JPH05171517A - ポリアミド系芯鞘型複合繊維その繊維集合物および湿式ワイパー - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】アミド共重合体またはアミドエーテル共重合体
とナイロン樹脂とを組み合わせて反発弾性に優れたヘタ
リの少ない繊維を得る。 【構成】ロックウェル硬度７０以上１００未満のアミド
共重合体またはアミドエーテル共重合体とこれより高い
ロックウェル硬度を持つナイロン６、ナイロン６，６等
のナイロン樹脂を二つの成分とする芯鞘型複合繊維はヘ
タリに強く、これを用いたカーペットやワイパーは繰り
返しに使用に耐え変形が少ない。また製紙乾燥用フェル
トとしても優れている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、反発弾性に優れている
ナイロン樹脂のみでなる芯鞘型複合繊維及びその繊維集
合体に関するものであって、布はくとして使用時に圧
縮、圧迫または強い変形が要求される用途において、反
発弾性に優れているため、従来よりヘタリが少なく、従
って通気性および通水性の変化が少ない繊維集合体を得
られるものである。

【０００２】使用時に強い圧縮が加えられる用途とし
て、カーペットがある。カーペットは人の歩行する箇所
がほぼ決まっており、繊維が繰り返し圧縮に耐えるもの
でないと圧縮がかからない箇所とのヘタリの差が歴然と
現れる。工業用の用途として製紙の乾燥用フェルトがあ
る。高速走行する湿紙を高温のシリンダーに高張力で圧
縮するので、これもヘタリに強いものでなければならな
い。また家庭用品としてもワイパーは日常繰り返し使用
されるので、変形に耐えることが要求される。

【０００３】

【従来の技術】従来このような用途にはナイロン６また
はナイロン６，６の単一繊維が使用されてきた。

【０００４】

【発明が解決すべき課題】しかしこれらナイロン繊維は
いずれも圧縮弾性特性が不十分で改善要求が強かった。
ナイロンより優れた圧縮弾性を持つ他の繊維を混入する
方法も試みられているが、カーペットの場合は染色性の
差があり、製紙用フェルトの場合は耐水性、耐アルカリ
性の点で別の問題があった。

【０００５】また、従来の湿式ワイパーは、レーヨン、
パルプおよび熱接着繊維などからなる不織布、フェルト
が中心であり、いずれも含浸された水アルコール水溶液
もしくは活性剤水溶液が過剰であり、拭き取る物への液
体の残留が多く、不快感を与える等の課題があった。

【０００６】

【発明が解決するための手段】前記課題を解決するた
め、本発明はナイロンのみでなる繊維であって、硬度が
大きく、且つゴム弾性に優れたナイロン共重合体を一成
分とし、もう一つの成分はこれより更に硬度と弾性率が
大きいナイロンを用いた芯鞘型複合繊維である。このよ
うにゴム弾性成分と剛性成分を組み合わせることによ
り、従来のナイロン単一繊維では得られなかった、反発
弾性を改善したナイロン繊維を得ることができたのであ
る。

【０００７】アミド共重合体およびアミド・エーテル共
重合体は、ゴム的弾性に優れているが、硬度と曲げ弾性
率が低く、これらの単一繊維からなるフェルトは腰が弱
くてヘタった嵩の低いものであり、ナイロン６，６また
はナイロン６からなる繊維は、嵩は大きいが、圧縮力が
大きいと押しつぶされ回復しにくい欠点がある。これら
の中空にしたものも検討されたが同様であった。本発明
はこれらの素材の長所を生かすべく鋭意検討の結果得ら
れたものである。

【０００８】本発明の繊維は、ロックウェル硬度（Ｒ：
ＡＳＴＭ、Ｄ７８５Ｒスケール、５０％ＲＨ、２３℃）
が７０≦Ｒ＜１００のアミド共重合体またはアミド・エ
ーテルブロック共重合体を第１成分とし、第１成分より
高いロックウェル硬度をもつナイロン樹脂を第２成分と
し、一方の成分のみで繊維表面が占められていることを
特徴とするポリアミド系芯鞘型複合繊維繊維である。

【０００９】上記第１成分の共重合体のロックウェル硬
度（Ｒ）を７０以上としたのは繊維全体の剛直性を保つ
ためであり、Ｒを１００未満にしたのはゴム弾性を持た
せるためである。

【００１０】アミド・エーテル共重合体（ＰＡＥ）に
は、融点１７０℃以上のポリラウリンラクタムとポリエ
ーテルのブロック共重合体などのナイロンエラストマー
が好ましい。

【００１１】またアミド共重合体には、融点１７５℃を
超えるカプロラクタム−アミノドデカン酸共重合体（Ｎ
ｙ６−１２）、カプロラクタム−ヘキサメチレンアジパ
ミド共重合体（Ｎｙ６−６６）またはカプロラクタム−
ヘキサメチレンアジパミド−アミノドデカン酸共重合体
（Ｎｙ６−６，６−１２）などのナイロン共重合体が好
まい。

【００１２】上記融点未満の共重合体は硬度が低く、得
られた複合繊維は腰が弱くヘタリやすいので好ましくな
い。

【００１３】本発明の複合繊維の第２成分に用いる共重
合体以外のもう一成分は、硬質のナイロンが望ましく、
ナイロンＭＸＤ６（商品名、三菱ガス化学株式会社製、
メタキシリレンジアミンとアジピン酸からなるポリアミ
ド）およびナイロン６を使うことができ、ナイロン６，
６が最も好ましい。

【００１４】上記第１成分と第２成分とはいずれが鞘成
分となっても芯成分となってもよい。その鞘成分、芯成
分の繊維断面における面積比（複合比）は３０：７０〜
７０：３０が好ましく、より好ましくは４０：６０〜６
０：４０で複合形態は物理的手段によって繊維同志を絡
ませるため物理的強度の大きい芯鞘型である。

【００１５】物理的な繊維同志の絡み手法がニードルパ
ンチの場合は、第２成分の硬度に優れるナイロン６，６
またはナイロン６を鞘成分とすることが好ましく、繊維
の化学的特性を重視する場合は、その化学的特性に優れ
た成分を鞘成分にすることが好ましい。

【００１６】本発明繊維の反発弾性特性を繊維集合体で
発揮するには少なくとも５０重量％が繊維集合体に含有
されていることが必要である。混綿する繊維は、ナイロ
ン繊維が好ましい。

【００１７】また繊維集合体の少なくとも片面は、本発
明繊維を含む繊維集合体で占められていることが好まし
く、本発明の繊維集合体は他の種類の繊維集合体と層状
に一体化されて使用でき、寸法安定性の点で基布もしく
は厚織物と一体化されていることも好ましい。

【００１８】繊維同志を絡み合わせる手法とは、針によ
るニードルパンチング法およびスパンレースなどの圧力
水によるウォータージェット加工法が都合よく、加熱針
を用いたニードルパンチング法でもかまわない。

【００１９】本発明にいう繊維集合体には、ニードルパ
ンチによるカーペット、フェルトおよび圧力水によるス
パンレース不織布があり、これらが基布もしくは他の織
編物と一体化したものがある。

【００２０】本発明のナイロン複合繊維を拭き取り層と
し、保水層としてレーヨン繊維を用いた湿式ワイパー特
に拭き取り性に優れている。レーヨン繊維より吸水性に
劣るが保湿性に優れた本発明のナイロン複合繊維層は、
保水層より水分を補給するということにより持続した拭
き取り性を発揮すると共に、従来のナイロン繊維より弾
性回復に優れているため、汚物による目詰まりが少な
い。

【００２１】また、より使いよい湿式ワイパー保水層の
上にはっ水層を設けると、拭き取り時、保水層に手が直
接ふれて手が濡れるのを防止する上で効果がある。

【００２２】はっ水層に用いるポリオレフィン系繊維
は、α−ポリオレフィン単一成分繊維および／またはα
−ポリオレフィンを繊維表面とする芯鞘型複合繊維が都
合よく、用いるα−ポリオレフィンは、ポリエチレン、
ポリプロピレン、ポリブテン−１およびポリメチルペン
テンなどのα−オレフィンホモポリマー、共重合体およ
び変性体のいずれでもよい。

【００２３】

【発明の作用】前記した本発明の構成によれば、ゴム弾
性に優れたナイロン系共重合体と硬度すなわち剛性に優
れたナイロン６，６、ナイロンＭＸＤ６またはナイロン
６を組み合わせた芯鞘型複合繊維であり、弱い反復圧縮
に対しては剛性に優れたナイロン部分が対応し、剛性に
優れたナイロンでは対応しきれない強い圧縮力に対して
はゴム弾性に優れたナイロン系共重合体部分が対応して
繊維全体として反発弾性が向上する。

【００２４】また、剛性に優れたナイロンを構成成分と
して持つためナイロン系共重合体のみでなる繊維より大
幅に嵩が大きく、ヘタラない不織布、フェルトを得るこ
とができる。

【００２５】尚、反発弾性を重要視する場合は、剛性に
優れたナイロンを鞘成分とするのが好ましいが、耐薬品
性を重要視する場合は、逆であってもほぼ同様の結果を
示す。

【００２６】上記本発明の複合繊維を使った湿式ワイパ
ーは、保水性と弾性回復に優れた表層に、保水層より適
度の水分が供給され、従来のレーヨンワイパーのような
湿潤状態でなくても使用可能であり、α−ポリオレフィ
ン系繊維からなる撥水層を表層としてして設ければ、拭
き取り時の手の汚れが少なく好都合である。

【００２７】

【実施例】

［実施例１〜６、比較例１〜４］ 表１に示す第１成分
のポリアミド系共重合体と第２成分のポリアミドを組み
合わせ、芯鞘型の複合繊維を複合比５０：５０で溶融紡
糸し、９５℃沸水中で延伸後、繊維処理剤を付与し、ス
タッファボックスを通して機械捲縮を与え、次いで１０
５℃ネットコンベアー式熱風貫通型乾燥機で１５分間乾
燥し、７６mmに切断し、１０〜１５デニールのステープ
ルファイバーとした。このステープルファイバーをロー
ラーカードで目付２５０g/m²のウェッブとし、ニードル
パンチング機で繊維を絡ませニードルパンチングフェル
トとし、繊維の損傷状況の観察と嵩回復率を測定した結
果を表１に示す。

【００２８】繊維の損傷、嵩回復率については、次のよ
うに評価した。 繊維の損傷： ◎：ナイロン６，６単一繊維相当、優 ○：ナイロン６単一繊維相当、良 △：ナイロン１２単一繊維相当、可 ×：不良 嵩回復率（Ｒ’％）：１０ｃｍ×１０ｃｍに切断成形し
たニードルパンチングフェルト４枚を重ねて水平鉄板上
に置き、更にフェルト上に１０ｃｍ×１０ｃｍ、重さ５
０ｇのアクリル板を乗せてアクリル板の４角の高さの平
均（Ｈｍｍ）を求める。次いでこれらをプレス機で５０
ｋｇの加重を５時間かけ、除重後１６時間静置し、アク
リル板の４角の高さの平均（Ｌｍｍ）を求め、Ｒ’
（％）＝Ｌ／Ｈ×１００より算出する。

【００２９】［実施例７］ 実施例１の組み合わせで実
施例１同様に２デニール、５１ｍｍのステープルを得、
目付３０ｇ／ｍ² のウェッブとなし、その上に目付３０
ｇ／ｍ² の１．３デニール、３８ｍｍのレーヨン繊維か
らなるウェッブを乗せ、更にその上に１デニール、３８
ｍｍのポリプロピレン繊維からなるウェッブを置き、５
０ｋｇ／ｃｍ² の圧力水を用いスパンレース不織布とし
た。得られた不織布は、折れなどの変形に対し回復性が
よく、水に浸した後、絞って乾拭きワイパーとして用い
ると、従来のレーヨンワイパーのように拭いたものに水
が残るのが少なく、且つ拭き取り性に優れていた。

【００３０】

【表１】

【００３１】

【発明の効果】本発明の繊維は、従来のナイロン単一繊
維に比べ用途に応じ鞘成分と芯成分を選択できるため、
耐薬品性を併せて向上させることが可能であることと、
高加重状態からの嵩回復性を向上できるので製紙用フェ
ルト、カーペット等の分野で都合よく、また本発明の繊
維は反発弾性に優れ、且つ適度な保湿性があるため、変
形回復性に優れ、ワイパーの拭き取り面として用いると
極めて都合がよい。

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ロックウェル硬度（Ｒ：ＡＳＴＭ、Ｄ７
   ８５Ｒスケール、５０％ＲＨ、２３℃）が７０≦Ｒ＜１
   ００のアミド共重合体またはアミド・エーテルブロック
   共重合体を第１成分とし、第１成分より高いロックウェ
   ル硬度をもつナイロン樹脂を第２成分とし、一方の成分
   のみで繊維表面が占められていることを特徴とするポリ
   アミド系芯鞘型複合繊維。
2. 【請求項２】 第１成分は共重合体の融点が１７０℃以
   上のポリラウリンラクタムとポリエーテルのブロック共
   重合体であることを特徴とする請求項１記載のポリアミ
   ド系芯鞘型複合繊維。
3. 【請求項３】 第１成分は共重合体の融点１７５℃を超
   えるカプロラクタム−アミノドデカン酸共重合体、カプ
   ロラクタム−ヘキサメチレンアジパミド共重合体および
   カプロラクタム−ヘキサメチレンアジパミド−アミノド
   デカン酸共重合体のうちの一の共重合体であることを特
   徴とする請求項１記載のポリアミド系芯鞘型複合繊維。
4. 【請求項４】 請求項１記載のポリアミド系芯鞘型複合
   繊維１００〜５０重量％と他のナイロン単一繊維０〜５
   ０重量％からなり、繊維同志が絡み合わされて一体化し
   ていることを特徴とする繊維集合体。
5. 【請求項５】 請求項１記載のポリアミド系芯鞘型複合
   繊維層を第１層、レーヨン繊維層を第２層とし、第１層
   と第２層の構成比（重量比）が８０〜２０：２０〜８０
   である繊維積層物を少なくとも一部とする湿式ワイパ
   ー。