JPH0456378B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、ビデオテープレコーダ（以下VTR
と略す）の回転ヘツドアセンブリに関するもので
ある。

従来例の構成とその問題点 従来のVTRの回転ヘツドアセンブリは第１図
にその具体構成を示す様に、円筒部を有する固定
シリンダ１と、略同一の直径の固定部を有し、上
記固定シリンダ１に同軸をもつて近接して設置さ
れ回転する磁気ヘツド２をとう載する回転部材３
とより構成される。磁気テープ４は、この回転ヘ
ツドアセンブリにヘリカルに巻きつけられ、一定
速度で走行する。５は磁気テープ４の巾方向の走
行シリンダを規制する段差部（以下リードと呼
ぶ）である。磁気ヘツド２は毎分1800rpmで回転
し、磁気テープに対して、画像信号の記録、再生
を行なう。第２図、上記回転ヘツドアセンブリの
従来の構成例を断面図により示したものである。
第２図において、６は回転軸であり、軸受７，８
により回転支持されており、駆動モータ（図示せ
ず）により回転駆動される。磁気ヘツド２は、部
材９を介して回転軸６に固定され、所定速度で回
転する。固定シリンダ１は、VTRのベース上に
固定されている。１０は軸受止め輪である。

さて、上記のような回転ヘツドアセンブリ上を
走行する磁気テープは、その磁性面が、回転ヘツ
ドアセンブリと部分的に摺動接触を行なう。この
とき、固定シリンダ面との接触面圧はテープテン
シヨンによつて決まり平均的には５〜50ｇ重／cm²
である。又、磁気テープ走行速度は記録再生モー
ドで１〜10cm／secのオーダである。第３図ａ，
ｂは、前記従来の回転ヘツドアセンブリ上での走
行時における磁気テープの姿態を実測した結果を
模式的に示したものである。磁気テープは極めて
変形性に富むため、回転ヘツドアセンブリ上で一
様な変形状態とはならず、場所によつて変形状態
は大きく変化する。すなわち、回転ヘツドアセン
ブリへのテープ入側付近部（第１図Ａ部）では、
回転部材と磁気テープの間で生じる動圧の影響や
磁気テープの突出によるクイズ効果の影響で磁気
テープは第３図ａに示す通り幅方向全面にわたつ
て回転ヘツドアセンブリ上から数ミクロン〜数十
ミクロン浮上しており、接触摺動する箇所は、下
シリンダのリード上のみである。しかるに、回転
ヘツドアセンブリへのテープ出側付近部（第１図
Ｂ部）では、回転ヘツドアセンブリ上の磁気テー
プ長手走行方向に従つてしだいに増加するテープ
テンシヨンの為に、上記の動圧並びにスクイズ効
果による磁気テープを浮上せしめる圧力は減少し
第３図ｂに示す通り特に、下シリンダ部で接触摺
動走行をする。また、画像信号の記録再生を行な
う磁気ヘツドは磁気テープに対し所定の接触圧力
のもとに約６ｍ／secの高速で接触摺動を行なう。

さて、上述の如く磁気テープは複雑な力学状態
のもとに回転ヘツドアセンブリ上を走行するが、
そこでの問題点を整理すると、以下の様になる。

(1) 固定シリンダでの接触摺動によるテープ鳴き
現象；磁気テープが固定シリンダの接触摺動す
ることにより、一種の自励振動である摩擦振動
が発生することがある。この振動の発生条件
は、テープテンシヨン，テープ及びシリンダの
表面性状、あるいは、周辺の湿度によつて大き
く左右される。振動の基本的な形態は、テープ
の縦振動であり、VTRの記録再生画像の色ム
ラ、ジツタを招来し、極端な場合には、鋭い音
（数百〜数千Hz）を発する。

(2) 固定シリンダへのテープの付着現象；一般
に、磁気テープ表面の粗さは数100Åのオーダ
ーであり極めて平滑である。又、シリンダ表面
もテープダメージの発生を回避するため、平滑
な面（面粗さ0.1S〜1S）が構成される。この様
に極めて平滑な２面を接触させると、一般に両
者は吸いつきを起こす。VTRのテープ走行系
においては、磁気テープが回転ヘツドアセンブ
リ特に固定シリンダの外周面に付着する現象と
なつて現われ、磁気テープが走行不能の状態に
陥いる。多湿の雰囲気中で発生し易い。

(3) 回転ヘツドアセンブリの各部と磁気テープの
間の摩耗による、テープダメージ、及び摩耗発
生；前述の如く、磁気テープと回転ヘツドアセ
ンブリは、平均的には５〜50ｇ重／cm²の面圧も
とに接触摺動しているため、回転ヘツドアセン
ブリのテープの走行面は摩耗を生じ、一方、磁
気テープ表面も摩耗、磁性体のハク離を生ず
る。特に磁気テープの損耗、つまり、テープダ
メージは磁気記録信号の欠落となるばかりでな
く、脱落した磁性耗は、摺動各部での摩耗を加
速したり、さらに、ビデオヘツドのヘツドギヤ
ツプ部に堆積し、目づまりを起こせば、記録再
生自体が不可能になる。

特にこのシリンダ摩耗、テープダメージは、
より過酷な摺動状態を呈する固定シリンダの
各々下端、上端部のエツジ部で顕著である。こ
れ等の問題はいずれも、磁気テープが、回転ヘ
ツドアセンブリに対して接触、摺動することが
根本的な原因となつている。

一方、VTRの小形軽量化の動向の中にあつて
磁気テープへの信号記録密度の向上のため従来の
酸化鉄、或は２酸化クロムの磁性粉を樹脂のバイ
ンダと共に塗布したテープから、いわゆる合金テ
ープ、或いは、蒸着テープ磁気テープとして採用
してゆく方向にある。従来のテープ磁性面が樹脂
を磁性粉とで形成されているのに対し、これ等の
新しいテープにおいては、テープ磁性面は、まさ
に金属面となるため、例えば、ステンレス鋼との
摺動における摩耗係数は従来の0.2程度から0.5程
度に上昇する。したがつて磁性面が摺動接触する
回転ヘツドアセンブリでの摺動に伴なう上記の問
題点は、従来のテープに増して大きくクローズア
ツプされる。

発明の目的 本発明は、上記欠点に鑑み、高い信頼性のもと
に、高品質の画像の記録再生を可能にする回転ヘ
ツドアセンブリを提供するものである。

発明の構成 本発明は、円筒部を有する固定シリンダと上記
固定シリンダと略同一径を有し、微小間隔を隔て
て同軸上に配され、磁気ヘツドを空間的に保持し
て回転させる回転部材とから成り、回転部材に対
して相対速度を持つ固定シリンダ上の２つの同心
円によつて囲まれた領域の局部にポンプアウト型
のスパイラルグルーブを設け、上記局部スパイラ
ルグルーブ設定部以外の部分に段差を設けて構成
されており、特定の部分に設定されたスパイラル
グルーブで生成される吐出圧を最大限に発揮出来
るという特有の効果を有する。

実施例の説明 以下本発明の一実施例について図面を参照しな
がら説明する。第４図において、１１は円筒部を
有する固定シリンダ、１３は磁気ヘツド１２をと
う載し、固定シリンダ１１と略同一径を有し、固
定シリンダ１１と同軸上にしかも微小すきまδを
隔てて配置された回転部材、１４は固定シリンダ
１１と回転部材１３との対向面において、固定シ
リンダ側端面の一部分に設けられたポンプアウト
型のスパイラルグルーブである。なお、スパイラ
ルグルーブを設けていない端面はスパイラルグル
ーブ面に対し若干のニゲｈを取つてある。第５図
は、スパイラルグルーブを説明する為の固定シリ
ンダ上面図であり、端面には、上述のスパイラル
グルーブ１４が局部的に設けられており、内半径
r₁、外判径r₂で囲まれた領域において、放射螺旋
状に設けられた溝部１４ａとランド部１４ｂとで
構成させている。

以上の様に構成された回転ヘツドアセンブリに
ついて、以下その動作を説明する。

ポンプアウト型スパイラルグルーブ１４を局部
的に設けた固定シリンダ１１と微小間隔δを隔て
て配置された回転部材１３が高速回転することに
より、流体力学的な作用によつて回転ヘツドアセ
ンブリ内部の空気は、微小間隔δを通じて外部へ
吐出される。この圧力差による吐出空気流を利用
して、回転ヘツドアセンブリ上を走行する磁気テ
ープの浮上走行を促し、特に出側付近における、
磁気テープと固定シリンダとの接触摺動を回避す
る。なお第４図の１５は、回転ヘツドアセンブリ
の内部と外部を連通する孔であり、スパイラルグ
ルーブによつて回転ヘツドアセンブリの内部の空
気を外部へ吐出するに際し回転ヘツドアセンブリ
内部が気密構造であれば、内部気圧が低下し、所
定の流量の吐出空気流が得られなくなることを防
ぐもので、可能な限り大きな開口断面を持つ様に
設定しなければならない。スパイラルグルーブを
設定することにより発生する空気圧は、グループ
設定諸元値の選び方に大きく左右される。このう
ち、回転部材と固定シリンダの間の微小間隔δの
設定は、スパイラルグルーブの吐出性能に特に大
きく影響する。第６図には、スパイラルグルーブ
の吐出性能を示す無次元化吐出圧力を、微小間隔
δに対して示してある。この結果により微小間隔
δを小さく取れば取る程飛躍的に吐出性能が向上
することが判る。実際問題として、テープテンシ
ヨンに抗して磁気テープを浮上させる吐出出力を
得る為には、δは50μm以下に設定すべきである。
一方、回転部材とシリンダとの間隔は、夫々の部
材の加工精度並びに組立精度に左右される。例え
ば、固定シリンダの全周にわたつてスパイラルグ
ルーブを設けた場合には、対向面との微小間隔δ
を均一に保持する事は事実上不可能であり、それ
ゆえに最も吐出圧を必要とし、従つてδを極力小
さく取りたい希望箇所と、微小間隔δの最小位置
とは必ずしも一致しない。

本発明による局部的にスパイラルグルーブを設
けた場合には、スパイラルグルーブ設定部のみの
δを管理すれば良く、その他の部分は段差ｈを設
けてある為に、スパイラルグルーブ設定域以外の
対向面間での、加工誤差等に起因する接触摺動現
象は回避出来る。逆の観点から見ると、本来厳し
い加工精度を必要とするスパイラルグルーブを有
する回転ヘツドアセンブリにおいて、上記構成の
通り局部的にスパイラルグルーブを設定しその他
の部分にニゲを取る事で、回転ヘツドアセンブリ
自体の加工精度をラフにし、しかも有効に必要箇
所に吐出圧力を確保出来るメリツトを持たせるこ
とが出来る。

従つてδを極力小さく取る為には、スパイラル
グルーブ設定部を小さくする程効果的となる。ま
た段差ｈは数10〜数100μmの設定で十分である
が、特別にｈ＝０の場合も使用不可能という事に
はならない。現状の回転ヘツドアセンブリにおい
て、テープの走行姿態は、先に第３図ａ，ｂに示
した特に、固定シリンダ上の磁気テープ出側付近
で接触摺動しており、この部分に局部スパイラル
グルーブを設けるという効果は大きい。具体的に
は、磁気テープが回転ヘツドアセンブリに巻付い
ている全巻付角において、後半の半分の領域の一
部又は全部にスパイラルグルーブを設けると効果
的である。

以上の様に本実施例によれば、固定シリンダ上
の、回転部材との対向面において局部的にスパイ
ラルグルーブを設け、微小間隔δを極力小さく設
定したスパイラルグルーブを設定しない領域は段
差ｈを設ける事で、必要箇所に十分な吐出圧力を
供給する事が可能となり、効率よくしかも確実に
磁気テープを回転ヘツドアセンブリ上から微小量
浮上せしめる為、磁気テープの円滑かつ安定な走
行性・信号の安定的記録再生特性が得られる。

なお、第１の実施例では、局部スパイラルグル
ーブの設定部を固定シリンダと回転部材との水平
対向面に対して説明したが、これは相互が相対速
度を持つ任意の箇所において、固定シリンダ側に
設定出来れば良い。従つてスパイラルグルーブ
は、用いるべき回転ヘツドアセンブリの構造によ
つて相対速度が生じる部分のテーパ面、垂直面に
設けて良いことは言うまでもない。

また、前記回転ヘツドアセンブリの構成とし
て、略同一径を有し同軸上に配置された円筒状の
２つの固定シリンダの対向面に、円板状のヘツド
支持回転部材を設けたタイプに関しても同様のス
パイラルグルーブの構成が考えられる。特にこの
場合には、上下２つの固定シリンダの局部にスパ
イラルグルーブを設ける事により、回転部材との
間で作り出される吐出風圧は大幅に増加させるこ
とが出来る。

発明の効果 以上の様に本発明は、回転部材に対して相対速
度を持つ固定シリンダ上の局部に限定してポンプ
アウト型のスパイラルグルーブを設け更にスパイ
ラルグルーブ設定部以外の箇所に段差を設けるこ
とにより、局部的にスパイラルグルーブの吐出圧
を最大限に発揮出来、その結果回転ヘツドアセン
ブリ上で、磁気テープを全巻付角にわたつて微小
量だけ浮上せしめて保持することが出来る。

この様に、本発明の実用的効果は大なるものが
ある。

【図面の簡単な説明】

第１図は、従来の回転ヘツドアセンブリの斜視
図、第２図は同断面図、第３図ａ，ｂは従来の回
転ヘツドアセンブリ上でのテープ浮上を説明する
回転ヘツドアセンブリの要部拡大断面図、第４図
は本発明の第１の実施例における回転ヘツドアセ
ンブリの斜視図、第５図は本発明の第１の実施例
における固定シリンダの上面斜視図、第６図は、
微小間隔δに対するスパイラルグルーブの無次元
化吐出圧力を示した特性図である。 １１……固定シリンダ、１２……磁気ヘツド、
１３……回転部材、１４……スパイラルグルー
ブ。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 円筒部を有する固定シリンダと、上記固定シ
   リンダと略同一径を有し、微小間隔を隔てて同軸
   上に配され、磁気ヘツドを保持した回転可能な回
   転部材とから成り、回転部材に対して相対速度を
   持つ固定シリンダ上の、２つの同心円によつて囲
   まれた領域のうち、磁気テープの回転ヘツドアセ
   ンブリへの磁気テープの全巻付角度のうち後半の
   半分の領域回転ヘツドアセンブリの内部の空気を
   外部へ吐出するスパイラルグルーブを設け、上記
   スパイラルグルーブ設定部以外の部分に段差を設
   けた回転ヘツドアセンブリ。