JPH05162519A - 自動車用テンションロッドとその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】テンションロッドの強度を低下させることなく
軽量化を図る。 【構成】一端にブッシュ１０を圧入するカラー１１を取
り付け、他端にスタッドボルト９を取り付ける座面１３
を形成する。テンションロッド本体１２は中空部材によ
り形成し、一端を前記カラー１１に当接させて溶接接合
し、他端を押し潰してスタッドボルトの取り付け座面１
３を形成すると共に、この他端の中空内部に補強部材１
４を挿入する。中空部材のテンションロッド本体１２が
当接するカラー１１に、テンションロッド本体１２の内
部とカラー内部とを連通する通孔１８を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、自動車の懸架装置に適
用して好ましい自動車用テンションロッドとその製造方
法に関し、特に軽量化を図ったものである。

【０００２】

【従来の技術】自動車の走行中において路面から受ける
種々の振動や衝撃を吸収するためボディとアクスルとの
間には緩衝作用を備えたサスペンションが設けられてい
る。かかるサスペンションは、自動車を路面上に支え駆
動輪からの推進力をボディーに伝え同時に路面からの衝
撃を緩和して自動車を破損から守るだけでなく、乗り心
地と走行安定性を改善する重要な機能を持つことから自
動車の高速化と共にその機能は高速化の限界を左右する
ものとして益々重要視されている。

【０００３】独立懸架式サスペンションは左右のホイー
ルを１本のアクスルで連結せずに独立して運動できるよ
うにしたもので、例えば図８に示すマクファーソン型独
立懸架式サスペンションは以下のような構成となってい
る。

【０００４】すなわち、図８に示すように、車輪１を回
動自在に支持するナックル２にはサスペンションリンク
３の先端が揺動自在に取り付けられ、ナックル２の上端
にはコイルスプリング４とストラット５からなるショッ
クアブソーバ６の下端が固定されている。このショック
アブソーバ６の上端はボディーに固定されており、車輪
が上下動したときに当該車輪をボディーに対する原位置
に復帰させる方向に力が作用する。

【０００５】また、サスペンションリンク３の基端はブ
ッシュによってサスペンションメンバ７に揺動自在に取
り付けられ、さらにこのサスペンションメンバ７とサス
ペンションリンク３との間にはテンションロッド８が架
設されて車輪１の前後動を抑止している。

【０００６】従来のテンションロッド８は、図９に示す
ように、中実丸棒からなるテンションロッド本体８ａの
一端に鍛造成形によってスタッドボルト９の取り付け座
面８ｂを形成し、一方、他端にはブッシュ１０を圧入す
るためのカラー１１を溶接接合していた。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】ところが、車両の軽量
化を図るために、中実丸棒からなるテンションロッド本
体８ａの径を小さくすると、テンションロッドの強度、
特にスタッドボルトの取り付け座面８ｂの近傍の強度が
低下するので軽量化にも自ずと限界があった。かかる部
品は自動車の走行安全性にとって特に重要であるから軽
量化よりも強度を優先しているのが実情であった。

【０００８】本発明は、このような従来技術の問題点に
鑑みてなされたものであり、テンションロッドの強度を
低下させることなく軽量化を図ることを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明は、一端にブッシュを圧入するカラーを取り付
け、他端にスタッドボルトを取り付ける座面を形成して
なる自動車用テンションロッドにおいて、テンションロ
ッド本体を中空部材により形成し、一端を前記カラーに
当接させて溶接接合し、他端を押し潰してスタッドボル
トの取り付け座面を形成すると共に、この他端の中空内
部に補強部材を挿入したことを特徴とする自動車用テン
ションロッドである。このとき、前記中空部材と前記補
強部材との間に僅かな隙間を形成すると共に、前記中空
部材のテンションロッド本体が当接するカラーに、テン
ションロッド本体の内部とカラー内部とを連通する通孔
を形成することが好ましい。

【００１０】上記目的は、中空部材からなるテンション
ロッド本体の一端を押し潰し、この中空内部に補強部材
を圧入嵌合することで前記中空部材と前記補強部材とを
密着させたことを特徴とする自動車用テンションロッド
の製造方法によっても達成することができる。さらに上
記目的は、中空部材からなるテンションロッド本体の一
端を押し潰し、この中空内部に補強部材を遊嵌した後
に、再び前記テンションロッド本体の一端を加圧するこ
とでスタッドボルトの取り付け用座面を形成したことを
特徴とする自動車用テンションロッドの製造方法によっ
ても達成することができる。

【００１１】

【作用】本発明の自動車用テンションロッドを製造する
には、まず中空部材からなるテンションロッド本体の一
端を押し潰し、この中空内部に補強部材を圧入嵌合する
ことで前記中空部材と前記補強部材とを密着させるか、
あるいは、中空部材からなるテンションロッド本体の一
端を押し潰し、この中空内部に補強部材を遊嵌した後
に、再び前記テンションロッド本体の一端を加圧するこ
とでスタッドボルトの取り付け用座面を形成する。この
テンションロッド本体の一端の加工と相前後して、テン
ションロッド本体の他端にブッシュを圧入するカラーを
溶接接合する。 かかる製造方法により得られる自動車
用テンションロッドは、一端にはブッシュを圧入するカ
ラーが取り付けられ、他端にはスタッドボルトを取り付
ける座面が形成されて、テンションロッド本体が中空部
材により形成され、かつスタッドボルトの取り付け座面
の中空内部には補強部材が挿入されているため、テンシ
ョンロッドの軽量化を実現できるばかりでなく、スタッ
ドボルトの取り付け座面の機械的強度をも維持すること
ができる。また、中空部材と補強部材との間に僅かな隙
間を形成すると共に、中空部材のテンションロッド本体
が当接するカラーに、テンションロッド本体の内部とカ
ラー内部とを連通する通孔を形成すれば、中空部材の内
面に防錆塗膜を形成することができ、中空部材の内部に
水等が侵入しても発錆を防止することができる。

【００１２】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説
明する。図１は、本発明の一実施例に係る自動車用テン
ションロッドを示す斜視図、図２（Ａ）は図１のＡ−Ａ
線に沿う断面図、図２（Ｂ）は図１のＢ−Ｂ線に沿う断
面図、図３は同実施例のテンションロッド本体とカラー
との接合部分を示す斜視図である。

【００１３】本実施例に係る自動車用テンションロッド
は、鋼管などの中空部材により形成されたテンションロ
ッド本体１２を有しており、一端にはカラー１１が溶接
接合され、他端はスタッドボルト９を取り付けるための
座面１３が形成されている。このカラー１１にはゴムな
どの弾性体からなるブッシュ１０が圧入されて図７に示
すサスペンションメンバ７のブラケットに軸支される。
一方、スタッドボルト９が取り付けられるテンションロ
ッド本体１２の端部は図７に示すサスペンションリンク
３に固定される。

【００１４】テンションロッド本体１２とカラー１１と
の接合部は、図３に示すように、テンションロッド本体
側を筒状カラー１１の外形に応じた形状に形成して当接
させ、全周あるいは部分的に溶接接合している。このと
き、中空部材であるテンションロッド本体１２が当接接
合しているカラー１１に、テンションロッド本体１２の
内部とカラー１１の内部とを連通する通孔１８を形成
し、ブッシュ１０を圧入する前のテンションロッドを塗
装する場合の電着塗料の侵入孔あるいは流出孔としてい
る。

【００１５】本実施例のテンションロッド本体１２は中
空部材により構成されており、しかも、スタッドボルト
９を取り付ける端部からは水が侵入することが十分考え
られるので、テンションロッド本体１２の内部にも電着
塗膜を形成しておくか、あるいは完全に密封しておく必
要がある。スタッドボルト９を取り付ける端部に隙間が
存在する場合には中空部材内部が袋構造となり塗料溜り
やエアーポケットの原因となる。そこで、ブッシュ１０
を圧入する前のカラー１１の内部から通孔１８を介して
テンションロッド本体１２の内部に電着塗料を導き、端
部の隙間から流出させるようにしている。したがって、
かかる通孔１８を穿設する位置や径はテンションロッド
本体１２の大きさや、電着塗装条件等により適宜決定さ
れる。

【００１６】一方、テンションロッド本体１２の他端
は、スタッドボルト９が取り付けられるように押し潰さ
れて座面１３が形成されており、さらにスタッドボルト
９の取り付け強度を高めるために平鋼などからなる補強
部材１４を挿入している。すなわち、図２（Ａ）（Ｂ）
に示すように、テンションロッド本体１２の端部の表裏
に座面１３を形成し、少なくともこの座面１３を含むよ
うに平鋼１４が挿入されている。座面１３が形成された
テンションロッド本体１２と平鋼１４にはスタッドボル
ト９が挿通する通孔１５が穿設されている。

【００１７】次に、かかるテンションロッド本体１２の
端部を成形する方法について説明する。なお、図４は本
発明の一実施例に係る自動車用テンションロッドの製造
方法を説明する断面図、図５は本発明の他の実施例に係
る自動車用テンションロッドの製造方法を説明する断面
図であって、何れも図１のＢ−Ｂ線に相当する断面図で
ある。

【００１８】まず、図４（Ａ）に示すような鋼管からな
るテンションロッド本体１２の端部を図４（Ｂ）に示す
ように押し潰し、この押し潰した中空部１６内に、中空
部１６の内側形状よりもやや大きく、ほぼ同一形状の断
面を有する平鋼（補強部材）１４を圧入嵌合することで
中空部材内部と外気とを遮断し（図４（Ｃ）参照）、つ
いでスタッドボルト９の挿通孔１５を機械加工等によっ
て穿設する（図４（Ｅ）参照）。この方法により製造さ
れたテンションロッドの内部は、平鋼１４を圧入嵌合す
ることで外気と遮断されているので、図３に示すような
電着塗装用の通孔１８をカラー１１に形成する必要はな
い。

【００１９】なお、テンションロッド本体１２の端部を
成形する方法は上述した実施例のみに限定されることな
く、例えば、図５に示す製造方法によっても成形するこ
とができる。この方法は、図５（Ａ）に示すような鋼管
からなるテンションロッド本体１２の端部を図５（Ｂ）
に示すように押し潰し、この押し潰した中空部１６内に
平鋼１４を遊嵌する（図５（Ｃ）参照）。このとき平鋼
１４は中空部１６の内側形状よりも僅かに小さく形成し
ておく。次に、補強部材である平鋼１４とテンションロ
ッド本体１２の間に生じた隙間Ｓを除去するためにテン
ションロッドの端部のスタッドボルトの取り付け座面を
加圧成形し、ついでスタッドボルト９の挿通孔１５を機
械加工により穿設する（図４（Ｅ）参照）。この方法に
より製造されたテンションロッドの端部には、僅かな隙
間が存在しているので、図３に示すような電着塗装用の
通孔１８をカラー１１に形成しておく。なお、テンショ
ンロッドの端部を密封する方法としては、図７（Ａ）
（Ｂ）に示すように中空部材１６の端部と平鋼１４とを
全周溶接することにより水の侵入を防止する方法もあ
り、この場合にはカラー１１に通孔１８を形成する必要
はない。

【００２０】このようにして製造された本実施例の自動
車用テンションロッドによれば、テンションロッド本体
１２が中空部材である鋼管により形成され、かつスタッ
ドボルトの取り付け座面１３の中空部１６には補強部材
である平鋼１４が挿入されているため、テンションロッ
ドの軽量化を実現できるばかりでなく、スタッドボルト
の取り付け座面の機械的強度をも維持することができ
る。

【００２１】なお、図６は本発明のさらに他の実施例を
示すスタッドボルトの取り付け座面を示す断面図であっ
て、図１のＡ−Ａ線に相当する断面図である。このテン
ションロッドは、テンションロッド本体１２の端部を押
し潰す代わりに、中実材の鍛造成形品１７を取り付けて
いる。すなわち、テンションロッド本体１２とブッシュ
１０を圧入するカラー１１との接合部分は上述した実施
例と同様に構成しているが、スタッドボルト９を取り付
ける端部に鋼製中実材を鍛造成形によりスタッドボルト
取り付け座面１３を形成した成形品１７を挿入し、これ
らテンションロッド本体１２と鍛造成形品１７との接合
部を全周あるいは部分的に溶接によって固定している。
また、スタッドボルト９を挿通する通孔１５を機械加工
により穿設している。

【００２２】このように構成した場合も、上述した実施
例と同様に、テンションロッドの軽量化を実現できるば
かりでなく、スタッドボルトの取り付け座面の機械的強
度をも維持することができる。

【００２３】なお、本発明は上述した実施例にのみ限定
されることなく本発明の要旨を越えない限りにおいて種
々に改変することが可能である。

【００２４】

【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、テン
ションロッド本体が中空部材により形成され、かつスタ
ッドボルトの取り付け座面の中空内部には補強部材が挿
入されているため、テンションロッドの軽量化を実現で
きるばかりでなく、スタッドボルトの取り付け座面の機
械的強度をも維持することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、本発明の一実施例に係る自動車用テン
ションロッドを示す斜視図である。

【図２】図２（Ａ）は、図１のＡ−Ａ線に沿う断面図、
図２（Ｂ）は図１のＢ−Ｂ線に沿う断面図である。

【図３】図３は、同実施例のテンションロッド本体とカ
ラーとの接合部分を示す斜視図である。

【図４】図４は、本発明の一実施例に係る自動車用テン
ションロッドの製造方法を説明する断面図である。

【図５】図５は、本発明の他の実施例に係る自動車用テ
ンションロッドの製造方法を説明する断面図である。

【図６】図６は、本発明の他の実施例に係る自動車用テ
ンションロッドを示す要部断面図である。

【図７】図７は、本発明のテンションロッド本体の端部
の密封方法を示す縦断面図である。

【図８】図８は、従来の自動車用サスペンションを示す
斜視図である。

【図９】図９は、従来の自動車用テンションロッドを示
す斜視図である。

【符号の説明】

９…スタッドボルト、 １０…ブッシュ、 １１…カラー、 １２…テンションロッド本体、 １３…座面、 １４…平鋼（補強部材）、 １８…通孔。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】一端にブッシュを圧入するカラーを取り付
   け、他端にスタッドボルトを取り付ける座面を形成して
   なる自動車用テンションロッドにおいて、テンションロ
   ッド本体を中空部材により形成し、一端を前記カラーに
   当接させて溶接接合し、他端を押し潰してスタッドボル
   トの取り付け座面を形成すると共に、この他端の中空内
   部に補強部材を挿入したことを特徴とする自動車用テン
   ションロッド。
2. 【請求項２】前記中空部材と前記補強部材との間に僅か
   な隙間を形成すると共に、前記中空部材のテンションロ
   ッド本体が当接するカラーに、テンションロッド本体の
   内部とカラー内部とを連通する通孔を形成したことを特
   徴とする請求項１記載の自動車用テンションロッド。
3. 【請求項３】中空部材からなるテンションロッド本体の
   一端を押し潰し、この中空内部に補強部材を圧入嵌合す
   ることで前記中空部材と前記補強部材とを密着させたこ
   とを特徴とする自動車用テンションロッドの製造方法。
4. 【請求項４】中空部材からなるテンションロッド本体の
   一端を押し潰し、この中空内部に補強部材を遊嵌した後
   に、再び前記テンションロッド本体の一端を加圧するこ
   とでスタッドボルトの取り付け用座面を形成したことを
   特徴とする自動車用テンションロッドの製造方法。