JP2004068757A - 容量可変型圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】ヒンジ機構の耐久性向上及びヒンジ機構のスムーズな動作を達成可能な容量可変型圧縮機を提供すること。
【解決手段】容量可変型圧縮機においてヒンジ機構19は、ロータ17と斜板18との間での動力伝達、及び斜板18の傾動の案内を行う。ヒンジ機構19は、ロータ17に設けられたロータ側ヒンジ要素52と、斜板18に設けられ、ロータ側ヒンジ要素52と係合される斜板側ヒンジ要素51とを備えている。そして、斜板側ヒンジ要素51は、それが所属する斜板18上において回動可能に構成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】容量可変型圧縮機においてヒンジ機構19は、ロータ17と斜板18との間での動力伝達、及び斜板18の傾動の案内を行う。ヒンジ機構19は、ロータ17に設けられたロータ側ヒンジ要素52と、斜板18に設けられ、ロータ側ヒンジ要素52と係合される斜板側ヒンジ要素51とを備えている。そして、斜板側ヒンジ要素51は、それが所属する斜板18上において回動可能に構成されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両用空調装置に用いられるピストン式の容量可変型圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の容量可変型圧縮機としては、例えば、特開平9−203377号公報に開示されたものが存在する。
【0003】
すなわち、図14に示すように、ハウジング101内のシリンダボア101aにはピストン102が収容されている。ハウジング101に回転可能に支持された駆動軸103には、ロータ104が一体回転可能に設けられている。駆動軸103には、斜板105がスライド移動可能でかつ傾動可能に支持されている。ピストン102は、斜板105の外周部にシュー107を介して係留されている。ロータ104と斜板105との間にはヒンジ機構108が介在されている。
【0004】
従って、前記駆動軸103の回転運動が、ロータ104、ヒンジ機構108及び斜板105を介してピストン102の往復運動に変換されるとともに、斜板105がヒンジ機構108の案内によって駆動軸103上を傾動しつつスライド移動されることで、容量可変型圧縮機の吐出容量が変更される。
【0005】
前記ヒンジ機構108は、ロータ104において斜板105側に向かって突設された二つ(図面においては一つのみ図示)のロータ側突起108aと、斜板105においてロータ104側に向かって突設され、先端側が二つのロータ側突起108a間に挿入された斜板側突起108bと、ロータ側突起108aの基部に設けられたカム面108cとからなっている。ロータ側突起108aと斜板側突起108bとは互いの側面を以て平面的に当接係合されており、従って、ロータ104からの回転力がヒンジ機構108を介して斜板105に伝達される。斜板側突起108bの先端はカム面108cに摺動可能に当接されており、従って、圧縮荷重に起因して斜板105に作用する軸方向荷重は、斜板側突起108bを介してカム面108cで受承される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記ヒンジ機構108においては、ロータ側突起108aがロータ104に、また、斜板側突起108bが斜板105に、それぞれ一体形成されている。従って、斜板105が、圧縮荷重に起因した軸方向荷重の偏作用によって、二つのロータ側突起108aで斜板側突起108bをこじるように傾くと、ロータ側突起108aと斜板側突起108bとの側面間の摺動抵抗、及び斜板側突起108bの先端とカム面108cとの間の摺動抵抗が、角当たりによって大きくなってしまう。このため、各摺動面の早期摩耗つまりヒンジ機構108の耐久性低下や、ヒンジ機構108がスムーズに動作されないことによる容量可変型圧縮機の吐出容量制御性の悪化等の問題を生じていた。
【0007】
本発明の目的は、ヒンジ機構の耐久性向上及びヒンジ機構のスムーズな動作を達成可能な容量可変型圧縮機を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、容量可変型圧縮機のヒンジ機構において、ロータ側ヒンジ要素及びカムプレート側ヒンジ要素の少なくとも一方には、当該ヒンジ要素が所属するロータ又はカムプレートに対する、動きの自由度が付与されている。従って、圧縮荷重に起因した軸方向荷重の偏作用によって、ロータ側ヒンジ要素とカムプレート側ヒンジ要素との係合部分をこじるようにカムプレートが傾いたとしても、当該傾きに起因した応力の作用によって、少なくとも一方のヒンジ要素が、それが所属するロータ上又はカムプレート上で動くことで、両ヒンジ要素間の係合部分でのこじれが回避される。よって、ヒンジ機構の耐久性が向上されるし、ヒンジ機構の動作をスムーズとして容量可変型圧縮機の吐出容量変更をスムーズに行い得る。
【0009】
請求項2の発明は請求項1において、前記ロータ側ヒンジ要素及びカムプレート側ヒンジ要素の少なくとも一方には、当該ヒンジ要素が所属するロータ又はカムプレートに枢支されることで、回動の自由度が付与されている。従って、圧縮荷重に起因した軸方向荷重の偏作用によって、ロータ側ヒンジ要素とカムプレート側ヒンジ要素とをこじるようにカムプレートが傾いたとしても、当該傾きに起因した応力の作用によって、ヒンジ要素がそれが所属するロータ上又はカムプレート上で回動することで、両ヒンジ要素間の係合部分でのこじれが防止される。ヒンジ要素に回動の自由度を付与する本発明によれば、例えばヒンジ要素にスライド移動の自由度を付与する態様と比較して、両ヒンジ要素間の係合部分でのこじれを効果的に回避し得る。
【0010】
請求項3の発明は請求項1又は2において、前記ヒンジ要素に動きの自由度が付与されたロータ及びカムプレートの少なくとも一方には、ヒンジ要素の動作範囲を当接規定する規定手段が設けられている。従って、ヒンジ要素がロータ上又はカムプレート上で動き過ぎることを防止でき、この過大な動作に起因したロータ又はカムプレートとヒンジ要素との衝撃的な衝突による異音の発生を軽減できる。
【0011】
請求項4の発明は請求項1〜3のいずれかにおいて、ヒンジ機構の好適な態様について言及するものである。すなわち、前記ロータ側ヒンジ要素は、ロータにおいてカムプレートに向かって突設されたロータ側突起を備えている。前記カムプレート側ヒンジ要素は、カムプレートにおいてロータに向かって突設されるとともに、ロータ側突起と当接係合することでロータからの回転力を受けるカムプレート側突起を備えている。前記ロータ側ヒンジ要素及びカムプレート側ヒンジ要素の一方は突起の基部に軸方向荷重受承部を備えている。この軸方向荷重受承部は、ロータ側ヒンジ要素及びカムプレート側ヒンジ要素の他方が有する突起の先端と摺動可能に当接することで、カムプレートに作用する軸方向荷重を受承する。
【0012】
請求項5の発明は請求項4において、前記ロータ側突起及びカムプレート側突起の少なくとも一方は複数備えられている。そして、この複数の突起を一体形成してなる一体化品に、当該一体化品が所属するロータ又はカムプレートに対する、動きの自由度が付与されている。従って、例えば、複数の突起にそれぞれ独立して、ロータ又はカムプレートに対する動きの自由度を付与する場合と比較して、ヒンジ要素に動きの自由度を付与するための構造を簡素化することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、車両用空調装置の冷凍サイクルを構成する容量可変型圧縮機において具体化した第1〜第8実施形態について説明する。なお、第2〜第8実施形態においては第1実施形態との相違点についてのみ説明し、同一又は相当部材には同じ番号を付して説明を省略する。
【0014】
○第1実施形態
(容量可変型圧縮機)
図1に示すように、容量可変型圧縮機(以下単に圧縮機とする)のハウジングは、シリンダブロック11と、その前端に接合固定されたフロントハウジング12と、シリンダブロック11の後端に弁・ポート形成体13を介して接合固定されたリヤハウジング14とを備えている。なお、図面の左方を圧縮機の前方とし、右方を後方とする。
【0015】
前記シリンダブロック11とフロントハウジング12との間にはクランク室15が区画形成されている。シリンダブロック11とフロントハウジング12との間には、クランク室15を挿通するようにして、駆動軸16が回転可能に配設されている。駆動軸16は、車両の走行駆動源たるエンジン(図示しない)から動力の供給を受けて回転される。
【0016】
前記クランク室15内において駆動軸16には、鋳鉄製のロータ17が一体回転可能に固定されている。ロータ17の前面とそれに対向するフロントハウジング12の内壁面との間には、スラストベアリング35が介在されている。クランク室15内には、カムプレートとしての斜板18が収容されている。斜板18は、鉄系の金属(鉄又は鉄合金)材料を用いて鍛造によって製作されている。
【0017】
前記斜板18の中央部に貫通形成された挿通孔20には駆動軸16が挿通されており、斜板18は挿通孔20の内面20aを介して駆動軸16に、スライド移動可能でかつ傾動可能に支持されている。駆動軸16において斜板18の後方側には、サークリップ32が嵌合固定されている。サークリップ32と斜板18との間には、斜板18の中央部を前方側に付勢する傾角増大バネ33が介装されている。
【0018】
前記ロータ17と斜板18との間には、ヒンジ機構19が介在されている。ヒンジ機構19は、ロータ17に設けられたロータ側ヒンジ要素52と、斜板18に設けられた、カムプレート側ヒンジ要素としての斜板側ヒンジ要素51とからなっている。斜板18は、ヒンジ機構19を介したロータ17との間でのヒンジ連結、及び挿通孔20の内面20aを介した駆動軸16の支持により、ロータ17及び駆動軸16と同期回転可能であるとともに、駆動軸16の軸線L方向へのスライド移動を伴いながら、駆動軸16に対して傾動可能となっている。
【0019】
なお、前記斜板18において挿通孔20の内面20aには、駆動軸16との摺動性の向上及び耐摩耗性の向上のために、高周波焼入が施されている。
前記シリンダブロック11において駆動軸16の軸線L周りには、複数(図1においては一つのみ示す)のシリンダボア22が等角度間隔で貫通形成されている。片頭型のピストン23は、各シリンダボア22に往復運動可能に収容されている。シリンダボア22の前後開口は、弁・ポート形成体13の前端面及びピストン23の先端面によって閉塞されており、このシリンダボア22内にはピストン23の往復運動に応じて体積変化する圧縮室24が区画されている。各ピストン23は、それぞれ半球状をなす一対のシュー25を介して斜板18の外周部に係留されている。従って、駆動軸16の回転にともなう斜板18の回転運動が、シュー25を介してピストン23の往復直線運動に変換される。
【0020】
なお、前記斜板18においてシュー25との摺動面18bには、シュー25との摺動性の向上及び耐摩耗性の向上のために、高周波焼入が施されている。
前記弁・ポート形成体13とリヤハウジング14との間には、吸入室26及び吐出室27がそれぞれ区画形成されている。そして、吸入室26の冷媒ガスは、各ピストン23の上死点位置から下死点側への移動により、弁・ポート形成体13に形成された吸入ポート28及び吸入弁29を介して圧縮室24に吸入される。圧縮室24に吸入された冷媒ガスは、ピストン23の下死点位置から上死点側への移動により所定の圧力にまで圧縮され、弁・ポート形成体13に形成された吐出ポート30及び吐出弁31を介して吐出室27に吐出される。
【0021】
前記圧縮機は吐出容量を変更可能であって、その吐出容量の制御は、制御弁21によるクランク室15の内圧調整により行われる。すなわち、制御弁21によるクランク室15の内圧の変更に応じてクランク室15の内圧と圧縮室24の内圧との差が変更され、斜板18の傾斜角度が変更される結果、ピストン23のストロークが調節される。
【0022】
例えば、前記クランク室15の内圧が低下されると、斜板18の傾斜角度が傾角増大バネ33に屈して増大し、従って、ピストン23のストロークが増大して圧縮機の吐出容量が増大される。斜板18の最大傾斜角度は、斜板18の前面に設けられた、バランスウエイトを兼ねる最大傾角規定部18aが、ロータ17の後面に当接することで規定される(図1の状態)。
【0023】
逆に、前記クランク室15の内圧が上昇されると、斜板18の傾斜角度が傾角増大バネ33に抗して減少し、従って、ピストン23のストロークが減少して圧縮機の吐出容量が減少される。斜板18の最小傾斜角度は、サークリップ32と傾角増大バネ33とによって規定される。
【0024】
(ヒンジ機構)
図1〜図3に示すように、前記ロータ17の後面において、斜板18の上死点対応位置(上死点位置にあるピストン23のシュー25の球面中心点)TDCと対向する位置には、係合溝41が形成されている。係合溝41は、ロータ17の後面においてその回転方向前後の位置に、斜板18側に向かって一体に突設された二つのロータ側突起43によって形成されている。
【0025】
前記斜板18の前面において係合溝41と対向する部分には、駆動軸16の回転方向において上死点対応位置TDCを跨いだ前後の対称位置に、二つのカムプレート側突起としての二つの斜板側突起44が、ロータ17側に向かって突設されている。各斜板側突起44は、その先端側が係合溝41内にそれぞれ入り込んでいる。各斜板側突起44は、他方の斜板側突起44とは反対側に向かう側面44aを以て、係合溝41の内面を構成するロータ側突起43の側面43aに対して、それぞれ平面的に当接係合可能となっている。従って、前記ロータ17の回転力は、一方のロータ側突起43(側面43a)、及び当該突起43に当接係合する一方の斜板側突起44(側面44a)を介して斜板18に伝達される。
【0026】
なお、本実施形態の圧縮機は、汎用性を高めるために、それが搭載される車両のエンジンの回転方向が何れであっても、言い換えれば駆動軸16の回転方向が何れであっても好適に対応できるように、ヒンジ機構19が、駆動軸16の回転方向において上死点対応位置TDCを跨いだ前後の対称形状に構成されている。
【0027】
前記係合溝41内において各ロータ側突起43の基部には、軸方向荷重受承部としてのカム部45が膨出形成されている。これらカム部45とロータ側突起43とが、ロータ側ヒンジ要素52を構成している。各カム部45において斜板18に向かう後端面には、駆動軸16の軸線Lに近づくほど後方側に傾斜するカム面45aが形成されている。各斜板側突起44の先端には凸曲面の円弧面44bが形成されており、各斜板側突起44の先端は円弧面44bを以て、対応するカム部45のカム面45aに対して摺動可能に当接されている。従って、圧縮荷重等に起因して斜板18に作用する軸方向荷重は、斜板側突起44の円弧面44bを介してカム部45のカム面45aで受承される。
【0028】
なお、図14に示す従来公報の技術において、斜板側突起108bは、大型の物が一つであった。しかし、本実施形態において、この従来の斜板側突起108bを分離するような形態で斜板側突起44を二つとしたのは、従来の斜板側突起108bと同程度の軸方向荷重の受け幅を確保するとともに、従来の斜板側突起108bを中抜き構造に変更して、斜板アッシ18,51の軽量化を図るためである。
【0029】
そして、例えば、前記圧縮機が吐出容量を増大する場合、ヒンジ機構19は、斜板側突起44の先端部が、その円弧面44bの中心軸線Sを中心として図1の時計回り方向に回動されると同時に、カム部45のカム面45a上を駆動軸16から離間する方向へ移動されることで、斜板18の傾斜角度の増大を案内する。逆に、圧縮機が吐出容量を減少する場合、ヒンジ機構19は、斜板側突起44の先端部が、その円弧面44bの中心軸線Sを中心として図1の反時計回り方向に回動されると同時に、カム部45のカム面45a上を駆動軸16に近接する方向へ移動されることで、斜板18の傾斜角度の減少を案内する。
【0030】
なお、前記斜板側ヒンジ要素51及びロータ側ヒンジ要素52には、互いに摺動する突起43,44の側面43a,44a、及び斜板側突起44の円弧面44bとカム部45のカム面45aにそれぞれ高周波焼入が施されて、摺動性の向上及び耐摩耗性の向上が図られている。
【0031】
前記高周波焼入は、斜板側ヒンジ要素51においては、側面44a及び円弧面44bを含む一部に限定的に施してもよいし、ヒンジ要素51の全体に施してもよい。特に、前者によれば、焼入による熱影響に起因した斜板側ヒンジ要素51の歪みや割れ等の発生を抑制することができる。また、前記高周波焼入は、ロータ側ヒンジ要素52においては、側面43a及びカム面45aを含む一部に限定的に施してもよいし、ヒンジ要素52の全体に施してもよい。特に、前者によれば、焼入による熱影響に起因したロータ側ヒンジ要素52の歪みや割れ等の発生を抑制することができる。
【0032】
さて、図1〜図3に示すように、前記斜板側ヒンジ要素51は、斜板18と別体とされている。斜板側ヒンジ要素51は、ベースプレート47と、当該ベースプレート47の前面に立設された二つの斜板側突起44とを備えている。斜板18が鉄系の金属材料を用いて鍛造によって製作されているのに対し、斜板側ヒンジ要素51は、アルミニウム系の金属(アルミニウム又はアルミニウム合金)材料を用いて、つまり、斜板18とは異なる材料を用いて、斜板側突起44及びベースプレート47が鍛造や鋳造等によって一体形成されている。斜板18において、シュー25との摺動面18b及び挿通孔20の内面20aに対する仕上げ研磨や高周波焼入は、当該斜板18に対して斜板側ヒンジ要素51を組み付ける前に施されている。
【0033】
前記斜板側ヒンジ要素51においてベースプレート47の後面中央部には、軸部48が垂直方向に一体に突設されている。斜板18においてシュー25との摺動面18bよりも内周側には、軸孔18cが表裏方向(斜板18の板厚方向)に貫通形成されている。斜板側ヒンジ要素51は、軸部48を以て斜板18の軸孔18cに遊嵌されている。
【0034】
従って、図4において二点鎖線で示すように、前記斜板側ヒンジ要素51は、軸部48(軸孔18c)の軸線Mを中心として斜板18上で回動可能となっている。つまり、斜板側ヒンジ要素51には、それが所属する斜板18に対する、回動の自由度が付与されている。斜板側ヒンジ要素51の斜板18上での回動は、ベースプレート47において駆動軸16側の端面47aが、斜板18の前面に設けられた規定手段としての段差18dの壁面に当接することで、所定角度範囲に規定されている。
【0035】
なお、図1及び図2に示すように、前記軸部48の先端において駆動軸16側の縁部は、斜板18が最大傾斜角度に位置した状態における傾角増大バネ33との干渉防止のために、肉取り部48aが設けられている。
【0036】
本実施形態においては次のような効果を奏する。
(1)斜板側ヒンジ要素51には、斜板18に対する動きの自由度が付与されている。従って、圧縮荷重に起因した軸方向荷重の偏作用によって、斜板18が係合溝41内で斜板側突起44をこじるように傾いたとしても、当該傾きに起因した応力の作用によって、斜板側ヒンジ要素51が斜板18上で動くことで、係合溝41内での斜板側突起44のこじれを回避することができる。よって、斜板側突起44の側面44aとロータ側突起43の側面43aとを面で、及び斜板側突起44の円弧面44bとカム部45のカム面45aとを線で、それぞれ確実に接触させることができ、各摺動部分での角当たりの発生を防止できる。その結果、ヒンジ機構19の動作をスムーズとすることができ、圧縮機の吐出容量変更がスムーズに行われることとなる。
【0037】
(2)斜板側ヒンジ要素51には、斜板18に対する回動の自由度が付与されている。斜板側ヒンジ要素51に回動の自由度を付与することで、例えば斜板側ヒンジ要素51にスライド移動の自由度を付与する場合と比較して、係合溝41内での斜板側突起44のこじれを効果的に回避することができる。
【0038】
(3)斜板18上での斜板側ヒンジ要素51の回動は、斜板18に設けられた段差18dとの当接によって所定角度範囲に規定されている。従って、斜板側ヒンジ要素51が斜板18上で回動し過ぎることを防止でき、この過大な回動に起因した斜板側突起44とロータ側突起43との衝撃的な衝突による異音の発生を軽減できる。また、斜板側ヒンジ要素51の斜板18上での回動を所定角度範囲で規定する回り止め構造は、斜板アッシ18,51の圧縮機への組み付け詳しくは斜板側突起44の係合溝41への挿入を簡単に行い得る利点もある。つまり、例えば、斜板側ヒンジ要素51の回り止め構造を有しない場合、斜板側突起44を係合溝41内へ確実に挿入組付するためには、斜板側ヒンジ要素51の斜板18上での回動を一時的に規制しておかなくてはならず、そのための治具が必要で面倒な作業となるのである。
【0039】
(4)斜板側ヒンジ要素51に動きの自由度が付与された斜板18は、言い換えれば斜板側ヒンジ要素51が別体とされた斜板18は、その形状が簡単となる。従って、斜板18の製作手法として、鋳造と比較して材料の歩留まりが良くしかも後加工が容易な鍛造を採用することができ、斜板側ヒンジ要素51を別に製作しなくてはならない手間、及び当該ヒンジ要素51を斜板18に組み付ける手間を考慮しても、圧縮機の製造コストを低減することが可能となる。なお、鍛造により製作された斜板18は、例えば鋳造により製作されたものと比較して、焼入性が良いという利点もある。
【0040】
また、別体である斜板18と斜板側ヒンジ要素51とは、それぞれに最適な材料の選択を行うことが可能となる。従って、本実施形態においては、斜板18を、その強度確保や、安定した吐出容量変更のためのモーメント確保に有利な、比重の大きい鉄系金属製としている。また、斜板18上において偏在する斜板側ヒンジ要素51を、斜板アッシ18,51の軸線L周りでのバランス設計に有利な、比重の小さいアルミニウム系金属製としている。斜板側ヒンジ要素51を軽量なアルミニウム系金属製とすることで、斜板18において、斜板側ヒンジ要素51と軸線L周りでのバランスを取るための最大傾角規定部(バランスウエイト)18aを小型化できる。これは斜板アッシ18,51の軽量化、ひいては圧縮機の軽量化につながる。
【0041】
さらに、斜板側ヒンジ要素51をアルミニウム系金属製とすること言い換えればロータ側ヒンジ要素52(鋳鉄製)と異なる材料により構成することは、両ヒンジ要素52間の摺動に起因したトモガネ現象の発生防止にも有効である。
【0042】
(5)ヒンジ機構19を構成するヒンジ要素51,52のうち、斜板側ヒンジ要素51が斜板18と別体とされている。従って、軸線M方向における軸部48と軸孔18cとの嵌合距離を長く確保することができ、斜板18による斜板側ヒンジ要素51の支持が安定的に行われる。よって、例えば、斜板18上において斜板側ヒンジ要素51を安定的に回動させることができ、係合溝41内での斜板側突起44のこじれの回避を確実に行い得る。これは、ヒンジ機構19のスムーズな動作ひいては圧縮機のスムーズな吐出容量変更につながる。
【0043】
つまり、例えば、後述する第2実施形態(図5)のように、ロータ側ヒンジ要素52をロータ17と別体とした場合、ロータ17の前面側に配置されたスラストベアリング35(図1参照)に軸部55を干渉させないために、寸法公差等も含めて、軸部55の先端を軸孔17aから突出させない配慮が必要となる。従って、軸線M方向における軸部55と軸孔17aとの嵌合距離が短くなりがちとなり、ロータ17によるロータ側ヒンジ要素52の支持が不安定となってしまうのである。
【0044】
(6)斜板側ヒンジ要素51が別体とされた斜板18は、斜板側ヒンジ要素51を組み付ける前の状態であれば、シュー25との摺動面18bの仕上げ研磨において、斜板側ヒンジ要素51が摺動面18bに対する砥石のアプローチの邪魔になることはなく、その加工性が良好となる。別の見方をすれば、摺動面18bの仕上げ研磨の邪魔になることを考慮しなくともよい斜板側ヒンジ要素51は、その形状の設定が自由となり、動力伝達及び斜板18の傾動案内に理想的な形状を追求することが可能となる。
【0045】
(7)斜板側ヒンジ要素51は、複数(二つ)の斜板側突起44を一体形成してなる一体化品であって、この斜板側ヒンジ要素51ごと斜板18上で回動可能とされている。従って、例えば、複数の斜板側突起44を互いに別体とし、それぞれ別個に斜板18上で回動可能とする場合と比較して、斜板側ヒンジ要素51の回動構造(自由度を付与するための構造)18c、48を簡素化することができる。また、複数の斜板側突起44を一体形成することは、ヒンジ機構19のスムーズな動作に大きな影響を与える各斜板側突起44の側面44a間の幅を、高精度で設定することを容易とする。
【0046】
(8)斜板側ヒンジ要素51が別体とされた斜板18は、シュー25との摺動面18bや駆動軸16と摺動する挿通孔20の内面20aに対する焼入処理が、ヒンジ要素51を組み付ける前に施されている。従って、この焼入処理による熱影響を斜板側ヒンジ要素51が受けることがなく、この熱影響による歪みがヒンジ要素51に生じることを防止できる。よって、焼入処理の後加工で斜板側ヒンジ要素51の歪みを修正しなくとも、ヒンジ機構19のスムーズな動作を実現することができ、圧縮機の製造コストを低減可能となる。
【0047】
○第2実施形態
図5においては第2実施形態を示す。本実施形態においては、斜板側ヒンジ要素51が斜板18に一体形成されているとともに、ロータ側ヒンジ要素52がロータ17と別体とされている。ロータ側ヒンジ要素52は、ベースプレート56と、当該ベースプレート56の後面に立設された二つのロータ側突起43と、各ロータ側突起43の基部に設けられた二つのカム部45とが、一体形成されてなる。ロータ側ヒンジ要素52が別体とされたロータ17は、その形状の簡単さから、製作手法に鍛造を採用することができた。
【0048】
前記ロータ側ヒンジ要素52は、ベースプレート56の前面に一体に突設された軸部55を以て、ロータ17に貫通形成された軸孔17aに遊嵌されている。従って、ロータ側ヒンジ要素52は、駆動軸16の軸線Lと平行である軸部55(軸孔17a)の軸線Mを中心として、ロータ17上で回動可能となっている。つまり、ロータ側ヒンジ要素52には、ロータ17に対する回動の自由度が付与されている。ロータ側ヒンジ要素52は、ベースプレート56において駆動軸16側の端面56aが、ロータ17に設けられた段差17bの壁面に当接することで、ロータ17上での回動が所定角度範囲に規定されている。
【0049】
本実施形態においては、前記ロータ側ヒンジ要素52が、ロータ17上において回動可能に構成されている。従って、圧縮荷重に起因した軸方向荷重の偏作用によって、斜板18が係合溝41内において斜板側突起44をこじるように傾いたとしても、当該傾きに起因した応力の作用によって、ロータ側ヒンジ要素52がロータ17上において軸線Mを中心として回動することで、前述のこじれを回避することができる。
【0050】
○第3実施形態
図6においては第3実施形態を示す。本実施形態においては、斜板側ヒンジ要素51において二つの斜板側突起44の間が、係合溝41とされている。ロータ17の後面において係合溝41と対向する部分には、一つのロータ側突起43が斜板18側に向かって突設されている。ロータ側突起43は、その先端側が係合溝41内に入り込んでいる。ロータ側突起43は、その両側面43bを以て、係合溝41の内面を構成する斜板側突起44の側面44cに対して、平面的に当接係合可能とされている。従って、ロータ17の回転力は、ロータ側突起43(一方の側面43b)及び一方の斜板側突起44(側面44c)を介して斜板18に伝達される。
【0051】
前記斜板側ヒンジ要素51は、係合溝41内において斜板側突起44の基部にカム部45を備えている。カム部45のカム面45aには、ロータ側突起43の先端に形成された凸曲面の円弧面43dが摺動可能に当接されている。従って、圧縮荷重等に起因して斜板18に作用する軸方向荷重は、カム部45のカム面45aで受承される。
【0052】
○第4実施形態
図7においては第4実施形態を示す。本実施形態においてロータ側突起43の側面43aには、カム部45のカム面45aに沿って延びるガイド溝43cが設けられている。斜板側突起44の側面44aにおいて、円弧面44bの中心軸線S上には、ガイド溝43cに挿入係合されるガイド突起44dが設けられている。
【0053】
従って、例えば、圧縮機の運転停止によって斜板18に作用する圧縮荷重が消失したり、圧縮機が最小吐出容量状態で運転されて斜板18に作用する圧縮荷重が小さくなった場合でも、ガイド溝43cとガイド突起44dとの係合によって、斜板アッシ18,51がロータ17に係留されることととなる。よって、車両の振動に起因した斜板アッシ18,51のガタつきを防止して、圧縮機からの異音発生を防止することができる。
【0054】
○第5実施形態
図8においては第5実施形態を示す。本実施形態においては、斜板側突起44の円弧面44bとカム部45のカム面45aとの間に、仲立ヒンジ要素としてのスライダ57が介在されている。つまり、斜板側突起44(円弧面44b)とカム部45(カム面45a)とは、スライダ57を介して摺動可能に当接されている。
【0055】
前記スライダ57は、斜板側突起44の円弧面44bが摺動される凹曲面の円弧面57aを有するとともに、カム面45aと摺動される平面57bを有している。従って、カム部45とスライダ57との接触及び斜板側突起44とスライダ57との接触をそれぞれ面接触とすることができ、カム部45のカム面45a及び斜板側突起44の円弧面44bの摩耗軽減、つまりヒンジ機構19の耐久性向上に貢献される。
【0056】
○第6実施形態
図9においては第6実施形態を示す。本実施形態においては、駆動軸16が矢印R方向に回転するものとして、当該回転方向Rに特に好適に対処すべくヒンジ機構19が構成されている。
【0057】
すなわち、前記ヒンジ機構19においては、圧縮行程側たる図面下方側のカム部45A及び斜板側突起44Aが、斜板18に作用する圧縮荷重に起因した軸方向荷重を主として受承するとともに、吸入行程側たる図面上方側のロータ側突起43及び斜板側突起44Bが、ロータ17から斜板18への動力伝達を行うこととなる。ここで、斜板側突起44A,44Bにおいては、それらに作用する荷重の絶対的な大きさや、当該荷重の変動の大きさ及び急激さ等を考慮すると、動力伝達を担う一方44Bよりも軸方向荷重の受承を担う他方44Aの方が強度的に厳しくなる。
【0058】
そこで、本実施形態においては、軸方向荷重の受承側であるカム部45Aのカム面45aを、動力伝達側であるカム部45Bのカム面45aよりも幅広くするとともに、同じく軸方向荷重の受承側である斜板側突起44Aを、動力伝達側である斜板側突起44Bよりも太くして、円弧面44bを幅広く設定している。従って、軸方向荷重の受承を担う斜板側突起44Aの強度が向上され、例えば、両斜板側突起44A,44Bを太くする場合と比較して、重量増を抑えつつ、ヒンジ機構19の耐久性を同等に確保することが可能となる。
【0059】
○第7実施形態
図10及び図11においては第7実施形態を示す。本実施形態においては、駆動軸16にスライダ60が、軸線L方向へスライド移動可能に支持されている。スライダ60に設けられた支軸60aには、斜板18が傾動可能に支持されている。
【0060】
そして、ヒンジ機構19においては、ロータ側ヒンジ要素52からカム部45が削除されるとともに、斜板側ヒンジ要素51とロータ側ヒンジ要素52とが、仲立ヒンジ要素としてのリンク腕61を介して係合されている。
【0061】
すなわち、前記斜板側ヒンジ要素51は斜板側突起44を一つのみ備えており、当該斜板側突起44の先端には、駆動軸16の軸線Lと直交方向に、挿通孔44eが貫通形成されている。ロータ側ヒンジ要素52は、ロータ17の外周縁部から半径方向に突出するロータ側突起43を一つのみ備えており、当該ロータ側突起43の先端には、駆動軸16の軸線Lと直交方向に挿通孔43eが貫通形成されている。
【0062】
前記ロータ側突起43の先端と斜板側突起44の先端との間には、両端に挿通孔61a,61bを有するリンク腕61が一対設けられている。各リンク腕61の一端は、ロータ側突起43の挿通孔43eに挿通されたピン62により、挿通孔61aを介して枢支されている。各リンク腕61の他端は、斜板側突起44の挿通孔44eに挿通されたピン63により、挿通孔61bを介して枢支されている。従って、斜板18は、駆動軸16上でのスライド移動に伴って、ピン62,63を中心として傾動される。
【0063】
本実施形態においても、前記斜板側ヒンジ要素51が、斜板18上において回動可能に構成されている。従って、圧縮荷重に起因した軸方向荷重の偏作用によって、斜板18がリンク腕61間において斜板側突起44をこじるように傾いたとしても、当該傾きに起因した応力の作用によって、斜板側ヒンジ要素51が斜板18上において軸線Mを中心として回動することで、リンク腕61間での斜板側突起44のこじれを回避することができる。
【0064】
○第8実施形態
図12及び図13においては第8実施形態を示す。本実施形態において斜板側ヒンジ要素51には、斜板側突起44が一つのみ備えられており、当該斜板側突起44の先端に貫通形成された挿通孔44fには、駆動軸16の軸線Lと直交方向にピン65が挿通固定されている。ロータ側ヒンジ要素52において各ロータ側突起43には、カム溝43fが貫通形成されている。斜板側突起44は、ロータ側突起43間に挿入されて、側面43a,44a間でのワッシャ67を介した当接係合によって、ロータ17から斜板18への動力伝達を可能とするとともに、カム溝43fに挿入されたピン65の両端の柱面65aを以て、カム溝43fの内面に摺動可能に当接されている。
【0065】
従って、圧縮荷重等に起因して斜板18に作用する軸方向荷重は、斜板側ヒンジ要素51のピン65を介して、ロータ側突起43のカム溝43fの内面で受承される。また、ヒンジ機構19は、斜板18が傾斜角度を変更する場合には、斜板側突起44の先端が、ピン65の中心軸線を中心として回動されると同時に、ピン65(柱面65a)が、カム溝43fのロータ17側の内面上を、駆動軸16に対して接離する方向へ移動されることで、斜板18の傾斜角度の増大を案内する。
【0066】
本実施形態においても、前記斜板側ヒンジ要素51が、斜板18上において回動可能に構成されている。従って、圧縮荷重に起因した軸方向荷重の偏作用によって、斜板18が、ロータ側突起43間において斜板側突起44を、またカム溝43f内でピン65を、それぞれこじるように傾いたとしても、当該傾きに起因した応力の作用によって、斜板側ヒンジ要素51が斜板18上において軸線Mを中心として回動することで、前述のこじれを回避することができる。
【0067】
なお、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で例えば以下の態様でも実施できる。
・上記第1及び第3〜第8実施形態を変更し、斜板側ヒンジ要素51を鉄系金属の焼結材製とすること。或いは、第2実施形態を変更し、ロータ側ヒンジ要素52を鉄系の焼結材製とすること。このようにすれば、焼結材の良好な潤滑油保持性によって、他方のヒンジ要素51,52との間での摺動性及び耐焼付性が向上される。なお、前記潤滑油は、冷媒ガス中にミスト状として含まれてクランク室15に供給される。
【0068】
・上記各実施形態においては、斜板側ヒンジ要素51及びロータ側ヒンジ要素52の一方のみが、それが所属するロータ17上又は斜板18上において回動可能とされていた。これを変更し、斜板側ヒンジ要素51を斜板18上において回動可能に構成するとともに、ロータ側ヒンジ要素52をロータ17上において回動可能に構成すること。
【0069】
・上記第2実施形態を変更し、ロータ側ヒンジ要素52においてそれを構成する要部43,45のうち、ロータ側突起43のみをロータ17上において回動可能に構成し、カム部45はロータ17に固定すること。同様に、上記第3実施形態を変更し、斜板側ヒンジ要素51においてそれを構成する要部44,45のうち、斜板側突起44のみを斜板18上において回動可能に構成し、カム部45は斜板18に固定すること。
【0070】
・上記第1及び第3〜第8実施形態においては、複数の斜板側突起44が斜板側ヒンジ要素51に一体形成され、当該斜板側ヒンジ要素51ごと斜板18に対して別体とされていた。これを変更し、複数の斜板側突起44を互いに別体とし、そして、各斜板側突起44毎に独立して斜板18上で回動可能とすること。
【0071】
・上記各実施形態において、軸部48,55と軸孔18c,17aとの間に、滑り軸受或いは転がり軸受を介在させること。或いは、軸部48,55の外周面及び軸孔18c,17aの内周面の少なくとも一方に、フッ素樹脂や二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を塗布すること。このようにすれば、斜板側ヒンジ要素51の斜板18上での回動(第1、第3〜第8実施形態)、或いはロータ側ヒンジ要素52のロータ17上での回動(第2実施形態)がスムーズとなり、斜板18の傾角変更つまり圧縮機の吐出容量変更をさらにスムーズとすることが可能となる。
【0072】
・上記各実施形態においては、ヒンジ要素51,52側に軸部48,55が、ロータ17又は斜板18側に軸孔17a,18cがそれぞれ設けられていた。これを変更し、ヒンジ要素51,52側に軸孔を、ロータ17又は斜板18側に軸部を設けるようにしてもよい。或いは、ヒンジ要素51,52側、及び、ロータ17又は斜板18側の両方に軸孔を設け、両軸孔間に軸部材を挿入介在させるようにしてもよい。
【0073】
・上記各実施形態においては、ヒンジ要素51,52に、それが所属するロータ17又は斜板18に対する回動の自由度が付与されていた。これを変更し、ヒンジ要素51,52に、それが所属するロータ17又は斜板18に対するスライド移動の自由度を付与すること。
【0074】
・上記各実施形態においては、ヒンジ要素51,52に、それが所属するロータ17又は斜板18に対する動きの自由度が、一自由度付与されていた。これを変更し、ヒンジ要素51,52に、それが所属するロータ17又は斜板18に対する動きの自由度を、二自由度以上付与すること。例えば、ヒンジ要素51,52に、それが所属するロータ17又は斜板18に対する、回動及びスライド移動の自由度を付与すること。
【0075】
・上記各実施形態において、係合溝41を構成する突起43,44は、ロータ17又は斜板18の一方から他方に向けて、アーム状に突出される構成であった。しかし、本発明は、例えば、単なる円盤状(例えば上記各実施形態においてヒンジ要素51,52を削除したような形状)のロータ又は斜板の盤面に係合溝を穿設する態様も含む。
【0076】
・本発明を、両頭型のピストンを備えた容量可変型圧縮機において具体化すること。
・本発明を、カムプレートたる揺動板を備えた、ワッブルタイプの容量可変型圧縮機において具体化すること。
【0077】
上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
(1)前記動きの自由度が付与されたヒンジ要素は、当該ヒンジ要素が所属するロータ又はカムプレートよりも比重の小さい材料により構成されている請求項1〜5のいずれかに記載の容量可変型圧縮機。
【0078】
(2)前記動きの自由度が付与されたヒンジ要素は、アルミニウム系の金属材料により構成されているとともに、当該ヒンジ要素が所属するロータ又はカムプレートは鉄系の金属材料により構成されている前記技術的思想(1)に記載の容量可変型圧縮機。
【0079】
(3)容量可変型圧縮機のヒンジ機構を構成するヒンジ要素であって、基部(上記各実施形態においてはベースプレートに具体化されている)と、当該基部の一方の面に立設された複数の突起と、基部の他方の面に設けられた軸部とからなることを特徴とするヒンジ要素。
【0080】
【発明の効果】
上記構成の本発明によれば、ヒンジ機構の耐久性向上及びヒンジ機構のスムーズな動作を達成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】容量可変型圧縮機の縦断面図。
【図2】ヒンジ機構の側面図。
【図3】ヒンジ機構の平面図。
【図4】斜板側ヒンジ要素の正面図。
【図5】第2実施形態を示すヒンジ機構の断面拡大図。
【図6】第3実施形態を示すヒンジ機構の平面図。
【図7】第4実施形態を示すヒンジ機構の側面図。
【図8】第5実施形態を示すヒンジ機構の断面拡大図。
【図9】第6実施形態を示すヒンジ機構の平面図。
【図10】第7実施形態を示すヒンジ機構の断面図。
【図11】ヒンジ機構の斜視図。
【図12】第8実施形態を示すヒンジ機構の断面図。
【図13】ヒンジ機構の平面図。
【図14】従来の容量可変型圧縮機の断面部分図。
【符号の説明】
11…ハウジングを構成するシリンダブロック、12…同じくフロントハウジング、14…同じくリヤハウジング、16…駆動軸、17…ロータ、18…カムプレートとしての斜板、18c…ヒンジ要素の枢支を達成する軸孔、18d…規定手段としての段差、19…ヒンジ機構、22…シリンダボア、23…ピストン、43…ロータ側突起、44…斜板側突起、44b…斜板側突起の先端たる円弧面、45…軸方向荷重受承部としてのカム部、48…ヒンジ要素の枢支を達成する軸部、51…カムプレート側ヒンジ要素としての斜板側ヒンジ要素、52…ロータ側ヒンジ要素。
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両用空調装置に用いられるピストン式の容量可変型圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の容量可変型圧縮機としては、例えば、特開平9−203377号公報に開示されたものが存在する。
【0003】
すなわち、図14に示すように、ハウジング101内のシリンダボア101aにはピストン102が収容されている。ハウジング101に回転可能に支持された駆動軸103には、ロータ104が一体回転可能に設けられている。駆動軸103には、斜板105がスライド移動可能でかつ傾動可能に支持されている。ピストン102は、斜板105の外周部にシュー107を介して係留されている。ロータ104と斜板105との間にはヒンジ機構108が介在されている。
【0004】
従って、前記駆動軸103の回転運動が、ロータ104、ヒンジ機構108及び斜板105を介してピストン102の往復運動に変換されるとともに、斜板105がヒンジ機構108の案内によって駆動軸103上を傾動しつつスライド移動されることで、容量可変型圧縮機の吐出容量が変更される。
【0005】
前記ヒンジ機構108は、ロータ104において斜板105側に向かって突設された二つ(図面においては一つのみ図示)のロータ側突起108aと、斜板105においてロータ104側に向かって突設され、先端側が二つのロータ側突起108a間に挿入された斜板側突起108bと、ロータ側突起108aの基部に設けられたカム面108cとからなっている。ロータ側突起108aと斜板側突起108bとは互いの側面を以て平面的に当接係合されており、従って、ロータ104からの回転力がヒンジ機構108を介して斜板105に伝達される。斜板側突起108bの先端はカム面108cに摺動可能に当接されており、従って、圧縮荷重に起因して斜板105に作用する軸方向荷重は、斜板側突起108bを介してカム面108cで受承される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記ヒンジ機構108においては、ロータ側突起108aがロータ104に、また、斜板側突起108bが斜板105に、それぞれ一体形成されている。従って、斜板105が、圧縮荷重に起因した軸方向荷重の偏作用によって、二つのロータ側突起108aで斜板側突起108bをこじるように傾くと、ロータ側突起108aと斜板側突起108bとの側面間の摺動抵抗、及び斜板側突起108bの先端とカム面108cとの間の摺動抵抗が、角当たりによって大きくなってしまう。このため、各摺動面の早期摩耗つまりヒンジ機構108の耐久性低下や、ヒンジ機構108がスムーズに動作されないことによる容量可変型圧縮機の吐出容量制御性の悪化等の問題を生じていた。
【0007】
本発明の目的は、ヒンジ機構の耐久性向上及びヒンジ機構のスムーズな動作を達成可能な容量可変型圧縮機を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、容量可変型圧縮機のヒンジ機構において、ロータ側ヒンジ要素及びカムプレート側ヒンジ要素の少なくとも一方には、当該ヒンジ要素が所属するロータ又はカムプレートに対する、動きの自由度が付与されている。従って、圧縮荷重に起因した軸方向荷重の偏作用によって、ロータ側ヒンジ要素とカムプレート側ヒンジ要素との係合部分をこじるようにカムプレートが傾いたとしても、当該傾きに起因した応力の作用によって、少なくとも一方のヒンジ要素が、それが所属するロータ上又はカムプレート上で動くことで、両ヒンジ要素間の係合部分でのこじれが回避される。よって、ヒンジ機構の耐久性が向上されるし、ヒンジ機構の動作をスムーズとして容量可変型圧縮機の吐出容量変更をスムーズに行い得る。
【0009】
請求項2の発明は請求項1において、前記ロータ側ヒンジ要素及びカムプレート側ヒンジ要素の少なくとも一方には、当該ヒンジ要素が所属するロータ又はカムプレートに枢支されることで、回動の自由度が付与されている。従って、圧縮荷重に起因した軸方向荷重の偏作用によって、ロータ側ヒンジ要素とカムプレート側ヒンジ要素とをこじるようにカムプレートが傾いたとしても、当該傾きに起因した応力の作用によって、ヒンジ要素がそれが所属するロータ上又はカムプレート上で回動することで、両ヒンジ要素間の係合部分でのこじれが防止される。ヒンジ要素に回動の自由度を付与する本発明によれば、例えばヒンジ要素にスライド移動の自由度を付与する態様と比較して、両ヒンジ要素間の係合部分でのこじれを効果的に回避し得る。
【0010】
請求項3の発明は請求項1又は2において、前記ヒンジ要素に動きの自由度が付与されたロータ及びカムプレートの少なくとも一方には、ヒンジ要素の動作範囲を当接規定する規定手段が設けられている。従って、ヒンジ要素がロータ上又はカムプレート上で動き過ぎることを防止でき、この過大な動作に起因したロータ又はカムプレートとヒンジ要素との衝撃的な衝突による異音の発生を軽減できる。
【0011】
請求項4の発明は請求項1〜3のいずれかにおいて、ヒンジ機構の好適な態様について言及するものである。すなわち、前記ロータ側ヒンジ要素は、ロータにおいてカムプレートに向かって突設されたロータ側突起を備えている。前記カムプレート側ヒンジ要素は、カムプレートにおいてロータに向かって突設されるとともに、ロータ側突起と当接係合することでロータからの回転力を受けるカムプレート側突起を備えている。前記ロータ側ヒンジ要素及びカムプレート側ヒンジ要素の一方は突起の基部に軸方向荷重受承部を備えている。この軸方向荷重受承部は、ロータ側ヒンジ要素及びカムプレート側ヒンジ要素の他方が有する突起の先端と摺動可能に当接することで、カムプレートに作用する軸方向荷重を受承する。
【0012】
請求項5の発明は請求項4において、前記ロータ側突起及びカムプレート側突起の少なくとも一方は複数備えられている。そして、この複数の突起を一体形成してなる一体化品に、当該一体化品が所属するロータ又はカムプレートに対する、動きの自由度が付与されている。従って、例えば、複数の突起にそれぞれ独立して、ロータ又はカムプレートに対する動きの自由度を付与する場合と比較して、ヒンジ要素に動きの自由度を付与するための構造を簡素化することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、車両用空調装置の冷凍サイクルを構成する容量可変型圧縮機において具体化した第1〜第8実施形態について説明する。なお、第2〜第8実施形態においては第1実施形態との相違点についてのみ説明し、同一又は相当部材には同じ番号を付して説明を省略する。
【0014】
○第1実施形態
(容量可変型圧縮機)
図1に示すように、容量可変型圧縮機(以下単に圧縮機とする)のハウジングは、シリンダブロック11と、その前端に接合固定されたフロントハウジング12と、シリンダブロック11の後端に弁・ポート形成体13を介して接合固定されたリヤハウジング14とを備えている。なお、図面の左方を圧縮機の前方とし、右方を後方とする。
【0015】
前記シリンダブロック11とフロントハウジング12との間にはクランク室15が区画形成されている。シリンダブロック11とフロントハウジング12との間には、クランク室15を挿通するようにして、駆動軸16が回転可能に配設されている。駆動軸16は、車両の走行駆動源たるエンジン(図示しない)から動力の供給を受けて回転される。
【0016】
前記クランク室15内において駆動軸16には、鋳鉄製のロータ17が一体回転可能に固定されている。ロータ17の前面とそれに対向するフロントハウジング12の内壁面との間には、スラストベアリング35が介在されている。クランク室15内には、カムプレートとしての斜板18が収容されている。斜板18は、鉄系の金属(鉄又は鉄合金)材料を用いて鍛造によって製作されている。
【0017】
前記斜板18の中央部に貫通形成された挿通孔20には駆動軸16が挿通されており、斜板18は挿通孔20の内面20aを介して駆動軸16に、スライド移動可能でかつ傾動可能に支持されている。駆動軸16において斜板18の後方側には、サークリップ32が嵌合固定されている。サークリップ32と斜板18との間には、斜板18の中央部を前方側に付勢する傾角増大バネ33が介装されている。
【0018】
前記ロータ17と斜板18との間には、ヒンジ機構19が介在されている。ヒンジ機構19は、ロータ17に設けられたロータ側ヒンジ要素52と、斜板18に設けられた、カムプレート側ヒンジ要素としての斜板側ヒンジ要素51とからなっている。斜板18は、ヒンジ機構19を介したロータ17との間でのヒンジ連結、及び挿通孔20の内面20aを介した駆動軸16の支持により、ロータ17及び駆動軸16と同期回転可能であるとともに、駆動軸16の軸線L方向へのスライド移動を伴いながら、駆動軸16に対して傾動可能となっている。
【0019】
なお、前記斜板18において挿通孔20の内面20aには、駆動軸16との摺動性の向上及び耐摩耗性の向上のために、高周波焼入が施されている。
前記シリンダブロック11において駆動軸16の軸線L周りには、複数(図1においては一つのみ示す)のシリンダボア22が等角度間隔で貫通形成されている。片頭型のピストン23は、各シリンダボア22に往復運動可能に収容されている。シリンダボア22の前後開口は、弁・ポート形成体13の前端面及びピストン23の先端面によって閉塞されており、このシリンダボア22内にはピストン23の往復運動に応じて体積変化する圧縮室24が区画されている。各ピストン23は、それぞれ半球状をなす一対のシュー25を介して斜板18の外周部に係留されている。従って、駆動軸16の回転にともなう斜板18の回転運動が、シュー25を介してピストン23の往復直線運動に変換される。
【0020】
なお、前記斜板18においてシュー25との摺動面18bには、シュー25との摺動性の向上及び耐摩耗性の向上のために、高周波焼入が施されている。
前記弁・ポート形成体13とリヤハウジング14との間には、吸入室26及び吐出室27がそれぞれ区画形成されている。そして、吸入室26の冷媒ガスは、各ピストン23の上死点位置から下死点側への移動により、弁・ポート形成体13に形成された吸入ポート28及び吸入弁29を介して圧縮室24に吸入される。圧縮室24に吸入された冷媒ガスは、ピストン23の下死点位置から上死点側への移動により所定の圧力にまで圧縮され、弁・ポート形成体13に形成された吐出ポート30及び吐出弁31を介して吐出室27に吐出される。
【0021】
前記圧縮機は吐出容量を変更可能であって、その吐出容量の制御は、制御弁21によるクランク室15の内圧調整により行われる。すなわち、制御弁21によるクランク室15の内圧の変更に応じてクランク室15の内圧と圧縮室24の内圧との差が変更され、斜板18の傾斜角度が変更される結果、ピストン23のストロークが調節される。
【0022】
例えば、前記クランク室15の内圧が低下されると、斜板18の傾斜角度が傾角増大バネ33に屈して増大し、従って、ピストン23のストロークが増大して圧縮機の吐出容量が増大される。斜板18の最大傾斜角度は、斜板18の前面に設けられた、バランスウエイトを兼ねる最大傾角規定部18aが、ロータ17の後面に当接することで規定される(図1の状態)。
【0023】
逆に、前記クランク室15の内圧が上昇されると、斜板18の傾斜角度が傾角増大バネ33に抗して減少し、従って、ピストン23のストロークが減少して圧縮機の吐出容量が減少される。斜板18の最小傾斜角度は、サークリップ32と傾角増大バネ33とによって規定される。
【0024】
(ヒンジ機構)
図1〜図3に示すように、前記ロータ17の後面において、斜板18の上死点対応位置(上死点位置にあるピストン23のシュー25の球面中心点)TDCと対向する位置には、係合溝41が形成されている。係合溝41は、ロータ17の後面においてその回転方向前後の位置に、斜板18側に向かって一体に突設された二つのロータ側突起43によって形成されている。
【0025】
前記斜板18の前面において係合溝41と対向する部分には、駆動軸16の回転方向において上死点対応位置TDCを跨いだ前後の対称位置に、二つのカムプレート側突起としての二つの斜板側突起44が、ロータ17側に向かって突設されている。各斜板側突起44は、その先端側が係合溝41内にそれぞれ入り込んでいる。各斜板側突起44は、他方の斜板側突起44とは反対側に向かう側面44aを以て、係合溝41の内面を構成するロータ側突起43の側面43aに対して、それぞれ平面的に当接係合可能となっている。従って、前記ロータ17の回転力は、一方のロータ側突起43(側面43a)、及び当該突起43に当接係合する一方の斜板側突起44(側面44a)を介して斜板18に伝達される。
【0026】
なお、本実施形態の圧縮機は、汎用性を高めるために、それが搭載される車両のエンジンの回転方向が何れであっても、言い換えれば駆動軸16の回転方向が何れであっても好適に対応できるように、ヒンジ機構19が、駆動軸16の回転方向において上死点対応位置TDCを跨いだ前後の対称形状に構成されている。
【0027】
前記係合溝41内において各ロータ側突起43の基部には、軸方向荷重受承部としてのカム部45が膨出形成されている。これらカム部45とロータ側突起43とが、ロータ側ヒンジ要素52を構成している。各カム部45において斜板18に向かう後端面には、駆動軸16の軸線Lに近づくほど後方側に傾斜するカム面45aが形成されている。各斜板側突起44の先端には凸曲面の円弧面44bが形成されており、各斜板側突起44の先端は円弧面44bを以て、対応するカム部45のカム面45aに対して摺動可能に当接されている。従って、圧縮荷重等に起因して斜板18に作用する軸方向荷重は、斜板側突起44の円弧面44bを介してカム部45のカム面45aで受承される。
【0028】
なお、図14に示す従来公報の技術において、斜板側突起108bは、大型の物が一つであった。しかし、本実施形態において、この従来の斜板側突起108bを分離するような形態で斜板側突起44を二つとしたのは、従来の斜板側突起108bと同程度の軸方向荷重の受け幅を確保するとともに、従来の斜板側突起108bを中抜き構造に変更して、斜板アッシ18,51の軽量化を図るためである。
【0029】
そして、例えば、前記圧縮機が吐出容量を増大する場合、ヒンジ機構19は、斜板側突起44の先端部が、その円弧面44bの中心軸線Sを中心として図1の時計回り方向に回動されると同時に、カム部45のカム面45a上を駆動軸16から離間する方向へ移動されることで、斜板18の傾斜角度の増大を案内する。逆に、圧縮機が吐出容量を減少する場合、ヒンジ機構19は、斜板側突起44の先端部が、その円弧面44bの中心軸線Sを中心として図1の反時計回り方向に回動されると同時に、カム部45のカム面45a上を駆動軸16に近接する方向へ移動されることで、斜板18の傾斜角度の減少を案内する。
【0030】
なお、前記斜板側ヒンジ要素51及びロータ側ヒンジ要素52には、互いに摺動する突起43,44の側面43a,44a、及び斜板側突起44の円弧面44bとカム部45のカム面45aにそれぞれ高周波焼入が施されて、摺動性の向上及び耐摩耗性の向上が図られている。
【0031】
前記高周波焼入は、斜板側ヒンジ要素51においては、側面44a及び円弧面44bを含む一部に限定的に施してもよいし、ヒンジ要素51の全体に施してもよい。特に、前者によれば、焼入による熱影響に起因した斜板側ヒンジ要素51の歪みや割れ等の発生を抑制することができる。また、前記高周波焼入は、ロータ側ヒンジ要素52においては、側面43a及びカム面45aを含む一部に限定的に施してもよいし、ヒンジ要素52の全体に施してもよい。特に、前者によれば、焼入による熱影響に起因したロータ側ヒンジ要素52の歪みや割れ等の発生を抑制することができる。
【0032】
さて、図1〜図3に示すように、前記斜板側ヒンジ要素51は、斜板18と別体とされている。斜板側ヒンジ要素51は、ベースプレート47と、当該ベースプレート47の前面に立設された二つの斜板側突起44とを備えている。斜板18が鉄系の金属材料を用いて鍛造によって製作されているのに対し、斜板側ヒンジ要素51は、アルミニウム系の金属(アルミニウム又はアルミニウム合金)材料を用いて、つまり、斜板18とは異なる材料を用いて、斜板側突起44及びベースプレート47が鍛造や鋳造等によって一体形成されている。斜板18において、シュー25との摺動面18b及び挿通孔20の内面20aに対する仕上げ研磨や高周波焼入は、当該斜板18に対して斜板側ヒンジ要素51を組み付ける前に施されている。
【0033】
前記斜板側ヒンジ要素51においてベースプレート47の後面中央部には、軸部48が垂直方向に一体に突設されている。斜板18においてシュー25との摺動面18bよりも内周側には、軸孔18cが表裏方向(斜板18の板厚方向)に貫通形成されている。斜板側ヒンジ要素51は、軸部48を以て斜板18の軸孔18cに遊嵌されている。
【0034】
従って、図4において二点鎖線で示すように、前記斜板側ヒンジ要素51は、軸部48(軸孔18c)の軸線Mを中心として斜板18上で回動可能となっている。つまり、斜板側ヒンジ要素51には、それが所属する斜板18に対する、回動の自由度が付与されている。斜板側ヒンジ要素51の斜板18上での回動は、ベースプレート47において駆動軸16側の端面47aが、斜板18の前面に設けられた規定手段としての段差18dの壁面に当接することで、所定角度範囲に規定されている。
【0035】
なお、図1及び図2に示すように、前記軸部48の先端において駆動軸16側の縁部は、斜板18が最大傾斜角度に位置した状態における傾角増大バネ33との干渉防止のために、肉取り部48aが設けられている。
【0036】
本実施形態においては次のような効果を奏する。
(1)斜板側ヒンジ要素51には、斜板18に対する動きの自由度が付与されている。従って、圧縮荷重に起因した軸方向荷重の偏作用によって、斜板18が係合溝41内で斜板側突起44をこじるように傾いたとしても、当該傾きに起因した応力の作用によって、斜板側ヒンジ要素51が斜板18上で動くことで、係合溝41内での斜板側突起44のこじれを回避することができる。よって、斜板側突起44の側面44aとロータ側突起43の側面43aとを面で、及び斜板側突起44の円弧面44bとカム部45のカム面45aとを線で、それぞれ確実に接触させることができ、各摺動部分での角当たりの発生を防止できる。その結果、ヒンジ機構19の動作をスムーズとすることができ、圧縮機の吐出容量変更がスムーズに行われることとなる。
【0037】
(2)斜板側ヒンジ要素51には、斜板18に対する回動の自由度が付与されている。斜板側ヒンジ要素51に回動の自由度を付与することで、例えば斜板側ヒンジ要素51にスライド移動の自由度を付与する場合と比較して、係合溝41内での斜板側突起44のこじれを効果的に回避することができる。
【0038】
(3)斜板18上での斜板側ヒンジ要素51の回動は、斜板18に設けられた段差18dとの当接によって所定角度範囲に規定されている。従って、斜板側ヒンジ要素51が斜板18上で回動し過ぎることを防止でき、この過大な回動に起因した斜板側突起44とロータ側突起43との衝撃的な衝突による異音の発生を軽減できる。また、斜板側ヒンジ要素51の斜板18上での回動を所定角度範囲で規定する回り止め構造は、斜板アッシ18,51の圧縮機への組み付け詳しくは斜板側突起44の係合溝41への挿入を簡単に行い得る利点もある。つまり、例えば、斜板側ヒンジ要素51の回り止め構造を有しない場合、斜板側突起44を係合溝41内へ確実に挿入組付するためには、斜板側ヒンジ要素51の斜板18上での回動を一時的に規制しておかなくてはならず、そのための治具が必要で面倒な作業となるのである。
【0039】
(4)斜板側ヒンジ要素51に動きの自由度が付与された斜板18は、言い換えれば斜板側ヒンジ要素51が別体とされた斜板18は、その形状が簡単となる。従って、斜板18の製作手法として、鋳造と比較して材料の歩留まりが良くしかも後加工が容易な鍛造を採用することができ、斜板側ヒンジ要素51を別に製作しなくてはならない手間、及び当該ヒンジ要素51を斜板18に組み付ける手間を考慮しても、圧縮機の製造コストを低減することが可能となる。なお、鍛造により製作された斜板18は、例えば鋳造により製作されたものと比較して、焼入性が良いという利点もある。
【0040】
また、別体である斜板18と斜板側ヒンジ要素51とは、それぞれに最適な材料の選択を行うことが可能となる。従って、本実施形態においては、斜板18を、その強度確保や、安定した吐出容量変更のためのモーメント確保に有利な、比重の大きい鉄系金属製としている。また、斜板18上において偏在する斜板側ヒンジ要素51を、斜板アッシ18,51の軸線L周りでのバランス設計に有利な、比重の小さいアルミニウム系金属製としている。斜板側ヒンジ要素51を軽量なアルミニウム系金属製とすることで、斜板18において、斜板側ヒンジ要素51と軸線L周りでのバランスを取るための最大傾角規定部(バランスウエイト)18aを小型化できる。これは斜板アッシ18,51の軽量化、ひいては圧縮機の軽量化につながる。
【0041】
さらに、斜板側ヒンジ要素51をアルミニウム系金属製とすること言い換えればロータ側ヒンジ要素52(鋳鉄製)と異なる材料により構成することは、両ヒンジ要素52間の摺動に起因したトモガネ現象の発生防止にも有効である。
【0042】
(5)ヒンジ機構19を構成するヒンジ要素51,52のうち、斜板側ヒンジ要素51が斜板18と別体とされている。従って、軸線M方向における軸部48と軸孔18cとの嵌合距離を長く確保することができ、斜板18による斜板側ヒンジ要素51の支持が安定的に行われる。よって、例えば、斜板18上において斜板側ヒンジ要素51を安定的に回動させることができ、係合溝41内での斜板側突起44のこじれの回避を確実に行い得る。これは、ヒンジ機構19のスムーズな動作ひいては圧縮機のスムーズな吐出容量変更につながる。
【0043】
つまり、例えば、後述する第2実施形態(図5)のように、ロータ側ヒンジ要素52をロータ17と別体とした場合、ロータ17の前面側に配置されたスラストベアリング35(図1参照)に軸部55を干渉させないために、寸法公差等も含めて、軸部55の先端を軸孔17aから突出させない配慮が必要となる。従って、軸線M方向における軸部55と軸孔17aとの嵌合距離が短くなりがちとなり、ロータ17によるロータ側ヒンジ要素52の支持が不安定となってしまうのである。
【0044】
(6)斜板側ヒンジ要素51が別体とされた斜板18は、斜板側ヒンジ要素51を組み付ける前の状態であれば、シュー25との摺動面18bの仕上げ研磨において、斜板側ヒンジ要素51が摺動面18bに対する砥石のアプローチの邪魔になることはなく、その加工性が良好となる。別の見方をすれば、摺動面18bの仕上げ研磨の邪魔になることを考慮しなくともよい斜板側ヒンジ要素51は、その形状の設定が自由となり、動力伝達及び斜板18の傾動案内に理想的な形状を追求することが可能となる。
【0045】
(7)斜板側ヒンジ要素51は、複数(二つ)の斜板側突起44を一体形成してなる一体化品であって、この斜板側ヒンジ要素51ごと斜板18上で回動可能とされている。従って、例えば、複数の斜板側突起44を互いに別体とし、それぞれ別個に斜板18上で回動可能とする場合と比較して、斜板側ヒンジ要素51の回動構造(自由度を付与するための構造)18c、48を簡素化することができる。また、複数の斜板側突起44を一体形成することは、ヒンジ機構19のスムーズな動作に大きな影響を与える各斜板側突起44の側面44a間の幅を、高精度で設定することを容易とする。
【0046】
(8)斜板側ヒンジ要素51が別体とされた斜板18は、シュー25との摺動面18bや駆動軸16と摺動する挿通孔20の内面20aに対する焼入処理が、ヒンジ要素51を組み付ける前に施されている。従って、この焼入処理による熱影響を斜板側ヒンジ要素51が受けることがなく、この熱影響による歪みがヒンジ要素51に生じることを防止できる。よって、焼入処理の後加工で斜板側ヒンジ要素51の歪みを修正しなくとも、ヒンジ機構19のスムーズな動作を実現することができ、圧縮機の製造コストを低減可能となる。
【0047】
○第2実施形態
図5においては第2実施形態を示す。本実施形態においては、斜板側ヒンジ要素51が斜板18に一体形成されているとともに、ロータ側ヒンジ要素52がロータ17と別体とされている。ロータ側ヒンジ要素52は、ベースプレート56と、当該ベースプレート56の後面に立設された二つのロータ側突起43と、各ロータ側突起43の基部に設けられた二つのカム部45とが、一体形成されてなる。ロータ側ヒンジ要素52が別体とされたロータ17は、その形状の簡単さから、製作手法に鍛造を採用することができた。
【0048】
前記ロータ側ヒンジ要素52は、ベースプレート56の前面に一体に突設された軸部55を以て、ロータ17に貫通形成された軸孔17aに遊嵌されている。従って、ロータ側ヒンジ要素52は、駆動軸16の軸線Lと平行である軸部55(軸孔17a)の軸線Mを中心として、ロータ17上で回動可能となっている。つまり、ロータ側ヒンジ要素52には、ロータ17に対する回動の自由度が付与されている。ロータ側ヒンジ要素52は、ベースプレート56において駆動軸16側の端面56aが、ロータ17に設けられた段差17bの壁面に当接することで、ロータ17上での回動が所定角度範囲に規定されている。
【0049】
本実施形態においては、前記ロータ側ヒンジ要素52が、ロータ17上において回動可能に構成されている。従って、圧縮荷重に起因した軸方向荷重の偏作用によって、斜板18が係合溝41内において斜板側突起44をこじるように傾いたとしても、当該傾きに起因した応力の作用によって、ロータ側ヒンジ要素52がロータ17上において軸線Mを中心として回動することで、前述のこじれを回避することができる。
【0050】
○第3実施形態
図6においては第3実施形態を示す。本実施形態においては、斜板側ヒンジ要素51において二つの斜板側突起44の間が、係合溝41とされている。ロータ17の後面において係合溝41と対向する部分には、一つのロータ側突起43が斜板18側に向かって突設されている。ロータ側突起43は、その先端側が係合溝41内に入り込んでいる。ロータ側突起43は、その両側面43bを以て、係合溝41の内面を構成する斜板側突起44の側面44cに対して、平面的に当接係合可能とされている。従って、ロータ17の回転力は、ロータ側突起43(一方の側面43b)及び一方の斜板側突起44(側面44c)を介して斜板18に伝達される。
【0051】
前記斜板側ヒンジ要素51は、係合溝41内において斜板側突起44の基部にカム部45を備えている。カム部45のカム面45aには、ロータ側突起43の先端に形成された凸曲面の円弧面43dが摺動可能に当接されている。従って、圧縮荷重等に起因して斜板18に作用する軸方向荷重は、カム部45のカム面45aで受承される。
【0052】
○第4実施形態
図7においては第4実施形態を示す。本実施形態においてロータ側突起43の側面43aには、カム部45のカム面45aに沿って延びるガイド溝43cが設けられている。斜板側突起44の側面44aにおいて、円弧面44bの中心軸線S上には、ガイド溝43cに挿入係合されるガイド突起44dが設けられている。
【0053】
従って、例えば、圧縮機の運転停止によって斜板18に作用する圧縮荷重が消失したり、圧縮機が最小吐出容量状態で運転されて斜板18に作用する圧縮荷重が小さくなった場合でも、ガイド溝43cとガイド突起44dとの係合によって、斜板アッシ18,51がロータ17に係留されることととなる。よって、車両の振動に起因した斜板アッシ18,51のガタつきを防止して、圧縮機からの異音発生を防止することができる。
【0054】
○第5実施形態
図8においては第5実施形態を示す。本実施形態においては、斜板側突起44の円弧面44bとカム部45のカム面45aとの間に、仲立ヒンジ要素としてのスライダ57が介在されている。つまり、斜板側突起44(円弧面44b)とカム部45(カム面45a)とは、スライダ57を介して摺動可能に当接されている。
【0055】
前記スライダ57は、斜板側突起44の円弧面44bが摺動される凹曲面の円弧面57aを有するとともに、カム面45aと摺動される平面57bを有している。従って、カム部45とスライダ57との接触及び斜板側突起44とスライダ57との接触をそれぞれ面接触とすることができ、カム部45のカム面45a及び斜板側突起44の円弧面44bの摩耗軽減、つまりヒンジ機構19の耐久性向上に貢献される。
【0056】
○第6実施形態
図9においては第6実施形態を示す。本実施形態においては、駆動軸16が矢印R方向に回転するものとして、当該回転方向Rに特に好適に対処すべくヒンジ機構19が構成されている。
【0057】
すなわち、前記ヒンジ機構19においては、圧縮行程側たる図面下方側のカム部45A及び斜板側突起44Aが、斜板18に作用する圧縮荷重に起因した軸方向荷重を主として受承するとともに、吸入行程側たる図面上方側のロータ側突起43及び斜板側突起44Bが、ロータ17から斜板18への動力伝達を行うこととなる。ここで、斜板側突起44A,44Bにおいては、それらに作用する荷重の絶対的な大きさや、当該荷重の変動の大きさ及び急激さ等を考慮すると、動力伝達を担う一方44Bよりも軸方向荷重の受承を担う他方44Aの方が強度的に厳しくなる。
【0058】
そこで、本実施形態においては、軸方向荷重の受承側であるカム部45Aのカム面45aを、動力伝達側であるカム部45Bのカム面45aよりも幅広くするとともに、同じく軸方向荷重の受承側である斜板側突起44Aを、動力伝達側である斜板側突起44Bよりも太くして、円弧面44bを幅広く設定している。従って、軸方向荷重の受承を担う斜板側突起44Aの強度が向上され、例えば、両斜板側突起44A,44Bを太くする場合と比較して、重量増を抑えつつ、ヒンジ機構19の耐久性を同等に確保することが可能となる。
【0059】
○第7実施形態
図10及び図11においては第7実施形態を示す。本実施形態においては、駆動軸16にスライダ60が、軸線L方向へスライド移動可能に支持されている。スライダ60に設けられた支軸60aには、斜板18が傾動可能に支持されている。
【0060】
そして、ヒンジ機構19においては、ロータ側ヒンジ要素52からカム部45が削除されるとともに、斜板側ヒンジ要素51とロータ側ヒンジ要素52とが、仲立ヒンジ要素としてのリンク腕61を介して係合されている。
【0061】
すなわち、前記斜板側ヒンジ要素51は斜板側突起44を一つのみ備えており、当該斜板側突起44の先端には、駆動軸16の軸線Lと直交方向に、挿通孔44eが貫通形成されている。ロータ側ヒンジ要素52は、ロータ17の外周縁部から半径方向に突出するロータ側突起43を一つのみ備えており、当該ロータ側突起43の先端には、駆動軸16の軸線Lと直交方向に挿通孔43eが貫通形成されている。
【0062】
前記ロータ側突起43の先端と斜板側突起44の先端との間には、両端に挿通孔61a,61bを有するリンク腕61が一対設けられている。各リンク腕61の一端は、ロータ側突起43の挿通孔43eに挿通されたピン62により、挿通孔61aを介して枢支されている。各リンク腕61の他端は、斜板側突起44の挿通孔44eに挿通されたピン63により、挿通孔61bを介して枢支されている。従って、斜板18は、駆動軸16上でのスライド移動に伴って、ピン62,63を中心として傾動される。
【0063】
本実施形態においても、前記斜板側ヒンジ要素51が、斜板18上において回動可能に構成されている。従って、圧縮荷重に起因した軸方向荷重の偏作用によって、斜板18がリンク腕61間において斜板側突起44をこじるように傾いたとしても、当該傾きに起因した応力の作用によって、斜板側ヒンジ要素51が斜板18上において軸線Mを中心として回動することで、リンク腕61間での斜板側突起44のこじれを回避することができる。
【0064】
○第8実施形態
図12及び図13においては第8実施形態を示す。本実施形態において斜板側ヒンジ要素51には、斜板側突起44が一つのみ備えられており、当該斜板側突起44の先端に貫通形成された挿通孔44fには、駆動軸16の軸線Lと直交方向にピン65が挿通固定されている。ロータ側ヒンジ要素52において各ロータ側突起43には、カム溝43fが貫通形成されている。斜板側突起44は、ロータ側突起43間に挿入されて、側面43a,44a間でのワッシャ67を介した当接係合によって、ロータ17から斜板18への動力伝達を可能とするとともに、カム溝43fに挿入されたピン65の両端の柱面65aを以て、カム溝43fの内面に摺動可能に当接されている。
【0065】
従って、圧縮荷重等に起因して斜板18に作用する軸方向荷重は、斜板側ヒンジ要素51のピン65を介して、ロータ側突起43のカム溝43fの内面で受承される。また、ヒンジ機構19は、斜板18が傾斜角度を変更する場合には、斜板側突起44の先端が、ピン65の中心軸線を中心として回動されると同時に、ピン65(柱面65a)が、カム溝43fのロータ17側の内面上を、駆動軸16に対して接離する方向へ移動されることで、斜板18の傾斜角度の増大を案内する。
【0066】
本実施形態においても、前記斜板側ヒンジ要素51が、斜板18上において回動可能に構成されている。従って、圧縮荷重に起因した軸方向荷重の偏作用によって、斜板18が、ロータ側突起43間において斜板側突起44を、またカム溝43f内でピン65を、それぞれこじるように傾いたとしても、当該傾きに起因した応力の作用によって、斜板側ヒンジ要素51が斜板18上において軸線Mを中心として回動することで、前述のこじれを回避することができる。
【0067】
なお、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で例えば以下の態様でも実施できる。
・上記第1及び第3〜第8実施形態を変更し、斜板側ヒンジ要素51を鉄系金属の焼結材製とすること。或いは、第2実施形態を変更し、ロータ側ヒンジ要素52を鉄系の焼結材製とすること。このようにすれば、焼結材の良好な潤滑油保持性によって、他方のヒンジ要素51,52との間での摺動性及び耐焼付性が向上される。なお、前記潤滑油は、冷媒ガス中にミスト状として含まれてクランク室15に供給される。
【0068】
・上記各実施形態においては、斜板側ヒンジ要素51及びロータ側ヒンジ要素52の一方のみが、それが所属するロータ17上又は斜板18上において回動可能とされていた。これを変更し、斜板側ヒンジ要素51を斜板18上において回動可能に構成するとともに、ロータ側ヒンジ要素52をロータ17上において回動可能に構成すること。
【0069】
・上記第2実施形態を変更し、ロータ側ヒンジ要素52においてそれを構成する要部43,45のうち、ロータ側突起43のみをロータ17上において回動可能に構成し、カム部45はロータ17に固定すること。同様に、上記第3実施形態を変更し、斜板側ヒンジ要素51においてそれを構成する要部44,45のうち、斜板側突起44のみを斜板18上において回動可能に構成し、カム部45は斜板18に固定すること。
【0070】
・上記第1及び第3〜第8実施形態においては、複数の斜板側突起44が斜板側ヒンジ要素51に一体形成され、当該斜板側ヒンジ要素51ごと斜板18に対して別体とされていた。これを変更し、複数の斜板側突起44を互いに別体とし、そして、各斜板側突起44毎に独立して斜板18上で回動可能とすること。
【0071】
・上記各実施形態において、軸部48,55と軸孔18c,17aとの間に、滑り軸受或いは転がり軸受を介在させること。或いは、軸部48,55の外周面及び軸孔18c,17aの内周面の少なくとも一方に、フッ素樹脂や二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を塗布すること。このようにすれば、斜板側ヒンジ要素51の斜板18上での回動(第1、第3〜第8実施形態)、或いはロータ側ヒンジ要素52のロータ17上での回動(第2実施形態)がスムーズとなり、斜板18の傾角変更つまり圧縮機の吐出容量変更をさらにスムーズとすることが可能となる。
【0072】
・上記各実施形態においては、ヒンジ要素51,52側に軸部48,55が、ロータ17又は斜板18側に軸孔17a,18cがそれぞれ設けられていた。これを変更し、ヒンジ要素51,52側に軸孔を、ロータ17又は斜板18側に軸部を設けるようにしてもよい。或いは、ヒンジ要素51,52側、及び、ロータ17又は斜板18側の両方に軸孔を設け、両軸孔間に軸部材を挿入介在させるようにしてもよい。
【0073】
・上記各実施形態においては、ヒンジ要素51,52に、それが所属するロータ17又は斜板18に対する回動の自由度が付与されていた。これを変更し、ヒンジ要素51,52に、それが所属するロータ17又は斜板18に対するスライド移動の自由度を付与すること。
【0074】
・上記各実施形態においては、ヒンジ要素51,52に、それが所属するロータ17又は斜板18に対する動きの自由度が、一自由度付与されていた。これを変更し、ヒンジ要素51,52に、それが所属するロータ17又は斜板18に対する動きの自由度を、二自由度以上付与すること。例えば、ヒンジ要素51,52に、それが所属するロータ17又は斜板18に対する、回動及びスライド移動の自由度を付与すること。
【0075】
・上記各実施形態において、係合溝41を構成する突起43,44は、ロータ17又は斜板18の一方から他方に向けて、アーム状に突出される構成であった。しかし、本発明は、例えば、単なる円盤状(例えば上記各実施形態においてヒンジ要素51,52を削除したような形状)のロータ又は斜板の盤面に係合溝を穿設する態様も含む。
【0076】
・本発明を、両頭型のピストンを備えた容量可変型圧縮機において具体化すること。
・本発明を、カムプレートたる揺動板を備えた、ワッブルタイプの容量可変型圧縮機において具体化すること。
【0077】
上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
(1)前記動きの自由度が付与されたヒンジ要素は、当該ヒンジ要素が所属するロータ又はカムプレートよりも比重の小さい材料により構成されている請求項1〜5のいずれかに記載の容量可変型圧縮機。
【0078】
(2)前記動きの自由度が付与されたヒンジ要素は、アルミニウム系の金属材料により構成されているとともに、当該ヒンジ要素が所属するロータ又はカムプレートは鉄系の金属材料により構成されている前記技術的思想(1)に記載の容量可変型圧縮機。
【0079】
(3)容量可変型圧縮機のヒンジ機構を構成するヒンジ要素であって、基部(上記各実施形態においてはベースプレートに具体化されている)と、当該基部の一方の面に立設された複数の突起と、基部の他方の面に設けられた軸部とからなることを特徴とするヒンジ要素。
【0080】
【発明の効果】
上記構成の本発明によれば、ヒンジ機構の耐久性向上及びヒンジ機構のスムーズな動作を達成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】容量可変型圧縮機の縦断面図。
【図2】ヒンジ機構の側面図。
【図3】ヒンジ機構の平面図。
【図4】斜板側ヒンジ要素の正面図。
【図5】第2実施形態を示すヒンジ機構の断面拡大図。
【図6】第3実施形態を示すヒンジ機構の平面図。
【図7】第4実施形態を示すヒンジ機構の側面図。
【図8】第5実施形態を示すヒンジ機構の断面拡大図。
【図9】第6実施形態を示すヒンジ機構の平面図。
【図10】第7実施形態を示すヒンジ機構の断面図。
【図11】ヒンジ機構の斜視図。
【図12】第8実施形態を示すヒンジ機構の断面図。
【図13】ヒンジ機構の平面図。
【図14】従来の容量可変型圧縮機の断面部分図。
【符号の説明】
11…ハウジングを構成するシリンダブロック、12…同じくフロントハウジング、14…同じくリヤハウジング、16…駆動軸、17…ロータ、18…カムプレートとしての斜板、18c…ヒンジ要素の枢支を達成する軸孔、18d…規定手段としての段差、19…ヒンジ機構、22…シリンダボア、23…ピストン、43…ロータ側突起、44…斜板側突起、44b…斜板側突起の先端たる円弧面、45…軸方向荷重受承部としてのカム部、48…ヒンジ要素の枢支を達成する軸部、51…カムプレート側ヒンジ要素としての斜板側ヒンジ要素、52…ロータ側ヒンジ要素。
Claims (5)
- ハウジング内のシリンダボアにはピストンが収容され、ハウジングに回転可能に支持された駆動軸にはロータが一体回転可能に設けられ、駆動軸にはカムプレートがスライド移動可能でかつ傾動可能に支持され、ロータとカムプレートとの間にはヒンジ機構が介在され、駆動軸の回転運動がロータ、ヒンジ機構及びカムプレートを介してピストンの往復運動に変換されるとともに、カムプレートがヒンジ機構の案内によって駆動軸上を傾動しつつスライド移動されることで吐出容量を変更可能な容量可変型圧縮機において、
前記ヒンジ機構は、ロータに設けられたロータ側ヒンジ要素と、カムプレートに設けられ、ロータ側ヒンジ要素と係合されるカムプレート側ヒンジ要素とを備え、ロータ側ヒンジ要素及びカムプレート側ヒンジ要素の少なくとも一方には、当該ヒンジ要素が所属するロータ又はカムプレートに対する、動きの自由度が付与されていることを特徴とする容量可変型圧縮機。 - 前記ロータ側ヒンジ要素及びカムプレート側ヒンジ要素の少なくとも一方には、当該ヒンジ要素が所属するロータ又はカムプレートに枢支されることで、回動の自由度が付与されている請求項1に記載の容量可変型圧縮機。
- 前記ヒンジ要素に動きの自由度が付与された、ロータ及びカムプレートの少なくとも一方には、ヒンジ要素の動作範囲を当接規定する規定手段が設けられている請求項1又は2に記載の容量可変型圧縮機。
- 前記ロータ側ヒンジ要素は、ロータにおいてカムプレートに向かって突設されたロータ側突起を備え、前記カムプレート側ヒンジ要素は、カムプレートにおいてロータに向かって突設されるとともに、ロータ側突起と当接係合することでロータからの回転力を受けるカムプレート側突起を備え、前記ロータ側ヒンジ要素及びカムプレート側ヒンジ要素の一方は突起の基部に軸方向荷重受承部を備えており、この軸方向荷重受承部は、ロータ側ヒンジ要素及びカムプレート側ヒンジ要素の他方が有する突起の先端と摺動可能に当接することで、カムプレートに作用する軸方向荷重を受承する請求項1〜3のいずれかに記載の容量可変型圧縮機。
- 前記ロータ側突起及びカムプレート側突起の少なくとも一方は複数が備えられており、この複数の突起を一体形成してなる一体化品に、当該一体化品が所属するロータ又はカムプレートに対する、動きの自由度が付与されている請求項4に記載の容量可変型圧縮機。
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