JPH05106553A - 斜板式圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】斜板とピストンとの間で大きな荷重が加わって
も、斜板とピストンとの間に介在されたスラストベアリ
ングに対してシューが相対移動しないで、圧縮機の信頼
性の向上を図ることを目的とする。 【構成】スラストベアリング１１のシュー側レース１３
に係合凸部１４を、また、インナーシュー１５の端面部
に係合凹部１６をそれぞれ形成して両者を係合させ、イ
ンナーシュー１５がスラストベアリング１１に対して相
対移動しないように構成した。即ち、スラストベアリン
グ１１とインナーシュー１５の端面部との接触面におい
てズレが生じることがないように構成した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、斜板の回転にともなっ
て斜板とピストンとの間に介在するシュー部材とスラス
トベアリングとを介してピストンを往復動させるように
した斜板式圧縮機に係わり、詳しくはそのシュー部材と
スラストベアリングの取付構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】本出願人はこの種の圧縮機のピストン変
位機構としては実開昭５４−９９１０７号公報におい
て、シリンダブロック中心部に回転可能に支持された駆
動軸と一体的に回転する斜板とピストンとの間に、ボー
ル、シュー及びスラストベアリングを介在した圧縮機の
ピストン変位機構を提案している。

【０００３】このように構成された圧縮機のピストン変
位機構によると、斜板とピストンとの間、即ちピストン
変位機構への潤滑油の供給が低下しても、斜板とピスト
ンとの間に介在されたスラストベアリングによってスム
ーズに斜板は回転される。また、シューとピストン内壁
に摺接しているボールによって、斜板が傾動しても同斜
板はピストンに対して円滑に摺動できる。従って、斜板
の回転及びピストンの往復動がスムーズとなり、斜板及
びピストンの焼き付け等が防止される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記ピ
ストン変位機構のシューとスラストベアリングとの当接
面は単に平面接触しているだけであるため、斜板が回転
したときに斜板とピストンとの間、即ちスラストベアリ
ングとシューの接触面に大きな荷重が加わったとき、同
スラストベアリングとシューの接触面においてズレが生
じることがあった。そして、そのズレが進行してシュー
がスラストベアリングから外れてしまった場合、斜板と
ピストンとが干渉して斜板及びピストンが破損し、圧縮
機の駆動が不可能となる。

【０００５】本発明は上記問題点を解消するためになさ
れたものであって、その目的は斜板とピストンとの間で
大きな荷重が加わっても、斜板とピストンとの間に介在
されたスラストベアリングに対してシューが相対移動し
ないで、圧縮機の信頼性の向上を図ることができる斜板
式圧縮機を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明では、回転軸に対して傾動可能にかつ一体的
に回転する斜板と、シリンダボア内に往復動可能に配設
されたピストンと、前記斜板とピストンとの間において
斜板側に配設したスラストベアリングと、該スラストベ
アリングとピストンとの間に設けられ、前記斜板の傾動
及び回転にともなって、前記ピストンに対する斜板の変
位をスライドして許容する曲面を有するシュー部材とか
らなり、斜板の回転にともなってピストンを往復動させ
るように構成した斜板式圧縮機において、前記スラスト
ベアリングのシュー側レースとシュー部材が互いに相対
移動しないようにシュー側レースとシュー部材を連結部
材にて連結した斜板式圧縮機をその要旨とする。

【０００７】

【作用】従って、回転軸の回転にともない斜板が回転す
ることによって、ピストンがシリンダボア内で往復動さ
れる。このとき、斜板とピストンとの間に大きな荷重が
加わっても、斜板とピストンとの間に設けられたスラス
トベアリングのシュー側レースとシュー部材とは連結部
材によって連結されているので、それらは相対移動する
ことがない。従って、常時斜板が円滑に回転及び傾動さ
れるとともに、ピストンが円滑に往復動される。

【０００８】

【実施例】以下、本発明を具体化した一実施例を図１〜
４に基づいて説明する。図２に示すように、圧縮機全体
のハウジングの一部となるシリンダブロック１の前後に
はフロントハウジング２及びリヤハウジング３が接合固
定されており、シリンダブロック１及びフロントハウジ
ング２には回転軸４が回転可能に支持されている。フロ
ントハウジング２内において回転軸４には回転支持体５
が一体回転可能に固着されており、その先端部には長孔
５ａが透設されている。

【０００９】回転軸４には球状のブッシュ６がスライド
可能に支持されており、そのブッシュ６には斜板７が回
転軸４方向へ回動可能に支持されている。斜板７には連
結片７ａが取着されており、連結片７ａの先端部にはピ
ン７ｂが取付られている。ピン７ｂは前記回転支持体５
に形成した長孔５ａに係合し、その長孔５ａは斜板７の
傾動をピン７ｂを介して案内する。従って、斜板７はブ
ッシュ６を中心に回転軸４方向へ揺動可能かつ回転軸４
と一体的に回転可能となり、長孔５ａとピン７ｂとのス
ライドガイド作用、ブッシュ６のスライド作用及びブッ
シュ６の支持作用により斜板７の傾動が制御される。

【００１０】クランク室２ａ、リヤハウジング３内の吸
入室３ａ及び吐出室３ｂを接続するようにシリンダブロ
ック１に貫設されたシリンダボア１ａ内にはピストンと
しての片頭ピストン８が収容されている。片頭ピストン
８の首部９には斜板通過溝９ａが設けられており、その
斜板通過溝９ａの両側端面上には変位ガイド溝９ｂが斜
板７の半径方向に沿って設けられている。前記斜板通過
溝９ａ内を通過する斜板７の外周部は、斜板７中心側の
面よりも肉厚の薄い断面略凸状に形成されている。図１
に示すように、前記斜板７の外周部が断面略凸状に形成
されたことによって斜板７の両面に段差面１０が形成さ
れている。前記斜板７の両面に形成された段差面１０に
は、それぞれスラストベアリング１１が設けられてい
る。

【００１１】このスラストベアリング１１は段差面１０
に圧入された環状の斜板側レース１２と、同レース１２
の外側面に配設された複数のニードルコロ１１ａと、そ
のニードルコロ１１ａを前記斜板側レース１２とで挟持
するように、前記ニードルコロ１１ａの外側に配置され
た環状のシュー側レース１３とから構成されている。図
１及び図３に示すように、スラストベアリング１１のシ
ュー側レース１３外側には係合凸部１４が一体形成され
ている。そして、この係合凸部１４は半球状に形成され
たインナーシュー１５の端面部に形成された係合凹部１
６が係合する。

【００１２】また、前記インナーシュー１５の球面部
は、アウターシュー１７に椀状に凹設した摺動凹部１８
と摺動可能に嵌合されている。そして、このアウターシ
ュー１７の外側面部１７ａは平断面円弧状に形成され、
前記片頭ピストン８に形成された断面円弧状の変位ガイ
ド溝９ｂへ摺動可能に嵌合されている。

【００１３】図４に示すように、本実施例では前記片頭
ピストン８は回転軸４の周りに等間隔角度で５個配列さ
れている。各片頭ピストン８の首部９と前記段差面１０
との間には前記インナーシュー１５及びアウターシュー
１７がそれぞれ介在されている。そして、前記インナー
シュー１５の周面軸線Ｌ₂ は斜板７両面に取り付けられ
たスラストベアリング１１間の中心上に設定されてお
り、片頭ピストン８の変位ガイド溝９ｂの円弧中心軸線
Ｌ₃ は軸線Ｌ₂ 上に設定されている。

【００１４】続いて、上記のピストン変位機構を有する
斜板式圧縮機の作用について説明する。まず、斜板式圧
縮機を駆動、即ち回転軸４を回転させると、その回転力
は回転支持体５及び連結片７ａを介して斜板７へ伝達さ
れる。即ち、回転軸４の回転にともなって斜板７が回転
する。このとき、斜板７はスラストベアリング１１によ
って片頭ピストン８の斜板通過溝９ａ内でスムーズに回
転される。

【００１５】また、斜板７が回転されたときにスラスト
ベアリング１１のシュー側レース１３と当接しているイ
ンナーシュー１５は、片頭ピストン８の変位ガイド溝９
ｂと当接しているアウターシュー１７に対して上下左右
自在に摺動可能に嵌合しているので、斜板７は同斜板７
の回転角度、即ち傾動角に関係なく傾動される。また、
前記片頭ピストン８の変位ガイド溝９ｂに沿ってアウタ
ーシュー１７がスライドできるので、斜板７の回転にと
もなう回転軸線Ｌ₁ からインナーシュー１５及びアウタ
ーシュー１７の摺動面間の距離が変動しても、その距離
変動に応じてアウターシュー１７がガイド溝９ｂに沿っ
てスライドする。

【００１６】従って、斜板７の回転運動がスラストベア
リング１１及び両シュー１５，１７を介して片頭ピスト
ン８の前後往復動に変換され、片頭ピストン８がシリン
ダボア１ａ内を前後動するようになっている。これによ
り吸入室３ａからシリンダボア１ａ内へ吸入された冷媒
ガスが圧縮されつつ吐出室３ｂへ吐出される。このと
き、クランク室２ａ内の圧力とシリンダボア１ａ内の吸
入圧との片頭ピストン８を介した差圧に応じて片頭ピス
トン８のストロークが変わると、圧縮容量を左右する斜
板７の傾動角が変化する。

【００１７】そして、斜板７の傾動角及び回転速度が変
化して斜板７と片頭ピストン８との間に大きな荷重が加
わったときでも、スラストベアリング１１のシュー側レ
ース１３に形成された係合凸部１４とインナーシュー１
５の端面部に形成された係合凹部１６とが係合された状
態にあるため、インナーシュー１５はスラストベアリン
グ１１に対して相対移動しない。

【００１８】以上詳述したように、本実施例のピストン
変位機構を有する斜板式圧縮機によれば、スラストベア
リング１１のシュー側レース１３に係合凸部１４を、ま
た、インナーシュー１５の端面部に係合凹部１６をそれ
ぞれ形成して両者を係合させることによってインナーシ
ュー１５はスラストベアリング１１に対して相対移動す
ることがない。即ち、スラストベアリング１１とインナ
ーシュー１５の端面部との接触面においてズレが生じる
ことがない。

【００１９】その結果、片頭ピストン８の往復運動が正
常な状態で確実に行われるため、従来のピストン変位機
構を有する斜板式圧縮機と比較した場合、斜板式圧縮機
の駆動時においての信頼性が大幅に向上される。

【００２０】なお、本発明は上記実施例に限定されるも
のではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で例えば次の
ように構成することもできる。 （１）上記実施例においては、ピストンとして片頭ピス
トンで具体化したが、これをシリンダブロック１内に形
成したシリンダボア１ａ内で往復動する両頭ピストンを
有する斜板式圧縮機等、その他の斜板式圧縮機等で具体
化してもよい。

【００２１】（２）上記実施例においては、インナーシ
ュー１５を略半球の形状で形成したが、これを図５に示
すように、インナーシュー１５の形状を略半円柱形状と
して形成してもよい。この場合、アウターシュー１７の
摺動凹部１８を前記インナーシューの半円柱形状と対応
させて、インナーシュー１５がアウターシュー１７に対
して摺動可能となるように形成する。

【００２２】（３）上記実施例においては、シュー側レ
ース１３に、係合凸部１４を形成し、斜板７両面側のイ
ンナーシュー１５の端面部に係合凹部１６をそれぞれ形
成して、それらを嵌合させるように構成したが、これを
シュー側レース１３に係合凹部を形成し、インナーシュ
ー１５に係合凸部１４を形成してもよい。

【００２３】また、スラストベアリング１１を斜板７の
両側部に設けたが、これを斜板７の片側だけに設けて構
成してもよい。

【００２４】

【発明の効果】以上詳述したように、本発明のピストン
変位機構を有する斜板式圧縮機によると、斜板とピスト
ンとの間に大きな荷重が加わっても、斜板とピストンと
の間に設けられたスラストベアリングに対してシューが
相対移動しないので、圧縮機の信頼性の向上を図ること
ができるという優れた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を具体化した実施例を示し、ピストン変
位機構の要部拡大断面図である。

【図２】圧縮機全体の側断面図である。

【図３】要部分解斜視図である。

【図４】図２のＡーＡ線断面図である。

【図５】別例を示す要部分解斜視図である。

【符号の説明】

１…シリンダブロック、１ａ…シリンダボア、２…フロ
ントハウジング、３…リヤハウジング、４…回転軸、７
…斜板、８…ピストンとしての片頭ピストン、１１…ス
ラストベアリング、１４…係合凸部、１５…インナーシ
ュー、１６…係合凹部、１７…アウターシュー

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 回転軸に対して傾動可能にかつ一体的に
   回転する斜板と、 シリンダボア内に往復動可能に配設されたピストンと、 前記斜板とピストンとの間において斜板側に配設したス
   ラストベアリングと、 該スラストベアリングとピストンとの間に設けられ、前
   記斜板の傾動及び回転にともなって、前記ピストンに対
   する斜板の変位をスライドして許容する曲面を有するシ
   ュー部材とからなり、斜板の回転にともなってピストン
   を往復動させるように構成した斜板式圧縮機において、 前記スラストベアリングのシュー側レースとシュー部材
   が互いに相対移動しないようにシュー側レースとシュー
   部材を連結部材にて連結した斜板式圧縮機。