JPH0459900B2 - - Google Patents

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JPH0459900B2
JPH0459900B2 JP62193321A JP19332187A JPH0459900B2 JP H0459900 B2 JPH0459900 B2 JP H0459900B2 JP 62193321 A JP62193321 A JP 62193321A JP 19332187 A JP19332187 A JP 19332187A JP H0459900 B2 JPH0459900 B2 JP H0459900B2
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JP
Japan
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tissue
patch
membrane
living body
fibers
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Yasuharu Noitsushiki
Koji Watanabe
Hideaki Kitagawa
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Toray Industries Inc
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Toray Industries Inc
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は生体由来の結合組織を有する、生体適
合成、取扱易さに極めて優れた医療用パツチに関
するものであり、従来では使用不可能であつた部
分にも良好に使用できる画期的な新規高性能医療
用パツチに関するものである。
(従来の技術) 本発明で言う医療用パツチとは生体器官を補修
するためのシート状物を意味し、かかるものとし
ては、従来主に、織物、編物、あるいは不織布を
主体とする繊維シートが用いられてきた。しかし
従来の場合、生体とは全く関係の無い人工物であ
り、生体内に埋入した時、生体のリアクシヨンの
ため、部位により、炎症反応、瘢痕組織の形成、
血栓形成、感染、など思わぬトラブルにみまわれ
ることがしばしばであつた。例えば心房中隔もし
くは心室中隔欠損修復手術における従来例では、
この部位の補修のため、パツチをあて補修しても
このパツチ部で血栓形成とその剥離が生じこの剥
離した血栓が生体の他のより狭隘な部位に運ば
れ、ここで詰まり、重大な障害を引き起こすこと
がしばしば報告されている。この解決策として、
抗血栓材料面からの精力的検討が引き続きなされ
ている。しかし現在、最も抗血栓性の高いとされ
る素材を用いても、この問題は完全に解決された
とは言い難い状況にある。すなわち、その素材を
用いた場合、確かにその素材自体の表面に血栓の
痕跡が認められない場合であつても、明らかに生
体の他の部位で血栓閉塞障害と認められる症例が
多発しており、なんらかの原因で、瞬間的な血栓
形成とその剥離が生じている、と考えざるを得な
い。
また従来のパツチでは、例えば血管壁の補修と
して用いた場合、生体との器質化をはかるために
はなるべく密度の低い多孔質のものが望ましいと
される。しかし、多孔質のものは漏血が著しく、
漏血を防ぐために、密度の詰まつたものとする
と、生体細胞の付着形成による器質化がさまたげ
られることになる。このバランスのとれた十分な
ものはいまだかつて無い。従来技術として他の種
類のパツチはBioprosthesisとして呼称される他
の生体組織もしくは器官を用いるものである。こ
の代表例としては、豚、牛、馬等の心膜をグルタ
ールアルデヒドで処理したシートがあげられる。
このBioprosthesisの重大な欠点は、十分な強度、
所望のサイズ(大きさ、厚さ)、均一な品質、と
いつた要求を満たすものが得られ難いことであ
る。また以上従来物に共通して、吻合のし易さ、
縫いやすさ、ほつれ難さ(縫い端しの切断の無い
こと)といつた取扱面でも充分なものが得られて
いない。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明は従来の上記欠点を改善した画期的新規
医療用パツチを提供せんとするものである。即
ち、本発明は、極細繊維基材に、生体由来の組織
が強固に均一に一体化し、優れた生体適合成と、
強度と、生体では得られない極めて均質で十分な
大きさと、さらに良好な取扱性、を有するパツチ
素材を提供せんとするものである。
(問題点を解決するための手段) 本発明は次の構成を有する。
(1) 少なくとも一面が0.8デニール以下の極細繊
維で形成された繊維状基材と、それと強固に不
離一体化した生体由来組織とからなり、且つ少
なくとも一面が、かかる生体由来組織の平滑面
で被われた状態を有することを特徴とする新規
高性能医療用パツチ。
(2) 生体由来組織が、人体の線維芽細胞とコラー
ゲンとの混在であることを特徴とする、特許請
求の範囲第1項に記載の新規高性能医療用パツ
チ。
(3) 生体由来組織が抗血栓性処理されてなること
を特徴とする特許請求の範囲第2項に記載の新
規高性能医療用パツチ。
(4) 生体由来組織が人以外の動物由来組織であ
り、かつ抗原性抑制処理されてなることを特徴
とする特許請求の範囲第1項に記載の新規高性
能医療用パツチ。
本発明のパツチ形成に当たつては、生体組織と
の剥離性が良い素材を心棒として、その上を、細
胞形成性の良い繊維状基材で被覆したものを生体
の体内に埋入し、繊維基材中および廻りに生体細
胞を形成せしめ、しかる後これを体外に取り出
し、外側に盛り上がつた肉塊を適宜削ぎ落とし整
形し、心棒を切り除き、基材を切り開き、パツチ
となす(或いはこの順次を適宜入れ換え行つても
良い)のを骨子とする。本発明のごとく、心棒の
入つた筒状の形体をとらせることの利点は、 生体内に埋入した場合、スペースをとらず、
生体に対する不必要な刺激を軽減でき、生体の
体力の消耗を防げる。
筒状は、平面的拡がりでなしに実質的に線状
効果となり、生体内でのより限定された場所
で、生体組織の付着形成が行われるため、全体
に均質なものとなる。
心棒表面上に沿つて生体細胞(膜)が形成さ
れるため、心棒と接する基材表面には、極めて
平滑で均一な生体組織の平滑膜(面)が形成さ
れる。即ち、心棒の嵌入された筒状のため、組
織の付着形成は、まず外側から内面に向かつて
行われる。組織形成はその進行に伴い、繊維状
物基材を通し心棒の上に達する。この時、心棒
と筒状基材の空隙を、適度にとつておくことに
より、組織の形成を損なわず、しかも、基材面
から均一な、ほぼ一定の厚さとなり、かつ心棒
の表面の平滑度に応じた極めて平滑な表面とな
る生体組織層(膜)を形成させることができ
る。
これからもわかるように、本発明で言う平滑
とは実質的に表面凹凸のない基材面からの組織
の厚さがほぼ一定の状体を言う。また心棒に接
していない外側は素子の付着厚さが不規則で、
肉塊状の盛り上がりがみられる。このためパツ
チとして実際の使用時には、場合によつてはそ
のままでも使用可能だが、通常は外側の組織層
を適宜削り落とし、平滑化して用いる。
本発明では、少なくとも、心棒に接した内面
は極めて均一で、しかも薄い組織平滑膜(面)
を形成しているため、外側を部分的に削ぎ落と
しても、全体としては均一な柔軟なシート状の
パツチが得られるのである。
得られるパツチは波打ち状の皺(わかめ状の
うねりのある皺)がなく、均質な平板状のもの
となし得る。これは、心棒で筒状物が固定され
ているため、シート状で埋入した時に見られが
ちな、瘢痕組織もしくは細胞形成の不均一さに
起因する不均一収縮が生じないためである。本
発明では体外に取り出した時、なるべく組織を
傷付けずに、如何に心棒をとりはずせるかが極
めて重要なポイントとなる。
従つて、心棒に用い得る素材としては、その機
能から、筒状繊維基材の内空部を充填し、その表
面で、幾何学的意味での組織形成コントロールを
行える状態と成し得るものであつて、また組織を
傷つけずに、心棒を除去し易いもの、即ち、組織
との固着性が小さいものである必要がある。また
生体内に埋入したとき、生体になるべく違和感
(異物感)を与えないことも重要である。このた
めには、なるべく柔軟で、生体の運動時にも生体
を傷つける恐れが無いものが望ましい。
かかる観点から、心棒用素材としては、アル
ミ、ステンレス、鋼、セラミツクス、等に代表さ
れる無機物質や、シリコーン系、フツソ系、ビニ
ル系、ポリエステル系、ポリアミド系、その他一
般的プラスチツクなど、が適宜使用可能である。
かかるものを使用する場合、生体組織との固着性
が弱いものは、そのまま使用可能であるが、強い
ものについては、固着性を弱める手段、例えば、
表面をなるべく平滑にする、あるいは表面に生体
組織の固着性を弱める処理剤で処理する、などを
とるのが効果的である。
かかる処理剤としては、シリコーン、フツソ樹
脂、一般に知られている抗血栓剤、たとえばヘパ
リン、ウロキナーゼ、ハイドロゲル、アスピリ
ン、などを単なる処理、イオン結合、共有結合処
理することが有効である。柔軟素材が必要な場合
は特にプラスチツクが好ましい。またこの際も、
中空のチユーブ状にすることでより柔軟化が可能
となる。心棒材として特に好ましい例は、シリコ
ーン、フツソ、ビニル系等のプラスチツクなどで
ある 本発明で、筒状とは、単なる譬喩的意味に
理解すべきである。即ち、筒状の断面としては円
形が望ましいが、必ずしもこれにこだわる必要は
無く、楕円、三角、長方形、などこれを基にした
応用的断面形状も当然含まれる。
心棒の太さとしては目的により異なるため、一
義的には決めかねる。しかし、一般的には、筒状
物より僅か細い程度がよい。心棒と筒との間隙
が、あまりきつすぎると筒状体の内面に形成され
る生体膜層が十分発達せず、緩すぎると膜圧が不
揃いとなり均一なシート面が形成されないことに
なる。この程度は、筒状物が比較的スムーズにず
れる程度で、余り間隔が開かないのがよいであろ
う。より具体的目安は、筒状体の相当直径D(t)
に対し心棒の相当直径D(i)が、 0.1mm<D(t)−D(i)<3mm 程度が良い。しかし、本発明は必ずしもこれに捕
らわれるものではない。
本発明の繊維状基材を構成する極細繊維素材と
しては、生体内に埋入したときに、生体の拒否反
応が少なく、生体内での劣化が生じ難いものであ
れば適宜使用可能である。この具体例としては、
ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポ
リアミド、ポリオレフイン、ポリ塩化ビニル、フ
ツソ樹脂、ポリアセタール、ポリフエニレンスル
フイド、などからなる繊維状物で構成されたもの
である。このうち特にポリエチレンテレフタレー
ト、ポリブチレンテレフタレートを主体とするポ
リエステルが好ましい。また本発明では生体内に
埋入した時に、如何に早く、均一に、しかも繊維
基材と組織とが強固に一体化した状態となるかが
ポイントとなる。細胞形成と繊維基材との固着一
体化をより効果的に行うためには、繊維基材が親
水性素材で構成されているのがより好ましい。か
かる親水性素材としては、親水性官能基を有する
もの、例えばスルホン基、カルボシキル基、ポリ
エチレングリコール、ビニルピロリドン、アクリ
ルアミド、との共重合体、また物理的手段として
高電界圧のプラズマ処理による親水化処理、また
コラーゲン、セルロースなど天然由来親水性繊維
を併用したもの、その他これを発展させた手段が
ある。これら手段を適宜用いることで本発明はそ
の効果を一層発揮する。
さらに、得られたパツチの繊維基材と生体組織
との結合度合、柔軟性、ほつれ難さもパツチに要
求される極めて重要な特性である。
本発明では、生体適合性のみならず、かかる要
求を達成するにあたつては、繊維状物の繊維の太
さを0.8デニール以下、より好ましくは0.5デニー
ル以下、さらには0.1デニール以下とすると良い
ことを見出した。
かかる極細繊維の製法および加工方法について
は、すでにUSP3531368、USP3350488等に見ら
れるように、多成分形繊維を形成し、その一成分
を除去もしくは剥離せしめて極細繊維化する方法
がある。この極細化処理は、予め行つた後筒状に
加工出来るし、筒状に加工した後極細化処理する
ことも出来る。かかる方法を経ずに、直接極細繊
維となしたものを用いることも当然可能である。
直接極細化する手段により、連続したフイラメン
ト状のものを得るためには、太さにある程度の制
約をうけざるを得ない。現在商業的に入手可能な
ものは0.1デニール以上であり、それ以下のもの
を得るためには多成分形繊維を用いるのが良い。
フイラメント状で入手可能な場合は、その侭用い
て通常の織り、編み、組紐、等のチユーブ形成手
段を用いてチユーブ化し、筒状体を形成できる。
ステープル状の場合は、一旦紡績して糸状にし
てから同様に行うか、あるいは不織布となし、ニ
ードルパンチ、高圧流体、熱等の処理により筒状
体と成しうる。かかる手段はすでに公知の技術範
囲に入るものであり、これらの技術を適宜組み合
わせ利用できる。
またさらに、より直接的に筒状物を形成するこ
とも出来る。この例としては、メルトブローに代
表されるごとく、溶融ポリマーを微細な孔から高
速で押し出すか、もしくは引き取り、これを心棒
に吹きつけ筒状体となすことである。かかる直接
法では、繊維デニールは比較的小さくできる。
しかしこの際注意すべき点は、ポリマーの結晶
化度が上げられない場合が多く、繊維の機械的特
性が落ちる場合が多い。従つて、わずかなシエア
ーストレスで結晶化し易いか、延伸しないでも比
較的強度が高いポリマーの場合、例えばポリブチ
レンテレフタレート、ポリウレタン、液晶性のポ
リマー、等に限定されやすい。
またプラスチツク状であつても、延伸すること
で、繊維状にフイブリル化するものも使用可能で
ある。このような場合は、プラスチツクチユーブ
の作つた後、延伸することで達成できる。
以上の説明では、便宜上筒状に限り行つたが、
必ずしもこれに限定されるものでない。繊維シー
ト状物を形成した後これを筒状にしても良いし、
あるいは、繊維シート状物を心棒に巻きつけるだ
けでも実質的効果が得られる。かかる繊維状筒状
体に対し、さらに望ましいことは、ポロシティー
がなるべく高いこと、ほつれ難いことである。
ポロシティーQとしては120mmHgの圧力下1cm2
の面積当たり1分間の水の透過量(ml)で定義す
る。この値として通常300ml以上好ましくは1000
ml以上より好ましくは2000ml以上である。この範
囲は、繊維の太さと微妙に関係し、繊維が細くな
るに従い、ポロシティーは小さくても良好な結果
を示す傾向にある。参考までに、一般的繊維を対
象とした場合の最も好ましい値は4000ml以上であ
る。
また同一ポロシティーの場合でも、繊維が全体
に、均一に、細かく分散しているのが、細胞の形
成状態が良好となり好ましい。このようなハイポ
ロシティーの場合は、ほつれが問題となり、通常
パツチとして生体に縫合する場合、十分な耐ほつ
れ性が必要である。この耐ほつれ性の目安とし
て、次の如く、ほつれ抵抗値Tを定義する: 繊維状筒状体の切り口から3mmのところに半ル
ープ状に手術糸を通し引張り試験機で引つ張つた
時の最大過重(g)とする。
本発明ではTと上記ポロシティーQとの間に、 T×Q>3000 なることが望ましい。またこの際、より好ましく
はQ>500となるのが良い。
Tの値をコントロールするに当たつては、織
り、編み、組紐組織の改善で可能である。Tを高
くする手段としては、例えば織りの場合はもじり
織り、ニツトの場合はループ密度を高めた経編
み、組紐の場合はトーシヨンレースなど、組織面
からの改善も可能である。また熱による部分的融
着も有効な手段である。さらに柔軟性とポロシテ
ィーを損なわない手段として、高速流体を吹きつ
け、繊維同士を相互に絡まり合わせることによ
り、Tの値を大幅に高くできる。特に繊維相互
を、高速流体により絡ませるためには、繊維の太
さは小さいほうが好ましく、この場合は特に0.5
デニール以下が効果的である。また繊維は、単独
のみならず太い繊維と合わせ用いることも可能で
ある。大きなメツシユ状のものに他の繊維を載置
してその載置した繊維同士もしくはメツシユ構成
繊維と相互に絡ませることも出来る。
本発明の適用に当たつて、かくして得られた繊
維基材を生体に埋入し基材と生体結合組織とが強
固に一体化したものとなした後、これを生体外に
取り出し、必要に応じ適当な処理を行つた後、パ
ツチとして用いる。
パツチを構成する最も好ましい生体組織は、パ
ツチを必要とする患者の自家組織である。かかる
場合は、パツチを必要とする患者の適当な部位
に、本発明に係る心棒を繊維基材で被覆したもの
を埋入し、細胞を十分形成させる。それを取り出
し処理してパツチとなし、それを用いることが最
も好結果をあたえる。
また、他の動物由来の異種生体組織、たとえば
牛、豚、山羊、等の体内に埋入して形成させた異
種生体組織の場合、或いは自家組織の場合であつ
ても使用部位により、抗原性抑制処理、抗血栓性
処理、など適当な処理をした後使用する必要が生
じる。抗原性抑制処理としては適当な架橋剤、例
えばグルタルアルデヒドに代表されるアルデヒド
類、ヘキサメチレンイソシアネートに代表される
ジもしくはトリイソシアネート類、ポリグリセロ
ル−ポリグリシジルエーテルなどの多官能エポキ
シ類、等で処理することを意味する。抗血栓処理
はヘパリン、ウロキナーゼ、ハイドロゲル、アス
ピリン、などその他公知の抗血栓剤で処理する事
を意味する。かかる処理に当たつては、助剤を用
い、あるいはそのままで、化学的もしくは物理的
に付与せしめる。助剤を用いる方法としては、例
えばプロタミンとグルタルアルデヒド、グルシジ
ルアンモニユウムクロライドなど予め生体組織の
コラーゲンと結合せしめたものにヘパリンをイオ
ン結合的に付着せしめるなどといつた方法も採り
うる。
以上本発明のパツチを得るに当たり、生体由来
組織として、生体の結合組織を前提に説明してき
たが、本発明は体外での組織培養による培養組織
でも、特に極細繊維を用いた繊維基材を用いるこ
とにより極めて効果のあるものが容易に得られ
る。この組織培養に当たつては、繊維基材は筒状
でも、シート状でもいずれでも可能である。
極細繊維基材を用いることにより、従来の太い
繊維の場合に比し、細胞の増殖が盛んとなり、短
時間で、均一な薄い、基材と強固に一体化した細
胞膜が形成され、これがパツチとして極めて有効
なものとなる。従来ではこのような良好な体外培
養は不可能であつた。かかる体外培養も生体由来
組織の一つとして利用できる。
以上の如き手段により、本発明は、繊維基材と
生体組織とが強固に一体化した、十分な強度とサ
イズと均一性、柔軟性、とを有する、理想的生体
器官を人工的に現出させたともいえる優れたパツ
チとなる。本発明で繊維基材と生体組織とが強固
に一体化した状態とは、パツチとして用いる時点
でピンセツトで摘んでも容易に離れ難い状態をさ
す。
本発明のパツチは心房中隔、心室中隔、肺動
脈、大動脈縮窄再建補修、一般血管補修、腸壁、
胸壁、膀胱壁補修など従来のパツチでは適用不可
能な用途も含め極めて広範な利用が可能である。
(実施例) 以下実施例により本発明の効果をより具体的に
説明するが本発明はこれに限定されるものでな
い。
実施例 1 経糸に50D−48fのポリエステル繊維を用い、
緯糸として海島型多成分形繊維で125D−50f、海
成分ポリスチレン10部、島成分ポリエチレンテレ
フタレート90部、島数70/f、のものを用い繻子
織りで内径10.5mm長さ20cmの筒状体を形成した。
これをトルエン中につけ乾燥後軽く起毛処理し
た。さらに0.25mmの孔から高圧の水を吹きつけ起
毛で形成された極細の立毛繊維を絡ませた。この
時の極細繊維1本当たり0.03デニールであつた。
またこの筒状体のポロシティーは3600mlであつ
た。これに10mmのシリコーンチユーブを嵌入させ
エチレンオキサイドガスで滅菌後成犬の皮下に埋
入した。4週間後に取り出し外側を均一にメスで
均らし次いでシリコーンチユーブを引き抜いた。
この引き抜きは比較的スムーズに行えた。さらに
これを縦に切り開いたところ内面は極めてきれい
な均一な薄い生体組織の膜が形成されており平滑
なシート状のものが得られた。このパツチのほつ
れ抵抗値は1048であつた。強力は1cm当たり換算
4.3Kgと極めて強いものであつた。
ついで、成犬5頭の右心室壁より肺動脈にかけ
て切開し、ここに約3cm×2cmの大きさにカツト
したこのシートをパツチとして当て縫合固定し
た。
肺動脈圧は低圧であるにもかかわらず、パツチ
は柔軟性があるため自然な形で脹らみ、予期した
右室流出路拡大術が行えた。
5頭の成犬は術後、1、3、5、7、28日目に
屠殺し、試料を採取したが、パツチ部分は良好な
治癒を示し、内面には血栓の付着もなく、壁は天
然の血管壁と同様の柔軟性を保つていて、理想的
なパツチ材料であることが判明した。
光学顕微鏡による観察では、28日目の試料で、
パツチ材料内部にすでに線維芽細胞が侵入し、内
面は内皮細胞が覆つて、治癒が急速に進み完了し
ていることが確認された。
実施例 2 実施例1と同様にして、内径10mm、長さ4cmの
メツシユ状のポロシテイー4200のチユーブに外形
9mm、長さ4cmのシリコーンロツドを挿入したも
のを作つた。これを生後30日目の子牛の皮下に挿
入した。3週間後に、周囲に絡まりついた組織と
ともにこれを切除し、均一な厚さの組織が周囲に
付着した状態となる様にトリミングした。ついで
シリコーンロツドを除去した後、これを切り開
き、約3cm×4cmのポリエステル繊維で補強さ
れ、極細繊維と強固に一体化した生体組織由来の
膜を得た。
この膜を2%硫酸プロタミン液中に浸漬したの
ち、1%グルタールアルデヒド液中に漬け、つづ
いて1%ヘパリン液に浸漬した。
この膜は非常に薄く、しなやかで柔らかいにも
かかわらず強靭であり、付着した生体組織とポリ
エステル繊維との結合・絡まりは非常に強く、ピ
ンセツトでつまみ引き剥がそうとしても剥がれる
ことはなかつた。また膜を所望の大きさに切り出
す際、切断端がほつれるようなことは全くなかつ
た。この膜をエタノール内に保存した。
この膜のT値は1050、強力は幅1cm当たり2.3
Kgであつた。
この膜を生理的食塩水に漬けアルコールを生理
的食塩水で置換し、成犬の右心室から肺動脈基始
部に至る部分に切開を加え、ここにこの置換した
膜を2.5cm×3cmにわたつてパツチとして縫着し、
右室流出路拡大術を行つた。
術後実験犬の経過は良好で何等合併症は見られ
なかつた。術後1ケ月で実験犬よりパツチとして
使用した膜を採取した。
膜は周囲組織と軽く癒着していたが、一般の異
種組織移植(牛→犬)に見られるような異物排除
現象とか異物被包現象は全く見られなかつた。ま
た膜は植え込み時の柔軟性を維持していた。膜は
このような柔軟性と薄さを持つているにも関わら
ず十分血圧にも耐え、破裂することもなく、切断
端縫着部がほつれることもなかつた。また外側か
ら膜内部への細血管の侵入が見られ、膜は異種組
織と合成高分子材料であるポリエステル繊維のハ
イブリツド体であるにもかかわらず、すでに宿主
組織と一体化し、生体組織の一部となつているこ
とが判明した。
一方、膜の内面で、血流に面した部分では光沢
のある白色を呈し、しかも血栓の付着は全く見ら
れなかつた。
以上の結果、作成した膜は抗血栓性を有し、生
体適合性を持ち、柔軟でしかも切断端のほつれな
い、理想的なパツチ材料となつていることが判明
した。
実施例 3 100D−36fのポリブチレンテレフタレート繊維
を用い丸編機により内径10mmΦのチユーブを形成
した。これに同径のステンレスロツドを通しこの
上から軽くグラインデイングペーパーでこすり起
毛させた。この上から高圧水のジエツトを吹きつ
け、乾燥後ステンレスロツドを取り除きついで
2.1kvの電圧、酸素ガス存在下でプラズマ処理を
行つた。これを4cmの長さに切り、さらにシリコ
ーンロツドを挿入し、これを成犬の皮下組織内に
挿入した。3週間後にこれを取り出し、以下実施
例2と同様にして約3cm×4cmの膜を得た。
この膜を蒸溜水中に浸漬し、膜内部に含まれる
諸細胞を浸透圧で膨潤させたのち、超音波にて破
壊し、主としてコラーゲン線維からなるポリエス
テル繊維で補強された主体由来の膜を得た。
次にこの膜を2%硫酸プロタミン液に浸漬し、
1%グルタールアルデヒド液に漬け、つづいて1
%へパリン液中に浸漬した。
この膜は非常にしなやかで、薄く柔らかいにも
かかわらず、強靭であり、付着した生体組織、コ
ラーゲン線維とポリエステル繊維との結合・絡ま
りは非常に強く、ピンセツトで引き剥がそうとし
ても引き剥がせなかつた。また膜を所望の大きさ
に切り出す際、切断端がほつれるようなことは全
く無かつた。
この膜は70%エタノール中に保管し、以下の動
物実験にあたつては生理的食塩水に漬けアルコー
ルと生理的食塩水とを置換して用いた。
動物実験は別の成犬を用い、実施例2と同様の
部位に同様に縫着した。
術後経過は順調で、何等の合併症も見られなか
つた。
術後1ケ月後にパツチとして用いた膜をとりだ
したが、実施例2と同様に、膜は周囲組織と軽く
癒着していたが、一般の同種組織移植(異種犬→
異種犬)に見られるような異物排除現象とか異物
被包現象は全く見られなかつた。また膜は植え込
み時の柔軟性を維持していた。膜はこのような柔
軟性と薄さを持つているにも関わらず十分血圧に
も耐え、破裂することもなく、切断端縫着部がほ
つれることもなかつた。また外側から膜内部への
細血管の侵入が見られ、すでに宿主組織と一体化
し、生体組織の一部となつていることが判明し
た。
実施例 4 50D−540fのポリエステルの極細繊維を用い実
施例1と同様にして、内径10mm、長さ4cm、内径
9mmのチユーブを形成した。これにポリテトラフ
ルオロエチレンロツドを挿入し、成犬の皮下に挿
入し、3週間後に取り出し、以下同様にして3cm
×4cmの自家結合組織膜を得た。この膜を用い、
実施例2と同様にして、同一成犬の右心流出路拡
大術を行つた。
術後1月で実験犬より膜を切除し採取した。膜
は周囲結合組織と癒着しており、その境界が不明
瞭な程であつたが、特別な炎症反応や瘢痕組織形
成もなく自然に埋もれているような状態であつ
た。その他の状態は上記実施例と同様で、膜内部
への細血管の侵入が見られ、膜の内面で、血流に
面した部分では光沢のある白色を呈し、しかも血
栓の付着は全く見られなかつた。
(発明の効果) 本発明の新規高性能医療用パツチは次の如き優
れた効果を有する。
(1) 従来にない、生体結合組織を利用したパツチ
である。このため従来使用不可の部位への適用
も含め広範囲の適用が可能である。
(2) 生体の器質化が極めてスムーズに迅速に行わ
れ抜群の生体適合性を示す。
(3) 柔軟で、耐ほつれ性、吻合性が良く取扱性に
すぐれる。強力も極めて高く使用時における安
全性が高い。
(4) 皺がなくかつ平滑な面を有する均一な品質の
ものである。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 少なくとも一面が0.8デニール以下の極細繊
    維で形成された繊維状基材と、それと強固に不離
    一体化した生体由来組織とからなり、且つ少なく
    とも一面が、かかる生体由来組織の平滑面で被わ
    れた状態を有することを特徴とする新規高性能医
    療用パツチ。 2 生体由来組織が、人体の線維芽細胞とコラー
    ゲンとの混在であることを特徴とする、特許請求
    の範囲第1項に記載の新規高性能医療用パツチ。 3 生体由来組織が抗血栓性処理されてなること
    を特徴とする特許請求の範囲第2項に記載の新規
    高性能医療用パツチ。 4 生体由来組織が人以外の動物由来組織であ
    り、かつ抗原性抑制処理されてなることを特徴と
    する特許請求の範囲第1項に記載の新規高性能医
    療用パツチ。
JP62193321A 1987-07-30 1987-07-30 Novel high performance medical patch Granted JPS6434359A (en)

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JPS614546A (ja) * 1984-06-18 1986-01-10 三興空気装置株式会社 板状成形物の破砕装置
JPS6110136A (ja) * 1984-06-25 1986-01-17 Fumio Itatsu 油圧機器の圧力調整装置
JPS6226068A (ja) * 1985-07-29 1987-02-04 株式会社高研 抗血栓性材料の製造方法

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