JPH05214475A

JPH05214475A - 低温ろう付け用高強度・高耐食性アルミニウム合金クラッド材

Info

Publication number: JPH05214475A
Application number: JP5620891A
Authority: JP
Inventors: Kunihiko Kishino; 邦彦岸野; Motoyoshi Yamaguchi; 元由山口
Original assignee: Furukawa Aluminum Co Ltd
Current assignee: Furukawa Aluminum Co Ltd
Priority date: 1991-01-23
Filing date: 1991-01-23
Publication date: 1993-08-24

Abstract

(57)【要約】【目的】高強度、耐食性及びろう付け性に優れた低融
点ろう材を被覆したアルミニウム合金材料からなる熱交
換器用部材の開発。【構成】Ｍｇ 1.5〜3.5 wt％またはこれにＳｉ 0.03
〜2.5 wt％を含有し、さらにＣｒ 0.01 〜0.35wt％，Ｍ
ｎ 0.01 〜1.80wt％，Ｚｒ 0.01 〜0.35wt％，Ｈｆ 0.0
3 〜0.5 wt％，Ｖ 0.03 〜0.35wt％，Ｎｉ 0.03 〜3.5
wt％，Ｆｅ 0.02〜1.5 wt％，Ｔｉ 0.005〜0.35wt％の
内から１種もしくは２種以上を含み、かつＣｕを 0.5wt
％未満に規制し、残部が実質的にＡｌからなるアルミニ
ウム合金材の、少なくとも片面に 500℃以下で溶融する
ろう材を被覆したクラッド材。そして上記片面にろう材
を被覆した反対面に犠牲材を被覆したクラッド材。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は 500℃以下の温度でろう
付けするためのろう被覆材料に関するもので、特に自動
車用等の熱交換器部材として使用されるのに好適なもの
である。

【０００２】

【従来の技術】自動車用熱交換器の多くはＡｌおよびＡ
ｌ合金が使用されておりろう付け法により製造されてい
る。通常ろう付けはＡｌ−Ｓｉ系のろう材が用いられ、
そのためろう付けは 600℃程度の高温で行われる。

【０００３】上記Ａｌ−Ｓｉ系ろう材を用いたろう付け
では、ろう材の供給はろう単体の粉末，線材，板材でも
良いが、一般的には作業性の点を考慮してろう材を芯材
に熱間圧着によりクラッドした所謂ブレージングシート
で行われる場合が多い。例えばJIS A 3003（Ａｌ−0.15
wt％Ｃｕ−1.1wt ％Ｍｎ）（以下wt％を単に％と記す）
を芯材とし、その片面にはJIS A 7072（Ａｌ−１％Ｚ
ｎ）の犠牲材、反対側にはJIS A4343 （Ａｌ− 7.5％Ｓ
ｉ）のろう材で構成されるブレージングシートが使用さ
れている。

【０００４】近年ろう付けコストの低減から、ろう付け
温度をより低温にしたいという要求が高まってきた。こ
のようにろう付け温度を低温にすることにより、ろう付
け時間の低減，熱量の低減，ろう付け炉のコスト低減，
ろう付け炉の耐久性の向上，更には殆どのＡｌ材料が使
用できる等種々の利点が生まれる。

【０００５】なお現在実用化されている低温でろう付け
する方法としては、Ｚｎ粉とＺｎＣl ₂主体のフラック
スの混合物をＡｌ材料で組立てられたコアに塗布し、Ｚ
ｎをろうとして 450℃程度に加熱ろう付けするものが知
られている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】近年、環境問題から自
動車の燃費向上要求に伴う車体重量の軽量化要求および
特定フロンの使用禁止に伴う冷媒変更により熱交換器の
大型化傾向の問題から、部材の薄肉化による熱交換器の
軽量化あるいは重量増の減少が急務となっている。しか
し従来のＡｌ−Ｓｉ系ろう材を用いたろう付けによる熱
交換器部材においては 600℃程度の高温に曝される為に
融点の高い材料しか使用出来ず、部材の高強度化には限
界があった。また上記従来の低温ろう付け部材において
はろう材としてＺｎ，Ｓｎ等の比重の大きなろう材を使
用するために、部材の重量が大きくなるという問題があ
った。

【０００７】上記のような問題点を解決するためには強
度の高い材料を使用することが必要であるが、強度の高
い材料は耐食性が低く成りがちであり、使用部位が制限
される傾向があった。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めに種々検討の結果、本発明は低融点のろう材を被覆し
た高強度かつ高耐食性の熱交換器用部材を開発したもの
である。

【０００９】即ち本発明は、Ｍｇ 1.5〜3.5 ％を含有
し、さらにＣｒ 0.01 〜0.35％，Ｍｎ0.01〜1.80％，Ｚ
ｒ 0.01 〜0.35％，Ｈｆ 0.03 〜0.5 ％，Ｖ 0.03 〜0.
35％，Ｎｉ 0.03 〜3.5 ％，Ｆｅ 0.02 〜1.5 ％，Ｔｉ
0.005〜0.35％の内から１種もしくは２種以上を含有
し、かつＣｕを 0.5％未満に規制し、残部が実質的にＡ
ｌからなるアルミニウム合金材の、少なくとも片面に 5
00℃以下で溶融するろう材を被覆したことを特徴とする
ものである。

【００１０】また本発明の他の一つは、Ｍｇ 1.5〜3.5
％及びＳｉ 0.03 〜2.5 ％を含有し、さらにＣｒ 0.01
〜0.35％，Ｍｎ 0.01 〜1.80％，Ｚｒ 0.01 〜0.35％，
Ｈｆ0.03〜0.5 ％，Ｖ 0.03 〜0.35％，Ｎｉ 0.03 〜3.
5 ％，Ｆｅ0.02〜1.5 ％，Ｔｉ 0.005〜0.35％の内から
１種もしくは２種以上を含有し、かつＣｕを 0.5％未満
に規制し、残部が実質的にＡｌからなるアルミニウム合
金材の、少なくとも片面に 500℃以下で溶融するろう材
を被覆したことを特徴とするものである。

【００１１】そしていずれの場合でも片面に犠牲材をク
ラッドしたアルミニウム合金材を用い、該犠牲材の反対
面に上記ろう材を被覆するのは有効である。

【００１２】

【作用】本発明において合金組成を規定した理由を以下
に示す。

【００１３】Ｍｇは材料の強度および耐食性を同時に向
上させる効果を有すると共に、低温ろう付け時にＺｎ，
Ｓｎ等の材料中への拡散を抑制して材料の耐食性の劣化
を防止する効果がある。 1.5％未満ではこれらの効果が
充分ではなく、 3.5％を越えて含有されると強度は増加
するものの材料中のＭg とろう材中のＺｎ，Ｓｎ等ある
いはフラックス中のＦ，Ｃｌ等を含む化合物等が反応し
てろう付け後の耐食性を劣化させる。

【００１４】ＳｉはＭｇと共に微細な析出物を生じて強
度向上に寄与する。しかしＳｉの添加は耐食性を若干低
下させる傾向があり、使用部位に応じてＳｉの添加、無
添加を決定すべきである。Ｓｉ含有量が0.03％以下では
強度への寄与があまり期待出来ず、また 2.5％を越えて
含有されると耐食性の劣化が著しくなる。

【００１５】Ｃｒ，Ｍｎ，Ｚｒ，Ｈｆ，Ｖ，Ｎｉ，Ｆｅ
およびＴｉは何れも材料の強度、特に高温強度を向上さ
せ、ろう付け時およびろう付け後の変形を防止する効果
を奏する。従って一般的にはこれら元素群の内１種もし
くは２種以上を所定量添加することが好ましい。しかし
一方ではこれら元素の添加は素材の材料組織を微細化
し、結晶粒界面積を増大させるためにろう材の拡散を助
長し、耐食性を劣化させる危険性があり、これら元素の
含有量の決定にあたっては製品の使用部位に基づき、そ
の含有量を決定する必要がある。しかしてそれぞれ下限
未満の含有量では前述の効果を期待出来ず、また上限を
越えて添加されると素材中に粗大な化合物を生じて材料
の成形性、強度、靭性、耐食性のいずれもが劣化する危
険性がある。

【００１６】Ｃｕは、これを含有すると強度を増大させ
ることから、高強度を必要とする部材には好んで添加さ
れる元素であるが、Ｃｕの含有量が 0.5％以上になると
耐食性が劣化するので好ましくない。

【００１７】なお上記元素以外の含有元素については0.
05％以下であれば、本発明材料の特性に悪影響は及ぼす
ものではない。また鋳造性改善等のためのＢ，Ｂｅ等、
あるいは成形性改善のためのミッシュメタル等について
も0.05％以下の範囲において添加することが可能であ
る。

【００１８】次にろう材としては融点 500℃以下であれ
ば、例えば純Ｚｎ，Ｚｎ−０〜28％Ａｌ，Ｚｎ−Ａｌ
系，Ｚｎ−Ｃｄ系，Ｓｎ−Ｚｎ系，Ｚｎ−Ｐｂ系等どの
ような合金でも使用できる。しかしろう付け後の製品の
耐食性を考慮するとＺｎ合金系のろう材が最も適用性が
広い。

【００１９】そしてろう材の被覆は熱間圧着法，溶射
法，溶融めっき法，電気めっき法，蒸着法等いかなる方
法によっても良い。但し工業上における経済性（被覆コ
ストおよび生産性）を考慮すると熱間圧着あるいはめっ
きにより被覆するのが好ましい。なおろうの被覆厚さに
ついては特に限定するものではなく、製品形状および使
用部位により決定されればよい。

【００２０】現在、図１に示す偏平電縫管からなる多数
の通液管(1) の間にフィン(2) を介在させ、該通液管
(1) の両端にヘッダー(3) を設けたラジエーターの上記
通液管(1) として使用されているブレージングシートの
ように部材の一部が強い腐食環境に曝される場合におい
ては、腐食環境に曝される管内面には犠牲材としてJISA
7072合金等の電位が低い材料がクラッドされているの
が一般的である。従って本発明においても芯材の片面
（ろう材の反対面）には芯材合金の電位より50mV以上卑
なる合金を犠牲材として用いることにより、耐食性をさ
らに向上させることも可能である。

【００２１】また芯材とろう材あるいは芯材と犠牲材と
の間に耐食性向上等の目的でさらに他合金層をクラッド
することも可能である。芯材と犠牲層との間にさらに合
金層層をクラッドする場合には犠牲材の電位はその合金
層の電位より50mV以上卑であることが必要であり、さら
にその合金層は芯材よりも50mV以上卑であることが好ま
しい。

【００２２】

【実施例】

（実施例１）表１に示すＡｌ合金をＤＣ鋳造により厚さ
400mm×巾2300mmの鋳塊とし、これを均質化処理（ 440
℃×12ｈ＋ 520℃×12ｈ）後、熱間圧延および冷間圧延
により厚さ１mmの供試用板材とした。次に図２に示す溶
融めっき装置を用いて供試用板材(4) をガイドローラー
(5) によりめっき浴(6) 中に連続的に浸漬し、該板材
(4) の片面にＺn −５％Ａｌ合金を30μｍの厚さにめっ
きしてクラッド材を得た。次いでこれらを脱脂後ＡｌＦ
₃とＣｓＦを基本組成とした弗化物系フラックスの10％
濃度液を塗布し、温度 450℃に保持した露点−40℃の窒
素ガス雰囲気の炉中に挿入してろう付けと同一条件で加
熱を行った。

【００２３】その後これらクラッド材より引張試験片を
加工して引張試験を行い機械的性質を評価すると共に、
巾50mm×長さ100mm の試験片を切り出して、ろう付け面
をシールし、芯材の耐食性を塩水噴霧試験 720時間の腐
食試験により生ずる腐食試験後の最大孔食深さにより評
価した。そしてこれらの結果を表２に示した。

【００２４】

【表１】

【００２５】

【表２】

【００２６】表２より本発明による材料は本発明の範囲
を外れる比較材、あるいは従来材に比べて強度および／
または耐食性に優れることが判る。

【００２７】また図４に示すように上記クラッド材(7)
をクラッドしていないベア材(8) の片面に垂直に当節し
た逆Ｔ継手試験片に組立て、ＬｉＣｌ，ＫＣｌ，ＺｎＣ
ｌ₂等からなる塩化物系のフラックスの50％濃度液を塗
布し温度 420℃でろう付けしてろう付け性を評価した。
その結果は表２に併記したが、いずれの場合でも正常な
フィレットが形成され、ろう付け用の材料として十分使
用可能であった。

【００２８】（実施例２）表３に示す構成にて芯材の片
面に犠牲材（JIS A 7072組成材）を10％の割合でクラッ
ドした 1.2mmの板材を通常の熱間圧着法により製造し
た。この板材を使用し図２及び図３に示す溶融めっき装
置により、Ｚｎ−11％Ａｌ（融点 425℃）ろう材を犠牲
材と反対面に、80μｍの厚さにめっきして両面クラッド
材を得た。これらを脱脂後ＡｌＦ₃とＣｓＦを基本組成
とした弗化物系フラックスの10％濃度液を塗布し、温度
450℃に保持した露点−40℃の窒素ガス雰囲気の炉中に
挿入してろう付けと同一条件で加熱を行った。

【００２９】加熱後の材料より引張試験片を加工して引
張試験を行い機械的性質を評価すると共に、巾50mm×長
さ100mm の試験片を切り出して、犠牲層面以外はシール
して、犠牲層面側からの耐食性をＣＡＳＳ試験 720時間
の腐食試験により生ずる腐食試験後の最大孔食深さによ
り評価した。これらの結果は表３に併記した。

【００３０】

【表３】

【００３１】表３より本発明クラッド材は従来クラッド
材と同等の耐食性を有し、かつ強度においては従来材よ
り優れていることが判る。

【００３２】

【発明の効果】本発明によれば、従来より著しく高強度
でかつ従来材と同等の耐食性を有し、かつ薄肉の熱交換
器用ろう付け部材が供給可能となり、しかも低温ろう付
けが可能となるのでろう付け炉の設備費やろう付けのラ
ンニングコスト低減等工業上顕著な効果を奏するもので
ある。

【図面の簡単な説明】

【図１】ラジエーターを示す斜視図である。

【図２】溶融溶融メッキ装置を示す説明図である。

【図３】図２のＡＡ線矢視図である。

【図４】逆Ｔ継手試験片を示す斜視図である。

【符号の説明】

１通液管２フィン３ヘッダー４板材５ガイド治具６めっき浴７クラッド材８ベア材

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】Ｍｇ 1.5〜3.5 wt％を含有し、さらにＣ
ｒ 0.01 〜0.35wt％，Ｍｎ 0.01 〜1.80wt％，Ｚｒ 0.0
1 〜0.35wt％，Ｈｆ 0.03 〜0.5 wt％，Ｖ 0.03 〜0.35
wt％，Ｎｉ 0.03 〜3.5 wt％，Ｆｅ 0.02 〜1.5 wt％，
Ｔｉ 0.005〜0.35wt％の内から１種もしくは２種以上を
含有し、かつＣｕを 0.5wt％未満に規制し、残部が実質
的にＡｌからなるアルミニウム合金材の、少なくとも片
面に 500℃以下で溶融するろう材を被覆したことを特徴
とする低温ろう付け用高強度・高耐食性アルミニウム合
金クラッド材。
【請求項２】片面に犠牲材をクラッドした板材を用
い、犠牲材の反対面にろう材を被覆した請求項１記載の
低温ろう付け用高強度・高耐食性アルミニウム合金クラ
ッド材。
【請求項３】Ｍｇ 1.5〜3.5 wt％及びＳｉ 0.03 〜2.
5 wt％を含有し、さらにＣｒ 0.01 〜0.35wt％，Ｍｎ
0.01 〜1.80wt％，Ｚｒ 0.01 〜0.35wt％，Ｈｆ 0.03
〜0.5 wt％，Ｖ 0.03 〜0.35wt％，Ｎｉ 0.03 〜3.5 wt
％，Ｆｅ0.02〜1.5 wt％，Ｔｉ 0.005〜0.35wt％の内か
ら１種もしくは２種以上を含有し、かつＣｕを 0.5wt％
未満に規制し、残部が実質的にＡｌからなるアルミニウ
ム合金材の、少なくとも片面に 500℃以下で溶融するろ
う材を被覆したことを特徴とする低温ろう付け用高強度
・高耐食性アルミニウム合金クラッド材。
【請求項４】片面に犠牲材をクラッドした板材を用
い、犠牲材の反対面にろう材を被覆した請求項３記載の
低温ろう付け用高強度・高耐食性アルミニウム合金クラ
ッド材。