基を一致させると、両層の接着性が向
上するとともに、下塗り層から磁性層への潤滑剤の浸出
が円滑となるため、好ましい。
【0057】下塗り層の結合剤の使用量は、無機粉末1
00重量部に対して、20〜45重量部、とくに25〜
40重量部であるのが好ましい。なお、下塗り層の強度
を上げるために、磁性層の場合と同様に、上記の結合剤
とともに、結合剤中に含まれる官能基などと結合させて
架橋する熱硬化性の架橋剤を併用するのも望ましい。架
橋剤の使用量としては、上記の結合剤100重量部に対
して、15〜70重量部とするのが好ましい。
【0058】下塗り層に使用する潤滑剤としては、磁性
層と同様の潤滑剤を使用できるが、脂肪酸は脂肪酸エス
テルよりも上層への浸出性に劣るため、脂肪酸エステル
を単独でまたは脂肪酸エステルの添加比率を大きくして
使用するのが望ましい。下塗り層の潤滑剤の添加量は、
無機粉末100重量部に対し、通常4〜18重量部、好
ましくは5〜16重量部、より好ましくは6〜14重量
部とするのがよい。下塗り層への脂肪酸と脂肪酸エステ
ルの添加比率は、重量比で0/100〜40/60、と
くに0/100〜30/70であるのが好ましい。潤滑
剤を下塗り層に含ませるには、下塗り層用塗料のニ―ダ
などによる混合の際に一緒に添加するか、上記混合の前
または後に添加するか、あるいはあらかじめ形成された
下塗り層の表面に潤滑剤溶液などを塗布または噴霧すれ
ばよい。
【0059】下塗り層に使用するカ―ボンブラツクとし
ては、粒径0.01〜0.03μmのカ―ボンブラツク
と、粒径0.05〜0.3μmのカ―ボンブラツクとを
併用するのが好ましい。前者のカ―ボンブラツクは、磁
性層の場合と同様に、潤滑剤を保持する空孔を確保する
ためのものであり、また後者のカ―ボンブラツクは、下
塗り層の塗膜強度の向上とクツシヨン効果の両立をはか
るためのものである。下塗り層へのカ―ボンブラツクの
添加量は、両者のカ―ボンブラツクを併せて、無機粉末
100重量部に対して、5〜70重量部、とくに15〜
40重量部とするが好ましい。
【0060】上記の粒径0.01〜0.03μmのカ―
ボンブラツクには、Cabot社製の「BLACK P
EARLS 800」、「Mogul−L」、「VUL
CAN XC−72」、「Regal 660R」、コ
ロンビアン・カ―ボン社製の「Raven 125
5」、「Conductex SC」などがある。ま
た、粒径0.05〜0.3μmのカ―ボンブラツクに
は、Cabot社製の「BLACK PEARLS 1
30」、「Monarch 120」、コロンビアン・
カ―ボン社製の「Raven 450」、「Raven
410」、カンカ―ブ社製の「TermaxPowd
er・N−991」などがある。
【0061】本発明において、下塗り層中のカ―ボンブ
ラツクの粒径は、前記した磁性層中に磁性層の厚さより
も大きな粒径のカ―ボンブラツクを含有させる場合、そ
の粒径の0.01〜0.5倍、とくに0.05〜0.2
5倍とするのが好ましい。すなわち、下塗り層中のカ―
ボンブラツクの粒径を、磁性層中に含有させる磁性層の
厚さよりも大きな粒径のカ―ボンブラツクの0.5倍以
下とすることにより、下塗り層から突出するカ―ボンブ
ラツクと上層の磁性層中の大粒径のカ―ボンブラツクと
の界面での重なり合いが抑制されて、磁性層表面をより
平滑にすることができ、一方、0.01倍以上とするこ
とにより、上層の磁性層中に含有する大粒径のカ―ボン
ブラツクが磁気ヘツドからの荷重を受けた場合に、この
荷重を下塗り層中で均一に分散させることができる。
【0062】下塗り層の形成にあたり、下塗り層用塗料
や潤滑剤溶液の調製用溶剤として、磁性層の場合と同様
の芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アル
コ―ル系溶剤や、ヘキサン、テトラヒドロフランなどの
溶剤が用いられる。
【0063】つぎに、非磁性支持体としては、従来から
使用されている磁気記録媒体用の非磁性支持体をいずれ
も使用できる。具体的には、ポリエチレンテレフタレ―
ト、ポリエチレンナフタレ―トなどのポリエステル類、
ポリオレフイン類、セルロ―ストリアセテ―ト、ポリカ
―ボネ―ト、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミ
ド、ポリスルフオン、アラミド、芳香族ポリアミドなど
からなる、厚さが通常30〜100μmのフイルムが用
いられる。
【0064】高密度磁気デイスクで高トラツク密度を達
成するために使われるトラツキングサ―ボ機構は、使用
環境とくに高温環境下の試験において発生する非磁性支
持体の収縮の異方性が大きいと追従性が低下し、トラツ
キングエラ―が生じやすい。このため、非磁性支持体と
しては、105℃,30分の熱収縮率、つまり105℃
で30分間熱処理し放冷したのちの熱収縮が、縦方向で
1.5%以下、横方向で1.0%以下であるのが好まし
く、より好ましくは縦方向および横方向ともに1.0%
以下であるのがよい。上記の熱収縮率は、非磁性支持体
の幅10mm、長さ300mmの試験片6本をMD/TDよ
り各々採取し、105℃の熱風中で30分熱処理し冷却
したのちの長さを測定し、〔(元の長さ−収縮後の長
さ)/元の長さ〕×100(%)の平均値として、求め
られる。
【0065】本発明の磁気記録媒体は、その形状がデイ
スク状である場合、このデイスクを装着するハブには、
金属またはプラスチツク製のものが用いられる。その際
に、ハブの面振れ幅は80μm以下であるのが好まし
い。高密度磁気デイスクでは、高いデイスク回転数で利
用されるため、ドライブに挿入されたデイスクをスピン
ドルに固定し回転させるデイスククランプ機構において
は、ハブの面振れ幅がデイスクの面振れ幅に直接影響し
やすく、出力変動をもたらすとともに、回転時にデイス
クに局部的な荷重が加わりやすく、これによりシ―ク耐
久性が低下しやすくなる。このため、ハブの面振れ幅を
80μm以下、好ましくは60μm以下とすることによ
り、さらに高出力でシ―ク耐久性を改善できることがわ
かつた。なお、上記の面振れ幅は、ハブ単体を後述の電
磁変換特性評価装置にて1,000rpmで回転させた
際の回転軸方向の動的変動幅をフオトニツクセンサ(ス
ポツト径0.5μm)で検知し、その最大値を示したも
のである。また、本発明において、上記デイスク状の磁
気記録媒体にあつては、高速回転のドライブで使用する
場合、不織布の摩耗によりエラ―上昇の原因となるた
め、リフタのないジヤケツトを用いるのが好ましい。
【0066】本発明の磁気記録媒体の製造において、磁
性層と下塗り層の形成に際しては、従来から公知の塗料
製造工程を使用でき、とくにニ―ダなどによる混練工程
や一次分散工程を併用するのが好ましい。一次分散工程
では、サンドミルで分散時間を調整することにより、磁
性粉の分散性の改善とともに、塗膜強度を調整でき、そ
れにより磁性層の鋼球摩耗体積を設定できるので、好ま
しい。
【0067】また、塗布工程では、グラビア塗布、ロ―
ル塗布、ブレ―ド塗布、エクストル―ジヨン塗布などの
従来から公知の塗布方法を使用できる。その際、下塗り
層および磁性層の塗布方法は、非磁性支持体上に下塗り
層を塗布乾燥したのちに磁性層を塗布する、逐次重層塗
布方法か、下塗り層と磁性層とを同時に塗布する、同時
重層塗布方法のいずれの方法を採用してもよい。
【0068】本発明の磁気記録媒体の製造においては、
塗布乾燥後、プラスチツクロ―ルや金属ロ―ルを用いた
カレンダにより、温度70〜100℃、線圧120〜3
00Kg/cmで表面処理を行うのが望ましい。これにより
磁性層の表面を平滑化でき、また強磁性鉄系合金粉の充
填度を向上でき、残留磁化を向上できる。
【0069】また、本発明の鋼球摩耗体積は、磁性層の
表面粗度によつても変化するため、一次分散工程での磁
性塗料の分散性とカレンダ処理、塗膜表面研磨処理で適
宜調整できる。磁性層の表面粗度は、光干渉計三次元表
面粗さにおける平均表面粗さ(Ra)が1〜8.5n
m、好ましくは3〜7nmとなるように、カレンダ工程
でロ―ルの圧力や温度を調節して鏡面加工処理、最終的
な塗膜表面研磨処理を行うのがよい。なお、塗膜表面の
研磨処理は、平均表面粗さが0.4μm以下のアルミ
ナ、酸化クロムなどの研磨テ―プにより研磨するのが好
ましい。上記Raが1nm未満では、磁性層が平滑化し
すぎ、摩擦係数が高くなるとともに、磁気ヘツドとの貼
り付きが生じ、また磁気ヘツドとの真実接触面積の増大
から温度サイクル耐久性の低下が顕著となる。Raが
8.5nmより大きくなると、磁性層表面の凹凸が顕著
となるため、同様に磁性層の削れによる粉落ちが発生
し、シ―ク耐久性が劣化しやすくなるとともに、C/N
も劣化する。
【0070】
【実施例】以下、実施例を記載して、本発明をさらに具
体的に説明する。各例において、部とあるのは重量部を
意味するものとする。
【0071】 実施例1 <下塗り層用塗料成分> α−酸化鉄(長軸長:0.14μm、針状比:7) 65部 粒状α−アルミナ(粒径:0.4μm) 10部 カ―ボンブラツク(粒径:0.024μm) 18部 カ―ボンブラツク(粒径:0.075μm) 7部 塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコ―ル共重合樹脂 16部 (含有−SO3 Na基:0.7×10-4当量/g) ポリウレタン樹脂(含有−SO3 Na基:1×10-4当量/g) 7部 オレイン酸オレイル 6部 ステアリン酸n−ブチル(融点:28℃) 2部 シクロヘキサノン 200部 メチルエチルケトン 200部
【0072】 <磁性塗料成分> Coを含有する強磁性鉄系合金粉 100部 (Co/Fe:0.2、Al/Fe:0.05、pH:7、 長軸長:0.10μm、Hc:2,000Oe、 BET比表面積:50m2/g、σs:140emu/g) カ―ボンブラツク(粒径:0.02μm) 1部 カ―ボンブラツク(粒径:0.35μm) 2.5部 粒状α−アルミナ(粒径:0.3μm) 15部 塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコ―ル共重合樹脂 13部 (含有−SO3 Na基:0.7×10-4当量/g) ポリウレタン樹脂(含有−SO3 Na基:1×10-4当量/g) 4部 ミリスチン酸(炭素数:15) 1部 オレイン酸オレイル(融点:0℃以下) 5部 シクロヘキサノン 250部 メチルエチルケトン 250部
【0073】上記の下塗り層用塗料成分をニ―ダで混練
したのち、サンドミルで10時間分散させ、これにポリ
イソシアネ―ト6部を加えて、下塗り層用塗料を調製し
た。これとは別に、上記の磁性塗料成分をニ―ダで混練
したのち、サンドミルで10時間分散させ、これにポリ
イソシアネ―ト7部を加えて、磁性塗料を調製した。上
記の下塗り層用塗料を、ポリエチレンテレフタレ―トフ
イルムからなる支持体(105℃,30分の熱収縮率が
縦方向で0.8%、横方向で0.6%)に、乾燥後の厚
さが片面で1μmとなるように、両面に塗布し、乾燥し
た。なお、下塗り層中のカ―ボンブラツクの粒径は、上
層の磁性層の大粒径のカ―ボンブラツクの0.07〜
0.21倍であつた。
【0074】このようにして支持体の両面に下塗り層を
カレンダ処理後に1.0μmになるように形成したの
ち、この下塗り層上にさらに上記の磁性塗料をカレンダ
処理後の磁性層の厚さが片面で0.18μmとなるよう
に、両面に塗布し、乾燥した。ついで、この磁気シ―ト
を5段カレンダ(温度80℃,線圧150Kg/cm)で鏡
面化処理し、60℃で24時間エ―ジングしたのち、
3.5インチサイズに打ち抜いた。その後、アルミナ研
磨テ―プ(WA−6000:アルミナ平均粒径2μm、
表面粗さ0.4μm)による表面研磨処理(エア―圧
0.25MPa、研磨時間1秒、デイスク回転数2,0
00rpm)を施し、さらに70℃で24時間エ―ジン
グ処理後、面振れ幅60μmのハブに装着したのち、リ
フタのない不織布付きジヤケツトに挿入させて、磁気デ
イスクを作製した。
【0075】実施例2 磁性塗料成分中、粒状α−アルミナ(粒径:0.3μ
m)15部を粒状α−アルミナ(粒径:0.15μm)
15部に変更し、カ―ボンブラツク(粒径:0.35μ
m)に代えて、粒径0.20μmのカ―ボンブラツクを
使用するとともに(下塗り層中のカ―ボンブラツクの粒
径は、上層の磁性層中の大粒径カ―ボンブラツクの0.
12〜0.38倍である)、かつカレンダ処理後の磁性
層の厚さを片面で0.09μmとなるように変更し、さ
らに表面研磨処理をアルミナ研磨テ―プ(WA−600
0)に代えてアルミナ研磨テ―プ(WA−8000:ア
ルミナ平均粒径1.2μm、表面粗さ0.07μm)で
行うようにした以外は、実施例1と同様にして、磁気デ
イスクを作製した。
【0076】実施例3 下塗り層用塗料成分中、オレイン酸オレイルの添加量を
6部から13部に変更し、かつ下塗り層用塗料成分のサ
ンドミルによる分散条件を10時間から8時間に変更す
るとともに、カレンダ処理後の磁性層の厚さを片面で
0.16μmとなるようにした以外は、実施例1と同様
にして、磁気デイスクを作製した。
【0077】実施例4 下塗り層用塗料成分および磁性塗料成分のサンドミルに
よる分散条件を、それぞれ10時間から6時間に変更す
るとともに、カレンダ処理後の磁性層の厚さを片面で
0.20μmとなるようにし、さらに5段カレンダによ
る鏡面化処理を温度70℃,線圧120Kg/cmで行うよ
うにした以外は、実施例1と同様にして、磁気デイスク
を作製した。
【0078】実施例5 磁性塗料成分中、磁性粉を、Coを含有する強磁性鉄系
合金粉(Co/Fe:0.4、Al/Fe:0.02、
pH:9、長軸長:0.08m、Hc:2,200O
e、BET比表面積:55m2/g、σs:150emu
/g)100部に変更し、粒径0.35μmのカ―ボン
ブラツク2.5部に代えて粒径0.27μmのカ―ボン
ブラツク2.5部を使用し、さらに下塗り層用塗料成分
および磁性塗料成分のサンドミルによる分散条件を、そ
れぞれ10時間から15時間に変更し、かつ5段カレン
ダによる鏡面化処理を温度90℃,線圧250Kg/cmで
行うようにした以外は、実施例1と同様にして、磁気デ
イスクを作製した。
【0079】実施例6 下塗り層用塗料成分中、オレイン酸オレイルの添加量を
6部から3部に変更するとともに、磁性塗料成分中、ミ
リスチン酸1部をステアリン酸(炭素数:18)1部
に、オレイン酸オレイル5部をオレイン酸2−エチルヘ
キシル(融点:0℃以下)8部に、それぞれ変更するよ
うにした以外は、実施例1と同様にして、磁気デイスク
を作製した。
【0080】実施例7 下塗り層用塗料成分中、α−酸化鉄65部に代えて、γ
−Fe2 3 磁性粉(粒子径:0.12μm Hc:
3,00Oe,σs:75emu/g、BET比表面積
25m2/g)65部を使用するとともに、カレンダ処理
後の磁性層の厚さを片面で0.17μmとなるように
し、非磁性支持体として、105℃,30分の熱収縮率
が縦方向で0.3%、横方向で0.1%であるポリエチ
レンテレフタレ―トフイルムを使用するようにした以外
は、実施例1と同様にして、磁気デイスクを作製した。
【0081】実施例8 下塗り層用塗料成分中、カ―ボンブラツク(粒径:0.
075μm)に代えて、粒径0.095μmのカ―ボン
ブラツクを使用するとともに(下塗り層中のカ―ボンブ
ラツクの粒径は、上層の磁性層中の大粒径カ―ボンブラ
ツクの0.07〜0.27倍である)、磁性塗料成分
中、ミリスチン酸を添加せず、非磁性支持体として、1
05℃,30分の熱収縮率が縦方向で1.2%、横方向
で0.8%であるポリエチレンテレフタレ―トフイルム
を使用し、面振れ幅が70μmであるハブを用いた以外
は、実施例1と同様にして、磁気デイスクを作製した。
【0082】比較例1 下塗り層を設けず、カレンダ処理後の磁性層の厚さを片
面で0.15μmとなるようにした以外は、実施例1と
同様にして、磁気デイスクを作製した。
【0083】比較例2 磁性層の厚さを0.3μmとし、非磁性支持体として1
05℃,30分の熱収縮率が縦方向で2.0%、横方向
で1.2%のポリエチレンテレフタレ―トフイルムを用
い、アルミナ研磨テ―プによる研磨処理を行わず、面振
れ幅100μmのハブを用いた以外は、実施例1と同様
にして、磁気デイスクを作製した。
【0084】比較例3 下塗り層用塗料成分中、カ―ボンブラツク(粒径:0.
075μm)に代えて、粒径0.35μmのカ―ボンブ
ラツクを使用するとともに(下塗り層中のカ―ボンブラ
ツクの粒径は、上層の磁性層中の大粒径カ―ボンブラツ
クの0.07〜1.0倍である)、塩化ビニル−ビニル
アルコ―ル共重合樹脂およびポリウレタン樹脂をそれぞ
れ官能基として−SO3 Na基を有するものから−OH
基のみを有するものに変更し、磁性塗料成分中、粒状α
−アルミナ(粒径:0.3μm)15部を粒状α−アル
ミナ(粒径:0.5μm)15部に変更し、また下塗り
層用塗料成分および磁性塗料成分のサンドミルによる分
散条件をそれぞれ10時間から5時間に変更し、カレン
ダ処理後の磁性層の厚さを片面で0.17μmとなるよ
うにし、5段カレンダによる鏡面化処理を温度70℃、
線圧120kg/cmで行うようにした以外は、実施例1と
同様にして、磁気デイスクを作製した。
【0085】比較例4 下塗り層用塗料成分中、オレイン酸オレイルの添加量を
6部から1部に変更するとともに、磁性塗料成分中、2
種のカ―ボンブラツクをいずれも使用せず、かつオレイ
ン酸オレイルの添加量を5部から1部に、ミリスチン酸
の添加量を1部から2部に、それぞれ変更し、さらに下
塗り層用塗料成分および磁性塗料成分のサンドミルによ
る分散条件をそれぞれ10時間から24時間に変更し、
かつカレンダ処理後の磁性層の厚さを片面で0.20μ
mとなるようにするとともに、5段カレンダによる鏡面
化処理を温度105℃、線圧250kg/cmで行うように
した以外は、実施例1と同様にして、磁気デイスクを作
製した。
【0086】比較例5 下塗り層用塗料成分中、オレイン酸オレイル6部をステ
アリン酸セチル(融点40℃)18部に変更するととも
に、磁性塗料成分中、粒状α−アルミナの添加量を15
部から30部に変更し、かつオレイン酸オレイル5部を
オレイン酸メチル(融点20℃)8部に変更するように
した以外は、実施例1と同様にして、磁気デイスクを作
製した。
【0087】比較例6 下塗り層用塗料成分中、カ―ボンブラツクを添加せず、
α−酸化鉄の添加量を65部から100部に、オレイン
酸オレイルの添加量を6部から0.5部に、ステアリン
酸n−ブチルの添加量を2部から1部に、それぞれ変更
するとともに、磁性塗料成分中、磁性粉を、強磁性Fe
−Ni合金粉(pH:11、長軸長:0.25μm、H
c:1,550Oe、BET比表面積:55m2/g、σ
s:120emu/g)100部に変更するとともに、
オレイン酸オレイルの添加量を5部から0.5部に変更
し、さらにミリスチン酸を添加せず、カレンダ処理後の
磁性層の厚さを片面で0.15μmとなるようにした以
外は、実施例1と同様にして、磁気デイスクを作製し
た。
【0088】以上の実施例1〜8および比較例1〜6の
各磁気デイスクについて、n−ヘキサンにより抽出され
る潤滑剤の量、脂肪酸と脂肪酸エステルとの油出重量
比、磁性層の鋼球摩耗体積と残留磁化を、本文記載の方
法で測定した。なお、n−ヘキサンによる潤滑剤の抽出
にあたり、磁気デイスクの切り出しは両面で600cm2
とした。また、鋼球摩耗体積の測定にあたり、ドライブ
として、松下寿電子工業(株)製ドライブ(LKM−F
434−1)(カ―トリツジは3.5インチカ―トリツ
ジ)を使用した。これらの結果は、表1に示されるとお
りであつた。
【0089】
【0090】なお、参考のために、実施例1と比較例3
で作製した磁気デイスクについて、各磁性層をプレパラ
―トガラス上にその両端を接着テ―プで貼り付けて固定
し、直径6.25mmの鋼球に荷重50gを加えて20mm
の距離を速度20mm/秒で1回走行させたのち、新しい
磁性層面に鋼球を移動させて同じ操作を20回繰り返す
ことによる、往復運動による鋼球摩耗試験を行つた。そ
の結果、摩耗体積が、実施例1で4.0×10-6mm3
比較例3で4.1×10-6mm3 であつた。
【0091】つぎに、上記の実施例1〜8および比較例
1〜6の各磁気デイスクについて、再生出力、分解能、
温度サイクル耐久性およびシ―ク耐久性を、下記の方法
により測定した。これらの結果は、表2に示されるとお
りであつた。
【0092】<再生出力>デイスク回転用NTN社製ス
ピンドルモ―タSPU−MUX158GV3とヘツド位
置調整用中央精機製精密ステ―ジMM−40X・Y、M
M−40Z、MM−40GUおよびMM−40GLより
なる電磁変換特性評価装置に、トラツク幅8μm、ギヤ
ツプ長0.3μmのMIGタイプヘツドを取り付け、回
転数1,000rpm、記録周波数7,215kHzで
半径35mmの位置において記録したのち、再生アンプ出
力のpeak to peak値をヒユ―レツトパツカ
―ド社製オシロスコ―プ54504Aで測定した。測定
値は、比較例2の磁気デイスクを100%として、相対
値で示した。
【0093】<分解能>上記再生出力の測定絶対値をH
F出力とし、記録周波数を1,804kHzにしたとき
の測定絶対値をLF出力とする。上記のHF出力とLF
出力の比(HF出力/LF出力)を分解能とした。測定
値は、比較例2の磁気デイスクを100%として、相対
値で示した。
【0094】<温度サイクル耐久性>上記の再生出力測
定用の装置を用い、5℃,20%RHと50℃,80%
RHの温度サイクル環境下で、半径35mmの位置におい
て連続走行させ、出力電圧が初期値の85%に低下する
までの累計走行時間を調べた。
【0095】<シ―ク耐久性>上記の再生出力測定用の
装置を用い、20℃,65%の環境下で、r=30〜4
0mmの範囲を速度10往復/分でシ―ク動作させ、r=
35mmの位置の出力電圧が初期の85%に低下するまで
の累計走行時間を調べた。
【0096】
【0097】上記の表2から明らかなように、本発明の
実施例1〜8の各磁気デイスクは、再生出力および分解
能を満足し、かつ温度サイクル耐久性とシ―ク耐久性も
満足するものであり、高い電磁変換特性とすぐれた走行
耐久性が得られていることがわかる。とくに、実施例1
〜7の各磁気デイスクでは、潤滑剤として脂肪酸と脂肪
酸エステルを併用し、これら両潤滑剤の抽出量が0.3
/99.7〜10/90の範囲となるようにしたことに
より、サイクル耐久性、シ―ク耐久性の改善にとくに好
結果が得られたものである。また、実施例1〜8の各磁
気デイスクは、上層の磁性層中に磁性層の厚さよりも大
きな粒径のカ―ボンブラツクを含ませ、かつ下塗り層中
に上記磁性層の大粒径のカ―ボンブラツクの0.01〜
0.5倍の粒径とされたカ―ボンブラツクを含ませたこ
とにより、さらにハブの面振れ幅を80μm以下とした
ことにより、上記耐久性をより一段と改善できたもので
ある。これに対して、比較例1〜6の各磁気デイスクで
は、電磁変換特性か、走行耐久性かのいずれかの特性に
明らかに劣つている。
【0098】
【発明の効果】以上のように、本発明においては、非磁
性支持体と磁性層との間に下塗り層を設け、かつ磁性粉
として特定の強磁性鉄系合金粉を使用するとともに、磁
性層の厚さ、潤滑剤の種類と量および磁性層の鋼球摩耗
体積を特定したことにより、高い電磁変換特性とすぐれ
た走行耐久性、とくに満足できるシ―ク耐久性および温
度サイクル耐久性が得られる高密度磁気記録媒体、とく
に高トラツク密度および高線記録密度の高密度磁気デイ
スクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁性層の鋼球摩耗体積を測定する装置を示す説
明図である。
【符号の説明】
1 ドライブ 2 下キヤリツジ 3 鋼球 4 天秤 5 金属板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 蒔田 義幸 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 宮田 照久 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体上に下塗り層と磁性層とが
    この順に形成され、磁性層の厚さが0.20μm以下、
    磁性層に含まれる磁性粉がCoを含有する強磁性鉄系合
    金粉からなり、磁性層と下塗り層とからn−ヘキサンに
    より抽出される成分中に脂肪酸と脂肪酸エステルの中か
    ら選ばれる少なくとも1種の潤滑剤を含有し、この潤滑
    剤の抽出量が30mg/cm3 以上、磁性層の鋼球摩耗体積
    が0.5×10-4〜5.0×10-4mm3 であることを特
    徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 磁性層と下塗り層とからn−ヘキサンに
    より抽出される成分中に炭素数10以上の脂肪酸と融点
    35℃以下の脂肪酸エステルとからなる潤滑剤を含有
    し、両潤滑剤の抽出重量比が0.3/99.7〜10/
    90である請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 磁性層中に磁性層の厚さより大きな粒径
    のカ―ボンブラツクを含有する請求項1または2に記載
    の磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 下塗り層中にカ―ボンブラツクを含有
    し、このカ―ボンブラツクの粒径が、磁性層中に含有さ
    れる磁性層の厚さより大きな粒径のカ―ボンブラツクの
    0.01〜0.5倍である請求項3に記載の磁気記録媒
    体。
  5. 【請求項5】 非磁性支持体は、105℃で30分間熱
    処理し放冷したのちの熱収縮率が、縦方向で1.5%以
    下、横方向で1.0%以下である請求項1〜4のいずれ
    かに記載の磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 形状がデイスク状であり、面振れ幅が8
    0μm以下のハブに装着されてなる請求項1〜5のいず
    れかに記載の磁気記録媒体。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6890381B2 (en) 2000-04-28 2005-05-10 Sumitomo Osaka Cemet Co., Ltd. Hydraulic-composition bonded magnet
CN114717740A (zh) * 2022-03-15 2022-07-08 云路复合材料(上海)有限公司 磁力变轨编织机构

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6890381B2 (en) 2000-04-28 2005-05-10 Sumitomo Osaka Cemet Co., Ltd. Hydraulic-composition bonded magnet
CN114717740A (zh) * 2022-03-15 2022-07-08 云路复合材料(上海)有限公司 磁力变轨编织机构
CN114717740B (zh) * 2022-03-15 2023-12-08 云路复合材料(上海)有限公司 磁力变轨编织机构

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