JPH05111909A - 吸水・透水用不織布 - Google Patents

吸水・透水用不織布

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JPH05111909A
JPH05111909A JP9963891A JP9963891A JPH05111909A JP H05111909 A JPH05111909 A JP H05111909A JP 9963891 A JP9963891 A JP 9963891A JP 9963891 A JP9963891 A JP 9963891A JP H05111909 A JPH05111909 A JP H05111909A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 コンクリート施工に用いられる型枠に貼り付
ける吸水・透水用シートとして、ゆっくり吸水を行い、
吸水した水分は簡単に排水し得て綺麗なコンクリート表
面を実現させる不織布を提供する。 【構成】 疎水性合成繊維よりなる繊維層(2)で、合
成繊維基布(3)を両側から挟むような形にニードルパ
ンチによって一体化した後、該繊維層の表層部(4)の
みを熱加工処理によって平滑化した不織布シートであっ
て、表層部(4)の吸水速度が70〜110 分、平均90分程
度であり、不織布全体としての通気量が1cm3 /cm2
sec 以下、垂直透水係数が10 - 2 〜 10 - 4 cm/sec
,耐水圧が10〜40cm H2 O である不織布シートを特徴
とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は吸水・透水用不織布、詳
しくはコンクリート施工に用いられる型枠に貼り付けて
コンクリートの品質向上をはかる透水型枠用の透水シー
トとしての不織布シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】コンクリート構造物の構築時に使用され
る型枠はコンクリート表面の美観化、即ち、型枠の当た
る面に生じる水あばた,空気泡の除去やコンクリート表
面の耐久性の向上,余剰水排除によるコンクリート組成
の緻密化に影響を及ぼすものである。そのため、特開昭
60−43528号公報、あるいは特公昭61−137
92号公報などにおいて型枠の内面に多孔質資材を貼設
したり、堰板に孔を設けてその上に多孔性資材を貼設し
てコンクリートの気泡を外部へ放出させたり、余剰水を
その孔を通して下方へ流出させることが提案され、また
実開昭62−9642号公報では水分や空気は透過させ
るが、セメント粒子等の固形分は透過させない密な組織
密度の外層組織と、粗な組織密度の内層組織との2重組
織のシートと、このシートを通して出てくる空気,水を
突起間隙部に連通させる突起群を有する合成樹脂板とか
らなる型枠が提案されている
【0003】更に、文献「建築材料」特集,vol.44, N
o.4 (1988)などでは「余剰水を素早く吸水し、以後、
30分間で一定量に達し、吸着した水を放出せずに保持す
る」ことが効果的であるとして、特殊な加工をした厚手
の長繊維不織布を型枠に貼り、吸水効果を繊維自体の吸
水力に期待する方法が紹介され、高吸水性繊維からなる
厚さ0.4 mm程度の不織布シートを貼付した型枠が開示さ
れている。
【0004】ところで、上述の如き傾向に即応し、透水
型枠用シートとして現在、既に数種類の透水シートが実
用に供せられ、一般的にコンクリート中の余分の水分を
早く吸収するのが良いとされており、事実、コンクリー
トの表面強度を向上させ、水あばた, 空気あばたを減少
させてコンクリートの表面を緻密に、しかもきれいに仕
上げ、それなりの効果を挙げている。
【0005】しかし、反面、コンクリート表面からの型
枠の脱型が円滑に行われて透水型枠が何回使用可能と
か、打ちっ放しのコンクリート表面に現われる色むらや
型枠の継ぎ目が通常以上に目立つなど、美観を損なうた
め意匠性の期待に応えられない点が指摘されている。そ
のため、本発明者らはさきに吸水・透水両性能にすぐれ
るのみならず、経済性に富み、型枠からの型離れもスム
ーズで数回の使用が可能であり、コンクリート表面の仕
上がりを良好ならしめる不織布シートとして、合成繊維
よりなる繊維層と、合成繊維基布とをニードルパンチに
よって一体化した後、該繊維層の表面のみを熱加工によ
って毛羽立ちのない平滑な層とした表層と、それに続く
前記繊維層及び基布よりなる比較的密度の粗な中間層
と、基布の裏面に出た繊維を熱処理により基布と一体化
して接着面となした裏層の3層構造からなっており、全
体として通気量が 2.0〜0.5 cm3 /cm2 /sec ,垂直透
水係数が10 - 2〜10 - 4cm/sec で、かつ前記表層部に
セメントペーストの固形分を透過させない程度の孔径の
小孔または繊維間隙を有している不織布を提案した。
(特開平2−128802号)この不織布はその公報で
明らかにしているように、コンクリート表面の耐久性向
上による中性化深さの改良や、余剰水排除によるコンク
リート組成の緻密化、ならびにコンクリート表面に発生
する水あばたや空気泡の除去などを実現し、用途によっ
ては8回前後の使用回数の実績を示している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、コンク
リート打設においては前述のように客先,用途によって
はコンクリート表面の強度,緻密化よりもコンクリート
表面の美観を求められ、水あばた,空気あばた,型枠の
継ぎ目は勿論、コンクリート表面の色,つやが均一であ
ることにまで要求特性が拡大される。
【0007】ところが、実際のコンクリート内部は勿
論、その表面においても骨材などの存在によって水の分
布が均等でなく、更に、よく知られているブリージング
効果によるコンクリート内部からの湧水が透水シート面
に沿って不均等な分布で上昇しようとするなど、水の挙
動,存在は極めて複雑である。また、セメントの水和反
応に必要な水と、施工性を高めるための余剰な水分と
は、その水和反応の進行と共にコンクリート全体にわた
って均一に分けられるものではなく、その影響が当然、
コンクリート表面に表われてくる。つまり、時間の経過
とともに、表面の場所によって全く異なった状態におか
れると云っても過言ではない。
【0008】殊に、透水シートによるコンクリート表層
部の水分の吸水性が余りに良すぎると、即ち、吸水速度
が余りに早いと透水シート面上で全く、不均斉な吸水現
象を起こすことになり、場所によっては反応に必要な水
分までも吸収してしまうことが起こる。その結果、コン
クリート表層部の水分の状態、即ち、最終の状態にむら
が発生し、コンクリート表面に黒っぽい部分、白っぽい
部分の色むらが発生する。勿論、大部分は黒っぽい部分
で、適当な吸水が行われた緻密なつやのある部分であ
る。(透水シートを使用しない場合のコンクリート表面
は、よく知られている通り、水あばた,空気あばたの存
在ばかりでなく、脱型したあとのコンクリート表面は、
全面白っぽい部分ばかりである。)
【0009】一方、更に上記水分布の不均一な状態と共
に、当然のこととして透水シートに対する側圧の不均
一、つまり型枠の上下方向の位置によってヘッド圧が異
なっている。これは到底、避けることはできないところ
である。更に詳述すれば、本来、透水シートは吸水性は
もっていても、排水性については直立したシート内の鉛
直方向の水の流れ(排水)はあるものの透水シートの裏
面方向への排水能力は自分では持つことはできない。ど
ちらかと云えば透水シートは吸水した水分を保水しよう
とする性質が強い。
【0010】ところが、透水シートは吸水された水が排
水されて始めて吸水性能が持続するものであって、この
吸水された水を透水シートの裏面から排水させる力が前
記透水シートに対する側圧、即ちコンクリート中の水の
ヘッド圧であり、セメント,砂,骨材などの水と共に挙
動しようとする流動性にもとづく横方向への力である。
そして、これがコンクリートの高さ,上下方向の位置に
よって当然異なるのである。例えば、透水型枠の上部は
吸水,排水が小さく、コンクリート表面は白っぽくな
る。もとより型枠の上部は更にブリージング水が透水シ
ートに沿って上昇するため、水分が多い点もあるが。ま
た、型枠の最下部の部分や、コンクリートの角にある部
分などでは骨材の影響で水分が多く、白っぽくなること
もある。試みに、大きなコンクリートブロック作成に当
たって、底面に透水シート型枠を使用すると、全面に比
較的均一な圧力が及ぶので、全く白っぽい部分が現れ
ず、全般に黒っぽく、つやのある表面が仕上がる。
【0011】以上のように、コンクリート内部,表層
部、そして高さの位置によって水分の分布,透水シート
に対する側圧が均一でないとするならば、吸水性能に全
くむらのない透水シートが果たしてコンクリート表面か
らの吸水,排水を行うに当たって、均一なコンクリート
表面に仕上げることが出来るのかと云うと、これには疑
問が生じる。
【0012】本発明は上述の如き実状をふまえ、前記透
水シートとコンクリート内の水分との関係があるにして
も、その宿命的な課題を現実的に解決して、色むらのな
い綺麗なコンクリート表面を実現させることを目指し、
水和反応がゆっくり行われること、ならびに水の移動に
密接なブリージング挙動などに着目して、これらに合わ
せるように、特に吸水速度,耐水圧を探究し、ゆっくり
吸水を行い、吸水した水分は簡単に排水し得るように透
水シートの性能改善を図ることを目的とするものであ
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】即ち、上記目的に適合す
る本発明の特徴とするところは、疎水性合成繊維よりな
る繊維層で、合成繊維基布を両側から挟むような形にニ
ードルパンチによって一体化した後、該繊維層の表層部
のみを熱加工処理によって平滑化した不織布シートにあ
って、該表層部側繊維層に撥水性を付与してその吸水速
度を小さくするとともに、吸水された水は合成繊維基布
と、その両側の熱加工処理されていない繊維層の部分を
通して、繊維層の内部を流れるように、また繊維層の垂
直方向に裏面に流出するように排水されるようにし、か
つ、前記表層部にはセメントペーストの固形分を通過さ
せない程度の小孔または繊維間空隙を具有せしめた構成
にあり、具体的にはその表層部の吸水速度が70〜110
分、平均90分程度であり、不織布全体としての通気量が
1cm3 /cm2 /sec 以下、垂直透水係数が10 - 2〜10
- 4cm/sec ,耐水圧が10〜40cm H2 0である不織布シ
ートにある。また、上記構成において表層部側繊維層に
撥水性を付与するには繊維層形成後、撥水剤を付与して
もよいが、通常は撥水性油剤を付与した疎水性合成繊維
を用いて繊維層を形成することが好ましく、請求項2記
載の発明はかかる態様を特徴とする。
【0014】以下、更に上記本発明について詳細な説明
を加えると、本発明不織布はその構成として、先ず、透
水シートの表層部、即ち、コンクリートに接する側は水
に触れただけで容易に吸水することを妨止する一方、時
間をかけて吸水した水は容易に透水シートの外へ排出し
易いようにすることである。そこで、本発明不織布では
疎水性合成繊維よりなる繊維層を使用し、その表層部を
熱加工により平滑化してセメントペーストの固形分を通
過させない程度の小孔又は繊維間空隙を具有せしめると
共に繊維層は撥水性を付与して吸水速度を70〜110 分、
平均90分前後とすることが肝要である。もし吸水速度が
それより早ければ前述したコンクリート表面の改善は困
難である。合成繊維としては元来、疎水性のものが多
く、特に耐アルカリ性の強いポリプロピレン繊維や、こ
れに次ぐポリエステル繊維などは、元来、疎水性繊維で
ある。しかし、これらの短繊維には、紡績性を高めるた
め1%以下の油剤を繊維表面に均等に付与している。そ
して、この油剤も親水性のもの、疎水性(撥水性)のも
のがあるが、特別の理由がない場合には、一般に適度に
湿度を持たせた方が静電気の発生が抑えられる利点があ
るので親水性油剤が多く使用されている。そこで、これ
ら合成繊維よりなる不織布の表層部を撥水性にするに
は、この繊維油剤を撥水性にすればよく、また、不織布
の表層部に撥水加工を施してもよい。
【0015】なお、本発明不織布では更に上述の如くセ
メント粒子の透過を避けることも考慮されており、その
ため表層に細孔または繊維間空隙が保持されるが、セメ
ントの固形粒子は一般に 100μ〜40μに分布されている
にしてもスラリー状になると凝縮粒子塊の大きさは大き
くなるので、上記細孔または繊維間空隙は 100μ以下、
平均値数十μ位で充分である。
【0016】また、本発明不織布は吸水速度に次いで加
圧して繊維空隙率を減少せしめることによって不織布全
体の通気量を1cm3 /cm2 /sec 以下、望ましくは0.5
cm3 /cm2 /sec 程度にし、また耐水圧を10〜40cm H2
O 程度にすることも必要である。これは、吸水性にも密
接な関係がある。即ち、透水シートは吸水性があって
も、それ自体、透水シートの裏面を通しての排水能力は
持っていない。直立した透水シートの内部をシート面に
沿って透水(排水)するのは、水が重力によって流れる
ものである。そこで、この耐水圧は直立した型枠の上下
方向の位置によってセメント水のヘッド圧力によって極
端な吸水,排水の差が出ないための適当な値にする必要
がある。耐水圧が余り小さい時は、表層部の吸水性(吸
水速度)を低下せしめても結構、吸水,排水してしま
う。また、耐水圧を高くすると(例えば50〜60cm以上)
型枠の上部、即ちブリージング水が多くなった時にヘッ
ド圧が小さすぎ、排水が不充分となる。実験例として18
0 cm高さの透水型枠にコンクリートを3回打設したが、
打ち継ぎ部分が全く見られず、最上部に若干、白っぽい
色むらが見られたものの、大部分、黒っぽい、つやのあ
るコンクリート表面が得られた。
【0017】次に透水シート不織布の全体の通気量は、
表層部の細孔分布と繊維層の空隙率(密度)によって決
まるが、ゆっくり、少量づつ吸水するためには小さい方
が良い。更に、吸水,排水速度が大きくなると細孔の径
が重要とは云え、ノロ抜けの恐れがある。排水がよすぎ
てノロ抜けが発生すると、コンクリート表面が白っぽく
なるし、不織布の繊維層が汚れ、つまってしまう。も
し、通気量が大きいと、セメント粒子の細孔への喰い込
みなどが生じて、脱型性が悪くなるので好ましくない。
【0018】最後に本発明透水シート不織布の垂直透水
係数は10 - 2〜10 - 4cm/sec 程度であることが適当で
ある。一般に不織布の中を通って直立した不織布の面に
沿って排水される重力による水の流れは、水平透水係数
で表わされ、垂直透水係数よりほぼ1桁大きい。即ち、
10 - 2cm/sec 程度となる。ここで強調したいのは、吸
水はゆっくり、少量づつ長時間能力が維持されることが
必要であるが、吸水された水は容易に排水されることが
好ましいということである。そして、このような性能を
持たせるために、基布裏の繊維層は適当な密度でよく、
その表面は特に熱加工を施さず、熱ローラで軽く押さえ
る程度で充分である。
【0019】以上の本発明不織布において、吸水速度,
通気量, 耐水圧の測定は夫々以下の如くである。 (1)吸水速度の測定は、JIS-L-1096の吸水性を表わす
吸水速度の測定方法A法(滴下法)による。即ち、試験
片(不織布)の表面から1cmの高さに指定されたビュレ
ットの先端がくるようにしてそのビュレットから水滴を
1滴落下させ、ストップウオッチにより水滴が試験片上
に達した時からその水滴が試験片に吸収されて特別な反
射をしなくなるまでの時間を測定する。 (2)不織布の通気量の測定は、JIS-L1096 の通気性測
定法A法による。即ち、フラジール形試験機を用い、円
筒の一端に試験片を取りつけた後、加減抵抗器によって
吸い込まれた空気の試験片通過直後の圧力が傾斜形気圧
計で水柱1.27. cmの圧力を示すように吸い込みファンを
調整し、その時の円筒内中央部に設けた仕切壁の空気孔
を通過直後の空気の圧力を垂直形気圧計で知り、使用し
た空気孔の種類とから、試験片を通過する空気量cm3/c
m2 /sec を付表から求める。 (3)不織布の耐水圧の測定は、JIS-L-1092の耐水度測
定法A法(低水圧法)の静水圧法に従う。
【0020】即ち、一定の速さで上昇出来る水準装置の
中の常温水を連結管によって、クランプに取りつけた約
15cm角の試験片の表側(使用時に水が当たる側)に水が
当たるように連結し、水準装置を上昇させて水位を上昇
させ、試験片の裏側に3ケ所から水が出た時の水位(cm
H2 O)を測定する。(ここで、3ケ所から出ない時は1
ケ所又は2ケ所から水が出る時までの水位とし、水滴が
表われながら大きくならない非常に小さい水滴は計算に
入れない)
【0021】
【作用】上記の如き本発明不織布をその接着面裏層を介
し、接着剤でコンクリート型枠に貼りつけ使用するとき
は、通気量,透水係数の選定により吸水速度を押さえ
て、ゆっくりした速度で該不織布の表層でセメント粒子
の透過を回避しつつ吸水が行われる。そして、吸水され
た水分は不織布内を型枠下方に向かって垂直に、また不
織布に垂直方向に裏面に、それぞれ排水されるが、前記
透水係数に従って、比較的容易に排水される。しかもこ
のとき、不織布は濾材としての機能も有するため表層を
通じて吸水された水の中に僅かにセメント粒子が存在し
たとしても中間層で濾過され、排水される水は澄んだ水
となる。
【0022】なお、型枠に貼りつけ使用する時には、コ
ンクリート表面に毛羽のない平滑な表層表面が接するこ
とになり、型離れが容易で、表面に付着したノロが乾燥
しても水洗などで容易に除去可能となり、数回の繰り返
し使用に耐えることができる。
【0023】
【実施例】以下、更に添付図面を参照し、本発明の実施
例を説明する。図1は本発明に係る不織布の一部断面で
あり、図において(1)は疎水性合成繊維よりなる繊維
層(2)と合成繊維基布(3)とをニードルパンチによ
って一体化した中間層、(4)は同中間層(1)の表面
側の熱加工により平滑化された表層、(5)は同じく中
間層(1)の基布裏面に疎水性合成繊維よりなる繊維層
をニードルパンチによって一体化したる後、熱ローラで
押さえて毛羽伏せしてなる裏層で、裏層(5)は上記繊
維層(2)と別の疎水性繊維よりなる繊維層としてもよ
く、この層はコンクリート型枠貼付時、接着面となる層
である。
【0024】ここで上記合成繊維繊維層(2)を形成す
る合成繊維としてはナイロン,ポリエステル,ポリプロ
ピレン繊維など各種の繊維が使用可能であるが、疎水性
をもつ繊維としてポリプロピレンの細デニール短繊維層
とポリプロピレン扁平糸織物基布との組み合わせが最も
実用的に挙げられる。この場合短繊維は普通のポリプロ
ピレン繊維でも、また低融点部分をもつ、例えば芯が普
通のポリプロピレン,鞘が低融点のポリエステルまたは
ポリプロピレンなどからなる繊維でもよく、これらは夫
々熱加工の方法をそれに応じて行うことによって所期の
構造とすることができる。
【0025】しかして、上記構成をもつ不織布を作成す
るに際しては、前記繊維層(2)と基布(3)とをニー
ドルパンチを施して一体化した後、その繊維層表面を熱
加工することによって表面繊維を溶融せしめ、部分的に
フィルムに近い状態に平滑化して表層(4)とする一
方、裏面側繊維層をニードルパンチを施して基布と一体
化し、次いで軽く熱ローラで表面を押さえ毛羽伏せして
裏層(5)とすることによって得られる。この場合、表
面の熱加工は熱盤上を摺擦する方法,赤外線加熱などの
加工手段が用いられ、略200 ℃前後の温度下で数秒〜数
十秒間、熱加工することによって行われ、一方、裏面側
は熱ローラで軽く押さえ又は毛焼き加工程度で基布と一
体化され剥離の起こらない状態ができれば充分である。
【0026】以下、更に各層についての夫々の特長を述
べる。 (イ)疎水性性合成繊維よりなる繊維層(2)と基布
(3)とにニードルパンチを施した中間層(1)の表面
を上記熱加工によって部分的にはフィルムに近い、かつ
毛羽のない平滑面となした表層(4)は、通常、小孔又
は繊維間隙がセメントペーストの固形分を透過させない
程度の大きさで設けられていて適度の通気性,透水性を
有している。しかし、この小孔又は繊維間隙は不織布の
数回繰り返し使用においても内部の繊維の毛羽が出てこ
ないようにパンチングが施されている。
【0027】(ロ)繊維層(2)は基布(3)に対して
ニードルパンチによって一体化されており、表層の上記
小孔または繊維間隙と連通して毛細管現象によって吸水
がなされるようになっている。そして、この吸水された
水は不織布の水平方向に透水されて排水されることにな
るが、この排水には当然、基布(3)もその役割を分担
している。又、中間繊維層(1)はコンクリート面圧を
受けるクッション作用も有している。なお、繊維層
(2)と基布(3)をニードルパンチする場合には基布
(3)の裏面からのパンチングはせず、繊維層(2)側
からのみ、針の種類,深さ,回数を考慮しパンチングを
行うのが有効である。又、基布(3)は不織布生産過程
において受ける力に対して充分な抗張力をもち、かつ、
型枠使用時の引っ張り、引き裂き抵抗も充分であればよ
く、排水効果の面より比較的粗な組織の織物が実用上用
いられる。
【0028】(ハ)裏層(5)は基布(3)に対して繊
維層をニードルパンチを施した後、熱ローラで押さえて
繊維の毛羽伏せすることにより基布面と一体化された裏
層として形成される。そして、ここに粘着剤等を塗布し
て型枠に接着させる。
【0029】かくして以上のような層構造によって本発
明不織布が形成されるが、この不織布は通常、目付が30
0 〜 800g /m 2 ,厚さが1mm前後でコンクリート型枠用
として吸水速度が70〜110 分、平均90分前後、不織布全
体としての通気量が1.0cm3 /cm2 /sec 以下、垂直透
水係数が10 - 2〜10 - 4cm/sec,好ましくは10 - 2〜10
- 3cm/sec で耐水圧が10〜40cm H 2 Oの値を有するよ
うに形成される。勿論、これらの数値は臨界的ではない
が、我々の実験によれば吸水速度とセメント粒子持ち運
びの恐れなどから上記範囲の値をもつことが極めて有効
であることが知見された。
【0030】図2は上記の如き構成からなる不織布をコ
ンクリート型枠に貼り付け使用した例であり、小孔
(7)を有するコンクリート型枠(6)の内面に上記不
織布の裏層が接着面として接着剤などにより貼付されて
いる。そして、この場合、コンクリートの締め固めにあ
たり、コンクリート(8)中からブリージング現象によ
り浮き出てくる空気泡はセメント粒子を透過することな
く、表層(4)より中間層(1)に矢示の如く流入し、
中間層(1)の上方及び裏層を通って型枠(6)の小孔
(7)より排出される。
【0031】一方、コンクリートの締め固め時にコンク
リートから分離する水分は表層(4)を通して不織布中
間層(1)に流入し、該中間層(1)を通して矢示の如
く下方及び裏層を通って型枠(6)の小孔(7)より排
水される。しかも、上記空気泡及び下方への水の排出は
通気量,透水係数の特定により比較的容易にゆっくり行
われる。従って、コンクリート硬化後の型枠内面には余
剰水による水あばたあるいは空気泡は残ることなく美し
い面に仕上げられる。事実、上記の如く本発明不織布を
型枠に接着し、コンクリートの垂直面に使用した結果、
綺麗な水が下方にゆっくりた排水され、コンクリート固
化後に型枠を取り外したが、型離れも全くスムーズであ
り、ノロの固形化したものが表層面に付着していたが、
水洗により容易に除去された。また、不織布を型枠に取
りつける作業も問題なく、勿論コンクリートの表面は平
滑,緻密に仕上がり、その強度も所期の値を充分満足し
たものであった。
【0032】以下、本発明不織布の具体例を掲げる。ポ
リプロピレン平織物を基布とし、表層部の繊維層は撥水
性油剤を付与したポリプロピレン繊維の重量300g/m 2
前後の繊維層、基布の裏側の繊維層は同じくポリプロピ
レン繊維の重量200g/m 2 前後の繊維層とし、3層をニ
ードルパンチによって完全に一体化した後、表層部の表
面を熱加工処理し、一部フィルム状になる程、平滑な表
面とすると共に、多数の細孔又は繊維間空隙を有せしめ
た。(セメント粒子の通過を妨げるため、細孔径は10〜
20μ程度が望ましいが、実用的には平均値数十μで充分
である。このとき、表層部の繊維層, 基布, 裏面の繊維
層などは全体的に一体化されており、ニードルパンチの
条件と加圧条件によって所望の厚さ, 通気量, 透水係数
などの性能が付与されるが、条件を選定して厚さは約1
mm,通気量は0.5 cm3 /cm2 /sec 垂直透水係数1.9 ×
10 - 2cm/sec,耐水圧30cmH 2 O,そして、吸水速度1時
間28分の透水シートを作成した。
【0033】なお、上記ポリプロピレン繊維の場合、主
としてホスフェイト系(燐酸塩系)化合物と脂肪酸エス
テルからなる親水性油剤をホスフェイト系化合物とポリ
エチレンワックス系化合物の混合物に変更して撥水性油
剤とした。そして、これを0.3 〜0.5 %owf(対繊維付着
量) 付与することによっで透水シート不織布の表層部の
吸水速度が親水性油剤使用の時、平均8.2 秒であったも
のが、撥水性油剤使用の場合、平均1時間28分となっ
た。ここで興味深いことは、親水性油剤使用の透水シー
ト不織布を、充分に水洗し、風乾した場合の吸水速度が
平均1時間27分であったことである。
【0034】次に上記作成した本発明不織布を透水型枠
に貼り付け、コンクリート表面の状態を調べたところ、
平滑な細孔を有する表層は撥水性を有するためコンクリ
ート表面に湧出した余分の水をセメントの水和反応およ
びブリージング現象に合わせるようにゆっくり長時間に
わたって吸水が行われ、コンクリート表面の色むらは極
めて少なく脱型すると全般に黒っぽい光沢のある表面と
なり、コンクリートの打ち継ぎ目も現われなかった。勿
論、コンクリート打設の際、出来るだけ充分なバイブレ
ーションを実施し、コンクリート内部の均一化に努めた
方が、当然、その効果が大きくまた、型枠が撓んだりし
ないように、型枠の組立に当たって、しっかりセパレー
ターなどで固定しておくことも必要である。
【0035】なお、最後に、吸水性, 耐水圧から見て、
透水型枠の最上端の約10cm程度の部分のコンクリート表
面は、吸水が不充分で、白っぽい色むらが出たりするの
で、必要に応じて透水シートのこの部分だけ、シートの
表面に適当な親水剤を塗布すると効果的であった。
【0036】
【発明の効果】本発明は以上のように疎水性合成繊維か
らなる繊維層と合成繊維基布をニードルパンチによって
繊維層が基布を両側から挟むような層構造に形成すると
共に、表層側繊維層の繊維に撥水性を付与して表層の熱
加工による平滑化と相俟って吸水速度を遅く70〜110 分
とし、かつ、通気量, 垂直透水係数, 耐水圧を夫々所定
の範囲に特定した吸水・透水用不織布であり、平滑な表
層であるためコンクリートからの型枠の脱型が頗る円滑
に行われ、使用回数もふえると共に、平滑な細孔を有す
る表層は、繊維層の撥水性と相俟って吸水速度が平均90
分位であるので、コンクリート表面に湧出した余分の水
を、セメントの水和反応及びブリージング現象に合わせ
るように、ゆっくり長時間にわたって吸水することが可
能となり、コンクリート表面の色むらが極めて減少し、
脱型すると全般に黒っぽい光沢のあるコンクリート表面
を得ることができ、しかもコンクリートの打ち継ぎ目も
コンクリート表面に現われず綺麗な仕上がりを達成する
顕著な効果を有している。
【0037】殊に、吸水速度を従前の不織布に比し遥か
に遅くし、排水は容易ならしめることにより、吸水速度
の速さによるコンクリート表面の脆化を防ぎ、所要の強
度をコンクリート面に保持させるのみならず、平滑な面
をコンクリート表面に接せしめることから、コンクリー
ト表面の平滑性, 緻密性を高め、外観仕上げを良好なら
しめる顕著な効果を有する。また、数回の使用が可能で
あり、経済性に富むと共に表層表面は緻密なニードルパ
ンチング及び熱加工により何回使用しても内部から繊維
が毛羽となって出てくることもなく、更には基布と繊維
層は一体化されて型離れの際にも層間は剥離の起こる心
配もないなどの種々の利点もあり、コンクリート型枠用
の不織布としてその実用的効果が頗る大である。請求項
2記載の発明は表層側の繊維層に撥水性を付与する上で
極めて実際的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る不織布の部分側断面図である。
【図2】同不織布をコンクリート型枠に貼付した場合の
部分説明図である。
【符号の説明】
(1) 中間層 (2) 繊維層 (3) 基布 (4) 表層 (5) 裏層

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 疎水性合成繊維よりなる繊維層と、合成
    繊維基布とをニードルパンチによって一体化し、合成繊
    維基布を疎水性合成繊維層で表裏両側より挟むように形
    成した後、表層部繊維層のみを熱加工によって平滑化せ
    しめた不織布であって、前記表層部はセメントペースト
    の固形分を通過させない程度の小孔又は繊維間空隙を有
    すると共に、表層部側繊維層は撥水性が付与されてい
    て、その吸水速度は70〜110 分であり、かつ、不織布全
    体としての通気量は1cm3 /cm2 /sec 以下、垂直透水
    係数は10 - 2〜10 - 4cm/sec ,耐水圧は10〜40cm H2
    0であることを特徴とする吸水・透水用不織布。
  2. 【請求項2】 表層部側の繊維層は撥水性油剤が付与さ
    れた疎水性合成繊維よりなっている請求項1記載の吸水
    ・透水用不織布。
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