JPH052242Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この考案は、溝入れ旋削加工を行うための溝入
れ用スローアウエイチツプに係わり、特に、横送
り切削を行う際の切屑の処理技術の改善に関する
ものである。

［従来の技術］ 従来、溝入れ用スローアウエイチツプとして
は、たとえば、第４図ないし第６図に示すものが
知られている。これらの図に示す溝入れ用スロー
アウエイチツプは、チツプ本体１の両端部上面が
すくい面２，２とされ、これらすくい面２，２の
稜線部に切刃２ａが形成されてなるものであつ
て、すくい面２は、切刃２ａから後端側へ向かう
所定範囲の部分が下り勾配となる平坦面に形成さ
れ、この平坦面に連続する後端側の部分が断面円
弧状の凹曲面に形成されている。

この溝入れ用スローアウエイチツプは、図示し
ない工具本体に取り付けられて溝入れ旋削加工に
供されるものであつて、切刃２ａによつて溝の加
工を行い、生成された切屑をすくい面２に当てる
ことにより、これをカールさせて一定方向へ流出
させつつ短尺に分断するようになつている。

［考案が解決しようとする問題点］ ところで、溝入れ用スローアウエイチツプによ
つてその幅より広い溝を加工する場合には、ある
程度の深さまで加工して溝入れ用スローアウエイ
チツプを旋盤の軸方向へ送つて溝のくり広げを行
い、このようにして溝を漸次掘り下げる加工を行
うことがある。ところが、上記溝入れ用スローア
ウエイチツプにおいては、そのすくい面の断面形
状がチツプ本体の幅方向について一定であるた
め、生成される切屑がカールすることなく真つす
ぐに伸びる。このため、切屑の形状や流出方向が
不規則かつ不安定となり、切屑が被削材や工具に
干渉して被削材の加工精度が悪化するばかりでな
く、作業者にとつても危険である。

そこで、従来においては複数種類の溝入れ用ス
ローアウエイチツプを保有しておき、溝の幅に応
じて適宜交換するようにしているが、工具費が割
高になるばかりでなくその管理にも多大の労力を
要し、さらに、工具の交換に多くの時間を要する
ため切削加工の作業効率が悪化するという問題が
あつた。

本考案は上記のような問題点を解決するために
なされたもので、溝の幅広げ加工を何ら支障なく
行うことができ、したがつて、工具費等の低減を
図ることができるのは勿論のこと、切削加工の作
業効率を大幅に向上させることができる溝入れ用
スローアウエイチツプを提供することを目的とし
ている。

［問題点を解決するための手段］ この考案の溝入れ用スローアウエイチツプは、
すくい面の両側に、切刃に近接した箇所から後端
側へ向け、すくい面のすくい角よりも大きな角度
で下面側へ傾斜する第２すくい面を形成して構成
したものである。

［作用］ 溝の幅広げ加工の際に生じる切屑は、上記第２
すくい面に沿つて送り方向と逆方向へ向かつて伸
び、すくい面と第２すくい面との間の側面に当接
して螺旋状にカールする。これによつて、切屑の
流出方向が規制されるとともに切屑が短尺に分断
される。

［実施例］ 以下、第１図ないし第３図を参照しながら本考
案の一実施例について説明する。第１図は実施例
の溝入れ用スローアウエイチツプを示す平面図で
ある。第１図において符号４はチツプ本体であ
る。チツプ本体４は、上下面４ａ，４ｂが互いに
平行になされ、かつ断面が略五角形の棒状のもの
であり、その上面４ａの先端部にすくい面５が形
成されている。このすくい面５は、先端縁から後
端側へ向かう所定範囲の部分が下り勾配となる平
坦面に形成されるとともに、この平坦面に連続す
る後端側の部分が図中R₁で示す曲率半径の凹曲
面に形成されたものであつて、その先端縁には切
刃５ａが形成されている。そして、すくい面５の
両側の壁部には凹部６が形成されている。

凹部６は、チツプ本体４の側縁を含む壁部を切
刃５ａに近接した箇所から後端側へ向けて切り欠
いてなるものであつて、その上面には第２すくい
面７が形成されている。第２すくい面７は、切刃
５ａから後端側へ所定寸法（図中Ａで示す寸法）
離間した箇所から後端側へ向け、チツプ本体４の
上面４ａに対して図中βで示す角度で下面４ｂ側
へ傾斜して形成されている。ここで、第２すくい
面７と上面４ａとのなす角度βは、すくい面５の
すくい角αよりも大きく設定されている。また、
第２すくい面７からチツプ本体４の上面４ａに至
る側面は、第２すくい面７の幅（先端縁において
は図中Ｂで示す寸法）が後端側へ向かうに従つて
漸次減少するように図中R₂で示す曲率半径の凹
曲面８に形成され、チツプ本体４の側面４ｃにな
だらかに連続せしめられている。

なお、チツプ本体４の後端部も先端部と同様に
構成されているので、同一の構成要素には同一の
符号を付してその説明を省略する。

このような溝入れ用スローアウエイチツプによ
り溝のくり広げ加工を行うと、第２すくい面７の
側縁７ａにより切屑が生成され、第２すくい面７
に沿つて送り方向と逆方向へ向かつて伸びる。そ
して、切屑は凹曲面８に当接して螺旋状にカール
し、一定方向へ向かつて流出するとともに短尺に
分断される。したがつて、切屑が被削材や工具に
干渉することがなく、溝のくり広げ加工における
被削材の加工精度を大幅に向上させることがで
き、切削加工の作業を安全かつ円滑に行うことが
できる。一方、上記溝入れ用スローアウエイチツ
プを溝の深さ方向へ送る場合においては、切刃５
ａによつて生成される切屑はすくい面５によつて
カールし、通常の溝の加工に際して何ら支障を来
すことがない。

このように、上記溝入れ用スローアウエイチツ
プでは、任意の幅の溝を何ら支障なく加工するこ
とができるから、工具費や工具の管理工数を大幅
に低減することができるのは勿論のこと、溝の幅
に応じて工具を交換する必要がなく、切削加工の
作業効率を大幅に向上させることができる。

なお、上記実施例では、第２すくい面７からチ
ツプ本体４の上面に至る側面を凹曲面８に形成し
ているが、チツプ本体４の側面４ｃに対して傾斜
する傾斜面に形成しても良く、また、このような
傾斜面と凹曲面とを組み合わせて形成しても良
い。

［考案の効果］ 以上説明したようにこの考案の溝入れ用スロー
アウエイチツプでは、すくい面の両側に、切刃に
近接した箇所から後端側へ向け、すくい面のすく
い角よりも大きな角度で下面側へ傾斜する第２す
くい面を形成しているから、溝の幅広げ加工を何
ら支障なく行うことができ、したがつて、工具費
や工具の管理工数を低減することができるのは勿
論のこと、切削加工の作業効率を大幅に向上させ
ることができるという効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図は本考案の一実施例を示す
図であつて、第１図は、溝入れ用スローアウエイ
チツプを示す平面図、第２図は第１図の方向矢
視図、第３図は第２図の方向矢視図、第４図い
し第６図は従来の溝入れ用スローアウエイチツプ
の一例を示す図であつて、第４図はその側面図、
第５図は第４図の方向矢視図、第６図は第５図
の方向矢視図である。 ２……すくい面、２ａ……切刃、４ａ……上
面、４ｂ……下面、５……すくい面、５ａ……切
刃、７……第２すくい面。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) チツプ本体の端部上面に先端側および後端側
   から略中央部に向かうに従つて上下面間距離が
   漸次減少する凹状のすくい面を形成するととも
   に、このすくい面の先端縁に切刃を形成してな
   る溝入れ用スローアウエイチツプにおいて、上
   記すくい面の両側に、上記切刃に近接した箇所
   から後端側へ向け、すくい面のすくい角よりも
   大きな角度で下面側へ傾斜する第２すくい面を
   形成したことを特徴とする溝入れ用スローアウ
   エイチツプ。 (2) 上記第２すくい面とすくい面との間の壁面
   を、先端側から後端側へ向かうに従つて側面間
   距離が漸次増加してチツプ本体の側面に連続す
   る傾斜面または凹曲面により構成したことを特
   徴とする実用新案登録請求の範囲第１項記載の
   溝入れ用スローアウエイチツプ。