JPH051061U

JPH051061U - ピストンリング用線材

Info

Publication number: JPH051061U
Application number: JP4806791U
Authority: JP
Inventors: 勲中吉
Original assignee: 金井宏之
Priority date: 1991-06-25
Filing date: 1991-06-25
Publication date: 1993-01-08

Abstract

(57)【要約】【目的】フラッタリングを招くことなく、ピストンリ
ングの軽量化を可能にするピストンリング用線材を提供
する。【構成】一側面２に２本の平行な溝３、３を長手方向
に連続して設け、断面略Ｅ字形にして成る。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は内燃機関に用いられるピストンリングの材料となるピストンリング用線材であって、特に軽量化を図ったピストンリング用線材の改良に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

ピストンリングは、シリンダ内の圧縮されたガスの漏れを防止するために使用され、ピストンの外周壁面に設けられたリング溝に嵌着され、シリンダの内周壁面を上記ピストンの往復移動に伴って摺動するものである。

【０００３】近年、ピストンリングは、内燃機関の高性能化に伴い、燃料消費量の低減化および高速回転化を達成するために、軽量化が強く望まれている。このため、ピストンリングは薄板化の方向に進み、ピストンリングの材質は加工性および強度の点で薄板化し難い鋳鉄から鋼へと移行し、ピストンリングの製造方法も所要の断面形状を有する長尺の鋼よりなるピストンリング用線材をコイリング加工によりリング状に成形した後、表面処理により耐摩耗性を付与させている。

【０００４】そして、従来のピストンリング用線材11は、図３に示すように、横断面形状が略長方形を有する鋼製の線材であった。また、上記従来のピストンリング用線材11の製造方法は、φ5.５mm線材に幾度かの熱処理と伸線加工を繰り返し行なって線径を細くした後に、圧延加工により所要の断面形状に加工する。そして仕上げ処理として、焼入焼戻し処理を行なって強度と耐熱性を付与していた。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

上記従来のピストンリング用線材は、線材厚み寸法を薄くすることによりピストンリングと成した時にピストンリングを薄板化して、軽量化が図られていた。しかしながら、ピストンリングの板厚を薄くすると、強度が低下して、ピストンの高速摺動により、ピストンリングが上下方向に波打する、所謂フラッタリングを起こして、ピストンリングとしての機能を十分に果たすことができなくなるため、薄板化にも限度があった。

【０００６】また、ピストンリングを軽量化するために、長尺で断面が矩形のパイプをコイリング加工する方法が試みられているが、コイリング加工において、断面形状が崩れてしまうという問題があり、実用化されていない。

【０００７】本考案は上記問題点に鑑みてなされたものであり、フラッタリングを招くことなく、ピストンリングの軽量化を可能にしたピストンリング用線材を提供することを目的とするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

本考案に係るピストンリング用線材は、平坦な一側面に２本の平行な溝を長手方向に連続して設け、断面略Ｅ字形にして成る。また、上記溝において、溝幅寸法を線材厚み寸法の0.２〜0.３倍とし、溝深さ寸法を線材幅寸法の0.３〜0.７倍にして成る。

【０００９】上記溝幅寸法と線材厚み寸法および溝深さ寸法と線材幅寸法の関係を上記範囲に特定することにより、ピストンリングに成形した時に要求される強度を保ちつつ、軽量化が実施できる。これ以上の大きな溝にすると、強度が低下して、フラッタリングが発生しやすくなり、またこれ以下の小さな溝にすると、軽量化が図れず、ピストンリングとしての機能の向上に寄与できない。

【００１０】

【作用】

上記構成の本考案に係るピストンリング用線材は、断面略Ｅ字形にすることにより、ピストンリング用線材の断面積を減少させる。また、Ｅ字形の中央突出部は、コイリング加工時に補強部となって、補強部の外周面中央が中央突出部（内周面）方向に凹むのを防止する。また、外周面の肉厚部によりピストンリングとなした時の強度を確保する。

【００１１】

【実施例】

以下、本考案の一実施例に係わるピストンリング用線材について図面に基づいて説明する。

【００１２】図１において、１は圧力リングとして用いられるＳi −Ｃr 鋼よりなる断面略Ｅ字形のピストンリング用線材である。即ち、φ5.５mmのＳi −Ｃr 鋼線材を熱処理、伸線加工によりφ3.２mmの線材とし、その後、焼なまし処理と圧延加工を繰り返して、線材厚み寸法Ａ＝1.５mm 、線材幅寸法Ｂ＝3.０mmで平坦な一側面２の長手方向に平行な２本の溝３、３を有する断面略Ｅ字形に成形する。そして、仕上げ処理として、焼入焼戻し処理を行なって、真直性，強度等を付与して、ピストンリング用線材を形成する。ところで、上記溝加工は、切削加工により行なうことも可能である。

【００１３】上記断面略Ｅ字形の溝形状は、平坦な一側面２に溝幅寸法Ｃ＝0.３mm、溝深さ寸法Ｄ＝2.０mmの２本の溝３、３を有し、また、他側面４には肉厚部５を有し、さらに上記溝３、３を形成する上部突出部６の厚み寸法Ｅが0.３５mm、中央突出部７の厚み寸法Ｆが0.２mm、下部突出部８の厚み寸法Ｇが0.３５mmである。ところで、上記ピストンリング用線材１は、所要長に切断して、その一側面２が内周面に、他側面４が外周面に夫々なるようにコイリング加工を施して、所望のピストンリングを形成するものである。

【００１４】ところで、内周面２の中央突出部７は、コイリング加工時の補強部となって、外周面中央が内周面方向に凹むのを防止するため、中央突出部はできるだけ内周面２の中央に位置するのが好ましい。

【００１５】また、本考案のピストンリング用線材に用いられる素材としては、Ｓi −Ｃr 鋼に限らず、マルテンサイト系ステンレス鋼の使用も可能である。

【００１６】次に、本考案により得られた上記ピストンリング用線材１を用いて、図２に示す外周面に硬質クロムメッキ９を施したピストンリング10を製造し、ピストンリングとしてのフラッタリング、耐熱性について試験を行ない評価を行なった。

【００１７】その結果、図３に示す従来のＳi −Ｃr 鋼のピストンリング用線材11を用いた図４に示す硬質クロムメッキ10を施したピストンリング12と同等以上の特性を有することが確認できた。また、従来のピストンリング用線材より成るピストンリングより最大約４０％の軽量化が可能であることも確認できた。

【００１８】

【考案の効果】

本考案のピストンリング用線材は上記構成であるため、フラッタリングを起こすことなく、大幅な軽量化が図れ、しかも内燃機関の高回転化および燃料消費量の低減化に著しい効果を発揮するピストンリングが得られるという優れた実用的効果を有するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案のピストンリング用線材の一実施例を示
す概略断面図である。

【図２】図１に示す本考案のピストンリング用線材１を
用いたピストンリングの一実施例を示す斜視図である。

【図３】従来のピストンリング用線材を示す概略断面図
である。

【図４】従来のピストンリング用線材を用いたピストン
リングの斜視図である。

【符号の説明】１ピストンリング用線材２一側面３溝４他側面５肉厚部６上部突出部７中央突出部８下部突出部９硬質クロムメッキ 10 ピストンリング 11 ピストンリング用線材Ａ線材厚み寸法Ｂ線材幅寸法Ｃ溝幅寸法Ｄ溝深さ寸法Ｅ、Ｆ、Ｇ各突出部の厚み寸法

Claims

【実用新案登録請求の範囲】

【請求項１】一側面に２本の平行な溝を長手方向に連
続して設け、断面略Ｅ字形にして成るピストンリング用
線材。
【請求項２】溝幅寸法を線材厚み寸法の0.２〜0.３倍
とし、かつ溝深さ寸法を線材幅寸法の0.３〜0.７倍とし
た請求項１記載のピストンリング用線材。