JPH047881Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （考案の分野） 本考案は、工作機械に着脱自在に取付けられて
駆動回転される、ドリル、バイト、リーマなどの
切削工具の異常（折損、欠け、チツピング、摩耗
など）を検出するのに用いられるAEセンサの取
付用プレートに関する。

（従来技術とその問題点） 工作機械では、その切削工具が駆動回転時に上
述のような異常を生じたときに、周波数の高い
AE（アコーステイツクエミツシヨン）波を発生す
ることが知られている。そこで、切削工具の加工
中（インプロセス）における異常検出のために
AEセンサが用いられている。このAEセンサの使
用に際し、従来では、第７図（第４図参照）に示
すように構成されていた。

先ず、工作機械Ａの全体構成について説明すれ
ば、１は、主軸側ケースであり、コラム２に第１
駆動モータ３によつて駆動上下移動自在に取付け
られている。前記主軸側ケース１には主軸（図省
略）が回転自在に内装され、主軸側ケース１に取
付けられた第２駆動モータ４と主軸とが伝動プー
リや伝動ギアなどを介して連動連結され、そし
て、主軸にはチヤツクを介してドリルなどの切削
工具５が着脱自在に取付けられている。

コラム２にはベツド６が設けられ、このベツド
６上に、前記切削工具５によつて加工されるワー
ク７が固定支持されている。８は、切削工具５に
よる加工時に冷却用の油を供給する給油管であ
る。

このような工作機械Ａに対し、前記AEセンサ
９を次のように設置していた。

第１従来例 AEセンサ９を主軸側ケース１の外面に取付け、
切削工具５の異常に伴なうAE波を、切削工具５、
主軸、ベアリングおよび主軸側ケース１を介して
AEセンサ９に伝播させ、そのAE波を検出するよ
うに構成していた。

第２従来例 AEセンサ９をベツド６上に取付け、切削工具
５の異常に伴なうAE波を、ワーク７およびベツ
ド６を介してAEセンサ９に伝播させ、そのAE波
を検出するように構成していた。

なお、第７図では、第１および第２従来例の両
方を図示している。

しかしながら、このような構成を有する従来例
の場合では、それぞれ次のような欠点があつた。

（） 第１従来例の欠点 ベアリングにおいて、回転に伴なうノイズを発
生するのみならず、異常信号として本来的に必要
な周波数の高いAE波が減衰され、Ｓ／Ｎ比が非
常に低下し、折損は検出できても、欠けやチツピ
ング、摩耗などは検出しづらく、異常の検出精度
が低下する欠点があつた。

（） 第２従来例の欠点 ワーク７の移動音など、ワーク７やベツド６か
らレベルの高い機械的ノイズが発生し、それらの
ノイズに起因して、第１従来例の場合と同様に異
常検出精度が低下する欠点があつた。また、ワー
ク７が大きくて長いものの場合に、切削工具５が
主軸への取付箇所近くで折損すると、AE波の減
衰量が大きく、その折損すら検出できないことが
あり、ワーク７の形状に影響を受ける欠点があつ
た。

また、ベツド６がレール上を移動する工作機械
Ａでは、AEセンサ９をベツド６上に取付けるこ
とができないため、AEセンサ９をコラム２側に
取付けざるを得ず、AE波の減衰量がより一層大
きくなつてＳ／Ｎ比が低下し、検出精度が一層低
下する欠点があつた。

更に、このようなAEセンサ９は、一般に、ワ
ークと治具との接触音、ワークの搬送音、他の工
作機械の切削加工時の発生音などのAE波を含ん
だノイズが多く発生しているノイズ環境の悪い工
場で使用されるものであり、それらノイズが工作
機械Ａの本体そのものに伝播されやすく、上記第
１および第２従来例のものでは、欠けやピツチン
グ、摩耗などの異常の検出精度がどうしても低下
し、加工不良品の発生を防止する上で改善の余地
があつた。

（考案の目的） 本考案は、このような事情に鑑みてなされたも
のであつて、切削工具の異常に伴なつて発生する
AE波を減衰少なく検出するとともに、AEセンサ
の取付支持構成に起因するノイズ伝播をも防止
し、切削工具の異常を精度良く検出できるように
AEセンサを取付けるAEセンサ用取付プレートを
提供することを目的とする。

（考案の構成と効果） 本考案のAEセンサ取付用プレートは、このよ
うな目的を達成するために、AE波を伝播可能な
プレート部材に、AEセンサの設置部と、工作機
械に着脱自在に取付けられて駆動回転される切削
工具の軸部を、その軸部の外周面との間に空気の
侵入を阻止する液体または液状体を滞留可能な状
態で挿通するブツシユと、前記ブツシユの左右両
側の所定距離離れた部位に一体的に連設されて設
けられ、前記工作機械に対して位置固定する支持
部材の取付部が形成され、前記ブツシユから前記
設置部にわたるAE波伝播経路への、前記工作機
械からのノイズ伝播を阻止する吸音材とを備えて
構成する。

この構成によれば、本考案のAEセンサ取付用
プレートを用いることにより、外部ノイズの影響
を受けることの無い状態で、異常時に発生する
AE波を、切削工具自体から、液体または液状体、
および、ブツシユを介してプレート部材に伝播さ
せ、その伝播されたAE波をAEセンサによつて検
出できることとなる。

したがつて、切削工具からほぼ直接的に伝播さ
れるAE波を検出できるから、ベアリングに起因
するノイズや減衰が無く、また、ワークの形状に
よる影響を受けることが無く、折損はもちろんの
こと、欠けやチツピング、摩耗などをもＳ／Ｅ比
の高い状態で精度良く検出でき、切削工具の異常
を精確に検出できるようになつた。

そのうえ、取付構成のための支持部材を介して
プレート部材に伝播される外部ノイズを吸音材で
吸収し、外部ノイズがAEセンサに伝播すること
を防止でき、欠けやピツチング、摩耗などをより
一層精度良く検出できるようになつた。

これらの結果、欠けやチツピング、摩耗などが
発生したまま、継続して加工不良品を生産すると
いうことを効率良く回避でき、製品を歩留まり良
く生産できるようになつた。

（実施例の説明） 以下、本考案を図面に示す実施例に基づいて詳
細に説明する。第１図は、本考案の実施例に係る
AEセンサ取付用プレートの平面図、第２図は、
第１図の−線一部切欠矢視図である。これら
の図において、１０は、AE波を伝播可能なプレ
ート部材である。このプレート部材１０の中央側
所定箇所に、工作機械Ａに着脱自在に取付けられ
て駆動回転される切削工具の一例としてのドリル
５の軸部５ａを挿通するブツシユ１１が取付けら
れている。また、ブツシユ１１の左右両側それぞ
れの所定距離離れた箇所に、ベークライトや硬質
ゴム製の平板状吸音材１２が接着によつて一体的
に連接されている。これらの吸音材１２，１２そ
れぞれには、支持部材としての支持ロツド１３
（第５図参照）を挿通するロツド挿通孔１４が設
けられている。更に、プレート部材１０は磁性材
料によつて成形され、そして、前記ブツシユ１１
と両ロツド挿通孔１４，１４の並んだ方向と直交
する方向に両吸音材１２，１２よりも突出され、
その突出部をしてAEセンサ９の設置部１５に構
成されており、この設置部１５とブツシユ１１と
にわたり、前記吸音材１２，１２によつて工作機
械Ａ側からのノイズ伝播を阻止する状態でAE波
伝播経路Ｒが形成されている。

AEセンサ９は、第２図に示すように、マグネ
ツトケース１６に収納されるとともに、蓋１７を
ねじ込むことにより、圧縮コイルスプリング１８
を介してマグネツトケース１６内に固定保持され
ている。これにより、マグネツトケース１６を前
記設置部１５に載置するだけでマグネツトケース
１６がプレート部材１０に磁気吸着され、AEセ
ンサ９をプレート部材１０に取付けることができ
るようになつている。

前記ブツシユ１１の内径は、ドリル５の外径よ
りも比較的大に設定され、ブツシユ１１内にドリ
ル５を容易に挿通できるとともに、ドリル５の軸
部を挿通した状態で、ブツシユ１１の内周面と外
周面との間に、油膜やグリスあるいは水などの、
空気の侵入を阻止する液体または液状体を滞留で
きるように構成されている。

以下、上記AEセンサ取付用プレートの使用態
様について説明する。なお、工作機械Ａの全体構
成としては、従来例で説明した通りであり、同一
番号を付し、その説明は省略する。

即ち、第３図ないし第５図に示すように、主軸
側ケース１の主軸頭１９にベアリング２０により
回転自在に設けられている主軸２１に、チヤツク
機構（図示せず）を介してドリル５が取付けられ
ている。前記主軸頭１９を間にした両側箇所それ
ぞれに、段付きの前記支持ロツド１３をねじ込み
によつて取付け、その支持ロツド１３，１３の先
端側を前記ロツド挿通孔１４，１４それぞれに挿
通するとともに、ドリル５をブツシユ１１に挿通
し、前記支持ロツド１３，１３をナツト２２，２
２によつて締め付け固定し、プレート部材１０を
工作機械Ａに対して位置固定する。図中Ｂは、ブ
ツシユ１１の内周面と外周面との間への空気の侵
入を阻止する油膜である。この油膜は、加工に先
立つて予め注入しておいても良いが、加工に伴な
つて前記給油官８からの油によつて自ずと形成さ
れるものであり、加工開始時に注入していなくて
も良い。

この後、前記設置部１５にAEセンサ９を載置
し、その配線２３を周波数判定処理部（図外）に
導き、AE波を検出してドリル５の折損、欠け、
チツピング、摩耗などの各種異常を検出できるよ
うにするのである。

第６図は他の実施例を示し、磁性材料によるプ
レート部材１０により、全体としてＴ字形状に構
成し、前述実施例における吸音材１２，１２それ
ぞれに相当する箇所に、前記支持ロツド１３，１
３を挿通する取付部としてのロツド挿通孔１４を
形成し、そして、支持ロツド１３，１３それぞれ
をベークライトや硬質ゴムにより成形して吸音材
に構成してある。

上記実施例では、AEセンサ９をマグネツトケ
ース１６により磁力でプレート部材１０に取付
け、その取付けを極めて容易に行なえるようにし
ているが、本考案としては、AEセンサ９をビス
止めによつて取付けるなど各種の取付構造が採用
可能である。

また、プレート部材１０を工作機械Ａに対して
位置固定するのに、支持ロツド１３をロツド挿通
孔１４に挿通して固定するようにしているが、例
えば、板状の部材によりプレート部材１０を挟み
付けて固定するようにしても良く、各種の支持部
材が採用でき、またその取付構造としても、挟み
付け用の凹部など各種の変形が可能であり、ロツ
ド挿通孔１４，１４や凹部などをして取付部１４
と称する。

前記吸音材１２としては、ベークライトや硬質
ゴムなどのように電気的に絶縁性を有する材料で
構成すれば、工作機械ＡとAEセンサ９とを電気
的に絶縁でき、両者間の音響インピーダンスを高
くとることができて、コモンモードやノーマリモ
ードの電気的ノイズによる検出精度の低下をも回
避でき、切削工具５の異常をより一層精度良く検
出できる利点を有しているが、本考案としては、
吸音性に優れていれば良く、絶縁性の低い材料で
構成するものでもよい。

本考案としては、取付部１４の周囲全体を吸音
材１２にしたり、あるいは、他の実施例のように
支持ロツド１３，１３自体を吸音材にするものに
限らず、例えば、それらの構成に加えて、また
は、別途に、支持ロツド１３，１３それぞれとロ
ツド挿通孔１４，１４それぞれとの接触箇所にゴ
ム製のブツシユやワツシヤを介装するようにして
も良く、これらの構成をして吸音材１２と総称す
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案の実施例に係るAEセンサ取
付用プレートの平面図、第２図は、第１図の−
線一部切欠矢視図、第３図は、AEセンサ取付
状態の工作機械の全体正面図、第４図は、第３図
の全体側面図、第５図は、要部の一部切欠拡大正
面図、第６図は、他の実施例を示す要部の一部切
欠拡大正面図、第７図は、従来例を示す全体正面
図である。 ５……切削工具としてのドリル、９……AEセ
ンサ、１０……プレート部材、１１……ブツシ
ユ、１２……吸音材、１３……支持部材としての
支持ロツド、１４……支持部材の取付部としての
ロツド挿通孔、１５……AEセンサの設置部、Ａ
……工作機械。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 AE波を伝播可能なプレート部材に、 AEセンサの設置部と、 工作機械に着脱自在に取付けられて駆動回転さ
   れる切削工具の軸部を、その軸部の外周面との間
   に空気の侵入を阻止する液体または液状体を滞留
   可能な状態で挿通するブツシユと、 前記ブツシユの左右両側の所定距離離れた部位
   に一体的に連設されて設けられ、前記工作機械に
   対して位置固定する支持部材の取付部が形成さ
   れ、前記ブツシユから前記設置部にわたるAE波
   伝播経路への前記工作機械からのノイズ伝播を阻
   止する吸音材とを備えて成るAEセンサ取付用プ
   レート。