JPH05176972A - 医療用容器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 薬剤容器と溶解液容器とを無菌的に瞬時に連
通でき、薬剤を溶解して投与後は、分解が容易で部品を
素材毎に分別廃棄できる医療用容器を提供する。 【構成】 薬剤容器を下向きに収納したカプセルの下端
と溶解液容器の上端とが連結部を介して連結され、該カ
プセル内の上部には、バネが復元可能に設置され、中央
部及び下部には、それぞれ薬剤容器及び中空の両頭針が
軸方向に移動可能に設置された医療用容器であって、該
カプセルが、上部外筒、内筒及び取り外し可能な下部外
筒から成る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、粉末薬剤や凍結乾燥薬
剤のような固体の薬剤を、用時に密封系の容器内で生理
食塩水やブドウ糖水溶液等の溶解液に溶かして注射剤と
し、点滴投与できる医療用容器に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】抗生物質や血液製剤の中には、製剤学的
安定性の問題から固体製剤として医療に供給され、使用
直前に注射剤として経静脈的に投与されるものがある。
この際の薬剤溶解作業は、従来より、それぞれゴム栓で
密封された薬剤容器と溶解液容器とを、両端に刃先を有
する中空の両頭針等で相互に連通させることによって行
われていた。しかし、前記連通操作は両容器のゴム栓と
中空の両頭針等が外気に触れた状態で行われるため、薬
剤が汚染される危険性がある。

【０００３】そこで、薬剤容器と溶解液容器との連通操
作を密封系内でできるようにした種々の容器が提案され
ている。例えば、特表昭６１−５０１１２９号公報に
は、薬剤容器を収納したカプセルと可撓性の溶解液容器
とが導管手段で連結され、その導管手段に連通手段が備
えられた医療用容器が開示されている。また、特開平２
−１２７７号公報には、前記開示の医療用容器において
手間のかかる連通操作を簡単且つ確実にできるように、
連通機構を改良した容器が開示されている。しかしなが
ら、多忙な医療現場においては、さらに容易に連通でき
る医療用容器が望ましく、また、使用後の廃棄に際し、
通常用いられているガラス製の薬剤容器とプスチック製
のカプセルや溶解液容器とを容易に分別できることが望
ましい。前記開示のいずれの医療用容器も、薬剤容器が
カプセルから簡単には取り出せない構造となっているた
め、素材毎の分別廃棄ができず、産業廃棄物処理上問題
がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、密封
系を維持した状態で薬剤容器と溶解液容器とを極めて容
易に連通でき、したがって薬剤の溶解操作が速やかに行
え、しかも使用後に部品の分別廃棄が容易にできる医療
用容器を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明の医療用容器は、
密栓された薬剤容器を収納したカプセルと密封された溶
解液容器とが連結部を介して連結され、前記カプセル内
に前記両容器間の連通手段を備えた医療用容器であっ
て、前記カプセルが、両端が開放された内筒と、その上
部において嵌合し，天面を有する上部外筒，及びその下
部において取り外し可能に嵌着し，前記連結部を構成す
る連結管を底部に具備する下部外筒とから成り、前記カ
プセル内の上部には、バネが復元可能に設置され、該カ
プセル内の中央部には、前記薬剤容器が口部を下にし，
前記バネの復元力によって軸方向に移動可能に設置さ
れ、該カプセル内の下部には、前記連通手段として中間
にハブを有する中空の両頭針が軸方向に移動可能に設置
されて成ることを特徴とするものである。

【０００６】

【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて
説明する。図１は本発明の一実施例に係る医療用容器の
斜視図であり、（１）は溶解液容器、（２）はカプセ
ル、（３）は薬剤容器、（４）は連結部である。溶解液
容器（１）は、軟質の塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン
系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の材料で形成
された可撓性の容器で、上部に薄膜で封止された連結口
部、下部にゴム栓で密封された薬液取り出し口部を具備
し、溶解液が充填されている。カプセル（２）は、両端
が開放された円筒状の内筒（５）と、その上部において
回転可能に嵌合した上部外筒（６）及びその下部におい
て取り外し可能に嵌着した下部外筒（７）とからなり、
上部外筒（６）の上面には懸架部（８）が設けられ、下
部外筒（７）の底部は一体に形成された空洞の連結管を
具備している。これらの部品は、硬質の塩化ビニル樹
脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の材料で形
成されている。薬剤容器（３）は、口部が刺通可能なゴ
ム栓で密封された薬剤入り容器で、カプセル（２）内の
ほぼ中央に下向きに設置されている。連結部（４）は、
前述の連結管と連結口部とから成り、両者は気密に嵌
合、係止されている。

【０００７】次に図２〜図１１に基づき、カプセル
（２）及びその内部の構成について詳述する。図２は、
薬剤容器（３）と溶解液容器（１）とを瞬時に連通させ
るために必要な駆動部の分解斜視図である。この図から
分かるように、該駆動部は、上部外筒（６）、金属製の
バネ（９）及び有底のバネ固定治具（10）から構成され
ている。バネ固定治具（10）は、内筒（５）の内壁と一
体に形成された受け台（11）上に、回転可能に設置され
る。なお、内筒（５）の外周に形成された環状の係合突
起（12）は、上部外筒（６）の内壁に形成された環状の
係合溝（13）に嵌まり、内筒（５）と上部外筒（６）と
が気密に嵌合できるようになっている。また、上部外筒
（６）の内壁天面には気密性を維持するためのパッキン
（14）が環状に施されている。バネ固定治具（10）の素
材としては、前述のカプセル部材と同様なプラスチック
樹脂が使用できる。

【０００８】図３は、駆動部位の破断斜視図であり、作
動前の状態を示している。バネ（９）は、上部外筒
（６）の天面とバネ固定治具（10）の底面との間に収縮
した状態で収納されている。上部外筒（６）を一定の方
向に回転させると、上部外筒掛爪（15）がバネ固定治具
掛爪（16）を回転させ、この掛爪（16）が受け台（11）
上を摺動して受け台欠落部位まで移動したとき、掛爪
（16）すなわちバネ固定治具（10）が受け台（11）から
外れ、バネ（９）が復元して薬剤容器（３）を軸方向
（下方）に移動させる。

【０００９】図４と図５は、それぞれ内筒（５）の平面
図と縦断面図である。両図に示すように、内筒（５）の
内壁には、前記バネ固定治具（10）及び後述する薬剤容
器固定治具（17）とがそれぞれ振れることなく軸方向
（下方）に移動するように制御するためのガイド（18）
が４個所設けられている。ガイド（18）の最上部にはバ
ネ固定治具（10）の受け台（11）が形成され、内筒
（５）の外壁中央部には、係合突起（19）が２個所形成
されており、それらは下部外筒（７）の内壁に設けられ
た係合溝（20）と嵌合できる。（21）は気密性を維持す
るための環状パッキンである。また、内筒（５）の中央
部位円周上には、突き抜けの係止孔（22）が等間隔に４
個所設けられている。

【００１０】図６は下部外筒（７）の斜視図である。下
部外筒（７）の内壁には、内筒（５）と嵌合した状態で
前記係止孔（22）と同位置に有底の係止穴（23）が４個
所設けられている。また、下部外筒（７）の底部と一体
に成形された空洞の連結管（24）外壁には、溶解液容器
（１）の連結口部（25）と嵌合の際、その口部（25）に
形成された鍵状くり抜き部（26) に挿入し係止するため
の突起（27）が２個所設けられている。

【００１１】図７は、カプセル（２）内で、薬剤容器
（３）、薬剤容器固定治具（17）、中空の両頭針（28）
を組み合わせた状態を説明するための斜視図であり、図
８と図９は、それぞれ薬剤容器固定治具（17）の平面図
と縦断面図を示す。薬剤容器固定治具（17）は、その弾
力性のある係止部（29）先端が前述の係止孔（22）を通
り抜け、その先の係止穴（23）に挿入されることによ
り、係止されている。したがって、駆動部を作動させて
バネが復元し、薬剤容器固定治具（17）の係止部（29）
が下向きの外力により変形して、係止穴（23）及び係止
孔（22）から外れた後でなければ、下部外筒（７）を外
すことができない。すなわち、前記係止機構は、下部外
筒（７）を取り外した状態で不用意な両頭針（28）の飛
び出しを防ぐための、安全機能を有している。薬剤容器
固定治具（17）の素材としては、前述のカプセル部材と
同様なプラスチック樹脂が使用できる。

【００１２】図１０は両頭針（28）の縦断面図を示す。
その中間には、両頭針（28）が薬剤容器口部のゴム栓
（30）と連結口部(25)を封止する薄膜（31）の両方に刺
通するように刺通幅固定用のハブ（32）が設けられてい
る。両頭針（28）の素材としては、ステンレススチール
製等の金属やアクリル樹脂等の硬質プラスチック樹脂が
使用できるが、好ましくは金属である。

【００１３】図１１は、薬剤容器（３）が収納されたカ
プセル（２）と連結部（４）の縦断面図であり、駆動部
作動前の状態を示す。両頭針（28）は、薬剤容器固定治
具（17）とゴム製の液漏れ防止部材（33）との間に移動
可能に設置されている。図１２は駆動部作動後、すなわ
ち連通操作終了後の状態を示す。

【００１４】なお、本発明医療用容器の製造に際し、各
部の組立、連結及び接着は無菌的に行われる。

【００１５】さて次に、本発明医療用容器の使用方法に
ついて前述の図１１、図１２に基づき説明する。まず、
上部外筒（６）を回転させるとバネ固定治具（10）が受
け台（11）から外れ、バネ（９）の復元力により薬剤容
器（３）が下方に押され、この力により薬剤容器固定治
具（17）の係止部（29）が外れ、両頭針（28）を下方に
移動させ、これによって溶解液容器（１）側の液漏れ防
止部材（33）と薄膜（31），及び反対側の薬剤容器口部
のゴム栓（30）がそれぞれ刺通される。この時の刺通順
序は通常、液漏れ防止部材（33）及び薄膜（31）の刺通
抵抗がゴム栓（30）のそれよりも弱いため、前者が先に
刺通され、次いで後者が刺通されることになる。しか
し、この一連の刺通動作は、強力なバネを使用すること
によって、瞬時に行われるとから、溶解液がカプセル
（２）内に漏れる心配はない。したがって、本発明の医
療用容器において刺通順序を制御する機構は不要であ
り、医療現場でどちらの刺通を先にすべきかの選択の問
題（誤操作の問題）は生じない。両容器の連通後は、溶
解液容器（１）を水平ないし上にして、壁面を圧迫し溶
解液を薬剤容器（３）内に移行させ、薬剤を溶解する。
薬剤を完全に溶解した後、溶液を溶解液容器（１）に戻
し、懸架部（８）を輸液スタンドのハンガーに吊るして
溶解液容器（１）の薬液取り出し口部に輸液セットを取
り付け、患者に点滴静注する。

【００１６】本発明医療容器を使用した後は、下部外筒
（７）と内筒（５）の係合を外すことによってカプセル
（２）内の各部品を容易に取り出すことができ、素材毎
の分別廃棄ができる。

【００１７】

【発明の効果】本発明の医療用容器によれば、簡単な操
作で無菌的に薬剤容器と溶解液容器とを瞬時に連通で
き、したがって薬剤の溶解操作が速やかに行え、しかも
使用後に部品の分別廃棄が容易にできることから、その
便益は大である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明医療容器の一実施例の斜視図。

【図２】駆動部の分解斜視図。

【図３】駆動部位の破断斜視図。

【図４】内筒の平面図。

【図５】内筒の縦断面図。

【図６】下部外筒の斜視図。

【図７】カプセル内で薬剤容器、薬剤容器固定治具及び
両頭針が組み合わされた状態を示す説明図。

【図８】薬剤容器固定治具の平面図。

【図９】薬剤容器固定治具の縦断面図。

【図１０】両頭針の縦断面図。

【図１１】薬剤容器が収納されたカプセルと連結部の縦
断面図。

【図１２】駆動部作動後の各部品の状態を示す説明図。

【符号の説明】

１ 溶解液容器 ２ カプセル ３ 薬剤容器 ４ 連通部 ５ 内筒 ６ 上部外筒 ７ 下部外筒 ８ 懸架部 ９ バネ １０ バネ固定治具 １１ 受け台 １２ 係合突起 １３ 係合溝 １４ パッキン １５ 上部外筒掛爪 １６ バネ固定治具掛爪 １７ 薬剤容器固定治具 １８ ガイド １９ 係合突起 ２０ 係合溝 ２１ パッキン ２２ 係止孔 ２３ 係止穴 ２４ 連結管 ２５ 連結口部 ２６ くり抜き部 ２７ 突起 ２８ 両頭針 ２９ 係止部 ３０ ゴム栓 ３１ 薄膜 ３２ ハブ ３３ 液漏れ防止部材

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 密栓された薬剤容器を収納したカプセル
   と密封された溶解液容器とが連結部を介して連結され、
   前記カプセル内に前記両容器間の連通手段を備えた医療
   用容器であって、前記カプセルが、両端が開放された内
   筒と、その上部において嵌合し，天面を有する上部外
   筒，及びその下部において取り外し可能に嵌着し，前記
   連結部を構成する連結管を底部に具備する下部外筒とか
   ら成り、前記カプセル内の上部には、バネが復元可能に
   設置され、該カプセル内の中央部には、前記薬剤容器が
   口部を下にし，前記バネの復元力によって軸方向に移動
   可能に設置され、該カプセル内の下部には、前記連通手
   段として中間にハブを有する中空の両頭針が軸方向に移
   動可能に設置されて成ることを特徴とする医療用容器。