JPH05195252A - 合成ヘミモルファイト耐食皮膜の形成方法 - Google Patents

合成ヘミモルファイト耐食皮膜の形成方法

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JPH05195252A
JPH05195252A JP785292A JP785292A JPH05195252A JP H05195252 A JPH05195252 A JP H05195252A JP 785292 A JP785292 A JP 785292A JP 785292 A JP785292 A JP 785292A JP H05195252 A JPH05195252 A JP H05195252A
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邦典 細川
Morihisa Matsunaga
守央 松永
Hideki Nagata
英樹 永田
Takashi Amamiya
隆 雨宮
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 水道系配管等への耐食性皮膜としての合成ヘ
ミモルファイト皮膜を効果的に形成する方法の提供。 【構成】 SiO2 濃度が100〜1000ppm濃度
のアルカリ珪酸塩溶液を電流密度0.01〜10mA/
cm2 の条件で電解して基材表面に亜鉛と珪酸からなる
複合化合物を生成し、ついで、この複合化合物を85〜
99℃の温水中で熟成させることにより、基材表面にZ
4 (OH)2 Si27 ・H2 Oの化学式を有する合
成ヘミモルファイト皮膜を生成するもので、基材組織と
連続した組織を有し基材との結合性も高く、優れた耐食
性とともに高い耐剥離強度を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水道管、下水道管等の
配管、温水器の配管、給湯管、冷暖房用、冷温水系配
管、給湯設備の水タンク等、水設備あるいは配管の内面
への、または、自動車鋼板や屋根材等の外装鋼板表面へ
の合成ヘミモルファイト耐食皮膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、水道系配管として亜鉛めっき
鋼管が一般に使用されているが、近年の大都市における
水源汚染に伴い配管の腐食が著しくなってきている。
【0003】このため、亜鉛めっきに代わる表面処理法
として、特公昭53−37255号公報、特開昭54−
2945号公報、特開昭54−13429号公報、特開
昭62−37378号公報等に開示されている金属塩と
珪酸塩を複合化した皮膜の適用が試みられているが、と
くに給排水用の一般配管において、長期間の使用におい
ても錆の発生を防ぐという点では充分なものとは言えな
い。
【0004】一方、本願の発明者は、かかる水道・下水
系配管の腐食機構についての研究報告を1989年、
「腐食防食 '89」に発表した。この報告は亜鉛の腐
食生成物としてヘミモルファイトの腐食配管断面での分
布についても言及しており、とくに注目すべき現象とし
て、腐食水道管内面の局部的に腐食した錆こぶと称する
部分以外の均一腐食部分には、ヘミモルファイトが多く
存在し、この層の下部には腐食が発生していないとして
いる。このヘミモルファイトは、Zn4(OH)2Si2
7 ・H2 Oの化学式を有する斜方晶系であって結晶は
明瞭な異極像を示す。
【0005】本願発明者は、この現象の解明を基にして
研究を進めた結果、このヘミモルファイトの耐食性皮膜
としての利用を思いつき、亜鉛・珪酸塩複合皮膜が鉱物
ヘミモルファイトに近似した組成構造を有する場合、と
くに水道系雰囲気の耐食性を示すことを解明した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、水道
系配管等への耐食性皮膜としての合成ヘミモルファイト
皮膜を効果的に形成する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、電気化学的に
基材表面の亜鉛をアルカリ珪酸塩溶液中で溶出させ、基
材表面に亜鉛と珪酸からなる不定形の化合物を生成し、
ついで、温水中で熟成させることにより基材表面に合成
ヘミモルファイト(Hemimorphite)皮膜を
結晶化させることを特徴とする。
【0008】基材表面に亜鉛と珪酸からなる不定形の化
合物を生成するための電解処理条件は、アノード電解液
としてSiO2 濃度換算で100〜1000ppm、p
H8〜12のアルカリ珪酸塩溶液中で、電流密度0.0
1〜10mA/cm2 の条件で電解を行う。
【0009】SiO2 濃度が100ppm未満である場
合には、珪酸が亜鉛表面へ均一に供給されず均一な皮膜
形成反応が起きにくくなり、また1000ppm超の場
合には、亜鉛表面へ吸着した珪酸の層が厚くなりすぎ
て、溶存酸素の供給が制限され亜鉛の溶出が進まないの
で皮膜が生長しにくくなり好ましくない。また、溶出し
た亜鉛との反応性を良くする為には、珪酸分子の重合度
を適度に保った方が良く、その為にはアルカリ珪酸塩溶
液を、pH8〜12に保持することがよい。
【0010】また、電流密度0.01〜10mA/cm
2 の条件の範囲外であると、合成ヘミモルファイトの不
定形の前駆物質を形成する為に必要な亜鉛の溶出量が過
少または過大となって、耐食性皮膜としては好ましくな
い。
【0011】また、亜鉛と珪酸からなる複合化合物のヘ
ミモルファイトへの結晶化は、電解処理した基材を温水
中で熱成させることによって得られる。
【0012】形成されたヘミモルファイト皮膜は、Zn
4(OH)2 Si27 ・H2 Oの化学式を有する斜方晶
系であって、結晶は明瞭な異極像を示す天然鉱物質と少
なくとも近似の特性を有することが必須である。そし
て、その合成ヘミモルファイト皮膜の厚みは0.5〜5
0μmであることが望ましい。ヘミモルファイト結晶で
覆われた皮膜の表面は、板状または柱状の単結晶が織り
重なった立体構造をしているため、あまりに薄いと皮膜
の均一性に欠け、厚すぎると母地金属との熱膨張の差に
より皮膜にき裂が生じる場合がある。
【0013】本発明が適用できる基材としては、その表
面が少なくとも亜鉛層を有するものであればよい。ここ
で、亜鉛層としては基材上に亜鉛成分を表面に含有する
ものであれば如何なる形態のものであっても適用でき、
例えば、亜鉛基材そのもの、あるいは亜鉛を合金材とし
て含有する基材、亜鉛あるいは亜鉛合金めっき層、合金
化溶融亜鉛めっきを有する基材に適用できる。
【0014】
【作用】電解条件と熟成条件を上記条件に選択すること
によって、緻密性に優れたヘミモルファイト組織を有す
る皮膜を形成できる。とくに、電解処理によって得られ
た複合化合物のヘミモルファイトへの結晶化は、純粋の
温水中で熟成することによって効率よく得られる。
【0015】上記条件の下で形成された合成ヘミモルフ
ァイト皮膜は、基材組織と連続した組織を有し基材との
結合性も高く、優れた耐食性とともに高い耐剥離強度を
有する。
【0016】
【実施例】
〔実施例1〕SiO2 濃度に換算して100ppmと1
000ppmのメタ珪酸ナトリウムを窒素バブリングに
より脱気した後、pH11.5に調整する。この溶液中
に亜鉛板を浸漬し、これを陽極として0.01〜10m
A/cm2 の電流を流して亜鉛を電気化学的に溶解さ
せ、溶液中の珪酸と反応させて、亜鉛板表面に非晶質の
ヘミモルファイトの前駆物質を形成せしめる。この後
に、亜鉛板を85℃の蒸留水中に移して変えて、適当な
期間熟成して得た亜鉛板表面の生成物のX線回析法によ
る分析結果を表1に示す。但し、表中の腐食生成物の略
号Aは亜鉛、Bは酸化亜鉛、Hはヘミモルファイトを示
す。また、図1は、メタ珪酸ナトリウム1000pp
m、電解条件0.1mA/cm2 .1時間で処理した
後、45日間蒸留水中で熟成した後の亜鉛板表面の生成
物の分析結果を1例として示す。図1中の付番1はZn
O,付番2はヘミモルファイト,付番3はZnのピーク
を各々示している。図2にヘミモルファイトの標準試料
のX線回析パターンを示す。図1と図2を比較すると基
材表面に明確にヘミモルファイトのX線回析ピークが得
られていることがわかる。
【0017】
【表1】 〔実施例2〕SiO2 濃度に換算して1000ppmの
メタ珪酸ナトリウム溶液を窒素バブリングにより脱気し
た後、pH11.6付近に調整し、この溶液中に亜鉛板
を浸漬し、これを陽極として0.1mA/cm2 の電流
を0.5〜2時間流して亜鉛を電気化学的に溶解させ、
亜鉛板表面に非晶質のヘミモルファイトの前駆物質を形
成せしめた後に、一つはこのまま85℃に保持し熟成
し、他の一つは、85℃の蒸留水中に写し変えて熟成
し、適当な期間を経た後、亜鉛板を取り出してX線回折
法により表面の生成物を分析した結果を表2に示す。表
2の結果から明らかに電解液中よりも蒸留水中で熟成し
た方がヘミモルファイトの結晶ができやすいことがわか
る。
【0018】
【表2】 さらに、ヘミモルファイト皮膜を合成した亜鉛板を85
℃の水道水中に1週間浸漬し、腐食試験を行った結果を
表3に示す。腐食の程度は、表面の発錆面積比率を測定
して評価した。
【0019】判定基準は以下の通りである。
【0020】 評価点 5: 発錆面積0〜5% 〃 4: 〃 6〜10% 〃 3: 〃 11〜15% 〃 2: 〃 16〜20% 〃 1: 〃 21%以上
【表3】 また、ヘミモルファイト皮膜の耐酸、耐アルカリ性を調
べるために、ヘミモルファイトの結晶をpH3の硫酸酸
性溶液、pH13の化成ソーダ溶液に24時間浸漬した
ところ、酸性では溶解するが、アルカリ性では全く溶解
しないことがわかった。従って、ヘミモルファイト皮膜
はアルカリ溶液中でも安定した保護皮膜として作用する
ことが期待できる。また、ヘミモルファイト皮膜は、雨
水や塩水に対しても安定であることが期待できるので自
動車や屋根材等の外装鋼板の保護皮膜としても好適な材
料である。
【0021】
【発明の効果】本発明によって以下の効果を奏すること
ができる。
【0022】(1)水道水中及びアルカリ溶液中で安定
なヘミモルファイトの結晶を人工的に亜鉛めっき鋼等の
表面に合成し、安定な保護皮膜を形成させることができ
る。
【0023】(2)その皮膜の形成は電解後、温水熟成
を行うのみであるので格別の工程の管理を必要とせず、
簡単に形成できる。
【0024】(3)ヘミモルファイトは、熱分解温度が
250℃以上と高いため、生成した皮膜は熱水環境化で
も安定な保護皮膜として作用する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 亜鉛板表面の生成物のX線回折像を示す。
【図2】 ヘミモルファイトの標準試料のX線回折像を
示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松永 守央 福岡県北九州市戸畑区仙水町3番27−201 号 (72)発明者 永田 英樹 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1 号 東陶機器株式会社内 (72)発明者 雨宮 隆 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1 号 東陶機器株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 亜鉛を含む金属基材をアルカリ珪酸塩溶
    液中で電解して、基材表面に亜鉛と珪酸と水からなる複
    合化合物を生成し、ついで、この複合化合物を温水中で
    熟成して、基材表面にZn4 (OH)2 Si27 ・H
    2 Oの化学式を有し、且つヘミモルファイトの結晶構造
    を有する皮膜を形成する合成ヘミモルファイト耐食皮膜
    の形成方法。
  2. 【請求項2】 請求項1の記載において、アルカリ珪酸
    塩溶液がpH8〜12、SiO2 濃度換算にして100
    〜1000ppm濃度の珪酸成分を含み、電解条件が
    0.01〜10mA/cm2 の電流密度である合成ヘミ
    モルファイト耐食皮膜の形成方法。
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