JPH05111532A - 輸血セツト - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 白血球除去フィルターと輸血針用アダプター
との間に気体および／または液体流通用アダプター５付
きドリップチェンバー６が接続されており、かつ、該ド
リップチェンバーのドリップ用ノズル７が、その周辺が
血液で濡れた後に於いても雫が落ちる位置に配されてい
る事を特徴とする輸血セット。 【効果】 白血球を除去する際、輸血速度の目安となる
血液の雫をカウントする事ができると同時に、白血球除
去フィルター下流側の血液を回収できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は輸血の際に用いられる輸
血セットに関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、医学、特に免疫学の進歩により、
血液をその成分毎に分離し、治療の目的に適した血液成
分のみを輸血する、いわゆる成分輸血が普及して来た。
しかしながら輸血の際、輸血用の血液成分中に混入して
来る白血球は患者にとっては他人の白血球であり、赤血
球のＡＢＯ型を合わせたとしても白血球の血球型は種類
が多く、白血球の型を完全に一致させて輸血する事は困
難である。その為輸血された白血球の表面に存在する抗
原に対し、患者の体内には抗体が産生され、繰り返し輸
血された患者の場合、患者体内の抗白血球抗体と輸血血
液中の白血球とが抗原抗体反応を起こし、発熱、蕁麻疹
等の輸血副作用を起こす事が多い。

【０００３】この為、輸血用血液成分中に含まれる白血
球を除去する目的に使用される白血球除去フィルターが
近年開発されて来ている。これらの白血球除去フィルタ
ーは全血，赤血球製剤，血小板製剤等の血液製剤中の白
血球を効率良く除去する事ができるので、輸血を受ける
患者にとっては副作用が抑えられ、非常に喜ばれてい
る。

【０００４】白血球除去フィルターは、その上下に血液
回路を接続し、輸血セットとして用いられる事が多く、
通常は白血球除去フィルター上流側に血液導入針を接続
し、下流側にはドリップチェンバー（点滴筒）、輸血針
接続用アダプターの順で連結管により接続されている。
ここで使われるドリップチェンバーの多くは気体および
／または液体流通用アダプターが設けられていないのが
普通である。

【０００５】しかしながら白血球除去フィルターは非常
に細い繊維からなる不織布や孔径の小さい多孔体を用い
たフィルターである為、一度血液でフィルター素材が濡
らされた後では気体は非常に通り難くなる性質を持って
いる。その為以下の間題があった。

【０００６】すなわち、白血球除去フィルター下流のド
リップチェンバーに気体および／または液体流通用アダ
プターが設けられていない場合には、輸血終了時一度濡
れた白血球除去フィルターの下流側に残存する血液を空
気で押し出して回収する事ができず、回収したい時には
白血球除去フィルターの上流側から生理食塩水の様な生
理的溶液を流してやる手間が必要であった。

【０００７】また、これを解決するために、血液透析回
路用に開発された気体および／または液体流通用のアダ
プターをドリップチェンバーに設けたものを用いること
も試みられている。すなわちこのアダプターから空気を
入れる事により白血球除去フィルター下流側の血液を回
収しようとするものである。

【０００８】しかしながら血液透析回路用に開発された
このドリップチェンバーは血液を２００ｍｌ／分程度の
高流速で流す透析の場合を想定して設計されているの
で、ドリップチェンバー内での血液の泡立ちを抑える
為、むしろ滴下してくる血液がチェンバー内壁面をつた
うように設計されている。

【０００９】しかし輸血では血液の流速はこれよりずっ
と遅く、しかも輸血速度の目安として血液の雫をカウン
トする事が重要であり、これを達成する為にはドリップ
カウント用のドリップチェンバーをもう１つ別に付ける
必要があった。透析用の気体および／または液体流通用
アダプター付きドリップチェンバーでも生理食塩水でプ
ライミング、すなわち、ドリップチェンバーを反転し
て、生理食塩水で液面調整した後、元の状態に戻し、そ
の後血液を流す場合には血液の雫をカウントできる物も
あったが、粘度の高い血液でプライミングしても血液の
雫をカウントできる、気体および／または液体流通用ア
ダプター付きドリップチェンバーが接続された白血球除
去フィルター付き輸血セットはこれまでに無かった。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】本発明者らは上記の従
来技術の欠点を解決し、白血球除去フィルター下流側の
血液が回収でき、輸血速度の目安となる血液の雫をカウ
ントする事ができ、更にはドリップチェンバー液面を輸
血中に調節する事や輸血中に薬液を注入する事をも可能
にする気体および／または液体流通用アダプター付きド
リップチェンバーを具備した輸血セットを提供する事を
目的とする。

【００１１】

【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、少な
くとも血液導入針，白血球除去フィルター，輸血針用ア
ダプターを持ち、これらが連結管により血液導入針，白
血球除去フィルター，輸血針用アダプターの順に連結さ
れている輸血セットに於いて、上記白血球除去フィルタ
ーと輸血針用アダプターとの間の連結管に気体および／
または液体流通用アダプター付き、ドリップチェンバー
が接続されており、かつ、該ドリップチェンバーのドリ
ップ用ノズルが、その周辺が血液で濡れた後に於いても
雫が落ちる位置に配されている事を特徴とする輸血セッ
トである。

【００１２】本発明で言う血液導入針とは、血液製剤入
りのバッグや瓶に本発明輸血セットを接続し血液製剤を
取り出す為の針であり、一般に用いられている血液製剤
用プラスチック針，金属針等を用いる事ができる。血液
導入針は１本だけでなく複数本付けておくと、血液製剤
入りのバッグを複数接続する事ができ、便利である。

【００１３】白血球除去フィルターとは、血液中の白血
球のみ、または白血球および血小板を選択的に捕捉する
が他の血液成分は捕捉し難いフィルターであり、繊維状
物質，多孔性物質，粒子状物質等を充填した一般のフィ
ルターを用いる事ができる。フィルター素材としては親
水性材料，疎水性材料いずれも使用する事ができる。

【００１４】フィルター素材の形態としては、多孔体，
あるいは繊維状のものが白血球の捕捉効率が良く推奨で
きる。繊維状物質の形態としては、織布状，不織布状，
綿状いずれも使用できるが、血液の通液性および白血球
除去効率の観点から不織布状のものが特に好ましい結果
を与える。

【００１５】上記白血球除去フィルターは、例えば繊維
状物質の集合体である不織布をフィルターの主要材料と
して容器に充填して用いるが、血小板の捕捉効率を落と
し、白血球のみを選択的に吸着できる様にする為に不織
布表面を血小板低捕捉性高分子でコーティングする事も
できる。繊維の直径は、０．３μｍから２０μｍ程度の
物が用いられ、繊維の素材としては、合成繊維，再生セ
ルロースの様な半合成繊維，綿の様な天然繊維，無機繊
維等が用いられる。中でも合成繊維、例えばポリエチレ
ンテレフタレート，ナイロン，ポリプロピレン，ポリア
クリロニトリル等の繊維が好ましく用いられる。また、
コート材としては、例えばジエチルアミノエチル（メ
タ）アクリレートとヒドロキシエチル（メタ）アクリレ
ートとの共重合体の様に塩基性含窒素官能基を有する高
分子材料を用いる事ができる。

【００１６】輸血針用アダプターとは輸血の時に使用さ
れる輸血針を接続する為のアダプターであり、ルアーロ
ック式のコネクター，タコ管等一般に使用されている物
が使用できる。本発明の輸血セットには、輸血針用アダ
プターに輸血針を接続しておく事もできる。

【００１７】連結管とは、各部分を接続し、血液を流す
為の中空管であり、この部分に使用目的に合わせてクラ
ンプ，流量調節器等を装着する事ができる。

【００１８】気体および／または液体流通用アダプター
とは、一般に用いられる混注用アダプター（ゴム栓）、
クランプ付きの短いチューブの先端に除菌フィルターが
接続された物等を言い、通常の輸血時には閉じていて、
必要に応じて、前者の場合は針を穿す事により、後者の
場合にはクランプを開く事により空気を入れたり出した
り、場合によっては液体を出したり入れたりできるアダ
プターである。

【００１９】ドリップチェンバーとは、空間を持った容
器であり、通常は円筒状で、この容器に１／３〜１／２
量の血液を溜めた後血液を流すと上面に設けられたドリ
ップ用ノズルから血液が雫状に滴下する構造になってい
る物を言う。ドリップ用ノズルとはドリップチェンバー
上部に位置し、血液をこのノズルから滴下させる為の物
である。

【００２０】ドリップ用ノズルが、その周辺が血液で濡
れた後に於いても雫が落ちる位置とは、ドリップチェン
バーを上下逆にして血液をチェンバーに１／３〜１／２
容量溜めた後、上下を元に戻して流す時、チェンバー上
方のドリップ用ノズル周辺が血液で濡れた場合に於いて
も輸血速度程度の流速で血液の雫がドリップチェンバー
側壁を伝う事無く滴下する位置に、ドリップ用ノズルが
配置されているという事である。

【００２１】この位置はドリップ用ノズルおよびその周
辺の形状，寸法の他，血液の組成，血液の流速などの影
響を受けるが、チェンバーの内面上部、ドリップ用ノズ
ルの周辺にはドリップ用ノズル以外の突起物は無い事が
望ましく、あっても突起の高さは低い事が好ましい。

【００２２】また、ドリップ用ノズルはドリップチェン
バーの内面側壁から最も遠い位置にある事が望ましく、
図２，図３に示す様にチェンバー６の中央付近に位置し
ている事が好ましい。ドリップ用ノズル先端からドリッ
プチェンバー内壁までの距離は少なくとも２ｍｍは必要
であり、好ましくは３ｍｍ以上、更に好ましくは４ｍｍ
以上、望ましくは５ｍｍ以上である。また、ドリップ用
ノズル先端の直径は輸血速度を測定するのに適した血液
滴の大きさが得られる寸法にすれば良いが、先端はなる
べく水平にカットしておく方が好ましい（図４）。

【００２３】以下、図面を用いて本発明輸血セットにつ
いて更に詳細に説明する。図５は本発明の実施態様の一
例を示す模式図である。図５に於いて血液導入針１を血
液バッグに刺しローラークランプ８を開くと血液バッグ
中の血液は連結管４を通り白血球除去フィルター２に導
入され、ここで白血球を除去される。白血球を除去され
た血液は連結管４’を通り、気体および／または液体流
通用アダプター５付きドリップチェンバー６に導入され
るが、この時ドリップチェンバー６を上下逆にしておき
ドリップチェンバーの１／３〜１／２まで血液を満たし
た後ドリップチェンバー６を元の状態に戻す。

【００２４】もしドリップチェンバーに血液を、満たし
過ぎた場合にはクランプ９を閉じ、気体および／または
液体流通用アダプター５に空気導入用の針を刺せばドリ
ップチェンバー６内の血液液面を下げる事ができる。血
液が輸血針用アダプター３の所まで来たら一度ローラー
クランプ８を閉じ輸血針用アダプター３に輸血針を取り
付け、輸血の準備が完了する。

【００２５】輸血針を患者の静脈に穿刺した後ローラー
クランプ８を少しずつ開いて行き、ドリップチェンバー
６内のドリップ用ノズル７からの血液の雫をカウントし
ながら輸血速度を調節する。これで白血球を除去された
血液が患者に輸血される。輸血中、ドリップチェンバー
６内の液面が下がり過ぎた場合には気体および／または
液体流通用アダプター５に空気針を刺せば液面が上がっ
て来る。この操作でも上がり難い時にはローラークラン
プ８を閉じれば上がる。

【００２６】また輸血中、薬液を注入する必要が生じた
場合には気体および／または液体流通用アダプター５か
ら薬液を注入する事ができる。血液バッグが空になり、
血液の流れが悪くなった後には、気体および／または液
体流通用アダプター５に空気針を刺す事によりドリップ
チェンバー６より下流側の血液を回収する事ができる。

【００２７】

【発明の効果】以上述べた様に、本発明を用いる事によ
り、白血球除去フィルターを用いて白血球を除去した血
液製剤を患者に輸血しようとする時、輸血速度の目安と
なる血液の雫をカウントする事ができると同時に白血球
除去フィルター下流側の血液を回収できる様になった。
従来の白血球除去フィルターを用いた輸血セットでこれ
を達成する事は、回路が複雑になり操作性も非常に悪い
ものであったが、本発明により、非常に単純な回路とな
り、操作も非常に楽になった。更にはドリップチェンバ
ー液面を輸血中に調節する事や輸血中に薬液を投与する
事も可能となった。以下、実施例により本発明をより詳
細に説明する。

【００２８】

【実施例】

実施例１〜６，比較例１〜４ 気体および／または液体流通用アダプター５付きドリッ
プチェンバー６として図６に示すものを用いた。ドリッ
プチェンバー６は円筒状で内径１８ｍｍ、長さ（内寸）
６０ｍｍの物を用いた。ドリップ用ノズルとしては内径
１．８ｍｍ、外径３ｍｍのパイプを用いた。パイプのチ
ェンバー内での長さは１２ｍｍとした。ドリップチェン
バー６内壁からドリップ用ノズル７までの最短距離ａを
種々変えた物を用意し、図５に示す輸血セットに組み上
げ、各々評価した。白血球除去フィルターとしては市販
のセパセルＲ５００（旭メディカル（株）製）を用い
た。

【００２９】ＣＰＤ加牛全血４００ｍｌ入りの血液バッ
グに血液導入針を接続し、ドリップチェンバー６を反転
した状態でチェンバー内に血液が１／３のところまで溜
まった所でチェンバーを元の位置にし、ローラークラン
プで流速を５ｍｌ／ｍｉｎになる様に調整し、血液を流
した。評価は、ドリップチェンバー６での血液滴カウン
トの可否，液面調整の可否，輸血終了後の血液回収の可
否について行なった。 実験は各々ｎ＝３行なった。 結果を表１に示す。ａの寸法が１．５ｍｍ以下の物につ
いては血液滴のカウントができなかつた。

【００３０】

【表１】

【００３１】実施例７〜１２，比較例５〜８ 牛全血の代わりに牛血漿（血小板製剤の代用）を用いた
事、および白血球除去フィルターとしてセパセルＲ５０
０の代わりにセパセルＰＬ１０Ａ（旭メディカル（株）
製）を用いた事以外は、実施例１〜６，比較例１〜４と
全く同じ実験を行なった。結果は表２に示す通りで、や
はりａの寸法が１．５ｍｍ以下の物については血液滴カ
ウントが不可であった。

【００３２】

【表２】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明輸血セットの基本構成を示す模式図であ
る。

【図２】気体および／または液体流通用アダプター付き
ドリップチェンバーの一例を示す模式図である。

【図３】気体および／または液体流通用アダプター付き
ドリップチェンバーの一例を示す模式図である。

【図４】ドリップ用ノズル先端の一例を示す断面模式図
である。

【図５】本発明輸血セットの実施態様の一例を示す模式
図である。

【図６】実施例に用いた気体および／または液体流通用
アダプター付きドリップチェンバーの断面模式図であ
る。

【符号の説明】

１ 血液導入針 ２ 白血球除去フィルター ３ 輸血針用アダプター ４，４’ 連結管 ５ 気体および／または液体流通用アダプター ６ ドリップチェンバー ７ ドリップ用ノズル ８ ローラークランプ ９ クランプ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも血液導入針（１）、白血球除
   去フィルター（２）、輸血針用アダプター（３）を持
   ち、これらが連結管（４) ，（４’）により血液導入
   針、白血球除去フィルター、輸血針用アダプターの順に
   連結されている輸血セットに於いて、上記白血球除去フ
   ィルターと輸血針用アダプターとの間の連結管（４’）
   に気体および／または液体流通用アダプター（５）付き
   ドリップチェンバー（６）が接続されており、かつ、該
   ドリップチェンバーのドリップ用ノズル（７）が、その
   周辺が血液で濡れた後に於いても雫が落ちる位置に配さ
   れている事を特徴とする輸血セット。