JPH05164710A - 皮膜中の3価クロムと6価クロムとの強度比の測定法 - Google Patents

皮膜中の3価クロムと6価クロムとの強度比の測定法

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JPH05164710A
JPH05164710A JP3350429A JP35042991A JPH05164710A JP H05164710 A JPH05164710 A JP H05164710A JP 3350429 A JP3350429 A JP 3350429A JP 35042991 A JP35042991 A JP 35042991A JP H05164710 A JPH05164710 A JP H05164710A
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chromate
film
chromium
vacuum
hexavalent chromium
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Yukihiro Yoshikawa
幸宏 吉川
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】クロメート処理皮膜表面を真空中で機械的に研
削した後、研削面を大気に触れさせることなく研削面に
X線光電子分光法を施すことにより、クロメート皮膜中
の3価クロムと6価クロムとの強度比を測定する。 【効果】クロメート処理鋼材の表面および界面における
クロムの化学状態をX線光電子分光法により正しく測定
することができるので、クロメート処理鋼材の品質管理
が適正に行われる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車、家電製品等に
用いられるクロメート処理鋼材のクロメ−ト処理皮膜中
の3価クロムと6価クロムとの強度比の測定法に関す
る。
【従来の技術】
【0002】クロメート処理は、亜鉛表面やアルミニウ
ム表面に対して、耐食性の向上や、接着性の向上を目的
として広く使われている。クロメート処理は大きく3種
に大別される。すなわち、反応型クロメート処理、電解
型クロメート処理、そして塗布型クロメート処理であ
る。
【0003】クロメート処理皮膜の化学状態の分析に関
しては、今までに多くの研究がある。これらの研究手法
の中では、X線光電子分光法(XPS)が、現在のとこ
ろ最も有力な手法である。この方法により、薄膜のクロ
メート処理層の化学状態が非破壊で調査できるからであ
る。
【0004】反応型クロメート処理皮膜および電解型ク
ロメート処理皮膜については、XPSを用いた研究が報
告されている。これらの研究によって、反応型クロメー
ト皮膜中には3価クロムのみが存在し6価クロムは含ま
れていないこと、および、電解型クロメート処理皮膜中
には金属クロムと3価クロムが含まれていることが明ら
かになった。しかしながら、塗布型クロメート処理に関
しては、このようにXPSを用いた研究はほとんど報告
されていない。
【0005】クロメート処理皮膜のクロムの化学状態、
特に3価クロムと6価クロムの比はその皮膜の性能に大
きな影響を及ぼす。例えば、6価クロム分率が高い場合
には、その皮膜は自己修復性が良好であると考えられて
いる。自己修復性とは、皮膜に母材に達するような傷が
付いた場合に、皮膜が自然に修復されて、本来の耐食性
を維持できるという性能である。しかし、6価クロムは
水に溶解し易いので、6価クロム分率が高いと湿潤環境
下でクロム溶出問題が生じる恐れがある。また、3価ク
ロムは、バリアー皮膜として強固であると同時に、塗膜
・高分子との密着性に優れているということが知られて
いる。
【0006】自動車用、家電製品用に用いられるクロメ
ート処理鋼材には、耐食性、塗膜密着性、接着性を始め
とし、溶接性、耐指紋性、外観など多岐にわたる性能が
要求される。これらの性能の中には相反する性能もあ
る。従って、各性能のバランスを取り、要求性能を全て
満たすためには、クロメート皮膜の設計時に3価クロム
と6価クロムの比を最適化し、製造時にその比を厳密に
管理する必要がある。
【0007】従来、クロメート処理鋼材の3価クロムと
6価クロムの管理については、処理液の3価クロムと6
価クロムの比の管理に留まっていた。処理液中のこの比
の管理は酸化還元滴定法や紫外可視分光法によって行わ
れている。しかし、処理された後のクロメート皮膜自体
の3価クロムと6価クロムの比の測定については行われ
ておらず、ほとんどの場合クロム溶出試験により6価ク
ロム量が測定されるのみであった。
【0008】そして、皮膜中に強固に固定化された6価
クロムは溶出試験によっては完全に検出されないので、
この6価クロム量は皮膜中の真の6価クロム量ではな
い。しかもこれらの6価クロム量はクロメート皮膜全体
の化学状態の平均である。このように、界面に場所を限
定した3価クロムと6価クロムの比の測定は従来全くな
されていなかったものである。
【0009】
【発明が解決しようとする問題】X線光電子分光法はク
ロメート皮膜中に於けるクロムの化学状態を調査するの
に適した方法である。これは、この分光法が基本的に非
破壊分析であり、また、ピークフィッテイングにより比
較的容易に3価クロムと6価クロムの比を求めることが
できるからである。
【0010】一般に、クロメート皮膜の表面をX線光電
子分光法で調査する場合、表面に付着した不純物(多く
の場合、炭素化合物)を除去するためにアルゴンイオン
・スパッタリングが用いられる。また、深さ方向の分析
をするためにも、アルゴンイオン・スパッタリングを用
いて皮膜を研削していき、順次分析するという手法が多
用されている。
【0011】しかし、6価クロムはイオン・スパッタリ
ングに対して極めて不安定であるので、このような方法
では正確なクロムの化学状態を求めることはできない。
本発明の目的とするところは、クロメート処理鋼材の性
能を左右するクロメート処理皮膜の表面、およびクロメ
ート処理皮膜/基材金属界面の化学状態を正確に測定
し、処理製品の品質を管理することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らはX線光電子
分光法を用いたクロムの化学状態分析にはアルゴンイオ
ン・スパッタリングは適用できないことを見いだした。
イオンスパッタリングを用いず、皮膜表面から不純物を
除いたり、皮膜の深さ方向の分析を行うためには、機械
的研削が適当であり、しかも、その操作は真空中で行わ
れなければならないということを見いだした。
【0013】
【作 用】 (1) クロメート処理鋼材 クロメート処理の基材としては、特に限定されるもので
はないが、自動車用、家電製品などに用いられる場合、
薄鋼板状のものが用いられる場合が多い。基材金属とし
ては、鉄・アルミニウムなどが用いられ、その表面には
めっきが施されていても良い。めっきの種類としては亜
鉛系めっきが広く用いられている。例えば、電気亜鉛め
っき、溶融亜鉛めっき、合金電気亜鉛めっき、合金化溶
融亜鉛めっきなどが用いられる。
【0014】クロメート処理法も特に限定されるもので
はない。クロメート処理法は大まかに、反応型クロメー
ト処理、塗布型クロメート処理、電解型クロメート処理
に分類できる。この中で本方法の適用が特に好ましいの
は塗布型クロメート処理である。これは、反応型クロメ
ート、電解型クロメートとは違って、塗布型クロメート
が高分率の6価クロムを含有する場合が多いからであ
る。従来の方法によると、6価クロムの正確な定量はほ
とんど不可能である。この理由については後述する。
【0015】(2) 表面と界面 本発明における表面とは、固体が気体と接する面を意味
している。従って、クロメート処理鋼材の場合のクロメ
ート皮膜表面とは、皮膜の基材に接していない面を意味
する。このような表面は通常、無塗油の場合でも、炭素
化合物等の不純物が付着している。この不純物は、X線
光電子分光法では大きな問題となる。なぜなら、光電子
の平均自由行程は10オングストローム程度と短いので
光電子の脱出深さはたかだか数十オングストローム程度
である。もし表面が汚染されていると、クロメート表面
の分析をするのではなく、表面不純物の分析をしている
ことになってしまう。従って、この表面不純物を取り除
かなければ正確な表面分析は不可能である。
【0016】本発明における界面とは、固体が固体と接
している境界面を意味している。クロメート処理鋼材に
おいてはクロメート皮膜と基材金属の接触面を意味す
る。この界面を分析するには、クロメート皮膜側もしく
は基材金属側から研削やエッチングを行うか、または、
クロメート処理鋼材の断面を研削し界面を曝露しなけれ
ばならない。
【0017】(3) 真空中機械研削 不純物が付着していない、清浄なクロメート皮膜表面ま
たは界面を曝露し、なおかつその表面または界面の元素
組成や化学的状態を変えないでそのような曝露を行うに
は、真空中での機械的研削が最も適当である。以下にこ
の理由を述べる。
【0018】まず、X線光電子分光法において試料表面
の不純物を取り除くのに最もよく使われている方法は、
アルゴンイオン・スパッタリングである。これはアルゴ
ンイオン銃で試料表面にイオン衝撃を与え、不純物を吹
き飛ばす方法である。真空中で比較的容易に適用できる
ので特に金属表面の測定時に広く用いられている。ま
た、スパッタリングと電子分光測定を交互に行っていけ
ば、皮膜の上層から下層さらには基材金属に至る深さ方
向の分析が可能となる。しかしながら、この方法をクロ
メート皮膜の表面に用いると、下記の表1に示すよう
に、6価クロムが大部分3価クロムに還元されてしまい
正確な分析結果を得ることができない。すなわち、表1
は、アルゴンイオン・スパッタリングによるクロムの化
学状態の変化を示す。
【0019】
【表1】
【0020】試料表面の洗浄法として、有機溶剤やアル
カリ洗浄液による脱脂処理が一般に用いられているが、
クロメート処理皮膜にはこの洗浄法は適用できない。こ
れは、6価クロムが有機溶剤によって還元されてしまっ
たり、アルカリ洗浄液によって溶出してしまうからであ
る。
【0021】これらの方法に対して、真空中における機
械的研削により、皮膜の化学状態を変えることなく、清
浄なクロメート皮膜表面を曝露することができる。特
に、クロメート皮膜と基材金属の界面の分析にこの方法
が有効である。なぜなら、クロメート皮膜を金属との界
面に達するまで、イオンエッチングにより掘って行こう
とすると長時間のイオン衝撃が必要になり、それによ
り、皮膜の化学状態が全く変化してしまうためである。
【0022】界面を分析するための研削方法として、図
7に示すように、研削後のクロメ−ト皮膜断面が斜めに
なるように研削するのが好ましい。このように斜めに研
削するとクロメ−ト皮膜の表面から界面まで連続的に皮
膜状態の分析も可能である。
【0023】研削時に必要とされる真空度は研削される
試料の組成により異なるが、一般的な塗布型クロメート
の分析を例にとると、最低でも10-6Torrの真空が必要
である。これは真空度が低いと、研削された表面・界面
が不純物の付着により再び汚染されるのみならず、特に
基材金属の化学状態が酸化等により変化してしまう可能
性があるからである。
【0024】(4) 大気曝露 真空中で機械的研削を行い、表面や界面を曝露したとし
ても、X線光電子分光法測定の前にいったん大気にその
表面を触れさせると、極短時間でも表面・界面が再び汚
染されたり、酸化等の反応が起こる可能性がある。従っ
て、真空中での研削後、表面や界面を大気に触れさせる
ことなく、X線光電子分光法の測定室に搬送し、測定を
行う必要がある。
【0025】(5) X線光電子分光法 X線光電子分光法測定装置は通常の装置を用いることが
できる。但し、測定チャンバーに真空中研削装置が直結
されているか、もしくは真空中研削装置から大気に触れ
ることなく、研削された試料を測定チャンバーに搬送す
る装置が必要である。また、本方法で化学状態の分析を
行うためには、ピークフィッティングによる面積比の定
量が必要であるので、コンピュータを用いたデータ処理
装置が装備されていることも必要である。
【0026】また、クロメ-ト層の研削端面が斜面とし
て現われるような測定試料の作成は、研削装置の刃を斜
めに向けるか、被処理材の表面を傾斜させることによっ
て行われる。斜め研削面による界面の分析を行う場合
は、微小領域の測定が可能な分析装置である必要があ
る。微小領域のX線光電子分光法測定には、得られる光
電子を絞り機構を用いて、限定する方法、結晶等により
X線を絞り込む方法などがある。また最近では、特殊な
レンズ系を用いて、光電子の焦点を走査し、マッピング
を行うことができる装置も実用化されている。
【0027】
【実施例】まず、実施例において採用した実験方法は以
下のとおりである。 1.実験方法 (1)試料調製 a) 母材金属 塗布型クロメート処理の母材として、亜鉛板(純度99.8
%)、および鉄スタッブ(XPS用サンプル支持台、純
度99.9%)を用いた。亜鉛板の厚さ0.7mmである。これ
らの板は10mm×10mmのサイズに切断しサンプルとし
た。鉄スタッブは円柱状で上部に直径10mmの平面のス
テージがあり、この部分に塗布型クロメート処理を施し
た。
【0028】b) クロメート処理液 クロメート処理液は6価クロムと3価クロムの混合液で
ある。この溶液は3酸化クロム水溶液に、還元剤として
エチレングリコールを添加して調製した。還元剤添加後
24時間熟成させてから処理液に供した。還元剤の添加
量は、6価クロム量に対するOH官能基量のモル比で表
示した。たとえば、1モルの3酸化クロムに対し、0.5
モルのエチレングリコールを添加すると、還元剤の添加
量は1と表現する。クロムの濃度は3酸化クロム量とし
て10重量%に調製した。
【0029】c) 前処理 サンプル表面はエメリーペーパー(#600)を用いて研削
した後、弱アルカリ性の脱脂剤に浸漬した。そして、ス
コッチたわしを用いて軽く擦った後、水洗した。このサ
ンプルは乾燥させずに、直ちにクロメート処理に供し
た。 d) 塗布型クロメート処理 サンプルへの処理液の塗布は浸漬法にて行った。過剰の
処理液はサンプルを傾け除去した。 e) 乾燥 サンプルは130℃にセットした電気オーブン中で2分
間乾燥した。
【0030】(2)XPS測定 a) XPS測定装置 測定装置は、VG Scientific 社製のESCALAB Mark2を
用いた。この装置の測定室は拡散ポンプ、イオンポン
プ、チタン・サブリメーションポンプを備えており測定
は5X10-9Torr以下で行った。通常の測定は電子放出
角度を45°に固定して行った。
【0031】b) X線源 ほとんどの測定は単色化していないAlKα線を用い
た。フィラメントの電圧は10kV、電流は34mAとし
た。但し、亜鉛上のクロメート処理の界面測定において
は、亜鉛のオージェピークがCr2p3/2のピークと
干渉するのを避けるために、Mgkα線を用いた。この
場合のフィラメントの電流は20mAとした。
【0032】c) 光電子分析器 入り側の絞りは15mm×6mmのサイズのものを用いた。
プリレンズの倍率は3倍にセットした。微小領域測定時
は、入り側の絞りを直径1mmもしくは直径0.5mmのもの
に切り替えた。従ってこの場合の測定面積は、各々、直
径約400μm および約150μm となる。
【0033】分析器のパスエネルギーは、通常の面積の
測定時には、ナロースキャンに対しては20eV、ワイド
スキャンに対しては50eVにセットした。微小領域測定
時は、信号強度を増すために、ナロースキャンに対して
は、100eV、ワイドスキャンに対しては200eVにセ
ットした。帯電補正には Clsのメインピーク(285.
0eV)を用いた。
【0034】d) 真空中研削装置 図1に示すような研削装置1をXPS測定装置の試料調
製室に直結した。回転刃3の位置は固定されており、ス
テ−ジ昇降機構5によって上下可動のステージホルダ−
4に固定された試料の鉄スタッブ2(傾斜角1°)を上
下させることにより、その傾斜した表面を研削もしく
は、皮膜と基剤金属の界面を傾斜した広い面で曝露させ
る仕組みになっている。装置内部は磁性流体シール6に
より高真空を保ち、XPS測定装置の試料調製室との隔
壁を解放することにより、10-7Torrまでの真空引きが
可能である。なお、回転刃3は、磁性流体真空シ−ル6
を介して外部のモ−タ−7と接続され、これによって駆
動される。
【0035】以下に斜め研削の方法を説明する。図1に
示すように回転刃は水平にセットされており、上部が傾
斜角を持ったスタッブをステージにセットすると、斜め
研削がなされる。傾斜角1°の鉄スタッブを母材として
用いた場合、断面が測定可能な皮膜厚は、以下のように
計算される。
【0036】
【数1】最小膜厚=XPSスポットサイズ × Sin(1
°)
【0037】従って、スポットサイズが400μm の時
は膜厚約7μm、150μm の時は膜厚約2.6μm とな
る。試料スタッブはウォブル・スティック(一種のマニ
ュピレータ)を用いて、試料調製室を経由して測定室に
搬送される。
【0038】e) データ処理 VGS 5000計算機上で、市販のソフトウェアを用いて、元
素比の定量やピークフィテイング処理を行った。 2.実験結果 上記の実験方法に従って行った本発明の実施例と比較例
を以下に示す。
【0039】
【実施例1】 (クロメート表面の研削)クロメート皮膜中におけるク
ロムの化学状態を調査するために、3価クロムと6価ク
ロムの比率の異なったクロメート処理液を用いて調製し
たクロメート皮膜の表面を真空中に極くわずか研削し、
そのまま大気に触れさせることなくXPS測定を行っ
た。
【0040】図2は、還元剤の添加量を0から1まで変
化させた時のクロメート皮膜のCr2Pピークのナロー
スキャンである。3価クロムと6価クロムの2P3/2
ピーク位置は各々577.2eVと579.6eV(B.E)
である。3価クロムの2P3/2ピークの幅は6価クロ
ムに比較して広い。これは6価クロムがd0の電子状態
を有するのに対し、3価クロムがd3の電子状態を有す
るからである。一般にマルチプルスプリッティング現象
は不対価電子を有する場合のみに起る。
【0041】還元剤量の増加に伴い、6価の2P3/2
ピーク高さは減少し3価の2P1/2ピーク高さは増加
する。また、2p1/2ピークの形もそれに従って変化
するのがわかる。クロムの2P3ピークのフィッティン
グにより、還元剤量とクロメート皮膜中の3価クロム量
/全クロム量の比の関係を求めた。ここで全クロム量と
は6価クロム量と3価クロム量の合計である。母材は亜
鉛である。図2に示すように、還元剤量の増加に伴い、
皮膜中および処理液中の3価クロム比は増加している。
【0042】
【比較例1】 (アルゴンイオンスパッタリング)XPS測定のために
表面を清浄にする手段として、最も一般的な手法はアル
ゴンイオンによる表面のスパッタリングである。クロメ
ート皮膜に対するアルゴンイオン・スパッタリングの適
用の可否を検討するために、無水クロム酸(6価クロ
ム)のみから調製されたクロメート皮膜をスパッタしC
r2p3スペクトルの変化を調査した。
【0043】その結果、図3および表1のように,わず
か1分間のスパッタリングにより大部分の6価クロムが
3価クロムに還元されてしまうことが判明した。従って
クロメート処理板の深さ方向分析にはスパッタリング等
の破壊分析の適用は不可能で、他の方法が必要である。
【0044】参考例1(真空中研削装置の効果) 図4は真空中研削装置の性能を調査するために、ステン
レス製のスタッブを真空中(5x10-7Torr) で研磨し
たときのサーベィスペクトルである。スポットサイズは
400μm 、パスエネルギーは200eVである。
【0045】未研削の部分には炭素と酸素そして微弱な
鉄のスペクトルが観察される。それに対して、研削を行
った部分では、鉄とクロムの明瞭なスペクトルが観察さ
れる。炭素と酸素のスペクトルの強度は、未研削の部分
に比べて低い。これは、未研削の部分では表面は不純物
(炭素)で覆われており、鉄のスペクトルさえもが微弱
であるのに対し、研削を行った部分では新鮮な金属表面
が曝露されたということを意味する。
【0046】図5は同じ試料のCr2P3スペクトルで
ある。パスエネルギーは100eVで測定した。未研削の
部分ではスペクトルは微弱であり、雑音が多いものであ
る。クロムの化学状態は、ほとんど3価クロムと考えら
れる。これに対して、研削を行った部分ではスペクトル
の強度は高く、クロムの化学状態は金属クロムが主体で
少し3価クロムが共存するものと考えられる。金属クロ
ムは非常に低い酸素分圧で酸化されることが知られてい
るので、このように金属クロムを検出できるということ
はこの真空中研削装置が有効であるということの証しで
ある。
【0047】
【実施例2】 (クロメート皮膜/金属界面の分析)鉄スタッブ上に形
成したクロメート皮膜を、真空中研削装置を用いて、斜
め研削した後、微小領域XPS測定により、クロメート
皮膜/鉄界面およびクロメート表面の化学状態を調査し
た。皮膜調製に用いたクロメート処理液には0.4の還元
剤が添加されている。鉄スタッブ上部には、約1°の傾
斜がある。
【0048】図6はクロメート皮膜表面とクロメート皮
膜/鉄界面のCr2p3スペクトルを重ね書きしたもの
である。界面のスペクトルは皮膜表面よりも3価クロム
のピークが高いことが判る。このスペクトルのピークフ
ィッティングにより、計算された3価クロムの分率は、
クロメート皮膜表面で0.47、界面で0.53となる。
このように、本発明の方法によれば、従来の方法では
不可能であった、クロメート皮膜/金属界面におけるク
ロム化学状態を調査することがてきる。
【0049】
【発明の効果】本発明により、クロメート処理鋼材の表
面および界面におけるクロムの化学状態をX線光電子分
光法により正しく測定することができる。このクロムの
化学状態はクロメート処理鋼材の各種の性能と密接に関
連しているので、本発明の方法により、クロメート処理
鋼材の品質管理が適正に行われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する真空中研削装置の模式図であ
る。
【図2】クロメート皮膜表面のクロムの化学状態を表す
グラフである。
【図3】アルゴンイオン・スパッタリングによるCr2
p3ピークの変化を表すグラフである。
【図4】真空中で表面研削を行ったステンレス表面のワ
イドスキャンを表すグラフである。
【図5】真空中で表面研削を行ったステンレス表面のC
r2p3スペクトルを表すグラフである。
【図6】真空中で研削を行ったクロメート皮膜/金属界
面とクロメート表面のCr2p3スペクトルを表すグラ
フである。
【図7】斜面を形成するように研削したクロメ−ト皮膜
の横断面を示す図である。
【符号の説明】
1 研削装置 2 鉄スタッブ 3 回転刃 4 ホルダ− 5 ステ−ジ昇降装置 6 磁性流体シ−ル 7 モ−タ−

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロメート処理皮膜表面を真空中で機械
    的に研削した後、研削面を大気に触れさせることなく研
    削面にX線光電子分光法を施すことを特徴とする、クロ
    メート処理皮膜中の3価クロムと6価クロムとの強度比
    の測定法。
JP3350429A 1991-12-11 1991-12-11 皮膜中の3価クロムと6価クロムとの強度比の測定法 Pending JPH05164710A (ja)

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