JPH05148542A - 脆性破壊伝播停止特性の優れた溶接用構造用鋼板とその製造方法 - Google Patents

脆性破壊伝播停止特性の優れた溶接用構造用鋼板とその製造方法

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JPH05148542A
JPH05148542A JP3315650A JP31565091A JPH05148542A JP H05148542 A JPH05148542 A JP H05148542A JP 3315650 A JP3315650 A JP 3315650A JP 31565091 A JP31565091 A JP 31565091A JP H05148542 A JPH05148542 A JP H05148542A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 表層から少なくとも0.1mm以上の範囲を超
細粒化し且つ集合組織を発達させることにより脆性破壊
伝播停止特性であるKca特性とNDT特性を両立させ
る鋼板を生産性よく経済的に製造する。 【構成】 表層部から少なくとも0.1mm以上の範囲に
わたって平均円相当径で3μm以下のフェライト粒から
なり、且つそのフェライト粒の同一結晶方位を有する集
合組織のコロニーのアスペクト比(長径/短径の比)が
4以上の組織により構成されることを特徴とする鋼板及
び鋼片もしくは鋼板を、最終製品板厚をt、圧延中途中
水冷時の板厚をt0 とした時、表層から少なくとも板厚
方向に0.1×t0 /t(mm)以上の領域を急冷して、
その後、当該表層部がAc3 以下の温度から圧延を開始
もしくは再開し、(Ac3 −150)℃からAc3 ℃の
範囲で圧延を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、脆性破壊伝播停止特性
の優れた溶接用構造用鋼板とその製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】脆性破壊伝播停止(アレスト)性能を向
上させる手段として、未再結晶域で十分に圧下する製造
方法、あるいは、積極的に脆性破壊を生じ易い第二相粒
子を分散させて脆性亀裂先端にマイクロクラックを多数
発生せしめ亀裂先端の応力状態を緩和させ、且つマイク
ロクラックと主亀裂間の合体時に生じる延性破壊により
亀裂停止を容易にさせる方法が提案されている。
【0003】しかし、それらの提案は、板厚中心部の組
織を改質し、脆性亀裂伝播停止性能を向上させるもので
あり、板厚表層部の組織で主として決定される落重試験
におけるNDT特性を必ずしも向上させるものではな
い。一方、亀裂伝播の形態により、板厚中心部の特性や
表層部の特性が必要であり、同時に両者を満足すること
が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、製造コスト
を大きく上昇させる高価なNi元素等を添加することな
く、Kca特性とNDT特性を両立させる鋼板及びその
製造方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、表層か
ら少なくとも0.1mm以上の範囲にわたり、平均円相当
径で3μm以下のフェライト粒からなり、且つそのフェ
ライト粒の同一結晶方位を有する集合組織のコロニーの
アスペクト比(長径/短径の比)が4以上の組織により
構成される脆性破壊伝播停止特性の優れた溶接用構造用
鋼板である。
【0006】更に本発明は、鋼片もしくは鋼板を、最終
製品板厚をt、圧延中途中水冷時の板厚をt0 とした
時、表層から少なくとも板厚方向に0.1×t0 /t
(mm)以上の領域を急冷して、その後、当該表層部がA
3 以下の温度から圧延を開始もしくは再開し、圧延終
了温度を(Ac3 −150)℃からAc3 ℃の範囲とし
て、表層部から少なくとも0.1mm以上の範囲にわたっ
て平均円相当径で3μm以下のフェライト粒からなり、
且つそのフェライト粒の同一結晶方位を有する集合組織
のコロニーのアスペクト比(長径/短径の比)が4以上
の組織をうる脆性破壊伝播停止特性の優れた溶接用構造
用鋼板の製造方法である。
【0007】更に本発明は上記製造方法において、圧延
終了後冷却速度が5℃/sec 以上で加速冷却し、必要に
応じて550℃以下で焼戻し熱処理を適用するものであ
る。本発明において、対象とする構造用鋼は、例えば特
公昭58−14849号公報に記載され、次記するよう
に、通常の構造用鋼が所要の材質を得るために、従来か
ら当業分野での活用で確認されている作用・効果の関係
を基に定めている添加元素の種類と量を同様に使用して
同等の作用と効果が得られる。従ってこれ等の元素を含
む鋼を本発明は対象鋼とするものである。
【0008】これ等の各成分元素とその添加理由は以下
の通りである。Cは鋼の強度を向上する有効な成分とし
て0.02%以上含有するものであるが、0.20%を
超える過剰な含有量では、2相域圧延時の変形抵抗を増
して圧延を困難にするばかりか、溶接部に島状マルテン
サイトを析出し、鋼の靭性を著しく劣化させるので、
0.02%〜0.20%に規制する。
【0009】Siは溶鋼の脱酸元素として必要であり、
且つ強度増加元素として有用であるが、1.0%を超え
ると鋼の加工性が低下し、溶接部の靭性が劣化し、0.
01%未満では脱酸効果が不十分なため、0.01〜
1.0%に規制する。
【0010】Mnは鋼材の強度を向上する成分として
0.3%以上の含有量が必要であるが、Mnは変態温度
を下げるので、過剰の含有量は2相域圧延温度を下げ過
ぎ変形抵抗が上昇するので2.0%を上限とする。
【0011】Al及びNはAl窒化物による鋼の微細化
の他、圧延過程での固溶、析出による鋼の結晶方位の整
合及び再結晶のために添加するが、添加量が少ない時は
効果がなく、過剰の添加は鋼の靭性を劣化させるので、
Alは0.001〜0.20%に、Nは0.020%以
下とする。
【0012】以上が本発明が対象とする鋼の基本成分で
あるが、母材強度の上昇或いは、継手靭性の向上の目的
のため、要求される性質に応じて、合金元素を添加する
場合は、変態温度を下げ過ぎると2相域での変形抵抗が
増し、圧延が困難になるので、添加する合金としてはN
i,Cr,Mo,Cu,W,P,Co,V,Nb,T
i,Zr,Ta,Hf,希土類元素,Y,Ca,Mg,
Te,Se,Bの1種類以上が使用できるが、その添加
量は合計で4.5%以下に規制する。
【0013】本発明者らは前記従来技術が有する課題を
解決するために、一般的な構造用鋼を用いて種々の実験
・検討を繰り返した。その過程で、Kca特性が優れて
いるにもかかわらずNDT特性が悪いのは、鋼板表層の
極限られた領域の組織に起因することを突き止め、鋼板
表面の組織を改質するだけでNDT特性とKca特性を
容易に両立しうる可能性を見いだした。
【0014】本発明者らは更に表層組織がNDT特性に
及ぼす影響の定量化、極表層組織の改質方法を検討する
ため、C:0.02〜0.15%、Si:0.15〜
0.25%、Mn:0.8〜1.6%、Al:0.01
〜0.05%を有する一般的な構造用鋼を用いて、種々
の実験を行った。
【0015】Kca特性を向上させるために、未再結晶
域圧延を60%以上実施した鋼板のKca特性とNDT
特性を調査したところ、Kca値が600kgf/mm1.5
以上の性能を示す温度でも落重試験では破断の結果を示
し、NDT温度はそれよりも高温側となった。
【0016】この実験結果を詳細に調べた結果、未再結
晶温度域圧延中に鋼板表面の温度はAr3 点以下とな
り、一部変態したフェライトが圧延により歪を受けて加
工フェライトとなり、且つ一部の加工フェライトは圧延
によって得られた歪エネルギーを駆動力として異常粒成
長を起し、加工フェライト+異常粗粒フェライトのきわ
めて靭性の劣化した組織が表層部に生成したためである
ことを知見した。
【0017】そこで、この靭性劣化相を表面研削し、こ
の靭性劣化相がNDT特性劣化に及ぼす影響を定量化し
た。その結果を図1に示す。靭性劣化相が0.1mmでも
存在するとNDT特性は劣化することが明らかとなり、
NDT特性を向上させるためには表層の0.1mmレベル
の極限られた組織の改質がきわめて重要であることを知
見した。
【0018】ところが、Kca特性を向上させるために
は、低温域での圧延が重要であり、その結果として鋼板
表面の温度がより低温化してかような靭性劣化相が形成
してしまうのである。そこで、圧延中に鋼板表面を水冷
し、Ar1 点以下とすることで一旦フェライト変態させ
てしまい、冷却によっても殆ど温度の低下しない板厚中
心部の顕熱を利用して、表層部のフェライト組織を昇温
させながら更に圧延を行い、表層部のみ3μm以下の超
細粒組織として、その表層改質組織の厚みを表面研削し
ながら変化させ、NDT特性とその厚みの関係を定量化
した。
【0019】その結果を図2に示す。表層改質組織が
0.1mm以上あればNDT特性は10℃以上向上し、且
つ2mm以上あってもその結果は殆ど変わらないことが明
らかとなった。
【0020】この表層改質組織は、粒径が3μm以下と
細粒な上、集合組織が発達しているので容易にセパレー
ションを生じるために塑性域の小さな低温域でも脆性破
壊しない組織である。この集合組織の存在を規定するも
のとして、結晶方位によって酸化皮膜の厚みの変化を利
用したテンパーカラー法を適用して同一結晶方位を有す
るコロニーを現出させ、そのアスペクト比(長径/短径
の比)と板厚方向の限界破壊応力を評価し、アスペクト
比が4以上であればセパレーション発生させるのに必要
な板厚方向の限界破壊応力の低下を実現しうることを見
いだした。この時、板厚内部は未再結晶域圧延温度で圧
延されるので十分なKca特性が確保できた。
【0021】このことから、NDT特性とKca特性を
両立させる鋼板としては、表層から少なくとも0.1mm
以上、2mmまでを平均円相当径が3μm以下のフェライ
ト粒からなり、且つそのフェライト粒の同一結晶方位を
有する集合組織のコロニーのアスペクト比(長径/短径
の比)が4以上の組織を達成すればよいことを見いだし
た。
【0022】
【実施例】実施例の供試鋼の成分を表1に、製造条件及
び得られた材質を表2に比較例と共に示す。
【0023】
【表1】
【表2】
【表3】 本発明例の試験番号1〜12及び比較例の試験番号2
1,22,24は、粗圧延後に冷却を適用し、鋼板表層
部をAr1 点以下にしてフェライト変態させたものであ
るが、比較例の試験番号21,22は、冷却速度が遅か
ったため、鋼板全体の温度が低下し、冷却後の圧延が昇
温加工とはならなかった。また、比較例の試験番号24
は、冷却後経過時間が長すぎて冷却後の圧延の所要条件
を満たすことができなかった。その為、比較例である試
験番号21,22,24の表層部の組織は細粒化しなか
った。
【0024】これらの比較例の材質は、板厚全体が二相
域圧延となってしまい、母材靭性であるvTrsも劣化
し、NDT特性、アレスト特性ともに劣化した。また、
比較例の試験番号13〜20,23は、いずれも粗圧延
後の冷却は実施しておらず、仕上げ圧延温度が板厚平均
でAr3 点直上を狙っていたため、表面の温度はAr3
点以下となり、ここでの圧延によりフェライトの異常粒
成長が生じ、その結果表層部のフェライト粒が粗大化し
た。
【0025】従って、これらの比較例である試験番号1
3〜20,23は仕上げ圧延により板厚中央部の組織は
細粒化してアレスト性能としてKca=600kgf/mm
1.5 を示す温度は−50℃と良好なものの、NDT特性
は−60℃に達していない。これに対し、本発明例の試
験番号1〜12の材質は、表2に示す通り、所要の製造
条件を満足し、目標の強度・靭性を満足すると共に、本
発明の狙いであるNDT温度が−60℃以上を示し、ア
レスト性能であるKca=600kgf/mm1. 5 を示す温
度も十分な特性であった。
【0026】
【発明の効果】本発明は上記した手段を用いて上記した
作用を利用したので、粗圧延後、表層部のみ冷却してA
1 点以下とした後板厚内部の顕熱により復熱しながら
圧延を実施すれば、NDT特性を劣化させる表層部の脆
化組織を生成させることなく、板厚中心部に十分な未再
結晶域圧延を実施したため、アレスト性能であるNDT
特性とKca特性を両立することを可能とするもので、
その工業的効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は加工フェライト及び粗粒フェライトを
含有する組織の存在する靭性劣化相の表層からの厚み
と、当該靭性劣化相によるNDT温度の劣化代の図表で
ある。(b)は靭性劣化相の模式図である。
【図2】フェライト粒が3μm以下で集合組織コロニー
のアスペクト比が4以上の組織からなる表層改質相の厚
みと、NDT特性の向上代の図表である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉川 宏 大分県大分市大字西ノ洲1番地 新日本製 鐵株式会社大分製鐵所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表層から少なくとも0.1mm以上の範囲
    にわたり平均円相当径で3μm以下のフェライト粒から
    なり、且つそのフェライト粒の同一結晶方位を有する集
    合組織のコロニーのアスペクト比(長径/短径の比)が
    4以上の組織により構成されることを特徴とする脆性破
    壊伝播停止特性の優れた溶接用構造用鋼板。
  2. 【請求項2】 鋼片もしくは鋼板を、最終製品板厚を
    t、圧延中途中水冷時の板厚をt0 とした時、表層から
    少なくとも板厚方向に0.1×t0/t(mm)以上の領
    域を急冷して、その後、当該表層部がAc3以下の温度
    から圧延を開始もしくは再開し、圧延終了温度を(Ac
    3 −150)℃からAc3 ℃の範囲として、表層部から
    少なくとも0.1mm以上の範囲にわたって平均円相当径
    で3μm以下のフェライト粒径からなり、且つそのフェ
    ライト粒径の同一結晶方位を有する集合組織のコロニー
    のアスペクト比(長径/短径の比)が4以上の組織をう
    ることを特徴とする脆性破壊伝播停止特性の優れた溶接
    用構造用鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 圧延終了後冷却速度が5℃/sec 以上で
    加速冷却することを特徴とする請求項2記載の脆性破壊
    伝播停止特性の優れた溶接用構造用鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 圧延終了後冷却速度が5℃/sec 以上で
    加速冷却し、更に焼戻し熱処理をすることを特徴とする
    請求項2記載の脆性破壊伝播停止特性の優れた溶接用構
    造用鋼板の製造方法。
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