JPH05186899A - 成分管理装置付錫めっき装置 - Google Patents

成分管理装置付錫めっき装置

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JPH05186899A
JPH05186899A JP312192A JP312192A JPH05186899A JP H05186899 A JPH05186899 A JP H05186899A JP 312192 A JP312192 A JP 312192A JP 312192 A JP312192 A JP 312192A JP H05186899 A JPH05186899 A JP H05186899A
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plating
tank
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anode
tin
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JP312192A
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Toshihiro Kikuchi
地 利 裕 菊
Kyoko Hamahara
原 京 子 浜
Hajime Ogata
方 一 緒
Nobuyuki Morito
戸 延 行 森
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Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【構成】Sn2+イオン、有機酸、有機系酸化防止剤およ
び光沢剤を含む錫めっき液を用い、Sn2+イオン濃度、
添加剤濃度および固形夾雑物を調整しつつ、不溶性陽極
を用いて鋼帯に連続Snめっきを行う装置で、Snめっ
き槽と、Snアノード格納アノード室およびカソード格
納カソード電極室をイオン交換膜で隔てて備え、さらに
カソードとアノードの交換設備を備えたSn2+イオン供
給槽と、高比重固形夾雑物を除去するための沈殿槽と、
軽比重固形夾雑物を除去するための濾過設備と、有機物
酸化体を吸着除去する活性炭処理槽と、サーキュレーシ
ョンタンクと、Sn2+イオン量の分析値に応じてSn2+
イオン濃度が所定の範囲に入るようにSn2+イオン供給
槽内の電解電流を制御する分析装置とを備える錫めっき
装置。 【効果】Sn2+イオン供給と、その他の浴中成分の管理
が低コストかつ安定的に実現され、めっき品質と操業安
定性が飛躍的に向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、連続的に走行する鋼帯
に、不溶性陽極を用いて、電気的に錫をめっきする、電
気めっきぶりきの製造設備において、電解錫めっき液
の、Sn2+イオンおよび浴中添加物濃度を、適正な範囲
に管理すると共に、この種の装置の操業に伴って発生
し、電気めっきの品質に対して有害な作用を及ぼす微量
有機物の除去、さらに固形夾雑物の除去を目的とした装
置およびそれによるめっき浴組成の管理方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】鋼帯に連続的に電解めっきを施して、錫
めっき鋼板(ぶりき)を製造する錫めっき浴としては、
ハロゲン浴、フェロスタン浴、およびメタンスルフォン
酸浴等が知られており、長年に渡り生産の実績をあげて
いる。元来これらのめっき浴は可溶性のアノード、即ち
錫の鋳造品を用いていたが、実際の操業に於てはこの可
溶性錫アノードの交換作業が、多くの労力を要して、コ
ストアップと生産性低下の一因となっていた。そこで近
年、これらの錫電気めっきラインの生産効率向上の手段
として、電解めっき設備のアノードを不溶性アノードに
することが効果的であるとの認識が広がり、実際にその
実施例も報告されている。
【0003】錫めっきラインの不溶性アノード化には、
解決すべき幾つかの問題点があるが、めっき設備として
最も重要な事は、Sn2+の供給を如何に行うかという点
である。金属イオンの水溶液中への供給方法に関しては
既に幾つかの技術が知られている。大別すると、めっ
き浴中の溶存O2 濃度をO2 吹込みによって強制的に高
め、金属Snとめっき液によって流動床を形成する溶解
装置によって金属Snを溶解する方法(例えば特公昭5
6−54080)、イオン交換膜を用いて陽極室と陰
極室を分離したSn溶解槽を用いて、Snアノードと不
溶性カソードを用いてアノード液中にSnの有機酸化物
を生成させる方法、水溶性Sn化合物の形で溶解する
方法、の3種類に分別される。この中で、Snめっき鋼
帯の連続生産設備に応用された例は、フェノールスルフ
ォン酸浴(PSA浴)について上述の特公昭56−54
080が実施されているのみであるが、この方法ではめ
っき液中の溶存O2 濃度が極めて高いために、有用成分
であるSn2+のSn4+への酸化反応が進行する。実験規
模の比較的小規模の設備においても、投入Sn量の3%
以上がスラッジとして失われるとの報告がある(斎藤隆
穂、表面技術、vol.41No.1(1990)p2
〜8)。これだけスラッジ生成率が高い場合には、スラ
ッジの回収再生の技術と相応の規模の設備が必要になる
が、いずれにしても、めっき操業に於けるエネルギー損
失が大きくなる結果となり、大量生産には好ましくな
い。
【0004】番目の電解法については、イオン交換隔
膜を用いて陽極室と陰極室を分離し、めっき金属アノー
ドとカソードの間に通電して金属イオンを供給する技術
自体は古くから知られているが、鋼帯への連続Snめっ
き設備、即ちぶりきコイルの製造設備に応用された例は
ない。その主な理由としては、ぶりき製造設備のSn消
費量が一般のバッチ式めっき設備に比べて格段に大き
く、溶解設備が大掛かりになる事であり、また一方で、
原理的に溶解量に比例して電解電流が増加し、めっき槽
内陽極としてSnアノードを用いる可溶性陽極操業に比
べて電力コストが可溶性陽極操業に比べて高くなる事、
さらにイオン交換膜を使用した場合でも、その局部欠陥
などにより、不可避的にカソード室へのSn2+イオン漏
出がおこり、カソード表面にデンドライトが析出するた
めに、イオン供給槽カソードの手入れが必要になる事な
どが挙げられる。これらの要因は相互に関係しあってお
り、Sn溶解能力を確保したまま設備規模を小さくする
ために溶解電流密度を上げると、浴電圧が高くなって電
力消費が大きくなり、カソードでの水素発生量も多くな
る。浴電圧を低減しようとして極間距離を短縮しようと
すると、カソード表面で発生する水素ガスの滞留の影響
で浴抵抗が急激に大きくなり、また前述の漏出Sn2+
オンによるアノード表面のデンドライト成長による操業
障害が起りやすくなる。カソードでのデンドライト成長
や浴電圧の増加は電極間でのスパークを誘発しやすく、
スパークの発生はイオン交換膜の破壊につながる。イオ
ン交換膜の破壊は金属イオン供給に悪影響を及ぼす事は
自明である。さらに、この場合イオン供給のために用い
られるSn電極は必ずしも高純度のものではないため、
イオン供給溶解時に一定量のスラリーをめっき浴中に放
出する。これは特に電解量の大きい大規模設備では、配
管系のつまりや電極ショートの原因になるなど問題が多
い。このようにこの種の技術は極小規模なめっき設備に
おいて一部実用化されてはいるが(例えば特開平2−7
0087)、ぶりき製造設備のような大規模電解設備へ
の応用は全く非現実的であった。
【0005】の水溶性Sn化合物の形で溶解する方法
は、やはり電子部品のめっき処理設備等の小規模な電解
設備に於ては広く行われている。不溶性アノードによる
電解を考えた場合、ハロゲンSnめっき浴ではカソード
で塩素ガスの発生が有るため考慮の対象外であり、現実
にはSnOあるいはSnめっき浴の支持電解質として添
加される酸のSn塩の形で添加する方法が行われるが、
これらのSn化合物はその出発原料が金属Snであるた
め、必然的にそのSn重量当り単価が高い。また、これ
らの化合物をめっき浴に添加するための設備は、前述の
2方法に比べて簡素なもので良いが、特にSnOについ
ては、空気中での酸化が起りやすく、また酸化の結果S
nO表面に生じるSnO2 が水に難溶性であるため、添
加時の溶解性が著しく低下する。それを防止するために
輸送保管中の雰囲気を非酸化性に保つには、当然非常に
コストがかかる。
【0006】上記のように、不溶性陽極を用いたSnめ
っき設備へのSn2+イオン供給方法には種々の問題が有
った。
【0007】また、不溶性陽極を用いたSnめっき設備
での、Snめっき浴組成管理上のもう一つの大きな問題
として、浴中成分の陽極表面での酸化生成物の、あるい
は液中溶存酸素により生じる酸化物等の処理の問題が有
る。広く知られるように、電解によって析出する金属の
結晶構造は、電解液中に存在する有機物の影響を極めて
受けやすい。即ち、極微量存在する有機化学種によっ
て、めっきの光沢や下地金属との密着性が大きく変化す
る。めっき浴を設計する際には、当然これらのめっき品
質が最も好ましい状態になるように、酸化防止剤、光沢
剤等の各種添加剤の選定を行うのであるが、実際の不溶
性アノード操業では上述のアノード表面での電気化学的
酸化反応による酸化体生成が常に起きるために、浴中の
有機物の種類と量を完全に予測する事は極めて困難であ
り、予想外の酸化体によるめっき品質の突然の低下の危
険を完全に排除する事は不可能であった。
【0008】現在実用化されている不溶性アノードを用
いた錫めっきプロセスは、フェノールスルフォン酸(P
SA)を支持電解質としたフェロスタン浴によるもので
あるが、この浴の場合はPSA自体がSn2+の酸化抑制
機能をもつために、特に酸化防止剤の添加は行わなくて
も、一定の品質のめっきが得られる。しかし、PSAは
毒性をもつ物質であり、近年のフェノール類への環境規
制の強化傾向から、社会的にその操業が将来に渡って許
容され得るか否か予断を許さない。そこで現在注目され
ているのは、メタンスルフォン酸(MSA)を支持電解
質とした錫めっき液である。このめっき液はベンゼン環
を含まないため、環境に対する毒性が比較的低く、廃液
処理も簡便な施設で効果的に行なえるため、大規模錫め
っき設備に好適なプロセスとして将来に渡り優位性を持
つと考えられる。
【0009】しかし、MSA自体は酸化防止機能を持た
ないため、MSA浴を用いて不溶性アノードにより電解
を行なう際には、めっき液中のSn2+のSn4+への酸化
を抑制するために、酸化防止剤を添加する必要がある。
この酸化防止剤として、たとえばカテコールスルフォン
酸(CSA)等を添加した場合には、当然電解によって
アノード表面でCSAの酸化がおこり、めっき液中にC
SAの酸化体が濃縮されていく、実際にはこのほかに光
沢剤として添加される光沢剤の酸化も起る。これらの酸
化体は、もともとの添加剤の添加量が少ないため、大規
模電解施設に於いて定量的にその挙動を監視すること
は、コスト的に不可能である。しかし、前述したとお
り、金属の電解析出結晶形態へのめっき液中微量有機物
の影響は非常に大きく、操業上検出できないレベルの有
機物酸化体によって、めっき製品の表面状態に大きなダ
メージを受ける可能性は少なくない。
【0010】MSA浴は錫および錫鉛合金めっき浴とし
てすでに広く用いられているが、それは電子機器部品を
めっきするような、比較的小規模のバッチ処理式システ
ムについてであり、広幅鋼帯の大規模連続めっき設備に
商業的に応用された例はない。MSA浴の環境的な適性
やめっき品質の高さが公知であるにもかかわらず、大規
模連続めっき設備へのその応用が実現していない理由の
一つには、以上に述べたような、不溶性アノードシステ
ムとの組合せによって生じる、添加剤酸化物によるめっ
き品質の不安定化があった。
【0011】連続的な使用によって不純物溶解量が増大
した結果めっき品質が劣化しためっき浴を再生するため
に、めっき浴と吸着剤を接触させて、めっき液中の特定
成分を吸着により固定除去した上でめっき液の再利用を
図る方法は、広く行われている。その一つに活性炭を用
いて、有機物を物理吸着させる方法があり、小規模なめ
っき設備では、多くの実用例がある。ただし、鋼帯めっ
き設備のような大規模電気めっきぶりき製造設備ではそ
の例はなかった。これは従来の可溶性アノードでは、ア
ノード酸化の問題が生じなかった事、また実用化された
フェロスタン浴不溶性アノード法では、特に添加物の酸
化が問題にならなかったためである。しかし、上述の様
にMSAを支持電解質として用いて、不溶性アノードを
備えた設備で連続的な電解操作を行う場合には、めっき
品質保持のための浴中有機物酸化体の除去が不可欠にな
る。24時間操業が前提となる大規模連続めっき装置の
場合、設備の連続稼働が大前提であるため、通常小規模
なめっき設備で行われるような、バッチ式の活性炭投入
処理は適用できない。また対象となるめっき液の量が極
めて大量であるため、活性炭容量と吸着反応時間により
有機物の吸着量をコントロールする従来の処理方法は、
有用成分である支持電解質の一部も吸着により除去され
てしまうため、経済効率上、その大規模施設への適用は
実用性に著しく欠けるものであった。
【0012】上記のとおり、現在知られている不溶性ア
ノードを用いたSnめっき設備に於けるSnめっき液組
成の管理設備および浴組成管理方法は、甚だ不合理な点
が多く、実用上無駄の多いものであった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、連続的に走
行する鋼帯に、不溶性陽極を用いて、電気的に錫をめっ
きする、電気めっきぶりきの製造設備において、電解錫
めっき液の、Sn2+イオンおよび浴中添加物濃度を、適
正な範囲に管理すると共に、この種の装置の操業に伴っ
て発生し、電気めっきの品質に対して有害な作用を及ぼ
す微量有機物の除去、さらに固形夾雑物の除去を目的と
した装置およびそれによるめっき浴組成の調整設備を具
備するめっき装置を提供し、従来の不溶性アノードSn
めっき液の浴組成調整設備およびそれによる浴組成管理
方法の不合理性、非効率性を改善し、高品質のSnめっ
き鋼帯の高効率かつ安定的な生産を実現することを目的
とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】発明者らは、大規模な鋼
帯連続Snめっき操業における、Snめっき溶液の管理
を合理的に行う事によって、Snめっき鋼帯の生産コス
トを低減するべく、鋭意研究を重ね、本願発明を完成す
るに至った。
【0015】すなわち、本発明は、Sn2+イオン、支持
電解質である有機酸、さらに有機系酸化防止剤および光
沢剤の添加剤を含む錫めっき液を用い、該めっき液のS
2+イオン濃度、添加剤濃度および固形夾雑物を調整し
つつ、不溶性陽極を用いて鋼帯に連続的にSnめっきを
行う装置であって、鋼帯を連続通板してSnめっきする
Snめっき槽と、Snアノードを格納したアノード室お
よびカソードを格納したカソード電極室をイオン交換膜
で隔てて備え、さらにカソードとアノードの交換設備を
備えたSn2+イオン供給槽と、めっき液中の高比重固形
夾雑物を沈殿除去するための沈殿槽と、軽比重固形夾雑
物を除去するための濾過設備と、めっき液中の有機物酸
化体を吸着除去するための活性炭を充填した活性炭処理
槽と、添加剤濃度を再調整するためのサーキュレーショ
ンタンクと、上記めっき槽内のめっき液に含まれるSn
2+イオン量を分析するとともに、その分析値に応じてめ
っき液のSn2+イオン濃度が所定の範囲に入るようにS
2+イオン供給槽内の電解電流を制御可能である分析装
置とを接続してなる成分管理装置付錫めっき装置を提供
するものである。
【0016】さらに、サーキュレーションタンク流入流
出部の添加剤成分の分析装置、前記サーキュレーション
タンク接続された添加剤成分再調整を行うリザーバタン
ク群を具えるのがよい。また、さらに、めっき液中のF
eイオン除去装置を具えるのが好ましい。そして、支持
電解質はメタンスルフォン酸を用いるのがよい。カソー
ドをSn製とすれば一層好便である。
【0017】以下に本発明をさらに詳細に説明する。本
発明の錫めっき装置は支持電解質として有機酸を含み、
さらに有機系酸化防止剤、および光沢剤を含む錫めっき
液を用い、不溶性陽極を用いて鋼帯に連続Snめっきを
行うに際し、該めっき液のSn2+イオン濃度、添加剤濃
度および固形夾雑物を調整する装置を備え、錫めっき槽
1に接続され、Snアノード2を格納したアノード室3
とカソード4を格納したカソード電極室5とをイオン交
換膜6で隔て、さらにカソードとアノードの交換設備7
を備えたSn2+イオン供給槽8と、めっき液中の高比重
固形夾雑物を沈殿除去するための沈殿槽9と、軽比重固
形夾雑物を除去するための濾過設備10と、めっき液中
の有機物酸化体を吸着除去するための活性炭を充填した
活性炭処理槽11およびサーキュレーションタンク12
などを液送管13で順次連結したものであり、かつ該装
置はSn2+イオン供給槽からサーキュレーションタンク
12へのバイパスを備え、上記めっき槽1内のめっき液
に含まれるSn2+イオン量の分析装置14を備え、その
値に応じてめっき液のSn2+イオン濃度が所定の範囲に
入るようにSn2+イオン供給槽内の電解電流を制御可能
であると共に、Sn2+イオン供給槽8によりSn2+イオ
ン濃度を高められためっき液について、上述の沈殿槽
9、濾過槽10および活性炭処理槽11によりアノード
酸化により生じた有機添加剤の酸化体や固形夾雑物を除
去し、サーキュレーションタンク内で添加物濃度を添加
物リザーバ15により再調整する事により、Snめっき
液の成分調整を行うことができる。
【0018】本発明におけるSnめっき浴組成は、支持
電解質として有機酸を含み、さらに添加剤として有機系
酸化防止剤および光沢剤等を含むものである。既知のS
nめっき鋼帯用酸性Snめっき液はハロゲン浴、フェノ
ールスルフォン酸浴(フェロスタン浴)、およびメタン
スルフォン酸浴である。生産性向上のために不溶性陽極
操業を行うとすると、ハロゲン浴は塩素ガス発生の問題
が有るために事実上考慮の対象外になる。有機酸を含む
めっき浴は、通常Sn2+の酸化防止のために、酸化防止
剤を、まためっき析出組織制御のために光沢剤を含む。
本発明もこれらのめっき浴の使用を前提としている。
【0019】本発明におけるSnイオン供給は、Snア
ノード2を格納したアノード室3とカソード4を格納し
たカソード電極室5とをイオン交換膜6で隔て、両電極
室内には好ましくは電解液の循環装置16を備え、かつ
好ましくはカソード室5とアノード室3に発生気体回収
装置(図示せず)を備え、さらにカソードとアノードの
交換設備7を備えたSn2+イオン供給槽8によって行わ
れる。この装置構成は電極間距離を短くして浴電圧によ
る電力消費を抑え、かつ大規模設備での連続操業に適す
るものである。即ち極間距離を狭めて電極と隔膜の間隔
が狭くなるとカソード側では水素ガス生成によりめっき
液充填率が減少し、アノード側では漏出Snイオンによ
り局部的なデンドライト成長が起りやすくなるのを、電
解液の循環装置16によりガスの除去と槽内のイオン濃
度の均一化を可能にするものである。また水素ガスは気
体回収装置により安全かつ有効に利用できる形で回収さ
れる。
【0020】また、従来公知のSn有機酸化物製造方法
などでは、隔膜電解槽の陰極は、貴金属、鉄、ニッケル
等Sn以外の電極を用いていた(例えば特公平3−46
26)。この方法は、比較的小規模な設備でイオン交換
膜の保守が容易な構造であって、断続的に電解操作を行
い得る場合には有効である。これを本発明のような連続
操業に適用する場合には、複数個の設備を用意して、順
次保守作業を行っていけば、全体として連続操業が保証
される。また、設備上の理由で、電解装置の停止を最小
限にしたい場合には、カソードを自動的に交換あるいは
保守する装置を設置すればよく、たとえばカソードをS
n製とし、一定時間カソードとして使用した際に、これ
をカソード室から引き上げてアノード室に移し、アノー
ドとして使用すれば、カソード上のデンドライト成長に
よる隔膜損傷の問題は、回避することができる。またい
ずれの場合にも、アノードの溶け残りが生じる場合は、
それを回収し、鋳造等の加工により再利用すれば良い。
Snの溶解量はめっき液中のSn2+濃度の測定結果に準
じて調整されることは自明である。
【0021】めっき液中の高比重固形夾雑物を沈殿除去
するための沈殿槽9と、軽比重固体夾雑物を除去するた
めの濾過設備10は、活性炭処理槽での目づまりによる
処理速度低下を防止する意味で設けるものである。
【0022】めっき液中の有効物酸化体を吸着除去する
ための活性炭を充填した活性炭処理槽11は固形不純物
処理工程の後に設置される。これは活性炭処理槽で酸化
防止剤の一部が吸着除去される場合があるため、酸化防
止剤添加槽の直前に吸着槽をおく必要が有るからであ
る。ただし、酸化防止剤添加槽と活性炭吸着槽の間にあ
るいは、本発明装置の配管ループのいずれかの箇所に、
めっき液内の鉄イオン除去装置(図示せず)を挿入する
事は本発明の主旨を損うものではない。
【0023】本発明におけるSnめっき浴組成の管理方
法は、上記の装置をもちいて、行うものであり、その主
旨は装置の説明の内容に準ずるものである。
【0024】
【発明の構成】本発明の具体的構成を以下に詳述する。
不溶性陽極を備えた鋼帯の連続めっき設備は、鋼帯の表
面に電解析出により錫めっきを行うものであれば特にそ
の形式は問わない。電解設備の前後に必要に応じて付加
される前処理後処理設備および設備に付随する各種監視
装置などの付加装置については、その設備並びに運用に
なんら制限を設けるものではない。
【0025】支持電解質として有機酸を含み、また有機
系酸化防止剤、光沢剤を含む錫めっき液は、電解錫めっ
きに供される電解液であれば種類を問わないが、望まし
くは、メタンスルフォン酸を支持電解質として含んでい
るめっき浴が特に本発明の添加剤濃度管理には好適であ
る。
【0026】Sn2+イオン供給槽については、Snアノ
ードを格納したアノード室とカソードを格納したカソー
ド電極室とをイオン交換膜で隔て、カソードとアノード
の交換設備を備えたものであれば特にその形式は問わな
い。
【0027】活性炭を保持する活性炭処理槽については
めっき液と活性炭の接触が行われ、かつめっき液が活性
炭と分離された状態で取り出し得るものであり、かつ活
性炭が交換可能なものであれば、その構造形式を問わな
い。
【0028】活性炭については、一定範囲の細孔直径を
持つものである事が必要であり、活性炭の吸着孔の直径
分布曲線上の100nm以上500nm以下の範囲に容
積率ピークがあるものが好ましい。これは特に酸化重合
して分子量が大きくなった添加剤酸化体を効果的に捕集
し、分子量のより小さい支持電解質あるいは金属イオン
等を有用成分として回収するのに好適であるという理由
による。錫めっき液中に含有される酸化防止剤は特にそ
の種類を問わない。
【0029】沈殿槽9および濾過設備10についてもそ
れぞれめっき液の固形含有物を有効に除去できるもので
あればその構造形式を問わない。
【0030】めっき液循環経路である給液管13につい
ては、少なくとも電解設備とめっき液の貯溜設備をめっ
き液の運搬手段で連絡したものであれば、その構造形式
を問わない。
【0031】サーキュレーションタンク12は、添加物
のめっき液の添加混合が出来る機能があれば、特にその
構造形式を問わない。活性炭処理槽およびサーキュレー
ションタンクに、必要に応じて加熱冷却等の機能を付与
する事、あるいは浴性状監視のための装置を付加する事
については、なんら制限を設けるものではない。
【0032】めっき槽内のめっき液に含まれるSn2+
オン量の分析装置14は、Sn2+イオンの定量分析が行
える装置であればその形式を問わない。Sn2+イオン供
給槽内の電解電流を制御する装置は、Sn2+イオン供給
槽内の電解電流を制御可能であるものであればその形式
を問わない。
【0033】サーキュレーションタンク流入配管内のめ
っき液の酸化防止剤、光沢剤、およびその他の成分の分
析装置は上記分析装置14に一緒にしても別個にしても
よいが、これについても、該成分の定量分析が出来るも
のであればその形式を問わない。サーキュレーションタ
ンクに連結されたリザーバータンク群15に貯蔵した各
成分を、個別にサーキュレーションタンクに導入するた
めの制御装置および流入部の構造形式についても、定量
的な注入量制御が可能な問であれば特にその形式を問わ
ない。
【0034】酸化防止剤添加槽と活性炭吸着槽の間にあ
るいは、本発明装置の配管ループのいずれかの箇所に、
めっき液内の鉄イオン除去装置(図示せず)を挿入する
のが好適である。
【0035】本発明におけるSnめっき浴組成の管理方
法は、上述の装置を用いて、支持電解質として有機酸を
含み、さらに有機系酸化防止剤および光沢剤を含む錫め
っき液を用い、不溶性陽極を備えた鋼帯の連続めっき設
備によって、鋼帯に錫めっきを行うに際し、該めっき液
のSn2+イオン濃度、酸化防止剤濃度、光沢剤濃度およ
び固形夾雑物を調整する方法であり、めっき槽内のめっ
き液に含まれるSn2+イオン量の分析装置によるSn2+
イオン濃度測定値に応じてめっき液のSn2+イオン濃度
が所定の範囲に入るようにSn2+イオン供給槽内の電解
電流を制御する。また、本発明はSn2+イオン供給槽に
よりSn2+イオン濃度を高められためっき液について、
上述の沈殿槽、濾過槽および活性炭処理槽によりアノー
ド酸化により生じた有機添加剤の酸化体や固形夾雑物を
除去し、添加剤成分の濃度を分析してサーキュレーショ
ンタンク内でリザーバタンク群からの添加剤成分を添加
して添加物濃度を再調整するようにするのがよい。
【0036】
【実施例】以下に本発明を実施例および比較例に基づい
て具体的に説明する。 [実施例1]メタンスルフォン酸60g/l、Sn2+
0g/l、カテコールスルフォン酸1.0g/l、非イ
オン系界面活性剤5g/lを含むめっき液を用い、不溶
性アノードにより電解を行う電気めっきぶりき製造設備
において、連続めっき操作を28日間行った。めっき液
の正味量は50m3 であり、操業期間におけるめっき電
流密度は平均で30A/dm2 、電解総量は4.2×1
10Cであった。操業期間中、Sn2+イオンの供給は、
SnアノードとSnカソードをイオン交換膜で隔てたS
n溶解槽で行った。Sn2+供給槽の溶解電流は、Snめ
っき電流と等しく、またSnめっき槽内のめっき液中S
2+濃度が25〜30g/lになるように微調整され
た。Sn2+供給槽からのめっき液供給量は1日当り18
0m3 であった。Sn2+供給槽のSnカソードはカソー
ドとして6時間使用後、アノードとして交換され溶解さ
れた。またSnめっき槽から貯溜槽に通じる配管の途中
に、沈澱槽、ろか槽及び活性炭細孔径が0.5〜50n
mである活性炭6.6tを有効断面積5.1m2 のカラ
ム内に充填した吸着槽を設け、その中に毎時25m3
めっき液を通した。それに並行して上述の浴成分を測定
し、濃度変動を管理した。設備始動時、始動後3日、7
日、14日後及び28日後の浴組成実績測定結果及び試
験期間に投入した添加剤の量を表1に示す。めっき製品
の品質と電解電圧は電解継続中全く変らなかった。
【0037】[比較例1](スラッジ除去設備なし、活
性炭層でスラッジ除去するため活性炭容量増加するが、
そのために添加剤消費量大。最終的にアノードにスラッ
ジ沈澱して電圧上昇を起こし、操業不能) メタンスルフォン酸60g/l、Sn2+30g/l、カ
テコールスルフォン酸1.0g/l、非イオン系界面活
性剤5g/lを含むめっき液を用い、不溶性アノードに
より電解を行う電気めっきぶりき製造設備において、連
続めっき操作を7日間行った。めっき液の正味量は50
3 であり、操業期間におけるめっき電流密度は30A
/dm2 、電解総量は4.2×1010Cであった。操業
期間中、Sn2+イオンの供給は、SnアノードとPtカ
ソードをアニオン電解膜で隔てたSn溶解槽で行った。
Sn2+供給槽の溶解電流は、Snめっき電流と等しく、
またSnめっき槽内のめっき液中Sn2+濃度が25〜3
0g/lになるように微調整された。Sn2+供給槽から
のめっき液供給量は1日当り180m3 であった。Sn
めっき槽から貯溜槽に通じる配管の途中に活性炭細孔径
が0.5〜50nmである活性炭14tを有効断面積1
0m2 のカラム内に充填した吸着槽を含む環状流路に毎
時25m3 の流量で流した。その後液中カテコールスル
フォン酸濃度を測定し、濃度変動を±10%以内に管理
した。設備始動時、始動後3日及び7日後の浴組成実績
測定結果及び添加剤総添加量を表1に示す。めっき槽電
解電圧が電解の進行に伴い50%上昇し、7日後にアノ
ードの表面を観察すると、Snスラッジの付着が見られ
た。
【0038】[比較例2](活性炭設備なし、添加剤酸
化体蓄積のためめっき不良発生) メタンスルフォン酸60g/l、Sn2+30g/l、カ
テコールスルフォン酸1.0g/l、非イオン系界面活
性剤5g/lを含むめっき液を用い、不溶性アノードに
より電解を行う電気めっきぶりき製造設備において、連
続めっき操作を7日間行った。めっき液の正味量は50
3 であり、操業期間におけるめっき電流密度は30A
/dm2 、電解総量は4.2×1010Cであった。操業
期間中、Sn2+イオンの供給は、SnアノードとPtカ
ソードをアニオン電解膜で隔てたSn溶解槽で行った。
Sn2+供給槽の溶解電流は、Snめっき電流と等しく、
またSnめっき槽内のめっき液中Sn2+濃度が25〜3
0g/lになるように微調整された。Sn2+供給槽から
のめっき液供給量は1日当り180m3 であった。Sn
めっき槽から貯溜槽に通じる配管の途中に沈澱槽、ろか
槽を設けてこれにめっき液を毎時25m3 の流量で流し
た。その後液中カテコールスルフォン酸濃度を測定し、
濃度変動を±10%以内に管理した。設備始動時、始動
後3日及び7日後の浴組成実績測定結果及び添加剤総添
加量を表1に示す。連続電解7日目に上記電解条件でS
nめっきの密着性不良が発生したため、電解を中断し
た。めっき浴を更新したところ、めっき層密着性が回復
した。
【0039】 MSA メタンスルフォン酸 CSA カテコールスルフォン酸 活性剤 非イオン系界面活性剤
【0040】
【発明の効果】本件発明の実施により、従来浴中溶存酸
素濃度が不合理に高いためにスラッジ損失が大きかった
り、電解設備が過剰に大きかったり、Sn溶解の電解電
流が不合理に大きかったり、イオン源となる薬品の価格
が非常に高かったりするために結果的に高コストかつ不
安定な操業を余儀なくされたSnめっき浴へのSn2+
オン供給と、実操業上それと不可分であるその他の浴中
成分の組成管理が低コストかつ安定的に実現され、浴中
Sn2+濃度の変動と、アノード酸化体の濃縮によりめっ
き品質が不安定であった、大規模連続めっき設備に於け
るMSA系錫めっき浴の不溶性アノード操業が、そのめ
っき品質と操業の安定性において飛躍的に向上し、結果
として稼働率と歩留りの向上により製品のコストダウン
が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本件発明を実施する場合のめっき液循環系の
構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 錫めっき槽 2 Snアノード 3 アノード室 4 カソード 5 カソード室 6 イオン交換膜 7 カソードとアノードの交換設備 8 Sn2+イオン供給槽 9 沈澱槽 10 濾過設備 11 活性炭処理槽 12 サーキュレーションタンク 13 液送管 14 分析装置 15 添加物リザーバ 16 電解液循環装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 緒 方 一 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株式 会社技術研究本部内 (72)発明者 森 戸 延 行 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株式 会社技術研究本部内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Sn2+イオン、支持電解質である有機酸、
    さらに有機系酸化防止剤および光沢剤の添加剤を含む錫
    めっき液を用い、該めっき液のSn2+イオン濃度、添加
    剤濃度および固形夾雑物を調整しつつ、不溶性陽極を用
    いて鋼帯に連続的にSnめっきを行う装置であって、鋼
    帯を連続通板してSnめっきするSnめっき槽と、Sn
    アノードを格納したアノード室およびカソードを格納し
    たカソード電極室をイオン交換膜で隔てて備え、さらに
    カソードとアノードの交換設備を備えたSn2+イオン供
    給槽と、めっき液中の高比重固形夾雑物を沈殿除去する
    ための沈殿槽と、軽比重固形夾雑物を除去するための濾
    過設備と、めっき液中の有機物酸化体を吸着除去するた
    めの活性炭を充填した活性炭処理槽と、添加剤濃度を再
    調整するためのサーキュレーションタンクと、上記めっ
    き槽内のめっき液に含まれるSn 2+イオン量を分析する
    とともに、その分析値に応じてめっき液のSn2+イオン
    濃度が所定の範囲に入るようにSn2+イオン供給槽内の
    電解電流を制御可能である分析装置とを接続してなる成
    分管理装置付錫めっき装置。
  2. 【請求項2】さらに、サーキュレーションタンク流入流
    出部の添加剤成分の分析装置、前記サーキュレーション
    タンク接続された添加剤成分再調整を行うリザーバタン
    ク群を具える請求項1に記載の成分管理装置付錫めっき
    装置。
  3. 【請求項3】さらに、めっき液中のFeイオン除去装置
    を具える請求項1または2に記載の成分管理装置付錫め
    っき装置。
  4. 【請求項4】前記支持電解質がメタンスルフォン酸であ
    る請求項1〜3のいずれかに記載の成分管理装置付錫め
    っき装置。
  5. 【請求項5】前記カソードはSn製である請求項1〜4
    のいずれかに記載の成分管理装置付錫めっき装置。
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