JPH05155601A - 水素同位体分離用合金およびそれを用いた水素分離方法 - Google Patents

水素同位体分離用合金およびそれを用いた水素分離方法

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JPH05155601A
JPH05155601A JP6803092A JP6803092A JPH05155601A JP H05155601 A JPH05155601 A JP H05155601A JP 6803092 A JP6803092 A JP 6803092A JP 6803092 A JP6803092 A JP 6803092A JP H05155601 A JPH05155601 A JP H05155601A
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hydrogen
deuterium
pressure
equilibrium
alloy
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JP6803092A
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English (en)
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Koji Gamo
孝治 蒲生
Noboru Taniguchi
昇 谷口
Junji Niikura
順二 新倉
Kazuhito Hado
一仁 羽藤
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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  • Hydrogen, Water And Hydrids (AREA)

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 水素の吸蔵および放出により、各水素同位体
を効果的に分離し得る水素吸蔵合金、およびそれを用い
た水素同位体の分離方法を提供する。 【構成】 本発明はラーバス相のC14型結晶構造を有
する合金でなり、複数の水素同位体の各々の平衝吸蔵圧
力差もしくは複数の水素同位体の各々の平衝吸蔵圧力差
もしくは平衝放出圧力差により、圧力の変化に応じて順
次各水素同位体を吸蔵もしくは放出し得る水蔵吸蔵合金
である。また所定の温度において、軽水素と重水素との
混合ガスを、軽水素の平衝吸蔵圧力よりも低く、かつ重
水素の平衝吸蔵圧力よりも高い圧力で上記水素吸蔵合金
に接触させて、該重水素を前記水素吸蔵合金に吸蔵させ
る工程、前記系内に存在する軽水素を該系より分離する
工程、前記系の圧力を重水素の平衝放出圧力よりも低い
圧力に設定して、前記重水素を前記水蔵吸蔵合金から放
出させる工程よりなる軽水素と重水素の分離方法であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水素の吸蔵および放出
により、各水素同位体を効果的に分離し得る水素吸蔵合
金、およびそれを用いた水素同位体の分離方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】水素同位体には軽水素(元素記号:
H)、ジューテリウム(元素記号:2HまたはD)およ
びトリチウム(元素記号:3HまたはT)が存在する。
これらのうちジューテリウムおよびトリチウムは重水素
(heavy hydrogen)と呼ばれ、該重水素およびそれを含む
化合物は、各種用途に用いられる。例えばそれらは該融
合反応のための燃料に、重水炉の熱媒体および、中性子
減速材に、加速器の重粒子線源に、あるいは分析・解析
用のトレーサに用いられている。重水素および軽水素は
通常、混在しているため、重水素を分離するために、種
々の方法が試みられている。例えば、水および重水の混
合物を電気分解するときの分解電圧の差を用いて重水素
を分離する方法;硫化重水素と硫化水素との間で水素交
換反応を行う温度交換反応法;疎水性白金触媒を用いる
水素−水系化学的同位体交換法;赤外レーザを用いたと
きの水と重水との分解速度の差を利用したレーザ同位体
分離法;水蒸留法;液体水素蒸留法〇水素−水系同位体
交換反応法などが知られている。さらに水素を吸蔵し得
る金属または合金に水素同位体の混合ガスを吸蔵させ、
圧力を変化させて、所定の水素同位体のみを放出させる
方法;あるいは吸蔵後、所定の圧力下での放出速度の相
違により所定の水素同位体を高濃度で得る方法も提案さ
れている(Y.Osumi and T.Saito, 水素吸蔵合金;Yonos
yobo Ltd.Tokyo,Japan)。
【0003】上記方法のうち一般によく使用されている
のは、水素−水系同位体交換法であり、これは、次の反
応式で示される。
【0004】 上記反応式においては、温度を下げると反応が右へ進
み、逆に温度を上げると左に進む。これを利用して、例
えば低温度下でトリチウムを含むガスを水と接触させる
ことによりトリチウムをHTOで示される水として回収
することが可能である。この原理を利用した、プロセス
として二重温度交換法および単温度交換法が知られてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の各方法は、それ
ぞれ欠点を有している。例えば、硫化水素を用いた温度
交検法においては、生成したH2Sから生成したD2Sが
不安定であるため、活性酸素と反応させて、D2Oの形
とする必要があり、大規模な装置と多大なコストがかか
る。さらに、通常200℃という高い温度を要する。さら
に、硫化水素やアンモニアを生じるため環境汚染の問題
もある。上記水素を吸蔵しうる金属または合金を使用す
る方法では、比較的低温で分離がなされるが、各水素同
位体の平衡吸蔵圧力または平衡放出圧力の差が非常に小
さいため、高純度で分離がなされ得ないという欠点があ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の水素吸蔵合金は
次式 ABα で示される。ここでAは、Ti,Zr,お
よびHfでなる群から選択される少なくとも1種の元素
であり、Bは、Mn,V,Fe,Ni,Cr,Co,C
u,Zn,Al,Si,Nb,Mo,W,Mg,Ca,
Y,Ta,Pd,Ag,Au,Cd,In,Sn,B
i,La,Ce,Mm(Mmはミッシュメタルを示
す)、Pr,Nd,Th,およびSmでなる群から選択
される少なくとも1種の元素であり、そしてαは1.5か
ら2.5の数である。
【0007】この合金は、金属間化合物のうち実質的に
合金相がラーバス相を有する金属間化合物に属し、その
結晶構造は6方対称のC14型である。このような合金と
してはTiMn1.5,ZrMn2.2,HfMn2.4,Hf
Cr1.8,TiMn1.0La0.6,TiMn1.3Co0.3
TiMn1.2Ni0.2,ZrMn2.0Cr0.1,Ti0.8
0.2Mn1.4Cr0.6,Ti0.5Zr0.5Cr1.2
0.8,Zr0.8Hf0.21.5Mo0.5,ZrCr1.2Co
0.6Cu0.4,Ti0.8Zr0.2Mn1.2Cr0.5Cu0.3
Ti0.5Zr0.5Mn1.0Ca0.2Fe1.1,Ti0.2Zr
0.8Cr1.20.2Mm0.7,Ti0.6Zr0.41.0Cr0.8
Sn0.2,ZrMn1.4Zn0.2Nb0.4Al0.1などがあ
る。なかでもTiまたはZrを含む合金が好適であり、
特にTi−M系合金が好ましい。
【0008】上記タイプの合金は、100℃以下の温度に
おいて、圧力の変化に応じて大量の水素(H2,D2また
はT2)を吸蔵し、放出し得る能力を有する。H2,D2
およびT2の平衡吸蔵圧力および平衡放出圧力、さらに
吸蔵後の放出速度はそれぞれ異なる。所定の温度におけ
る平衡吸蔵圧力および平衡放出圧力は、それぞれH2
一番高く、D2,T2の順で低くなる。吸蔵後の放出速度
はH2が一番速く、D2,T2の順で遅くなる。例えば、
図1に示すようにH2ガスを本発明の水素吸蔵合金に所
定の温度(ここでは20℃)で、1kg/cm2から50kg/cm2
で徐々に圧力を高めて、吸蔵させると、曲線1で示され
るように、該合金中にH2の吸蔵が行われる。次に圧力
を下げて行くと、曲線2で示されるように、H2ガスの
放出が行われる。同様に、D2ガスを用いると、曲線3
のように吸蔵が行われ、曲線4のように放出が行われ
る。
【0009】本発明の第1の方法においては、例えばま
ず軽水素とジューテリウムとを含む混合ガスと水素吸蔵
合金とを接触させ、圧力をかけてガスの吸蔵を行わせ
る。例えば、図1におけるA点の圧力に系内を保持する
と、ジューテリウムが合金に吸蔵され、軽水素は、吸蔵
されずに残留する。この軽水素を分離した後、系内の圧
力をEに設定するとジューテリウムが放出される。軽水
素、ジューテリウムおよびトリチウムを含有する混合ガ
スの場合は、同様にしてジューテリウムとトリチウムと
を吸蔵させ、軽水素を分離した後、同様の工程によりジ
ューテリウムとトリチウムとを分離すればよい。軽水素
およびジューテリウムと、トリチウムとを分離した後、
軽水素とジューテリウムとを分離してもよい。単離した
ガスを再び同様の工程に供することにより、所望のガス
の純度を向上させることができる。
【0010】本発明の第2の方法においては、例えばま
ず、軽水素とジューテリウムとを含む混合ガスと水素吸
蔵合金とを接触させ、圧力をかけてガスの吸蔵を行わせ
る。例えば、図1のB点の圧力に系内を保持すると、軽
水素とジューテリウムとが水素に吸蔵される。次に、図
1のC点の圧力に系内を保持すると、軽水素が放出さ
れ、ジューテリウムは合金内に吸蔵されたまま残留する
ため、軽水素を分離する。次いで、図1のE点に圧力を
設定することにより、ジューテリウムが放出される。軽
水素、ジューテリウムおよびトリチウムを包含する混合
ガスの場合は、同様にして、これらのガスの全てを水素
吸蔵合金に吸蔵させた後、設定圧力を変化させて軽水
素、ジューテリウムおよびトリチウムを順次放出させ
て、その各々を採取する。単離したガスを再び同様の工
程に供することにより、所望のガスの純度を向上させる
ことができる。
【0011】所定の点における軽水素とジューテリウム
との平衡吸蔵圧力差、及びジューテリウムとトリチウム
との平衡吸蔵圧力差は、それぞれ軽水素とジューテリウ
ムとの平衡放出圧力差、およびジューテリウムとトリチ
ウムとの平衡放出圧力差よりも大きいことがわかる。従
って、上記第1および第2の方法のうち、平衡吸蔵圧力
差を利用する第1の方法の方が、分離能がよいことがわ
かる。図2には、30℃において、同様に軽水素及びジュ
ーテリウムの吸蔵および放出状態を測定したときのグラ
フを示す。図1および図2を比較すると、より低温で行
う方が分離能のよいことがわかる。一般に、第1および
第2の方法は、50℃以下、好ましくは0℃付近の温度で
行われる。
【0012】本発明の第3の方法においては、例えばま
ず、所定の温度において、軽水素とジューテリウムとを
含む混合ガスを軽水素およびジューテリウムの吸蔵を越
える圧力において、水素吸蔵合金と接触させて、両者を
該合金に吸蔵させた後、ジューテリウムの放出を下まわ
る圧力に設定する。図3に示すように、同一温度におい
ては、軽水素とジューテリウムとは放出速度が異なる。
従って、まず、所定の時間までの間に放出されるガスを
回収すると、これは軽水素の含量の高められたガスであ
る。次に所定の時間までに放出されるガスを回収する
と、これはジューテリウムの含量の高められたガスであ
る。採取したガスを用いて再び同様の工程を繰り返すこ
とにより、軽水素またはジューテリウムの純度がさらに
高いガスが得られる。軽水素、ジューテリウムおよびト
リチウムを含有する混合ガスの場合には、同様に、これ
らのガスを水素吸蔵合金に吸蔵させ、トリチウムの平衡
放出圧力を下まわる圧力に設定し、軽水素、ジューテリ
ウムおよびトリチウムの濃度の高められたガスを順次回
収することができる。
【0013】
【作用】本発明によれば、ラーバス相のC14型液晶構
造を有する水素吸蔵合金を水素同位体分離・濃縮用合金
として用い、所定の温度での水素同位体の平衡吸蔵圧
力、平衡放出圧力の差異を有効に利用することによっ
て、あるいは水素同位体の放出速度の差異を有効に利用
することによって、軽水素からジューテリウムやトリチ
ウムを高効率、無公害で、経済的に分離・濃縮できる。
【0014】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面を参照しながら
説明する。
【0015】(実施例1)TiMn1.5のC14型合金
を作製するためにTiおよびMnを秤量し、アルゴンア
ーク溶解炉を用いて融解、または高周波加熱炉を用いて
真空中または不活性ガス中で直接融解させた。融解後、
1100℃で20時間均質に熱処理した。得られた合金に20℃
にて、常圧から50kg/cm2まで徐々に圧力を上げながら、
軽水素を接触させて、これを該合金に吸蔵させた。
【0016】次に徐々に圧力を下げて軽水素を該合金か
ら放出させた。これらの工程に於て、水素平衡圧力と、
吸蔵されている水素の量(合金1分子あたりの水素原子
数で示す)との関係を図1に示す。曲線1は吸蔵時、そ
して曲線2は放出時を示す。別にジューテリウムを用い
て吸蔵および放出を行い。その結果を合わせて図1に示
す。別に軽水素の代わりにジューテリウムを用いて実験
を行った。同様に、その結果を図1に示す。曲線3はジ
ューテリウムの吸蔵、そして曲線4はジューテリウムの
放出を示す。本実施例において使用した合金の純度は9
9.9%以上、そして軽水素およびジューテリウムの純度
は、それぞれ99.99%以上および99.7% 以上であった。
図1から、軽水素またはジューテリウムの吸蔵時と放出
時とはそれぞれ異なるルートの曲線を描き、ヒステリシ
スを生じることがわかる。さらに、原子量の異なる軽水
素とジューテリウムは各々異なる曲線となることが分か
る。
【0017】図1における符号A,B,CおよびEは軽
水素とジューテリウムのにおいて典型的に異なる平衡圧
力点を示す。Aでは、水素吸蔵合金に軽水素は吸蔵され
ず、ジューテリウムは吸蔵される水素同位体混合ガス吸
蔵圧力点、Bは水素吸蔵合金に軽水素、およびジューテ
リウムがともに吸蔵される水素同位体混合ガス吸蔵圧力
点、Cは水素吸蔵合金から軽水素は放出されるが、ジュ
ーテリウムは放出されない水素同位体混合ガス放出圧力
点、Eは水素吸蔵合金から軽水素およびジューテリウム
がともに放出される水素同位体混合ガス放出圧力点であ
る。この水素吸蔵合金を20℃の一定温度に保持し、ジュ
ーテリウムを混合した軽水素ガスを、水素吸蔵合金に、
軽水素の平衡吸蔵圧力よりも低く、ジューテリウムの平
衡吸蔵圧力よりも高い点Aの圧力で吸蔵させると、ジュ
ーテリウムの吸蔵ガス圧は、A点の圧力より低いためジ
ューテリウムは合金中にどんどん吸蔵されるが、軽水素
は吸蔵領域に入っていないため合金中には吸蔵されず、
残余のガス中に残る。次いで、吸蔵されない残余ガスを
放出(purge)したのち、合金周囲のガス圧をガス放出圧
力点E以下にすれば、合金内部に貯蔵されたジューテリ
ウムのみが放出される。ジューテリウムの濃度を高める
ためには、この操作を繰り返すとよい。
【0018】上記実験を30℃にて行い、その水素平衡圧
力と、吸蔵されている水素の量(合金1分子あたりの水
素原子数で示す)との関係を図2に示す。図1および図
2に示すように、平衡圧がほぼフラットになる領域をプ
ラトー域と称する。図1から明らかなように、TiMn
1.5を用いて20℃で、吸蔵放出を行ったときにはプラト
ー域での吸蔵時のHとDとの平衡圧力差は約8kg/cm2,
放出時のHとDとの平衡圧力差は約2kg/cm2である。本
発明のラーバス相のC14型合金は、いずれもこのよう
な吸蔵・放出特性を有する。従って、重水素を軽水素か
ら分離・放出するときには吸蔵過程を使用して分離する
のが適当であり、放出時に比べて、分離効率が約4倍以
上高い。
【0019】(実施例2)図1に示すように、20℃にお
いて、軽水素およびジューテリウムの混合ガスを、水素
吸蔵合金に、軽水素の平衡吸蔵圧力よりも高い圧力の点
Bにガス圧力を設定し、合金中に軽水素およびジューテ
リウムを吸蔵させた。次いで、軽水素の平衡放出圧力よ
りも低く、ジューテリウムの平衡放出圧力より高い点C
に圧力を設定すると軽水素は合金から外部へ放出され、
重水素のみが合金中に残った。容器内部の軽水素をパー
ジしてから、E点以下に容器内の圧力を下げることによ
り、高効率でジューテリウムを分離・濃縮することがで
きた。この操作を繰り返すことによって、ジューテリウ
ムの濃度が高められた。
【0020】(実施例3)本発明の実施例1のTiMn
1.5水素吸蔵合金を用いて軽水素またはジューテリウム
の吸蔵および放出を行った時の温度と平衡吸蔵圧力また
は平衡放出圧力との関係を図3に示す。これらの直線
は、ジューテリウム分離性能を示す。図3から算出する
と、部分モルエンタルピーの変化は、吸蔵時、軽水素で
−17.8kJ/molH2、ジューテリウムで−21.3kJ/mol
2、放出時、軽水素で−23.3kJ/mol H2、ジューテリ
ウムで−28.7kJ/mol D2であった。従って、高温で両水
素同位体の分離直線は交差することがわかる。図3で
は、室温から温度を上げていくと約60℃で、軽水素の放
出直線とジューテリウムの放出直線が交差した。従っ
て、水素同位体混合ガスから特定の水素同位体を平衡吸
蔵圧力差または平衡放出圧力差を利用して分離する方法
では、約50℃以下の低温を用いたときの分離効果が大き
いことがわかる。
【0021】(実施例4)別の実施例として、TiMn
1.5,およびZrV2を水素吸蔵合金として用い、0℃に
おいて、吸蔵圧の特性差を利用して、軽水素から重水素
の分離を試みた。吸蔵時の設定圧を図1のA点とする本
発明の第1の方法、図1のB点とする本発明の第2の方
法ともに、重水素の分離・濃縮効果はほぼ同様で、ジュ
ーテリウムを0.5%の割合で含有する軽水素−ジューテ
リウム混合ガスから一段の濃縮操作でジューテリウムが
約10%に濃縮された。これは50℃のときに比べて10倍の
濃度である。
【0022】なお、上記の各実施例の特性図である、図
1、図2、および図3は、ほぼ100%濃度の水素同位体
ガスについてのグラフである。水素同位体混合物を分離
する場合、その工程における設定圧は混合ガス中の各ガ
スの分圧値を水素平衡圧力と、吸蔵されている水素の量
(合金1分子あたりの水素原子数で示す)との関係の所
定の吸蔵・放出圧にすればよい。
【0023】上記TiMn1.5と同様のタイプの本発明
の水素吸蔵合金、例えば、ZrMn2、TiCr2、Zr
2、ZrMo2、ZrFe2においても上記とほぼ同様
の結果が得られた。特にVを含有する合金の特性が優れ
ていた。
【0024】トリチウムの水素平衡圧力と吸蔵されてい
る水素の量(合金1分子あたりの水素原子数で示す)と
の関係は、ジューテリウムの場合よりさらに低圧側にず
れる。トリチウムについても全く同様の方法で分離が可
能である。
【0025】(実施例5) (表1)に示す各種の水素吸蔵合金を作製し、20℃にお
ける軽水素、ジューテリウムおよびトリチウムの吸蔵お
よび放出時において、水素原子数/合金1分子=1.3の
点における軽水素およびジューテリウム、そしてジュー
テリウムおよびトリチウムの平衡吸蔵圧の差、そして平
衡放出圧の差を測定算出した。その結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】(参考例)実施例1と同様の方法でTiM
1.5の組成の水素吸蔵合金を得た。これに所定の温度
(10℃および20℃)および所定の圧力下で軽水素および
ジューテリウムをそれぞれ吸蔵させた。吸蔵時の当初の
圧力は、軽水素またはジューテリウムの平衡吸蔵圧力よ
りも対数で0.2だけ高い圧力[log(Pi/Pe)=0.2](Piは
当初の圧力(initial pressure)、Peは平衡時の圧力を
示す)であり、平衡吸蔵圧力よりも対数で0.1だけ高い
圧力[log(Pi/Pe)=0.1]で吸蔵を完了させた。次いで、圧
力を軽水素またはジューテリウムのプラトー圧(平衡圧
を示すグラフがほぼフラットになる領域の圧力をプラト
ー圧という)に保持し、その後、系を開放して大気圧
(1kg/cm2)まで、急激に圧力を下げた後、再び系を閉
じプラトー(平衡)圧まで戻る時間(即ち、放出速度を
示す)を測定した。この時の合金中の含有水素(軽水素
またはジューテリウム)の量を求めた。この吸蔵および
放出を複数回繰り返して行なうと、徐々に放出速度が上
がり、数回でほぼ一定した値となった。本実施例におい
て使用した合金の純度は99.9%以上、そして軽水素およ
びジューテリウムの純度は、それぞれ99.99%以上、お
よび99.9%以上であった。
【0028】上記結果を図2に示す。図2には、吸蔵・
放出の繰り返し数および最大吸蔵量(H/M)max を同
時に示す。図2に示されるグラフは、吸蔵、放出の最終
回において測定された値により示される。図2から軽水
素およびジューテリウムの吸蔵速度を比較すると、同一
温度においては、ジューテリウムの方がやや遅いもの
の、ほとんど差は認められないことがわかる。従って、
吸蔵時の速度の差を利用して、軽水素とジューテリウム
を分離するのは、条件をきわめて厳密にしないと有効に
行うことができない。吸蔵に要する時間も比較的長いと
いう欠点もある。
【0029】しかしながら、H/M(合金1モル中の吸
蔵水素原子数/合金1モルの原子数)=0.5までガスを
吸蔵する速度は約1分(60秒)であるため、他の合金系
と比較するとかなり優れている。
【0030】(実施例6)実施例1と同様の方法で、T
iMn1.5の組成の水素吸蔵合金を得た。これに所定の
温度(25℃および55℃)にて軽水素とジューテリウムの
混合ガス(1:1)を吸蔵平衡圧より高い圧力でTiM
1.5に飽和濃度まで吸蔵させた。その後、一定時間の
間、密閉可能な容器の中に、25℃または55℃で該吸蔵さ
れたガスを、ジューテリウムの平衡放出圧力より低い圧
力で放出した。放出された軽水素ガスの濃度は、印加水
素同位体混合ガス中の軽水素の濃度よりはるかに高く、
軽水素の濃度が60%以上のガスが放出された。合金内部
には高い濃度のジューテリウムが保持された。次に、こ
れを所定時間の間放出することにより、ジューテリウム
温度の高められたガスが得られた。
【0031】上記実験の結果を図1に示す。図1から明
らかなように、55℃において、ガスの放出開始2秒後に
おける軽水素、およびジューテリウムの濃度比(H/
D)は約0.23/0.14=1.64である。このように、吸蔵時
に軽水素とジューテリウムとが同濃度であっても、放出
によって、1.64倍の濃度比の軽水素含量の高いガスが得
られる。
【0032】言い替えれば、55℃において2秒経過した
ときには、TiMn1.5中のジューテリウムは一部しか
放出されておらず、(H/M=0.14 )、残りは依然T
iMn1.5合金中に保持されている。一方、軽水素は同
じ時間でH/M=0.23まで放出されており、合金内部に
吸蔵保持されている量はジューテリウムよりかなり少な
い。得られた軽水素またはジューテリウム含有量が高め
られたガスをそれぞれ用いて、再び上記操作を繰り返す
ことによって、極めて純度の高い所望の水素同位体を得
ることができる。
【0033】一般に、本発明のラーバス相のC14型合
金を用いると、同様の特性が得られる。ジューテリウム
を軽水素から分離・濃縮する際に、吸蔵ガスの放出過程
を使用するのが適当であり、吸蔵時に比べて、約60%以
上の分離効率の上昇が認められた。
【0034】(実施例7)10℃において、軽水素および
ジューテリウム混合ガスを、前記の例と同様に水素吸蔵
合金TiMn1.5に吸蔵させ、その後、合金の温度を20
℃(室温)以上の一定温度(55℃付近)の高温に保持し
て所定秒間放出させると、軽水素を高濃度で含有するガ
スが放出された。これをパージし、次の所定秒間で放出
されるガスを採取すると、このガス中にはジューテリウ
ムの濃度がもとの濃度の70%以上高められたガスが得ら
れた。この操作を繰り返すことによって、ジューテリウ
ムの濃度がさらに高められた。
【0035】(実施例8)本発明の水素吸蔵合金とし
て、ZrMn2.4、Fe0.4およびZrV2を使って、60
℃において、放出速度の差を利用して、軽水素からジュ
ーテリウムの分離を試みた。放出時の経過時間の設定を
3秒、および10秒として、ジューテリウムの分離・濃縮
効果を比べたところ、3秒では10秒の時より効果が高
く、ジューテリウム含有率約2%が一段の濃縮操作で約
5%に高くなった。
【0036】参考例、実施例6および7により得られた
特性図である、図1〜図2では、ほぼ100%濃度の軽水
素またはジューテリウムガスを用いてそれぞれ測定した
結果であるが、混合ガスからの所望の水素同位体を分離
するときの、該分離の工程における設定時間および設定
温度は100%濃度の時と同様でよく、相対的効果は同様
である。
【0037】本発明の種々のタイプの水素吸蔵合金、例
えば、ZrMn2、TiCr2、ZrMo2、およびZr
Fe2についても上記実験を行ったところ、いずれの合
金を用いた場合にも同様の傾向の結果が得られたが、特
にMnまたはVを含有する合金が優れていた。トリチウ
ムについては、その放出曲線が、図1のジューテリウム
の場合よりもさらに遅い方向へずれる。トリチウムにつ
いても全く同様の方法で分離・濃縮が可能である。
【0038】(実施例9) (表2)に示す各種の水素吸蔵合金を作成し、55℃にお
いて、軽水素およびジューテリウムの混合ガス(1:
1)、およびジューテリウムおよびトリチウムの混合ガ
ス(1:1)を50秒間にわたり、所定圧力(kg/cm2)で吸
蔵させた後、所定圧力(kg/cm2)に設定し、2秒間で放出
されるガスの組成を調べた。その結果を(表2)に示
す。
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】以上の実施例の説明からも明らかなよう
に本発明によれば、ラーバス相のC14型結晶構造を有
する水素吸蔵合金を水素同位体分離・濃縮用合金として
用い、所定の温度での水素同位体の平衡吸蔵圧力、平衡
放出圧力の差異を有効に利用することによって、あるい
は水素同位体の放出速度の差異を有効に利用することに
よって、軽水素からジューテリウムやトリチウムを高効
率、無公害で、経済的に分離・濃縮できる。また、この
方法を応用した、安価で、簡便な同位体分離装置を提供
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の水素吸蔵合金であるTiMn
1.5の20℃における軽水素およびジューテリウム平衡圧
力と、吸蔵されている水素の量(合金1分子あたりの水
素原子数で示す)との関係図
【図2】同30℃における関係図
【図3】本発明の実施例の水素吸蔵合金であるTiMn
1.5を用いたときの軽水素およびジューテリウムの温度
と平衡吸蔵圧力との関係図および温度と平衡放出圧力と
の関係図
【図4】同水素吸蔵合金TiMn1.5の所定温度におけ
る軽水素およびジューテリウムの放出速度を示す図
【図5】同水素吸蔵合金であるTiMn1.5の所定温度
における軽水素およびジューテリウムの吸蔵温度を示す
関係図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 羽藤 一仁 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ラーバス相のC14型結晶構造を有する合
    金でなり、複数の水素同位体の各々の平衡吸蔵圧力差も
    しくは複数の水素同位体の各々の平衡吸蔵圧力差もしく
    は平衡放出圧力差により、圧力の変化に応じて順次各水
    素同位体を吸蔵もしくは放出し得る水素吸蔵合金。
  2. 【請求項2】式 ABα で示される請求項1記載の水素
    吸蔵合金。ただし、Aは、Ti,Zr,およびHfでな
    る群から選択される少なくとも1種の元素であり、B
    は、Mn,V,Fe,Ni,Cr,Co,Cu,Zn,
    Al,Si,Nb,Mo,W,Mg,Ca,Y,Ta,
    Pd,Ag,Au,Cd,In,Sn,Bi,La,C
    e,Mm(Mmはミッシュメタルを示す)、Pr,N
    d,Th,およびSmでなる群から選択される少なくと
    も1種の元素であり、そしてαは1.5から2.5の数であ
    る。
  3. 【請求項3】格子定数aが4.75〜4.90オングス
    トロームであり、bが7.85〜8.10オングストロ
    ームである、請求項1記載の水素吸蔵合金。
  4. 【請求項4】前記AがTiまたはZrである請求項2記
    載の水素吸蔵合金。
  5. 【請求項5】Ti−Mn系合金である請求項2に記載の
    水素吸蔵合金。
  6. 【請求項6】(a工程)所定の温度において、軽水素と
    重水素との混合ガスを、軽水系の平衡吸蔵圧力よりも低
    く、かつ重水素の平衡吸蔵圧力よりも高い圧力で請求項
    1の水素吸蔵合金に接触させて、該重水素を請求項1記
    載の水素吸蔵合金に吸蔵させる工程。 (b工程)前記系内に存在する軽水素を該系より分離す
    る工程。 (c工程)前記系の圧力を重水素の平衡放出圧力よりも
    低い圧力に設定して、前記重水素を前記水素吸蔵合金か
    ら放出させる工程。 を有することを特徴とする軽水素と重水素の分離方法。
  7. 【請求項7】請求項6において(b工程)または(c工
    程)で得られるガスを用い、再び(a工程)から(c工
    程)の工程を繰り返して行うことを特徴とする軽水素と
    重水素の分離方法。
  8. 【請求項8】請求項6において、前記重水素がジューテ
    リウムとトリチウムの混合物であり、さらに (d工程)前記(c)工程で得られるジューテリウムと
    トリチウムとの混合ガスを、所定の温度でかつジューテ
    リウムの平衡吸蔵圧力よりも低く、かつトリチウム平衡
    吸蔵圧力よりも高い圧力で請求項1の水素吸蔵合金に接
    触させて、前記トリチウムを該水素吸蔵合金に吸蔵させ
    る工程 (e工程)系内に存在するジューテリウムを前記系より
    分離する工程 (f工程)系の圧力をトリチウムの平衡放出圧力よりも
    低い圧力に設定して、前記トリチウムを前記水素吸蔵合
    金から放出させる工程 を有することを特徴とする軽水素と重水素の分離方法。
  9. 【請求項9】請求項6において、軽水素の分離工程は系
    の圧力を軽水素の平衡放出圧力よりも低く、かつ重水素
    の平衡放出圧力よりも高い圧力に設定して、軽水素を放
    出させてこれを分離するものであることを特徴とする軽
    水素と重水素の分離方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100368635B1 (ko) * 1997-07-04 2003-03-26 유인석 백금미세분말표면에서의흡착/광탈착현상을이용한중수소의분리와중수제조방법
JPWO2016158549A1 (ja) * 2015-03-31 2018-02-01 国立大学法人信州大学 重水素低減水の製造方法、重水と軽水の分離方法、および重水素濃縮水の製造方法

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