JPH05163600A - 含クロム合金鋼の電解琢磨用電解液 - Google Patents

含クロム合金鋼の電解琢磨用電解液

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JPH05163600A
JPH05163600A JP36086891A JP36086891A JPH05163600A JP H05163600 A JPH05163600 A JP H05163600A JP 36086891 A JP36086891 A JP 36086891A JP 36086891 A JP36086891 A JP 36086891A JP H05163600 A JPH05163600 A JP H05163600A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ステンレス鋼等含クロム合金鋼の電解琢磨
時、電解液廃液中に溶出する有害な6価クロムイオンを
抑制し、3価クロムとしての溶出にとどめると共に、処
理後の水洗性についても大巾に改善し得る電解液の組
成。 【構成】 硫酸,燐酸,硝酸,塩酸の何れか一種又は二
種以上を、若しくはこれら酸の各ナトリウム,カリウ
ム,アンモニウム塩の何れか一種又は二種以上を主成分
とする水溶液に、アスコルビン酸又はアスコルビン酸の
ナトリウム,カリウム,アンモニウム塩の何れかを0.
05%(重量%)以上配合してなることを特徴とする含
クロム合金鋼の電解琢磨用電解液。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ステンレス鋼に代表さ
れる含クロム合金鋼の溶接焼け取りなどの脱スケールや
研磨を目的とする電解琢磨用電解液に係り、電解時のク
ロム溶出、酸化に伴なう有害な6価クロムの発生を抑制
乃至完全に阻止し得る新規な電解液の組成に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ステンレス鋼の溶接施工に伴って
発生する溶接部周辺の酸化スケール除去については、例
えば特許第1543867号「合金鋼の脱スケール法」
発明に開示されている如く、0.5%以上の燐酸のナト
リウム,カリウム若しくはアンモニウム塩ど40%未満
のグリセリンとを配合してなる水溶液を電解液とする如
き無機中性塩の電解液を用いて電解琢磨することを特徴
とする合金鋼の電解脱スケール法が主としてステンレス
鋼の溶接焼け取り用として広く採用されている。また、
無機中性塩の電解液に依らず、硫酸や燐酸を主剤とする
電解液を使用して電解研磨と同様の手法により、溶接焼
け取りと共に、局部的な電解研磨処理が行なわれている
ことも衆知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】以上の方法によれば、
溶接焼け取りや研磨仕上げについては極めて効果的であ
るが、特に無機中性塩の電解液に依る場合は、電解時、
陽極溶解効果によって溶出したクロムが陽極酸化効果に
よって極めて有害な6価クロムとして廃液中に溶出する
という重大な欠点があり、電解操作時これが飛散し、特
に顔に近い状態で作業する作業員の安全、衛生上由々し
い問題が存在しており、又、これが工場廃水中に混入す
れば公害発生の惧れも多分にあり放置できぬ重大な問題
である。このような6価クロムに関する問題の解決策と
して、本発明者は先に特願昭61−44727号「合金
鋼の溶接に伴なうスケールの除去方法」を以て、電解に
使用する電源として、直流に交流を重乗した電流を使用
する新規な方法を提案し、前述の電解時発生する6価ク
ロムを直ちに3価クロムに還元し無害化することに成功
し、効果的に実施しているが、反面特殊な仕様の電源装
置を必要とする欠点があり、コスト高になることは避け
られず、また適宜手持ちの電源装置で安易に実施できな
い欠点もあった。更に、市場には、6価クロムの発生を
伴なう電源器での電解装置が多数出廻っており、作業員
の6価クロムに関する危険の認識がないままに、現在多
用されている状況であり、安全、衛生上甚だ憂慮すべき
社会問題でもある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上述の諸々の課題に鑑
み、これらを解決するための手段として次の如く提案す
る。即ちその要旨とするところは、硫酸,燐酸,硝酸,
塩酸の何れか一種又は二種以上を、若しくはこれら酸の
各ナトリウム,カリウム,アンモニウム塩の何れか一種
又は二種以上を主成分とする水溶液に、アスコルビン酸
又はアスコルビン酸のナトリウム,カリウム,アンモニ
ウム塩の何れかを0.05%(重量%)以上配合してな
ることを特徴とする含クロム合金鋼の電解琢磨用電解液
である。
【0005】
【作用】電解液中に、アスコルビン酸若しくは上述のア
スコルビン酸塩を添加物として配合することにより、電
解時、含クロム合金鋼の陽極溶解は効果的に行われても
クロムは6価まで酸化されることなくそのまま3価クロ
ムとしての溶出にとどまり、無害化されることを種々の
実験及び実施例により見出し確認した。また、その添加
量については、電解液量に対し、0.05%(重量%以
下同じ)未満では全く効果なく、0.05%を超えるに
従って稍々効果が出始め、その添加量の増加に略比例し
て効果も高まるため、添加量の上限は飽和濃度近くまで
添加しても支障はない。尚、電解時のクロムイオンの溶
出量はステンレスの材質、電解液の組成や電解条件によ
って増減するものであるため、還元に要するアスコルビ
ン酸又はアスコルビン酸塩の添加量を規定することは困
難であるが、実用的には、1%乃至2%程度の添加量が
好ましいことが判った。さて、クロムの化合物には原子
価が3価と6価のものとがあり、その内6価のクロムは
公害関係の環境基準0.05ppm以下、水質基準とし
て0.5ppm以下と最も厳しく規定されているほか、
人体に対し皮膚、粘膜、特に鼻隔の粘膜に潰瘍を生じ、
慢性的には鼻中隔に穴が明くこともあり、又、肺、鼻
孔、副鼻孔への発がん性もあるなど、種々の症状を伴な
う有害物質として指定されている。この6価クロム発生
の有無の検査は、JIS鉄鋼中のクロム分析法や水質汚
濁防止法の6価クロムの分析法に採用されているジフェ
ニルカルバジド吸光光度法に準拠して実施した。
【0006】
【実施例】
実施例1 溶接線を施工したSUS304の板材を被処理材とし、
電圧15Vの直流電源器の+極を該被処理材に接続し、
−極は布状被覆材で覆われた電極に接続した上、燐酸ナ
トリウム42%、水11%、グリセリン47%の配合よ
りなる公知組成の電解研磨用電解液を上記電極の被覆材
に含浸したうえ、電極を上記被処理材上で摺動させて溶
接焼け取り操作を10秒間実施後、直ちに被処理材面上
の電解液の残液を検査したところ、6価クロムが明白に
検出された。次いで、上記電解液にアスコルビン酸を
0.05%配合した第1液、0.1%配合した第2液、
1%配合した第3液、2%配合した第4液、5%配合し
た第5液を夫々調合し、前記と同一の電解条件のもと
で、電解操作を実施したところ、第1液では6価クロム
を極く微量検出したが、第2液乃至第5液共6価クロム
は全く検出されなかった。但し、電圧を20Vに上昇
し、前記同様の電解操作を試みたところ、第1,第2液
共微量の6価クロムを検出したが第3液以降では6価ク
ロムは全く検出しなかった。その他の実施例として、公
知組成の硫酸,燐酸,硝酸,塩酸を夫々基剤とする酸性
電解液及びこれら酸のナトリウム,カリウム,アンモニ
ウム塩を基剤とする中性或は中性に近い電解液を使用
し、前記と同様の試験を行ったところ、何れも6価クロ
ムを検出したが、アスコルビン酸を0.05%以上配合
すれば、6価クロムの溶出は極めて効果的に完全に抑制
されることを確認した。一方、アスコルビン酸塩による
効果も若干劣るものの略同様と認められた。尚、電解液
へのアスコルビン酸又はアスコルビン酸塩配合による溶
接焼け取りや研磨効果への悪影響は全く認められず、む
しろ焼け取り速度については約15乃至20%スピード
がアップし、また焼け取りあとの残液によるSUS板材
面の汚れの水洗性、水拭き性の面でも必要水量が約70
%減少、節約できるなど大巾な改善が認められたが、こ
れらはSUS材の溶解に伴なう主成分の鉄が、アスコル
ビン酸又はアスコルビン酸塩を配合しない公知配合の場
合には水酸化物として沈殿附着するが、これらの添加に
よってアスコルビン酸の錯イオンとして溶存しているた
め、簡単に水洗又は水拭きできるものと考えられる。
【0007】
【発明の効果】本発明のアスコルビン酸又はアスコルビ
ン酸塩を配合した含クロム合金鋼の電解琢磨用電解液に
依れば、ステンレス鋼に代表される含クロム合金鋼の溶
接焼け取りや、研磨を電解処理により実施する際、溶出
が最も懸念される極めて有害な6価クロムが被処理材の
材質、電源器の種類や電解条件の如何を問わず、3価ク
ロムになって効果的に無害化されることを可能としたも
ので、作業員の健康、安全、衛生上極めて有益であり、
又6価クロム混入廃液による公害発生の防止にも極めて
有効である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年2月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】追加
【補正内容】
【0006】
【実施例】 実施例1 溶接線を施工したSUS304の板材を被処理材とし、
電圧15Vの直流電源器の+極を該被処理材に接続し、
−極は布状被覆材で覆われた電極に接続した上、燐酸ナ
トリウム42%、水11%、グリセリン47%の配合よ
りなる公知組成の電解研磨用電解液を上記電極の被覆材
に含浸した上、電極を上記被処理材上で摺動させて溶接
焼け取り操作を10秒間実施後、直ちに被処理材面上の
電解液の残液を検査したところ、6価クロムが明白に検
出された。次いで、上記電解液にアスコルビン酸を0.
05%配合した第1液、0.1%配合した第2液、1%
配合した第3液、2%配合した第4液、5%配合した第
5液を夫々調合し、前記と同一の電解条件のもとで、電
解操作を実施したところ、第1液では6価クロムを極く
微量検出したが、第2液乃至第5液共6価クロムは全く
検出されなかった。但し、電圧を20Vに上昇し、前記
同様の電解操作を試みたところ、第1、第2液共微量の
6価クロムを検出したが第3液以降では6価クロムは全
く検出しなかった。その他の実施例として、ステンレス
鋼及び含クロム合金鋼製の歯車の切削バリを塩化ナトリ
ウム或は硝酸ナトリウム溶液を電解液とし、電圧10乃
至30V、電流4乃至5A/cmの電解条件の下に電解
バリ取り処理を行なったところ、当該電解液中に相当多
量の6価クロムを検出したが、当初の電解液総量に1%
のアスコルビン酸を配合した上、同一の電解条件の下に
電解処理をしたところ、当該電解液中に6価クロムは全
く検出されなかった。更に、別の実施例として、硝酸ナ
トリウム3%水溶液を電解液として、交流電圧15V、
電流密度1A/cmの電解条件のもとに、サンダーに
よる研磨仕上げのSUS304板を被処理材とし、10
秒間電解処理して、研磨面の光沢をダル仕上げ(つや消
し仕上げ)を行うと共に不動態化被膜形成処理を行っ
た。因にこのダル仕上げと不動態化仕上げを同時に実現
し得る方法は、本願出願人が発明し、特願平1−163
362号によりステンレス鋼の表面処理法として特許出
願中のものであるが、当該電解液の廃液を調べたとこ
ろ、液中に6価クロムを検出したため、同一組成の電解
液を再調整し、その総量に1%のアスコルビン酸を配合
のうえ、前記と同一の電解条件のもとに同一の被処理材
を電解処理した後、電解液の廃液を再調査したところ、
6価クロムは全く検出しなかった。ところで、この種電
解液は通常、ステンレス鋼のバリ取り用等として利用さ
れているものであるが、本実施例の如き新規且つ特殊な
用途にも利用できるものであり、所謂、研磨、琢磨処理
とは異なるが、本願においては、この種特殊用途用電解
液も前記バリ取り用電解液と同一成分であるところか
ら、本願に謂う電解琢磨用電解液の定義に含めるものと
する。その他の実施例として、公知組成の硫酸,燐酸,
硝酸,塩酸を夫々基剤とする酸性電解液及びこれら酸の
ナトリウム,カリウム,アンモニウム塩を基剤とする中
性或は中性に近い電解液を使用し、前記と同様の試験を
行ったところ、何れも6価クロムを検出したが、アスコ
ルビン酸を0.05%以上配合すれば、6価クロムの溶
出は極めて効果的に完全に抑制されることを確認した。
一方、アスコルビン酸塩による効果も若干劣るものの略
同様と認められた。尚、電解液へのアスコルビン酸又は
アスコルビン酸塩配合による溶接焼け取りや研磨効果へ
の悪影響は全く認められず、むしろ焼け取り速度につい
ては約15乃至20%スピードがアップし、又焼け取り
あとの残液によるSUS板材面の汚れの水洗性、水拭き
性の面でも必要水量が約70%減少、節約できるなど大
幅な改善が認められたが、これらはSUS材の溶解に伴
なう主成分の鉄が、アスコルビン酸又はアスコルビン酸
塩を配合しない公知配合の場合には水酸化物として沈殿
付着するが、これらの添加によってアスコルビン酸の錯
イオンとして溶存しているため、簡単に水洗又は水拭き
できるものと考えられる。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 硫酸,燐酸,硝酸,塩酸の何れか一種又は二種以上を、
    若しくはこれら酸の各ナトリウム,カリウム,アンモニ
    ウム塩の一種又は二種以上を主成分とする水溶液に、ア
    スコルビン酸又はアスコルビン酸のナトリウム,カリウ
    ム,アンモニウム塩の何れかを0.05%(重量%)以
    上配合してなることを特徴とする含クロム合金鋼の電解
    琢磨用電解液。
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