JPH0520325Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、医学、医療分野における人工臓器の
センサとして使用される生体物質固定化電極に関
する。

（従来の技術及び考案が解決しようとする問題
点） 近年、医学、医療の分野において、障害を受け
た臓器の積極的な治療手段として、人工臓器の開
発が求められている。

人工臓器は、センサ、制御部及び操作部の３部
より構成されるが、生体内の状態をリアルタイム
で測定して即時に治療操作を行わせるためには、
少なくともセンサは、体内埋込みが可能でなけれ
ばならない。

しかしながら、従来、この用途向けに開発され
たものは、一定期間内の体内への留置を可能とし
てはいるが、体内への埋込みに際し、体表面の切
開手術を必要とする上に、センサのメンテナンス
が容易でないという問題点を有している。

上記した問題点を解決する対策としては、セン
サの形状を針型に形成されて体表面からの挿入が
可能であり、交換も容易である構造が考えられ、
白金線の先端に生体物質を結合させたワイヤ型電
極が知られている。

しかしながら、このワイヤ型電極は、ワイヤの
先端部を生体物質固定化膜で被覆された構造であ
るために、体表面からの挿入に際して、生体物質
固定化膜の剥離や損傷が生じやすいという問題点
を有している。

本考案は、体表面らの挿入が容易であつて、剥
離や損傷のおそれのない生体物質固定化電極の構
造を提示することを目的とするものである。

（問題点を解決するための手段） 本考案は、人工臓器用センサとして使用されて
いる従来のワイヤ型電極における問題点を考慮し
て、金属材による中空針の内部に金属細線を挿入
し、中空針及び金属細線間に生体物質固定化材を
充填するとともに、金属細線の先端を同一の生体
物質固定化材によつて被覆した構成となすもので
ある。

中空針及び金属細線は、何れも電気化学的に安
定でなければならず、中空針としては、白金、
銀、金が、金属細線としては、白金、金が挙げら
れる。

中空針の外径は、体内への挿入の面から１mm以
下であることが望ましい。

中空針及び金属細線間に充填されて金属細線の
先端を覆う生体物質固定化材としては、各種酵
素、抗原、抗体、抗生物質、ホルモン、レセプ
タ、オルガネラ、チヤンネル、微生物、（放線菌、
糸状菌、酵母、バクテリア）などが使用され、更
に、人工の物質であるが、フタロシアニン等の錯
体も挙げられる。

これらの生体物質を固定化する物質としては、
感光性樹脂、ポリビニルブチラールなどの汎用ポ
リマ、天然素材であるセルローズ、キキン類、生
体由来物質であるアルブミン等がある。

固定化法としては、例えばグルタルアルデヒ
ド、カルボジイミドなどを用いた共有結合法が有
効であり、その他、イオン結合法、吸着法、架橋
法などを用いることができる。

中空針内への充填は、これら生体物質を反応前
或は反応中の固定化材中に分散させておき、これ
を中空針に接続させた通常の注射筒によつて中空
針内に吸引し、しかる後に固定化反応を進行させ
ることによつて容易に実施することができる。

生体物質を分散された固定化材の粘度が低い場
合には、中空針の先端を浸漬させて毛細管現象に
よつて吸い上げさせることも可能である。

中空針と金属細線との間の短絡を防止するため
に、生体物質固定化材を充填されていない部分の
金属細線の表面に電気絶縁材による膜が被覆され
る。

（作用） 上記した構成を備えた本考案による生体物質固
定化電極の中空針及び金属細線を電気化学電極し
て用いれば、生体物質が誘起する化学変化が電気
信号として検出される。

（実施例） 第１図に示すものは、本考案による生体物質固
定化電極の構造例で、通常の注射器に用いられて
いる中空針１内に金属細線２が挿入され、中空針
１及び金属細線２の間に、生体物質固定化材３が
充填されてその一部が金属細線２の先端を覆い、
生体物質固定化材３を充填されていない箇所の金
属細線２の表面に、中空針１及び金属細線２間を
電気的に絶縁する絶縁膜４が被覆されている。

［実施例］ 外径１mm、内径0.8mmの白金製中空針１内に、
0.2mmの外径を備え、先端部を残してエナメル樹
脂等の絶縁膜４を被覆された白金の細線２を挿入
し、１mlのリン酸緩衝液（PH7.0）中にグルコー
スオキシターゼ（GOD）５mg、ヒト血清アルブ
ミン40ml、50％のグルタルアルデヒト水溶液20μ
を溶解させ、溶液調合１分後に、注射筒に装着
した中空針１を上記した調合液内に入れ、調合液
を中空針１内に吸引させ、この中空針１を４℃で
24時間放置して第１図に示すような生体物質固定
化電極を得た。

このようにして製作した生体物質固定化電極を
37℃，PH7.0のリン酸緩衝液中に浸漬し、各種濃
度のグルコースを加え、中空針をカソード、白金
細線をアノードとして、印加電圧0.7Vにおける
電流の増加を測定した。

グルコースは、針先からGOD固定化材内に拡
散し、GODによつてグルコン酸と過酸化水素と
に分解され、この時、中空針及び白金細線の両電
極は、過酸化水素電極として作用し、生成した過
酸化水素量に比例した電流が両電極間を流れる。
従つて、この電流値からグルコース濃度を求める
ことができる。

第２図に示す測定結果から、グルコース濃度と
出力電流との間に良好な相関が認められた。

（考案の効果） 本考案による生体物質固定化電極が、上記した
ように、中空針内に金属細線を挿入され、中空針
及び金属細線間に生体物質固定化材を充填され、
金属細線の先端が生体物質固定化材の一部によつ
て覆われた構造を備えていることにより、生体内
部に挿入された中空針及び金属細線を両電極とし
て電圧が印加された際に、生体物質が誘起する化
学変化を電気信号として検出されるので、人工臓
器のセンサとして有効に機能することができる。

生体物質固定化電極全体の大きさが通常の注射
針と同程度であるので、体内埋込み用センサとし
て使用する場合に、体内への挿入及び体内からの
取り出しが簡単になされ、センサのメンテナンス
が容易であり、更に、生体物質固定化材が中空針
内に保持されているので、挿入時及び取り出し時
における剥離或は損傷のおそれが全くない。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案による生体物質固定化電極の
構造例の断面図、第２図は、本考案による生体物
質固定化電極を用いた測定結果の図表である。 １……中空針、２……金属細線、３……生体物
質固定化材、４……絶縁膜。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 中空針１と、該中空針１内に挿入された金属細
   線２と、前記中空針１及び前記金属細線２の間に
   充填されて前記金属細線２の先端を覆つている生
   体物質固定化材３とを有する生体物質固定化電
   極。