JPH05111505A - 取扱性と治癒性に優れた人工血管 - Google Patents

取扱性と治癒性に優れた人工血管

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JPH05111505A
JPH05111505A JP4098047A JP9804792A JPH05111505A JP H05111505 A JPH05111505 A JP H05111505A JP 4098047 A JP4098047 A JP 4098047A JP 9804792 A JP9804792 A JP 9804792A JP H05111505 A JPH05111505 A JP H05111505A
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blood vessel
artificial blood
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幸二 渡辺
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Abstract

(57)【要約】 【目的】吻合性、縫製性、耐ほつれ性等の取り扱い性改
善と、キンキング性、かつ初期および長期生体適合性と
を併せもつ人工血管を提供すること。 【構成】主として0.8dtex以下の極細繊維と、繊
維重量に対し45〜3部の高分子弾性体とによって構成
され、形態保持率が80%以上で、耐ほつれ性が500
g以上である取扱性と治癒性に優れた人工血管である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は取扱性、早期治癒性とに
優れた人工血管に関し、特に柔軟にして耐キンキング
性、耐ほつれ性に優れた人工血管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】合成人工血管は、布製および非布製のも
のに大別できる。布製のものは、繊維状基材の内面に生
体の仮性内膜を形成し、抗血栓性を達せんとするもので
ある。この場合の人工血管は、特にポリエステル繊維を
用いて織成、編成などにより形成されたチューブからな
るもので、繊維状のチューブを前提にしたものである。
かかる人工血管では取り扱い性は当然として、いかに早
く内面に仮性内膜を形成するかということがポイントと
なる。この仮性内膜形成性に関しては、極細繊維を用い
ることで大幅に改善できることが特開昭59−2250
5号公報で見出されている。しかし、極細繊維を用いた
場合、風合的に柔らかとなり過ぎ、キンキング性に問題
が生じる。このため通常の太い繊維と組み合わせて用い
るなどの工夫が必要となる。しかし、このため組織的に
複雑となり、作成上の困難さを伴うのみならず、耐ほつ
れ性、取り扱い性の点でも問題が生じる。例えば耐ほつ
れ性の改善として、特開昭61−92666号公報に見
られる如く高圧流体を吹き当て極細繊維を相互に絡ませ
るごとき付加手段が必要となる。かかる手段は、極めて
有効であり、それなりの価値はある。しかし、人工血管
としての柔軟性が損なわれがちである。またキンキング
性改善としては、クリンプを付与する手段があるが、こ
のクリンプ形態は生体の滑らかな状態とは異なり、血液
の流れを乱し、血栓形成を起きやすくするものとしてそ
の弊害を指摘されている。別の方法として、太いモノフ
ィラメントを巻きつけ外部補強するという手段が開発さ
れているが、この場合はせっかくの柔軟性を損なうこと
となり、また吻合部に固いフィラメント端が加わること
となり、吻合性が極めて悪くなる。すなわち、このキン
キング性改善のための決定的解決手段は、現在のところ
見出されていないのが現状である。
【0003】非布製の人工血管についてはポリテトラフ
ルオロエチレン、ポリウレタンのごときプラスチックチ
ューブなるものが開発もしくは検討されている。かかる
プラスチックチューブ人工血管の欠点は、吻合部にパン
ヌスが生じやすく、吻合部での閉塞が起きやすいことで
ある。また柔軟性に欠け、吻合しがたく、また耐開裂性
に劣り、吻合部で破れやすいという欠点がある。このた
め、繊維のメッシュで補強するなどの検討がなされてい
るが、生体適合性、取扱性の欠点を充分に克服し得たも
のは得られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述欠点の
改善を目的とし、吻合性、縫製性、耐ほつれ性等の取り
扱い性改善と、キンキング性、かつ初期および長期生体
適合性とを併せもつ人工血管を提供せんとするものであ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下の手段に
よって達成される。
【0006】(1)主として0.8dtex以下の極細
繊維と、繊維重量に対し45〜3部の高分子弾性体とに
よって構成され、形態保持率が80%以上で、耐ほつれ
性が500g以上であることを特徴とする取扱性と治癒
性に優れた人工血管。
【0007】(2)人工血管の内面が少なくとも極細繊
維の立毛を有することを特徴とする上記(1)記載の取
扱性と治癒性に優れた人工血管。
【0008】(3)人工血管がクリンプを有しているこ
とを特徴とする上記(1)記載の取扱性と治癒性に優れ
た人工血管。
【0009】
【作用】本発明は、極細繊維からなる人工血管におい
て、極細繊維の有する生体適合性を損なわない程度の極
めてわずかな量の弾性体を付与せしめることで、クリン
プを付与しない平滑なチューブ状でもキンキング性が著
しく改善されることを見出したものである。すなわち、
極細繊維を用いた場合、その柔軟性のため、キンキング
性が劣るという欠点が生じ、このキンキング性の改善は
極めて困難と予測されたが、本発明は、逆に柔軟がゆえ
に僅かに弾性体を付与することでこのキンキング性が著
しく改善されるという、まさに予期しなかった効果を見
出した。さらに極細繊維の効果として極めてわずかな拘
束力を加えること、すなわち、わずかに弾性体を付与す
ることで繊維相互の滑りが抑えられ、従って耐ほつれ性
がほぼ完全に解決されることをも見出した。このわずか
な付与量で改善できることの意味は極めて重要である。
この量が多いとせっかくの極細繊維が有する生体適合性
能を殺してしまい、全く意味をなさないのである。
【0010】以上のごとく、本発明は極細繊維と弾性体
との特徴を巧みに生かすことにより、従来にない極めて
バランスのとれた優れた人工血管を開発することに成功
したものである。
【0011】本発明の人工血管を得るに当たっては、ま
ず0.8dtex以下、好ましくは0.5dtex、よ
り好ましくは0.1dtex以下の極細繊維を用いてチ
ューブを形成する。かかる極細繊維を得る手段について
は米国特許第3531368号明細書、米国特許第33
5048号明細書、特開昭61−92666号公報等に
詳述されている。またチューブ形成にあたっては通常の
織成、編成、不織布化、成紐等の技術を用い形成可能で
ある。このチューブ形態は、平織状のプレーンな組織か
ら多重組織、ベロアー状のものなどその目的に応じ適宜
選択可能である。
【0012】また、本発明の好ましい目安として、特に
限定されるものでないが、1cm2 当たり120mmHg圧
下、1分間の水の透過量(g数)で定義した透水率の値
が、300以上、好ましくは800以上、より好ましく
は1500以上である。かかるチューブ形成において、
極細繊維の単独でなく、太い繊維を組み合わせ用いても
よい。本発明はこのチューブに、そのまま直接あるいは
起毛処理した後、弾性体を繊維重量に対し45部〜3部
付与する。45部を越えると弾性体の影響が出てきてせ
っかくの極細繊維のもつ生体適合性の効果が薄れる。3
部未満だと耐キンキング性が不十分となり、また再現
性、長期安定性の点で問題が出てくる。本発明では、こ
の耐キンキング性の尺度として、以下に定義する形体保
持率を用いる。この形体保持率とは、長さ20cmの人工
血管の上に、50gの荷重を3分間載せた後取り除いた
ときの人工血管の管径の変形度をいう。
【0013】本発明では、この形体保持率が80%以
上、好ましくは93%以上が望ましい。本発明の弾性体
の付与率の最適値は、弾性体の付着状態により変動す
る。溶剤を蒸発させ乾固する方式では、弾性体の繊維に
対する接着力は強固であり、従って付着率は少量で済ま
すことが可能である。また、柔軟な風合が必要な場合
は、いわゆる湿式凝固させる手段が推奨できる。しか
し、この場合は弾性体と繊維との接着力がやや弱くな
り、拘束力を上げるためには弾性体の付着率はやや高め
の値が必要となる。従って、付着率はかかる手段との兼
ね合いで適宜決定される。全般的にみて、付着率はやや
少なめの20部以下が特に好ましい場合が多い。
【0014】弾性体の付与方法としては、溶液、エマル
ジョンのごとき液状で含浸、スプレー、コートなどの方
法で所定量を付与する。特に極細繊維の特性を最大限生
かしたい場合は、チューブの内側に少なく、外側部に多
くなるように、コート、スプレー等を行なうことが推奨
される。また別手段として、液の粘度をやや高めに調節
し、浸透速度をコントロールすることで所望の状態とな
しうる。より確実に行なう方法は、薄いフィルムを熱融
着等により張り合わせることである。かかる方法は、適
宜状況に応じ使い分けるべきである。また、より簡便な
方法は、弾性体の全体量をなるべく少なく押さえ、しか
も、耐キンキング効果を最大に発揮させるべく付与する
ことである。かかる状態は、相対的に少ない弾性体を、
チューブを構成する繊維組織の交点に集中的に付け、そ
の他の部分には相対的に少なく付けるようにしたもので
ある。この相対的なる意味は、一概には決められない
が、例えば、付着率の差として2部以上ある状態をい
う。かかる付着率の差の判定方法は、顕微鏡下で各部分
を切り取り、溶媒により高分子弾性体を抽出し、その液
をガスクロマトグラフィー法を用いて判定すればよい。
【0015】本発明のごとく、交点に弾性体が付くこと
により、僅かな量でも弾性体の拘束力が最大限に発揮さ
れ、耐キンキング性を著しく高められる。また弾性体の
少ない部分では、極細繊維のもつ生体適合性機能がその
まま生かされることになる。本発明は、特に極細繊維を
用いているため、チューブは柔らかくそのままでは耐キ
ンキング性は悪いが、この柔軟すぎる欠点が、逆に、僅
かの拘束力で形態保持性が付与できる利点になることを
見出したものである。かかる状態に弾性体を付与する方
法は、付与する液状の濃度をやや低く、かつ粘度を低
く、また液のピックアップ量を少なめにして固化するこ
とで達成できる。
【0016】本発明に使用可能な弾性体は、原則とし
て、生体毒性がなく、かつ生体内での機械的強度劣化が
ないものなら何でもよい。従って、本発明はこれに囚わ
れるものでないが、推奨できる具体例としては、例え
ば、ポリウレタン、ポリウレタン−ウレア、ポリウレア
等のイソシアネート基とアミンもしくは水酸基との反応
によって形成された弾性体である。特に、この中にあっ
てもソフトセグメントとしてエーテル系のものが好まし
い。しかし、ソフトセグメントは単一系に限定されるも
のではない。シリコーン、フッソ、ポリエチレングリコ
ール系等との共重合系も極めて興味ある結果を示す。こ
れ以外のものとしては、アクリルニトリル−ブタジェ
ン、スチレン−ブタジェン、などのアクリル系弾性体、
天然ゴム、プルロニック系弾性体などである。
【0017】人工血管の必要特性として耐ほつれ性があ
る。この耐ほつれ性は人工血管の縫合で極めて重要であ
る。血栓が形成されやすい部位は吻合部に多く、この吻
合と縫合を如何にスムーズに行うかが極めて重要なポイ
ントである。
【0018】特に、6mm以下の細径のものの場合は、僅
かな縫代で宿主血管にきっちりと縫い付けなくてはなら
ず、このため縫い代を小さく採ってもほつれないものが
必要となる。また、大動脈でも、多分岐している血管部
位の修復に用いる場合、太い主血管に多数の分岐間を縫
合する必要がある。このため太い主血管に、分岐血管を
取り付けるための孔を開け、そこに分岐血管を縫合する
ことになる。しかし、この孔の形状は楕円状で特にほつ
れやすい形状である。本発明の人工血管では、ほつれが
ないためこの取りつけが極めて良好に行なえる。
【0019】本発明は、極細繊維を用いており、極細繊
維どうしがずれ難い性質があるため、わずかな高分子の
弾性体(バインダー)の働きで極めて高い耐ほつれ効果
を示す。
【0020】本発明では、この耐ほつれ性の目安として
以下の耐ほつれ性値を定義する。
【0021】すなわち、人工血管の切断端から2mmの位
置に糸を通し、ループを形成し、そのループと人工血管
の他の端を引張試験機でほつれるまで引張り、そのとき
の最大荷重(g数)をもって耐ほつれ性とするものであ
る。
【0022】本発明ではこの値が500g以上、好まし
くは800g以上がよい。本発明の特徴は、一般に耐ほ
つれ性が悪いとされる高透水率の、目の粗い組織のもの
であっても、このように良好な耐ほつれ効果を示すので
ある。
【0023】かくして得られた人工血管は、そのままで
も使用可能だが、より好ましくは、少なくともその内面
が極細繊維で被覆された状態として使用するのがよい。
内面が明確に極細繊維で被覆された状態となす手段とし
て、単純には表面のポリウレタンを削りさればよい。す
なわち、ポリウレタンがわずかに付いた状態のチューブ
の少なくとも内面を、起毛機あるいはバフマシンで処理
し、ポリウレタンを除去すると同時に極細繊維の立毛を
形成するか、あるいは極細繊維がリッチな状態にすれば
よい。内面処理を機械的に連続して行なうのは実質上極
めて熟練を要する。これを容易に行なう一手段として、
まず裏返した状態で繊維化処理し、しかる後再度裏返せ
ばよい。かかる処理を強固に行なうと極細繊維の立毛形
成も可能となる。この極細繊維の立毛は生体適合性効果
が顕著であり、これを形成せしめることで極めて生体適
合性に優れた人工血管となる。かかる手段は、弾性体の
繊維把持効果のため、均一な極細繊維の起毛が可能とな
り、特に好ましい。また弾性体の別の効果として、極め
て単純な繊維組織でも活用可能となることである。例え
ば、従来は丸編みによるチューブでは僅かの力で容易に
変形し、このため変形が激しすぎ、またほつれも容易に
起こり、そのままでは人工血管への適用は不可能であっ
た。また、生体細胞形成性を重視する場合には、高い透
水率の人工血管が必要となる。かかるものでは必然的に
粗い目の繊維組織が必要となるし、さらに生体適合性を
上げるため、このものを起毛し、立毛を形成させようと
する場合、目がずれチューブは変形し起毛は全くできな
い状態であった。しかるに、本発明では僅かな弾性体が
バインダーとして働き、変形の大きいはずの組織でもそ
の変形は著しく軽減され、不可能な起毛も可能となった
のである。
【0024】かくして得られた本発明品は柔軟であり、
生体適合性に優れ、耐キンキング性に優れたものであ
る。さらに縫合性、吻合性、耐ほつれ性に優れ、特に適
当な抗血栓処理を行うことにより、6mm以下の細径の人
工血管として有効である。また本発明で耐キンキング性
を一層改善したい場合は、従来のクリンプ加工を付加す
ることも可能であり、極めて高い効果が得られる。特に
強度なクリンプを避けたい場合にも、従来に比し血流を
乱さないような浅いわずかなクリンプでも極めて効果が
あるのも本発明品の特徴である。
【0025】
【実施例】
実施例1 海成分にポリスチレン15部、島成分にポリエチレンテ
レフタレート85部を用い、島数70島/フィラメント
とした、85Dtex−24fの高分子配列体繊維を得
た。この繊維を用い、ダブルデンビー組織にて7.5m
m径のチューブを作成した。
【0026】このチューブをトリクロルエチレンにつ
け、乾燥後、同径のガラス棒を通し、これをポリテトラ
メチレンエーテルグリコールをソフトセグメントとする
ポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液に浸漬した後
取り出し、表面の余分なポリウレタン溶液をかき取った
後、水中につけ凝固した。取り出した後、ガラス棒を抜
き、十分に洗浄後乾燥した。得られた人工血管は、立毛
のないものであり、径は7.5mm、透水率1620、
耐ほつれ性は3.5kgであった。
【0027】この人工血管をスチーム滅菌した後、犬の
下行大動脈に植え込んだ。植え込み時の取扱性は柔軟
で、フィット性と抱合性も極めて良好で断端のほつれも
全く見られなかった。90日目に取り出して観察した結
果、人工血管全体に薄く均一で良好な仮性内膜が形成さ
れており、極めて優れた治癒性を示していた。
【0028】実施例2 海成分にポリスチレン10部、島成分にポリエチレンテ
レフタレート90部を用い、島数36島/フィラメント
の高分子配列体繊維の85Dtex−24fを得た。こ
の繊維を用い丸編みにより6.3mmのチューブを形成し
た。これをソーダー灰の入ったお湯に漬け、乾燥後、ト
リクロルエチレンに浸漬した後乾燥した。このチューブ
の透水率は2880であった。
【0029】ポリウレタンとして、ポリテトラメチレン
エーテルグリコールをソフトセグメントとし、イソシア
ネートとしてジフェニルメタンジイソシアネートを用い
ジメチルホルムアミド中でプレポリマーを形成後、エチ
レングリコールで鎖伸長させエーテル系のセグメント化
ポリウレタンを得た。
【0030】このポリウレタンの6%液に上記チューブ
を浸漬し、次いで水中に漬け凝固させた。ポリウレタン
の付着率は繊維重量に対し12.3部であった。
【0031】このチューブの外面をサンドペーパーで擦
り、極細繊維の立毛を形成させた。さらにこのチューブ
の内と外とを反転させ、外側もサンドペーパーで同様に
擦り、純水で十分洗浄した後乾燥し、両面に極細繊維の
立毛を有する人工血管とした。
【0032】かくして得られた人工血管の透水率は24
72と、繊維のみのときとほとんど変わらない高透水率
であり、耐ほつれ性は1042gと、かかる高透水率、
組織にあってはきわめて高いものであった。また形体保
持率は97.3%と耐キンキング性に優れたものであっ
た。
【0033】この人工血管をエチレンオキサイドガスで
滅菌し、十分エアーレーションした後、プリクロッティ
ングし、2頭の犬の下行大動脈に植え込み、30日およ
び79日後の経過を見た。
【0034】施術に際し吻合性、縫合性は極めて良好で
あった。初期の治癒経過として、既に30日目で仮性内
膜の良好な形成が認められ、79日目では人工血管全体
にわたって良好な仮性内膜が形成されていた。
【0035】比較実施例1 実施例2と同一のチューブとポリウレタンを用い、ポリ
ウレタンの付着率を繊維重量に対し65%と極細繊維全
体がほぼ完全にポリウレタンで被覆される状態とした。
これを同様に犬に植え込みテストしたが、弾性がありす
ぎ、実施例2のものに比し吻合性に劣るものであった。
30日目でも血栓の形成が顕著であり、79日でも仮性
内膜の形成は不十分で部分的な血栓形成が認められた。
【0036】比較実施例2 実施例2でポリウレタンを付与せずにサンドペーパーで
擦ったが、繊維の引っかかりが大きく編目がずれたり、
繊維切断端が伝染しほつれ、満足のいく立毛を形成でき
なかった。また、このままではわずかな力でも寸法変化
が大きく、使用に耐え得るものではなかった。
【0037】実施例2 高分子配列体繊維で島成分をポリエチレンテレフタレー
ト、海成分をポリエチレンテレフタレートとスルホソジ
ュームイソフタレートとの共重合体とし、島数/フィラ
メントが16、25、36となる口金を用い、海成分を
除去した後の極細繊維が60Dtex−86f(水準
A)、60Dtex−200f(水準B)、60Dte
x−720f(水準C)となる繊維を準備した。また別
途常法で得た62Dtex−50f(水準D)のポリエ
チレンテレフタレート繊維を準備した。このD繊維を経
糸とし、A、B、C、D繊維をよこ糸として5枚繻子組
織で袋織りにより、内径が約5mmのチューブとなるよう
にそれぞれ織り上げた。このチューブをカセイソーダー
の1.5%液中で処理し、A、B、Cの水準につき4.
5mmのステンレス棒にそれぞれを通し、これをジフェニ
ルメタンジイソシアネートとポリテトラメチレンエーテ
ルグリコールで形成されたプレポリマーをメタンビスア
ニリンで鎖伸長させポリウレタンの重合を行なった。こ
の3%ジメチルホルムアミド溶液をそれぞれの人工血管
に付与し乾燥した。これらをサンドペーパーで擦り、表
面は極細繊維で被われ、ポリウレタンがほとんど認めら
れない状態とした。顕微鏡で注意深く観察すると、織り
組織の交点部周辺の内部にポリウレタンがわずかに付着
していることが確認された。チューブ組織の交点部以外
の部分を注意深く先端の鋭利なナイフで切り、これをそ
れぞれ2mg準備し、テトラヒドロフランでポリウレタン
を抽出し、この液をガスクロマトグラフィーにかけ、別
途作成した検量線をもとに交点部以外のポリウレタン量
を定量した。さらに、これらを裏返し人工血管としD水
準をコントロールとして実施例2と同様に評価した。
【0038】この結果を表1に示した。
【0039】
【表1】 実施例3 実施例2の人工血管にピッチ1.5mmの雄ネジボルトを
挿入し、その上からステンレス線を巻きつけ150℃で
15分間セットすることでクリンプ付与を行なった。こ
のものは軽いクリンプにもかかわらず、極めて耐キンキ
ング性値として良好な形体保持率99%を示し、柔軟か
つ抜群の耐キンキング性を示した。また、耐ほつれ性は
1738とさらに改善された。これを同様に犬に植え込
みテストしたところ、抜群の吻合性、縫合性を示し、ま
た1.5年でも開存中であることを血管造影法で確認し
た。
【0040】
【発明の効果】本発明の人工血管は、柔軟なため、吻合
性、縫合性、耐ほつれ性といった取扱性において極めて
優れているばかりでなく、柔軟にもかかわらず耐キンキ
ング性にすぐれ、また生体細胞が形成されやすく、仮性
内膜の早期、かつ均一な形成が良好に行われる、極めて
治癒性に優れた人工血管である。
【0041】特に、その柔軟な特徴はまさに生体の血管
に近似し、かつ耐キンキング性を有し、また縫合時も縫
い合わせ端の縫い切れがなく、この点では生体血管より
も優れた特性さえも有する。しかも仮性内膜の形成も早
期にかつ良好に行われ、治癒性にも優れたものである。
このように多くの点でバランスがとれており、画期的と
もいえる人工血管である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年5月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正内容】
【0027】この人工血管をスチーム滅菌した後、犬の
下行大動脈に植え込んだ。植え込み時の取扱性は柔軟
で、フィット性と合性も極めて良好で断端のほつれも
全く見られなかった。90日目に取り出して観察した結
果、人工血管全体に薄く均一で良好な仮性内膜が形成さ
れており、極めて優れた治癒性を示していた。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】主として0.8dtex以下の極細繊維
    と、繊維重量に対し45〜3部の高分子弾性体とによっ
    て構成され、形態保持率が80%以上で、耐ほつれ性が
    500g以上であることを特徴とする取扱性と治癒性に
    優れた人工血管。
  2. 【請求項2】人工血管の内面が少なくとも極細繊維の立
    毛を有することを特徴とする請求項1記載の取扱性と治
    癒性に優れた人工血管。
  3. 【請求項3】人工血管がクリンプを有してなることを特
    徴とする請求項1記載の取扱性と治癒性に優れた人工血
    管。
JP9804792A 1987-06-29 1992-04-17 取扱性と治癒性に優れた人工血管 Expired - Lifetime JPH0710270B2 (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2001070292A1 (fr) * 2000-03-24 2001-09-27 Yuichi Mori Organe artificiel creux
JP2011206578A (ja) * 2003-09-04 2011-10-20 Kips Bay Medical Inc 凹部を有する植込み可能な医用装置

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