JPH05117759A - 面内異方性の小さい高r値冷延鋼板の製造法 - Google Patents

面内異方性の小さい高r値冷延鋼板の製造法

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JPH05117759A
JPH05117759A JP30691691A JP30691691A JPH05117759A JP H05117759 A JPH05117759 A JP H05117759A JP 30691691 A JP30691691 A JP 30691691A JP 30691691 A JP30691691 A JP 30691691A JP H05117759 A JPH05117759 A JP H05117759A
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常昭 長道
Kazutoshi Kunishige
和俊 国重
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 優れた加工性を示す面内異方性の小さい高r
値冷延鋼板を工業規模で安定製造し得る手段を確立す
る。 【構成】 C≦0.05%,Si≦ 0.3%,Mn:0.01〜 0.4
%,S≦0.02%,sol.Al:0.01〜0.08%,N≦0.01%を
含有するか、或いは更にTi,Nb,Zr及びVの1種以上:
合計で 0.015〜 0.350%, B:0.0001〜0.0050% の
うちの1種以上をも「〔C当量〕−〔Ti当量/4〕≦
0.0020 」を満たす割合で含む熱鋼片を、 少なくと
も、 a) γ域で最終パス圧下率:30%以上の圧延を行っ
てから冷却する,b) Ar3点を下回る温度域で合計圧下
率30%以上の圧延を行う, c) γ域へ再度急速加熱して
α→γ逆変態を生じさせる, d) γ域から冷却して合計
圧下率:50〜97%の冷間圧延を行う, e) 550〜90
0℃の温度で再結晶焼鈍を行う,なる処理を含む工程で
順次加工・熱処理する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、面内異方性が小さ
く、かつ高ランクフォ−ド値(r値)を示す深絞り性に
優れた冷延鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】冷延鋼板は、一般に熱間圧延に
よって得られた熱延鋼板を素材とし、これに冷間圧延及
び再結晶焼鈍を施して製造されており、例えば自動車や
家電製品等の外装材といった加工性が強く求められる分
野で多用されている。
【0003】ところで、面内異方性が小さくて高r値の
加工性が良好な冷延鋼板を得るためには、再結晶処理後
のフェライト(以降“α”と略示する)において{11
1}集合組織を発達させることが望ましいとされてい
る。なお、前記{111}集合組織はα粒界の近傍から
生じるため、{111}集合組織を円滑に発達させるに
は、熱延時の変態により生じるα粒径を小さくしてα粒
界面積を大きくすることが必要であった。つまり、冷延
鋼板の加工性は素材たる熱延鋼板の組織に大きく依存す
るものであった。
【0004】そこで、高加工性冷延鋼板の実現につなが
る“α粒径の小さな熱延鋼板”を製造するための試みと
して、鋼をオ−ステナイト(以降“γ”と略示する)域
で仕上げ圧延した後に急冷し、これによりγ→α変態後
のα粒を細粒化しようとした試験の結果も報告されてい
る{「CAMP−ISIJ」Vol.3(1990),第785〜
786頁}。
【0005】確かに、上記方法によると比較的微細なα
粒組織を有した熱延鋼板を得ることができるが、それで
もα粒の細粒化には限界があり、例えばα粒径が10μ
mを下回るほどに微細化された均一組織を得ることは困
難であった。そのため、これを素材とした冷延鋼板に対
し、全体の面内異方性(0°,45°,90°の各方向のr
値であるr0,r45,r90 のうちの最大値たるrmax と最小
値たるrmin との差)を小さくし、高くて均一なr値を
安定して付与するまでには至っていなかった。
【0006】これは、α粒の粒径は結局は変態前のγ粒
の大きさに大きく影響されることによるものと考えら
れ、最近では、α粒の更なる微細化のためには変態前の
γ粒の微細化も欠かせないとされるようになってきた。
【0007】現在、長年にわたって研究され築かれてき
た“γ粒の微細化手段”として、イ ) 制御圧延,ロ ) 大圧下圧延(例えば特開昭62−253733号公
報,特開昭63−145720号公報を参照)等の組織
微細化技術が知られている。しかしながら、これら各技
術にも次のような問題が指摘された。
【0008】即ち、制御圧延技術の場合は、“制御圧
延”という熱間加工によって作り出されるγ粒はある程
度まで微細になると実際上もはやそれ以上に微細化する
ことができず、そのため制御圧延のみでは、やはり“前
記γ粒から変態するαの粒径が10μm程度の均一な微
細組織”を得ることさえ困難であった。
【0009】一方、大圧下圧延による組織微細化技術
は、γ未再結晶温度域で1パス当りの圧下率30%以上
の大圧下を加えてγ粒を“変形帯を粒内に含む加工硬化
γ”とし、その後γ→α変態を生じさせて組織の微細化
を図るものであるが、この方法での“γ→α変態前のγ
粒”は大圧下圧延により単に伸長しているだけで等方的
な微細粒となっていないことから、微細α組織実現の前
提としてのγ組織の微細化に限界があり、そのため変態
後のα粒径が例えば5μmを下回るほどの均一微細組織
を実現することは叶わなかった。
【0010】上述のように、冷延鋼板の深絞り性を向上
させるのに必要な{111}集合組織を発達させるべく
熱延時の変態によって生じるα粒径を小さくしように
も、従来技術では限界があり、従ってこれが内面異方性
の小さい高r値冷延鋼板を製造する上での大きな障害に
なっていると考えられた。
【0011】このようなことから、本発明が目的とした
のは、従来法では実現が困難であった熱延段階での“超
微細均一組織”を安定して現出させ、これを基に優れた
加工性を示す面内異方性の小さい高r値冷延鋼板を工業
規模で安定製造し得る手段を確立することであった。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成すべく様々な観点に立って鋭意研究を重ねた結
果、次のような知見を得ることができた。 A) C含有量が0.05%以下(以降、 成分割合を表わす%
は重量%とする)でN含有量が0.01%以下の低炭素アル
ミキルド鋼、又はこれに更にTi,Nb,Zr,Vの1種以上
を添加した低炭素アルミキルド鋼の連続鋳造鋳片又はイ
ンゴット等(以降“熱鋼片”と総称する)を素材とし、
γ温度域で一旦これに所定圧下率の圧延を施してから冷
却することでαを含む組織を前以って現出して置き、こ
の組織に所定圧下率の圧延を施した後に急速昇温してα
をγへと逆変態させると、現れるγ組織は従来の圧延等
では到底得られないような超微細均一組織となる,
【0013】B) そこで、この超微細均一γ組織をその
まま冷却するか、或いはこれを更に再結晶が生じない程
度に圧延してから冷却すると、変態生成するαは超微細
γ組織を出発組織としているために極めて微細なものと
なり、従来は実現が極めて困難であった“α粒径10μ
mを遥かに下回る等方的な均一微細組織”が得られる,
【0014】C) そして、この微細α粒組織を有した鋼
板を冷間圧延した後に再結晶処理すると{111}集合
組織が十分に発達し、面内異方性が小さくr値の高い冷
延鋼板を安定して得ることができる。
【0015】本発明は、上記知見事項等を基にして完成
されたものであり、「C:0.05%以下, Si: 0.3%
以下, Mn:0.01〜 0.4% S:0.02%以下, sol.Al:0.01〜0.08%, N:0.
01%以下を含有するか、 或いは更にTi,Nb,Zr及びVの
1種以上:合計で 0.015〜 0.350%,B:0.0001〜0.00
50% のうちの1種以上をも 〔C当量〕−〔Ti当量/4〕≦ 0.0020 を満たす割合で含み、 残部がFe及び不可避的不純物から
成る熱鋼片を、 少なくとも a) Ar3点以上の温度域で最終パス圧下率が30%以上
の圧延を行ってから冷却する, b) Ar3点を下回る温度域で合計圧下率30%以上の圧
延を行う, c) Ac3点〜〔Ac3点+100℃〕の温度域まで5℃/s
以上の加熱速度で昇温し、 フェライトからオ−ステナイ
トへの逆変態を生じさせる, d) 該オ−ステナイト相温度域から冷却し、 合計圧下率
が50〜97%の冷間圧延を行う, e) 550〜900℃の温度で再結晶焼鈍を行う,なる
処理を含む工程で順次加工・熱処理することにより、 面
内異方性の小さい高r値冷延鋼板を安定して製造し得る
ようにした点」に大きな特徴を有している。
【0016】
【作用】以下、本発明において素材鋼の成分組成及び加
工・熱処理条件を前記の如くに限定した理由を、その作
用効果と共に具体的に説明する。
【0017】〈素材鋼の成分組成〉 Cは鋼板の深絞り性に悪影響を及ぼす元素であるため、
その含有量は少ない方が望ましい。そして、特にC含有
量が0.05%を超えると深絞り性の劣化が著しくなること
から、その含有量は0.05%以下と限定した。
【0018】Si Siも鋼板の深絞り性に悪影響を及ぼす元素であるため可
及的に少ない方が好ましい。特に、Si含有量が 0.3%を
超えると深絞り性が劣化が著しくなるのみならず、スケ
−ル性状も劣化して製品品質を損なうようになることか
ら、その含有量は 0.3%以下と限定した。
【0019】Mn Mnには鋼板の靭性を改善する作用があるが、その含有量
が0.01%未満では前記作用による効果が十分でなくて熱
間脆性が発生するようになり、一方、 0.4%を超えて含
有させると深絞り性が著しく劣化することから、Mn含有
量は0.01〜 0.4%と定めた。
【0020】 Sは低ければ低いほど鋼板の深絞り性が向上するが、0.
02%程度にまで低減されるとその悪影響はそれほど顕著
ではなくなることから、S含有量は0.02%以下と定め
た。
【0021】sol.Al Alは脱酸及び炭窒化物形成元素の歩留向上のために添加
されるが、その含有量がsol.Al量で0.01%よりも低いと
前記作用効果が十分に得られず、一方、0.08%を超えて
含有させても効果が飽和して不経済となることから、Al
含有量はsol.Al量で0.01〜0.08%と定めた。
【0022】 N含有量は低ければ低いほど炭窒化物形成元素の添加量
が少なくて済むので好ましい。特に、その含有量が0.01
%を超えた場合には炭窒化物形成元素を添加しても鋼板
のr値低下が避けられないことから、N含有量は0.01%
以下と定めた。
【0023】Ti,Nb,Zr及びV これらの成分には、何れも炭窒化物を形成することで固
溶C,Nを減少させると共に、その析出物によって結晶
粒を適度に微細化する作用があるので、必要により単独
又は複合で添加される。しかし、これらの合計含有量が
0.015%よりも少ないと前記作用による所望の効果が得
られず、一方、合計含有量が0.350%よりも多いと強度
が上昇し過ぎて加工用の鋼板として適さなくなると共
に、経済的にも不利となる。従って、これら成分の含有
量は合計で 0.015〜 0.350%と定めた。
【0024】また、式「〔C当量〕−〔Ti当量/4〕≦
0.0020」は固溶C,Nを0.0020%以下とし、残りの
C,Nを炭窒化物として析出させるための関係を示した
ものであって、「〔C当量〕−〔Ti当量/4〕」の値が
0.0020を超えると固溶C,Nが多くなるため{111}
再結晶集合組織が発達せず、鋼板の深絞り性が劣化する
ようになる。
【0025】 Bは、絞り加工部品で問題となる“縦割れ”を防止する
作用を有しているので必要により添加されるが、その含
有量が0.0001%未満では前記作用による所望の効果が得
られず、一方、0.0050%を超えて含有させてもその効果
は飽和してしまい経済的に不利となることから、B含有
量は0.0001〜0.0050%と定めた。
【0026】〈加工・熱処理条件〉熱間圧延に供される
上記成分組成の素材鋼片は、連続鋳造により製造された
ものであっても良く、インゴットから分解圧延により製
造されたものであっても良い。また、素材鋼片は連続鋳
造又は分塊圧延後の冷鋼片を所定温度に加熱してから熱
間圧延に供しても良いし、“直送圧延”と称される「連
続鋳造又は分塊圧延のラインから高温のまま送られてく
る鋼片をそのまま、 或いは多少の補助加熱を施して熱間
圧延に供する方法」を採用しても良い。
【0027】(a) Ar3点以上の温度域にて最終パス圧下
率:30%以上で行う圧延 連続鋳造或いはインゴット鋳造した熱鋼片は、そのまま
Ar3点よりも低い温度に冷却したのでは、その後に逆変
態を起こさせても所望の均一微細組織を得られない恐れ
がある。しかしながら、上記熱鋼片に最終パスの圧延が
Ar3点以上の温度域でかつ30%以上の圧下率となる圧
延を施すことによってγ粒を再結晶により微細化し、同
時にγ粒に加工歪を導入すると、α粒の析出サイトが増
加して次の冷却過程で微細なα粒を実現することができ
る。なお、圧延に供する上記熱鋼片は、連続鋳造或いは
インゴット鋳造したものを冷却しないでそのまま使用し
ても良いが、一旦加熱炉へ挿入して再加熱したものを使
用しても良い。
【0028】上記圧延での最終パスの圧下率が30%未
満であるとγが再結晶粒化しないばかりか加工歪も小さ
いため、次の加工工程でα粒が微細化しない。従って、
最終パスの圧下率は30%以上と限定したが、出来れば
45%以上とするのが好ましい。また、最終パスの圧延
がAr3点より低い温度になるとα相が混合するようにな
り、加工歪が柔らかいα相に集中してγ相に加工歪が蓄
積されず、そのため次の冷却工程でγ→α変態により生
成するα粒が微細化されない。この一次圧延は1パス以
上実施し、そのうちの最終パスを上記の条件で行うよう
にするのが良い。勿論、最終パス前の圧延は特に条件を
限定する必要はなく、通常の圧延でも構わない。
【0029】(b) Ar3点を下回る温度域に冷却して実施
する圧延 熱鋼片を一旦Ar3点よりも低い温度域に冷却して圧延を
行うのは、本発明法が“αを含む組織に塑性加工を加え
てからα相をγ相に逆変態させること”を主要な要件と
しているからであり、そのためには一旦α相を生成させ
ることが必要となる。この際の冷却温度についてはAr3
点を下回れば格別に制限されないが、現実的な操業性の
面からするとAr3点未満近傍のなるべく高温の領域、即
ち「Ar3点〜〔Ar3点−100℃〕」の範囲の温度とす
るのが好ましいと言える。しかしながら、αを含む組織
に塑性加工を加えてからα相をγ相に逆変態させるに当
っては、塑性加工時におけるα相の体積率が多いほど逆
変態後のγ粒が微細になることから、製品性能面よりα
相の体積率を増大させるべく前記冷却温度はAr1点以下
とするのが望ましい。
【0030】そして、Ar3点を下回る温度域で行う圧延
加工の合計圧下率を30%以上としたのは、この際の圧
下率が30%以上となった場合に初めて逆変態による微
細γ粒の安定形成が達成できるからである。
【0031】即ち、Ar3点を下回る温度域で圧延加工す
ると、この圧延によりαが加工硬化してγへの逆変態核
が増加する。そして、この逆変態核の数が極度に多けれ
ばその後のγ域への急速昇温で極めて微細なγ粒が生成
する。しかるに、上記逆変態核の数は圧下率が合計で3
0%以上となった時に初めて顕著な急増傾向を示し、所
望の超微細γ粒の安定生成が叶うようになることから、
Ar3点を下回る温度域での合計圧下率は30%以上と定
めたが、出来れば50%以上とするのが望ましい。
【0032】(c) Ac3点〜〔Ac3点+100℃〕の温度
域への昇温 Ac3点以上に昇温するのは「加工硬化したαから逆変態
により非常に微細なγ粒が生成する」という本発明に係
わる方法での特徴的な作用・効果を十分に発揮させるた
めである。この場合、昇温温度の上限を〔Ac3点+10
0℃〕としたのは、この温度を超えて昇温するとγが粒
成長して最終的に所望の均一超微細組織鋼板が得られ
ず、従って所望の加工性及び強度を確保することができ
なくなることによる。
【0033】そして、Ac3点〜〔Ac3点+100℃〕の
温度域にまで昇温する際の加熱速度が5℃/s未満である
と、逆変態核導入の原因になる加工による歪がα→γ逆
変態に先立って解放されてしまい、所望の微細γ粒組織
を実現できなくなる。このため、上記加熱速度を5℃/s
以上と定めた。なお、昇温の手段としては“加工熱の利
用”又は“外部からの積極的加熱(通電加熱等)"、或い
は両者の併用等、何れの方法を採用しても良い。
【0034】(d) γ相温度域から冷却して実施する冷間
圧延 γ相温度域に急速加熱して逆変態を起こさせた鋼は、そ
の後の冷却により等方的で均一超微細なα組織とされ、
更に冷間圧延が施されるが、好ましくは上記冷却に先立
ってγ相温度域で合計圧下率50%以下の圧延を行うの
が良い。なぜなら、γ相温度域にて圧延を施すと逆変態
により生じるγ粒は更に微細化し、その後の冷却によっ
て生成するα含有組織も一層微細化されるので、その特
性が一段と向上するからである。この場合、γ相温度域
での圧延は上述のように合計圧下率で50%以下(好ま
しくは30%以下)の圧下に止めて置くのが望ましい。
これは、合計圧下率が50%を超えるとγが再結晶・粒
成長してしまい、その後の冷却によって生成するαが十
分に微細化しないからである。
【0035】なお、γ相温度域からの冷却は、Ar3点〜
〔Ar3点−150℃〕の温度域を5℃/s以上の冷却速度
で冷却することが望ましい。これによって、γ域での加
工により微細化されかつ加工歪が蓄積したγから多数の
α核を生じさせ、微細なα粒を得ることができる。この
ように、次工程の冷間圧延前にα粒を微細化することに
よりα粒界の面積を増加することができ、α粒界から生
じてr値の向上に好ましい{111}再結晶集合組織を
十分に発達させることができる。そして、上記条件で冷
却することによって、ASTMの粒度番号で11以上の
微細なα粒が得られる。
【0036】ところで、“前記 (a)項で説明した圧延",
"前記 (b)及び (c)項で説明した圧延・処理" 並びに
“逆変態時にγ相温度域で行う上記圧延”を熱間圧延ラ
インの何処で行うかについては制約はないが、“前記
(a)項で説明した圧延" は粗圧延工程で、その後の圧延
及び処理は仕上げ圧延工程で行うのが設備上有利であ
る。
【0037】γ相温度域からの冷却の後は、合計圧下
率:50〜97%の冷間圧延が施されて最終板厚とされ
るが、この冷間圧延の狙いは「圧延集合組織を発達さ
せ、 次の再結晶焼鈍工程においてr値を向上させること
と、 面内異方性の最小化に好ましい{111}集合組織
を発達させること」にある。なお、この冷間圧延におけ
る合計圧下率が50%を下回る場合或いは97%を上回
る場合には、再結晶焼鈍を行っても{111}集合組織
が発達しない。
【0038】(e) 再結晶焼鈍 再結晶焼鈍は、αの集合組織を制御して深絞り性に優れ
た冷延鋼板を製造する上で不可欠な工程である。そのた
めには、550〜900℃の温度範囲で焼鈍を行い、α
を再結晶させるのが望ましい。550℃より低い温度で
は長時間の焼鈍であるバッチ焼鈍でも再結晶が十分に生
ぜず、900℃を超える温度ではγ化が著しく進行して
所望のαの再結晶集合組織制御が困難となる。再結晶焼
鈍の実施方法については特に制限はなく、例えば通常の
連続焼鈍プロセス,バッチ焼鈍プロセス等の何れによっ
ても差支えはない。なお、再結晶焼鈍後に行われるスキ
ンパス圧下時には、補助的に10%未満の圧下を加えて
も良い。
【0039】次いで、本発明を実施例によって更に具体
的に説明する。
【実施例】50kg真空溶解炉で表1に示す化学組成のア
ルミキルド鋼を溶製した後、これを鋳造して60mm厚の
スラブとした。続いて、これらのスラブを表2に示す条
件で熱間圧延し、冷却して巻取った。そして、巻取り後
の熱延鋼板を酸洗し、冷間圧延を施してから、「800
℃×2min の連続焼鈍(処理イ)」又は「750℃×5
hrのバッチ焼鈍(処理ロ)」により再結晶処理を行っ
た。
【0040】このようにして得られた冷延鋼板から試験
片を採取し、“降伏強さ", "伸び”並びに“r値”を調
査した。これらの結果を表3に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】表3に示される結果からも明らかなよう
に、本発明で規定する条件に従って製造された熱延鋼板
は優れたr値及び伸びを示しており、しかも面内異方性
が極めて小さいことが分かる。更に、本発明に係わる鋼
板は何れも降伏点が低目であり、非常に優れた加工性を
有しているとが明らかである。
【0045】これに対して、製造条件が本発明の規定に
従わない場合には十分な微細α組織が発達せず、得られ
る鋼板の特性が劣る結果となることが分かる。
【0046】
【効果の総括】以上に説明した如く、この発明によれ
ば、面内異方性が小さくr値の高い冷延鋼板を安定して
製造することができるなど、産業上極めて有用な効果が
もたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造工程を示す模式図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量割合にてC:0.05%以下, Si:
    0.3%以下, Mn:0.01〜 0.4% S:0.02%以下, sol.Al:0.01〜0.08%, N:0.
    01%以下を含み、残部がFe及び不可避的不純物から成る
    熱鋼片を、少なくとも下記a)〜e)の処理を含む工程で順
    次加工・熱処理することを特徴とする、面内異方性の小
    さい高r値冷延鋼板の製造方法。 a) Ar3点以上の温度域で最終パス圧下率が30%以上
    の圧延を行ってから冷却する, b) Ar3点を下回る温度域で合計圧下率30%以上の圧
    延を行う, c) Ac3点〜〔Ac3点+100℃〕の温度域まで5℃/s
    以上の加熱速度で昇温し、フェライトからオ−ステナイ
    トへの逆変態を生じさせる, d) 該オ−ステナイト相温度域から冷却し、合計圧下率
    が50〜97%の冷間圧延を行う, e) 550〜900℃の温度で再結晶焼鈍を行う。
  2. 【請求項2】 重量割合にて C:0.05%以下, Si: 0.3%以下, Mn:0.01〜
    0.4% S:0.02%以下, sol.Al:0.01〜0.08%, N:0.
    01%以下を含有すると共に、更に Ti,Nb,Zr及びVの1種以上:合計で 0.015〜0.350
    %,B:0.0001〜0.0050% のうちの1種以上をも式 〔C当量〕−〔Ti当量/4〕≦ 0.0020 を満たす割合で含み、残部がFe及び不可避的不純物から
    成る熱鋼片を、少なくとも下記a)〜e)の処理を含む工程
    で順次加工・熱処理することを特徴とする、面内異方性
    の小さい高r値冷延鋼板の製造方法。 a) Ar3点以上の温度域で最終パス圧下率が30%以上
    の圧延を行ってから冷却する, b) Ar3点を下回る温度域で合計圧下率30%以上の圧
    延を行う, c) Ar3点〜〔Ar3点+100℃〕の温度域まで5℃/s
    以上の加熱速度で昇温し、フェライトからオ−ステナイ
    トへの逆変態を生じさせる, d) 該オ−ステナイト相温度域から冷却し、合計圧下率
    が50〜97%の冷間圧延を行う, e) 550〜900℃の温度で再結晶焼鈍を行う。
JP30691691A 1991-10-26 1991-10-26 面内異方性の小さい高r値冷延鋼板の製造法 Expired - Lifetime JP2669231B2 (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN100408711C (zh) * 2002-06-25 2008-08-06 杰富意钢铁株式会社 高强度冷轧钢板及其制造方法

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