JPH0454725B2 - - Google Patents
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- JPH0454725B2 JPH0454725B2 JP60016108A JP1610885A JPH0454725B2 JP H0454725 B2 JPH0454725 B2 JP H0454725B2 JP 60016108 A JP60016108 A JP 60016108A JP 1610885 A JP1610885 A JP 1610885A JP H0454725 B2 JPH0454725 B2 JP H0454725B2
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Landscapes
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Description
産業上の利用分野
本発明は、125Kgf/mm2以上の引張強さを有し、
且つ耐遅れ破壊性に優れた高張力ボルトやPC鋼
棒、更に大型機械用の高張力鋼板などの機械構造
用鋼の製造法に関する。 更に詳細には本発明は、構造物の大型化に伴い
自重の軽減と断面減少による材料と施行費の節約
によつて経済性の向上が要求されつつある量産鋼
である高張力鋼、更には構造物、機械部品などの
高性能化、軽量化に伴つて高応力に耐え、しかも
比強度の高いことの要求される強力鋼および超強
力鋼の製造法に関する。 従来の技術 近年、特に構造物の大型化、自動車やトラツ
ク、土木機械等の軽量化に伴い引張強さが125Kg
f/mm2以上の機械構造用鋼、特に高張力ボルトや
PC鋼棒の開発が要求されてきている。 従来、一般に100Kgf/mm2以上の引張強さを有
する機械構造用強靭鋼は、例えば0.35%C−1.0
%Cr−0.2%Moの組成を有するJIS・SCM431低
合金鋼や、0.31%C−1.8%Cr−0.2%Moの組成を
有するJIS・SNCM431の低合金鋼や、さらに0.2
%C−0.8%Cr−0.002%Bの組成を有するボロン
鋼などの熱延材に焼入れ、焼戻し処理を施すこと
によつて製造されている。 しかし、これらの機械構造用強靭鋼を実用に供
した場合、125Kgf/mm2以上の引張強さを有する
ものにおいては、使用中に遅れ破壊を生じる場合
があることから、高張力ボルトやPC鋼棒をはじ
めとして自動車や土木機械の重要保安部品として
は品質安定性に欠けるという問題があつた。 なお、遅れ破壊とは、静荷重下におかれた鋼
が、ある時間経過後に突然脆性的に破断する現象
であり、外部環境から鋼中に侵入した水素による
一種の水素脆性とされている。 このようなことから上記の機械構造用鋼におい
ては、実用上その強度レベルが引張強さで125Kg
f/mm2以下に制限されているのが現状であり、例
えば高力ボルトに関しては、JIS・B−1186
(1979)の「摩擦接合用高力六角ボルト、六角ナ
ツト、平座金セツト」において、F8T(引張強
さ:80〜100Kgf/mm2)、F10T(同100〜120Kgf/
mm2)、及びF11T(同110〜130Kgf/mm2)の3種に
規定され、しかもF11Tについては、なるべく使
用しないことと注意事項が付されている。また、
土木建設機械用として耐摩耗性の要求される鋼板
においても引張強さが125Kgf/mm2を越えるもの
では使用中の遅れ破壊が問題とされている。 これに対して、上記の通常の低合金鋼より耐遅
れ破壊性の優れた鋼として、例えば18%Ni−7.5
%Co−5%Mo−0.5%Ti−0.1%Alの組成を有す
る18%Niマルエージング鋼があり、この鋼は、
引張強さが150Kgf/mm2程度のものまで遅れ破壊
の発生の恐れなく使用できるが、きわめて高価な
鋼であるため、経済性の点で一部のきわめて限ら
れた用途にしか実用化されておらず、機械構造用
として広く使用されるには到つていない。 これに対して、経済的であり、高強度且つ耐遅
れ性に優れた構造用鋼として、例えば特開昭58−
61219号、特開昭58−84960号、特開昭58−113317
号、特開昭58−117856号及び特開昭58−157921号
等に各種成分の高強度鋼及びそれらの製造法が提
案されている。 しかしながら、これらの125Kgf/mm2を越える
引張強さを有する鋼でも、例えば橋梁用高張力ボ
ルトに使用できるほど完全に遅れ破壊を発生する
危険を払底できるものではなく、それらの適用範
囲は不確定且つ十分なものでない。 発明の解決すべき問題点 本発明は上記した産業界の要求に答えるべく、
125Kgf/mm2以上の引張強さを有し且つ耐遅れ破
壊性に優れた機械構造用鋼の製造法を提供するこ
とを目的とする。 更に本発明の目的を詳細に説明すると、例えば
橋梁用高張力ボルト等と異なり、定期的な補修或
いは取替えを前提し、一定期間、例えば5000時間
以内の遅れ破壊の発生の恐れのない、125Kgf/
mm2以上の引張強さを有する機械構造用鋼の製造法
を提供抗することを本発明の目的とする。このよ
うな用途としては、各種構造物用高張力鋼、自動
車、土木機械、産業機械用のボルト用鋼及び高張
力鋼板があり、これらに本発明により製造された
鋼材を使用することによつて上記した産業界の要
求に答えることが可能である。 すなわち、本発明は、橋梁用高張力ボルトほど
の耐遅れ破壊性でなくとも所定の期間のあいだ遅
れ破壊の発生する危険のなく、従つて定期的な補
修或いは取替えを前提する部品等に好適に使用で
きる125Kgf/mm2以上の引張強さを有する機械構
造用鋼の製造法を提供することを目的とする。 問題点を解決する手段 上記した本発明の目的を達成するため、本発明
者等は鋭意実験・研究を重ねた結果、5000時間以
上の期間にわたり遅れ破壊を発生せず且つ125Kg
f/mm2以上の引張強さを有する鋼を製造するに
は、低P化、低S化による粒界偏析の軽減および
清浄化は勿論のこと、低Mn化により耐遅れ破壊
性を改善し、更には製造に際して熱間圧延後870
℃以上の温度から急冷することによりP等の不純
物元素のオーステナイト粒界への偏析を軽減する
ことが有効であることを発見したものである。 本発明に従うと、 C:0.18〜0.30%未満、 Si:0.5%以下、 Mn:0.5%未満、 P:0.01%以下、 S:0.01%以下、 Cr:0.1〜5%、 Nb:0.005〜0.1%、 を含有し、更にV:0.3%以下、B:0.005%以
下、Ti:0.05%以下及びMo:0.5%以下のうち1
種または2種以上を含有し、残部がFe及び不可
避的不純物からなる鋼を熱間圧延後、870℃以上
の温度から焼入れを行い、次いで150〜600℃の範
囲内の温度で低温焼戻を行うことを特徴とする
125Kgf/mm2以上の引張強さを有し且つ耐遅れ破
壊性に優れた機械構造用鋼の製造法が提供され
る。 熱間圧延後に焼入れする方法は特に限定を要す
るものではないが、最も好ましいのは熱間圧延を
870℃以上の温度で仕上げ、そのまま直接焼入れ
する方法である。その他として、熱間圧延後に圧
延材を再加熱して870℃以上の温度から焼入れす
る方法がある。 更に、本発明の態様に従うと、焼入れ後の圧延
材について150〜300℃の範囲内の温度で低温焼戻
を行う。 なお、本明細書において鋼成分をパーセントで
表示するときはすべて重量パーセントである。 作 用 ついで、本発明の方法において採用する成分組
成及び製造条件を上記のとおりに限定した理由を
説明する。 (A) 成分組成 (a) C: Cは鋼に強度を付与する作用があるが、そ
の含有量が0.18%未満では所望の強度を確保
することができず、一方、0.30%以上含有さ
せると、他の合金成分と関連して靭性が劣化
するようになることから、その含有量を0.18
〜0.30%未満と定めた。 (b) Si: Siは鋼の脱酸のために必要な元素である
が、その含有量が、0.5%をこえると鋼の脆
化が著しくなるため、その上限値を0.5%と
定めた。 (c) Mn: Mnは脱酸の他、焼入性向上に有効な元素
であるが、多量に添加すると、粒界にMnの
酸化物あるいは炭化物等が生成し、粒界脆化
現象が生じ、遅れ破壊の発生を促進する。さ
らに、MnはSと結合して、これが割れの起
点となることからも耐遅れ破壊性の改善ため
には極力その含有量を低下させなければなら
ない。従つて、耐遅れ破壊性の改善を目的と
する本発明ではMnの含有量を0.5%未満とし
た。このようにMnの含有量を制限し、他の
合金成分および熱処理条件を調整することに
よつて125Kgf/mm2以上の引張強さを有し且
つ耐遅れ破壊性に優れた機械構造用鋼の製造
が可能となる。 (d) P: Pはいかなる熱処理を施してもその粒界偏
析を完全に消滅することはできず、かつ、粒
界強度を低下させ耐遅れ破壊性を劣化させる
ため、その上限を0.01%とした。 (e) S: 上述したようにSはMnと結合して割れの
起点となり、さらに単独でも粒界に偏析して
脆化を促進するため、極力その含有量を低く
制限することが必要である。従つて、本発明
ではSを0.01%以下とした。 (f) Cr: Crは鋼の焼入性を向上させ、かつ鋼に焼
戻軟化抵抗を付与する作用があるが、その含
有量が0.1%未満では、前記作用に所望の効
果が得られず、他方Crは高価な合金元素で
あるため経済性を考慮し、その含有量を0.1
〜5%とした。 (g) Nb: Nbは、本発明鋼のような清浄鋼に添加さ
れると、耐遅れ破壊特性を著しく改善せしめ
る。その効果を確保するためには、0.005%
以上の添加が必要である。他方、0.1%以上
添加すると、その効果は飽和し、かつコスト
的に高くつくので、その範囲を0.005〜0.1%
とした。 (h) V: Vは鋼を再粒化し、さらに析出硬化して鋼
の強度を向上させる作用があるので、より高
い強度が要求される場合に必要に応じて添加
するが、0.3%を越えて含有させると添加効
果が飽和し、より一層の強度向上効果は得ら
れないことから、0.3%をその上限とした。 (i) B、Ti及びMo: これらの成分には、鋼の焼入性を一段と向
上させる作用があるので、特に鋼寸法が大き
い場合に高強度を確保する目的で必要に応じ
て添加するが、B、TiはそれぞれB:0.005
%及びTi:0.05%を越えて含有させると、鋼
の靭性が劣化するようになり、かつTiにお
いては被削性も劣化するようになることか
ら、それぞれB:0.03%以下、Ti:0.05%以
下と定めた。また、Moについては0.5%を越
えて添加しても、その効果は飽和し、コスト
的上昇を招くだけのため、その上限を0.5%
とした。 (B) 熱処理条件 (a) 焼入温度 引張強さが125Kgf/mm2を越える強靭性は、
通常の低合金鋼の熱延棒鋼あるいは熱延鋼板
をAc3点以上に再加熱した後焼入れし、引続
きAc1点以下の温度で焼戻すことにより製造
される。C含有量が0.18〜0.35%の鋼では、
焼入れは870℃以上で実施されるため、焼入
温度を870℃以上とした。また焼入方法とし
ては、圧延後直接焼入れする方法と圧延後再
加熱する方法があり、双方とも有効である
が、前者の方がγ粒界におけるP等の偏析が
少なくなるので、より効果的である。 その理由は、870℃の再結晶温度域で圧延
を仕上げ、直接焼入れを施すと、圧延〜焼入
れ間に再結晶が生じ、新しいオーステナイト
粒が形成され、新しい粒界には不純物の偏析
が少ないからである。一方、870℃未満での
仕上げでは、870℃以上に再加熱、焼入れを
行つても、スラブ加熱時の旧オーステナイト
粒界の影響が大きく、旧オーステナイト粒界
の不純物の偏析が新オーステナイト粒界に残
る。しかし、本発明では、低P、低S化を行
い、さらに低Mn化に加えNbを添加すること
により粒界への偏析を極めて少なくしている
ため、上記870℃未満での仕上げでもよい。 (b) 焼戻温度 一般に焼入ままの鋼は降伏点が低く、機械構
造用鋼として使用さる場合に使用中に応力緩和
の増大が生じ、さらに焼入れままでは靭性、加
工性などが良好でないという問題がある。従つ
て、鋼に所定の強度および靭性を付与するため
には、焼入後、焼戻処理を行う必要がある。一
般に鋼の焼戻しは、Ac1点以下の温度で行う
が、一般的には150〜600℃の温度範囲にて行わ
れる。しかし、300〜400℃の範囲では、低温焼
戻脆化を生じ易く、耐遅れ破壊性を劣化させる
傾向を有すので、この範囲での焼戻しは避ける
方が良い。逆に成分的にも所要の強度を得るた
めの焼戻温度がこの範囲にならないよう配慮す
べきである。 実施例 次に、本発明を比較例と対比しながら実施例に
より説明する。 通常の溶解法により第1表に示す化学組成の鋼
を溶製し、直径500mm×長さ1mの寸法のビレツ
トに成形し、ついで前記ビレツトを1200℃に1時
間均熱した後、仕上温度が870℃以上になるよう
に熱間圧延を実施し、25mmφの棒鋼に仕上げた。
125Kgf/mm2以上の強度を得るため、熱処理とし
ては、熱間圧延後直ちに焼入れを施す直接焼入方
法と、870℃以上の温度に再加熱した後焼入を行
う通常法を採用した。また焼戻温度は、引張強さ
が125Kgf/mm2となる様に予備実験にて確認し、
それぞれ選定した。 一方、遅れ破壊の発生有無の確認は、第1図に
示すくさび挿入型の遅れ破壊試験方法によつた。 すなわち、第1図aに示すような形状、寸法の
試験片のノツチ部(第1図bに示す)に第1図c
に示すようなくさびを挿入して静荷重をかけ、こ
れを55℃に保持した温水中に入れ、割れの発生の
時間を観察した。 5000時間を耐遅れ破壊性の一つの判断基準とし
たのは、3ケ月を機材の定期的な補修あるいは点
検期間と仮定し、その約2倍の誤差を見積つたか
らである。試験環境として、55℃の温水中は、実
使用環境の最も厳しい環境に相当する。従つて、
得られた遅れ破壊時間は、実使用のうちもつとも
厳しい環境での遅れ破壊発生時間に相当すると考
えられる。 第1表の鋼No.1〜4が本発明鋼で、鋼No.5〜7
が比較鋼である。第1表に示す試験結果からわか
るように、Nbを添加した鋼においては、高強度
化されても遅れ破壊発生時間は長い。 No.1、3、4の鋼のようにTi、Bを添加、あ
るいはNo.1の鋼のようにMoを添加、No.2の鋼の
ようにVを添加しても耐遅れ破壊性が劣化しない
ことがわかる。このように、耐遅れ破壊性の改善
には、低Mn、低P化が重要なポイントであり、
Nb添加はさらに効果的であることがわかる。 一方、比較例のNo.5の鋼はMnが1%と高いた
め、No.6の鋼はCが0.38%と高いため、No.7の鋼
はCが0.39%と高く、かつPが0.030%と高いた
めに耐遅れ破壊性が劣化したものと推察される。
且つ耐遅れ破壊性に優れた高張力ボルトやPC鋼
棒、更に大型機械用の高張力鋼板などの機械構造
用鋼の製造法に関する。 更に詳細には本発明は、構造物の大型化に伴い
自重の軽減と断面減少による材料と施行費の節約
によつて経済性の向上が要求されつつある量産鋼
である高張力鋼、更には構造物、機械部品などの
高性能化、軽量化に伴つて高応力に耐え、しかも
比強度の高いことの要求される強力鋼および超強
力鋼の製造法に関する。 従来の技術 近年、特に構造物の大型化、自動車やトラツ
ク、土木機械等の軽量化に伴い引張強さが125Kg
f/mm2以上の機械構造用鋼、特に高張力ボルトや
PC鋼棒の開発が要求されてきている。 従来、一般に100Kgf/mm2以上の引張強さを有
する機械構造用強靭鋼は、例えば0.35%C−1.0
%Cr−0.2%Moの組成を有するJIS・SCM431低
合金鋼や、0.31%C−1.8%Cr−0.2%Moの組成を
有するJIS・SNCM431の低合金鋼や、さらに0.2
%C−0.8%Cr−0.002%Bの組成を有するボロン
鋼などの熱延材に焼入れ、焼戻し処理を施すこと
によつて製造されている。 しかし、これらの機械構造用強靭鋼を実用に供
した場合、125Kgf/mm2以上の引張強さを有する
ものにおいては、使用中に遅れ破壊を生じる場合
があることから、高張力ボルトやPC鋼棒をはじ
めとして自動車や土木機械の重要保安部品として
は品質安定性に欠けるという問題があつた。 なお、遅れ破壊とは、静荷重下におかれた鋼
が、ある時間経過後に突然脆性的に破断する現象
であり、外部環境から鋼中に侵入した水素による
一種の水素脆性とされている。 このようなことから上記の機械構造用鋼におい
ては、実用上その強度レベルが引張強さで125Kg
f/mm2以下に制限されているのが現状であり、例
えば高力ボルトに関しては、JIS・B−1186
(1979)の「摩擦接合用高力六角ボルト、六角ナ
ツト、平座金セツト」において、F8T(引張強
さ:80〜100Kgf/mm2)、F10T(同100〜120Kgf/
mm2)、及びF11T(同110〜130Kgf/mm2)の3種に
規定され、しかもF11Tについては、なるべく使
用しないことと注意事項が付されている。また、
土木建設機械用として耐摩耗性の要求される鋼板
においても引張強さが125Kgf/mm2を越えるもの
では使用中の遅れ破壊が問題とされている。 これに対して、上記の通常の低合金鋼より耐遅
れ破壊性の優れた鋼として、例えば18%Ni−7.5
%Co−5%Mo−0.5%Ti−0.1%Alの組成を有す
る18%Niマルエージング鋼があり、この鋼は、
引張強さが150Kgf/mm2程度のものまで遅れ破壊
の発生の恐れなく使用できるが、きわめて高価な
鋼であるため、経済性の点で一部のきわめて限ら
れた用途にしか実用化されておらず、機械構造用
として広く使用されるには到つていない。 これに対して、経済的であり、高強度且つ耐遅
れ性に優れた構造用鋼として、例えば特開昭58−
61219号、特開昭58−84960号、特開昭58−113317
号、特開昭58−117856号及び特開昭58−157921号
等に各種成分の高強度鋼及びそれらの製造法が提
案されている。 しかしながら、これらの125Kgf/mm2を越える
引張強さを有する鋼でも、例えば橋梁用高張力ボ
ルトに使用できるほど完全に遅れ破壊を発生する
危険を払底できるものではなく、それらの適用範
囲は不確定且つ十分なものでない。 発明の解決すべき問題点 本発明は上記した産業界の要求に答えるべく、
125Kgf/mm2以上の引張強さを有し且つ耐遅れ破
壊性に優れた機械構造用鋼の製造法を提供するこ
とを目的とする。 更に本発明の目的を詳細に説明すると、例えば
橋梁用高張力ボルト等と異なり、定期的な補修或
いは取替えを前提し、一定期間、例えば5000時間
以内の遅れ破壊の発生の恐れのない、125Kgf/
mm2以上の引張強さを有する機械構造用鋼の製造法
を提供抗することを本発明の目的とする。このよ
うな用途としては、各種構造物用高張力鋼、自動
車、土木機械、産業機械用のボルト用鋼及び高張
力鋼板があり、これらに本発明により製造された
鋼材を使用することによつて上記した産業界の要
求に答えることが可能である。 すなわち、本発明は、橋梁用高張力ボルトほど
の耐遅れ破壊性でなくとも所定の期間のあいだ遅
れ破壊の発生する危険のなく、従つて定期的な補
修或いは取替えを前提する部品等に好適に使用で
きる125Kgf/mm2以上の引張強さを有する機械構
造用鋼の製造法を提供することを目的とする。 問題点を解決する手段 上記した本発明の目的を達成するため、本発明
者等は鋭意実験・研究を重ねた結果、5000時間以
上の期間にわたり遅れ破壊を発生せず且つ125Kg
f/mm2以上の引張強さを有する鋼を製造するに
は、低P化、低S化による粒界偏析の軽減および
清浄化は勿論のこと、低Mn化により耐遅れ破壊
性を改善し、更には製造に際して熱間圧延後870
℃以上の温度から急冷することによりP等の不純
物元素のオーステナイト粒界への偏析を軽減する
ことが有効であることを発見したものである。 本発明に従うと、 C:0.18〜0.30%未満、 Si:0.5%以下、 Mn:0.5%未満、 P:0.01%以下、 S:0.01%以下、 Cr:0.1〜5%、 Nb:0.005〜0.1%、 を含有し、更にV:0.3%以下、B:0.005%以
下、Ti:0.05%以下及びMo:0.5%以下のうち1
種または2種以上を含有し、残部がFe及び不可
避的不純物からなる鋼を熱間圧延後、870℃以上
の温度から焼入れを行い、次いで150〜600℃の範
囲内の温度で低温焼戻を行うことを特徴とする
125Kgf/mm2以上の引張強さを有し且つ耐遅れ破
壊性に優れた機械構造用鋼の製造法が提供され
る。 熱間圧延後に焼入れする方法は特に限定を要す
るものではないが、最も好ましいのは熱間圧延を
870℃以上の温度で仕上げ、そのまま直接焼入れ
する方法である。その他として、熱間圧延後に圧
延材を再加熱して870℃以上の温度から焼入れす
る方法がある。 更に、本発明の態様に従うと、焼入れ後の圧延
材について150〜300℃の範囲内の温度で低温焼戻
を行う。 なお、本明細書において鋼成分をパーセントで
表示するときはすべて重量パーセントである。 作 用 ついで、本発明の方法において採用する成分組
成及び製造条件を上記のとおりに限定した理由を
説明する。 (A) 成分組成 (a) C: Cは鋼に強度を付与する作用があるが、そ
の含有量が0.18%未満では所望の強度を確保
することができず、一方、0.30%以上含有さ
せると、他の合金成分と関連して靭性が劣化
するようになることから、その含有量を0.18
〜0.30%未満と定めた。 (b) Si: Siは鋼の脱酸のために必要な元素である
が、その含有量が、0.5%をこえると鋼の脆
化が著しくなるため、その上限値を0.5%と
定めた。 (c) Mn: Mnは脱酸の他、焼入性向上に有効な元素
であるが、多量に添加すると、粒界にMnの
酸化物あるいは炭化物等が生成し、粒界脆化
現象が生じ、遅れ破壊の発生を促進する。さ
らに、MnはSと結合して、これが割れの起
点となることからも耐遅れ破壊性の改善ため
には極力その含有量を低下させなければなら
ない。従つて、耐遅れ破壊性の改善を目的と
する本発明ではMnの含有量を0.5%未満とし
た。このようにMnの含有量を制限し、他の
合金成分および熱処理条件を調整することに
よつて125Kgf/mm2以上の引張強さを有し且
つ耐遅れ破壊性に優れた機械構造用鋼の製造
が可能となる。 (d) P: Pはいかなる熱処理を施してもその粒界偏
析を完全に消滅することはできず、かつ、粒
界強度を低下させ耐遅れ破壊性を劣化させる
ため、その上限を0.01%とした。 (e) S: 上述したようにSはMnと結合して割れの
起点となり、さらに単独でも粒界に偏析して
脆化を促進するため、極力その含有量を低く
制限することが必要である。従つて、本発明
ではSを0.01%以下とした。 (f) Cr: Crは鋼の焼入性を向上させ、かつ鋼に焼
戻軟化抵抗を付与する作用があるが、その含
有量が0.1%未満では、前記作用に所望の効
果が得られず、他方Crは高価な合金元素で
あるため経済性を考慮し、その含有量を0.1
〜5%とした。 (g) Nb: Nbは、本発明鋼のような清浄鋼に添加さ
れると、耐遅れ破壊特性を著しく改善せしめ
る。その効果を確保するためには、0.005%
以上の添加が必要である。他方、0.1%以上
添加すると、その効果は飽和し、かつコスト
的に高くつくので、その範囲を0.005〜0.1%
とした。 (h) V: Vは鋼を再粒化し、さらに析出硬化して鋼
の強度を向上させる作用があるので、より高
い強度が要求される場合に必要に応じて添加
するが、0.3%を越えて含有させると添加効
果が飽和し、より一層の強度向上効果は得ら
れないことから、0.3%をその上限とした。 (i) B、Ti及びMo: これらの成分には、鋼の焼入性を一段と向
上させる作用があるので、特に鋼寸法が大き
い場合に高強度を確保する目的で必要に応じ
て添加するが、B、TiはそれぞれB:0.005
%及びTi:0.05%を越えて含有させると、鋼
の靭性が劣化するようになり、かつTiにお
いては被削性も劣化するようになることか
ら、それぞれB:0.03%以下、Ti:0.05%以
下と定めた。また、Moについては0.5%を越
えて添加しても、その効果は飽和し、コスト
的上昇を招くだけのため、その上限を0.5%
とした。 (B) 熱処理条件 (a) 焼入温度 引張強さが125Kgf/mm2を越える強靭性は、
通常の低合金鋼の熱延棒鋼あるいは熱延鋼板
をAc3点以上に再加熱した後焼入れし、引続
きAc1点以下の温度で焼戻すことにより製造
される。C含有量が0.18〜0.35%の鋼では、
焼入れは870℃以上で実施されるため、焼入
温度を870℃以上とした。また焼入方法とし
ては、圧延後直接焼入れする方法と圧延後再
加熱する方法があり、双方とも有効である
が、前者の方がγ粒界におけるP等の偏析が
少なくなるので、より効果的である。 その理由は、870℃の再結晶温度域で圧延
を仕上げ、直接焼入れを施すと、圧延〜焼入
れ間に再結晶が生じ、新しいオーステナイト
粒が形成され、新しい粒界には不純物の偏析
が少ないからである。一方、870℃未満での
仕上げでは、870℃以上に再加熱、焼入れを
行つても、スラブ加熱時の旧オーステナイト
粒界の影響が大きく、旧オーステナイト粒界
の不純物の偏析が新オーステナイト粒界に残
る。しかし、本発明では、低P、低S化を行
い、さらに低Mn化に加えNbを添加すること
により粒界への偏析を極めて少なくしている
ため、上記870℃未満での仕上げでもよい。 (b) 焼戻温度 一般に焼入ままの鋼は降伏点が低く、機械構
造用鋼として使用さる場合に使用中に応力緩和
の増大が生じ、さらに焼入れままでは靭性、加
工性などが良好でないという問題がある。従つ
て、鋼に所定の強度および靭性を付与するため
には、焼入後、焼戻処理を行う必要がある。一
般に鋼の焼戻しは、Ac1点以下の温度で行う
が、一般的には150〜600℃の温度範囲にて行わ
れる。しかし、300〜400℃の範囲では、低温焼
戻脆化を生じ易く、耐遅れ破壊性を劣化させる
傾向を有すので、この範囲での焼戻しは避ける
方が良い。逆に成分的にも所要の強度を得るた
めの焼戻温度がこの範囲にならないよう配慮す
べきである。 実施例 次に、本発明を比較例と対比しながら実施例に
より説明する。 通常の溶解法により第1表に示す化学組成の鋼
を溶製し、直径500mm×長さ1mの寸法のビレツ
トに成形し、ついで前記ビレツトを1200℃に1時
間均熱した後、仕上温度が870℃以上になるよう
に熱間圧延を実施し、25mmφの棒鋼に仕上げた。
125Kgf/mm2以上の強度を得るため、熱処理とし
ては、熱間圧延後直ちに焼入れを施す直接焼入方
法と、870℃以上の温度に再加熱した後焼入を行
う通常法を採用した。また焼戻温度は、引張強さ
が125Kgf/mm2となる様に予備実験にて確認し、
それぞれ選定した。 一方、遅れ破壊の発生有無の確認は、第1図に
示すくさび挿入型の遅れ破壊試験方法によつた。 すなわち、第1図aに示すような形状、寸法の
試験片のノツチ部(第1図bに示す)に第1図c
に示すようなくさびを挿入して静荷重をかけ、こ
れを55℃に保持した温水中に入れ、割れの発生の
時間を観察した。 5000時間を耐遅れ破壊性の一つの判断基準とし
たのは、3ケ月を機材の定期的な補修あるいは点
検期間と仮定し、その約2倍の誤差を見積つたか
らである。試験環境として、55℃の温水中は、実
使用環境の最も厳しい環境に相当する。従つて、
得られた遅れ破壊時間は、実使用のうちもつとも
厳しい環境での遅れ破壊発生時間に相当すると考
えられる。 第1表の鋼No.1〜4が本発明鋼で、鋼No.5〜7
が比較鋼である。第1表に示す試験結果からわか
るように、Nbを添加した鋼においては、高強度
化されても遅れ破壊発生時間は長い。 No.1、3、4の鋼のようにTi、Bを添加、あ
るいはNo.1の鋼のようにMoを添加、No.2の鋼の
ようにVを添加しても耐遅れ破壊性が劣化しない
ことがわかる。このように、耐遅れ破壊性の改善
には、低Mn、低P化が重要なポイントであり、
Nb添加はさらに効果的であることがわかる。 一方、比較例のNo.5の鋼はMnが1%と高いた
め、No.6の鋼はCが0.38%と高いため、No.7の鋼
はCが0.39%と高く、かつPが0.030%と高いた
めに耐遅れ破壊性が劣化したものと推察される。
【表】
【表】
発明の効果
以上の実施例よりC:0.18〜0.35%、Si:0.5%
以下、Mn:0.5%未満、P:0.01以下、Cr:0.1〜
5%、Nb:0.005〜0.1%を含有し、さらにV:
0.3%以下、B:0.005%以下、およびTi:0.05%
以下およびMo:0.5%以下のうちの1種又は2種
以上を含有し、残部がFeと不可避的不純物から
なる鋼を、熱間圧延後870℃以上の仕上温度から
急冷し、150〜600℃の温度範囲内で低温焼戻処理
を行うか、あるいは熱間圧延後870℃以上の温度
で再加熱焼入処理を施し、150〜600℃の温度範囲
内で低温焼戻処理を行うことによつて、125Kg
f/mm2以上の引張強さを有し、かつ耐遅れ破壊性
の優れた機械構造用鋼を製造し得ることが判明し
た。 すなわち本発明の方法に従うと、125Kgf/mm2
以上の引張強さを有し、かつ5000時間以上の期間
にわたり遅れ破壊を発生しない機械構造用鋼をう
ることができ、前述したように定期的補修または
取替を前提とし、必要な耐遅れ破壊性の程度の明
確な用途の鋼材には本発明の方法により製造され
た機械構造用鋼を広範囲に使用できる。
以下、Mn:0.5%未満、P:0.01以下、Cr:0.1〜
5%、Nb:0.005〜0.1%を含有し、さらにV:
0.3%以下、B:0.005%以下、およびTi:0.05%
以下およびMo:0.5%以下のうちの1種又は2種
以上を含有し、残部がFeと不可避的不純物から
なる鋼を、熱間圧延後870℃以上の仕上温度から
急冷し、150〜600℃の温度範囲内で低温焼戻処理
を行うか、あるいは熱間圧延後870℃以上の温度
で再加熱焼入処理を施し、150〜600℃の温度範囲
内で低温焼戻処理を行うことによつて、125Kg
f/mm2以上の引張強さを有し、かつ耐遅れ破壊性
の優れた機械構造用鋼を製造し得ることが判明し
た。 すなわち本発明の方法に従うと、125Kgf/mm2
以上の引張強さを有し、かつ5000時間以上の期間
にわたり遅れ破壊を発生しない機械構造用鋼をう
ることができ、前述したように定期的補修または
取替を前提とし、必要な耐遅れ破壊性の程度の明
確な用途の鋼材には本発明の方法により製造され
た機械構造用鋼を広範囲に使用できる。
第1図は本実施例で実施した遅れ破壊試験で用
いた試験片とくさびの形状および寸法を示す図で
ある。第1図aは試験片を示し、第1図bは試験
片のノツチ部の詳細を示し、第1図cは試験片の
ノツチ部に挿入して負荷を加えるためのくさびを
示す。なお、図中において数字はmmの単位の長さ
を示す。
いた試験片とくさびの形状および寸法を示す図で
ある。第1図aは試験片を示し、第1図bは試験
片のノツチ部の詳細を示し、第1図cは試験片の
ノツチ部に挿入して負荷を加えるためのくさびを
示す。なお、図中において数字はmmの単位の長さ
を示す。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1 C:0.18〜0.30%未満、 Si:0.5%以下、 Mn:0.5%未満、 P:0.01%以下、 S:0.01%以下、 Cr:0.1〜5%、 Nb:0.005〜0.1%、 を含有し、更にV:0.3%以下、B:0.005%以
下、Ti:0.05%以下及びMo:0.5%以下のうち1
種または2種以上を含有し、残部がFe及び不可
避的不純物からなる鋼を熱間圧延後、870℃以上
の温度から焼入れを行い、次いで150〜600℃の範
囲内の温度で低温焼戻を行うことを特徴とする
125Kgf/mm2以上の引張強さを有し且つ耐遅れ破
壊性に優れた機械構造用鋼の製造法。 2 上記低温焼戻を150〜300℃の範囲内の温度で
行う特許請求の範囲第1項記載の耐遅れ破壊性に
優れた機械構造用鋼の製造法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1610885A JPS61174326A (ja) | 1985-01-29 | 1985-01-29 | 耐遅れ破壊性に優れた機械構造用鋼の製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1610885A JPS61174326A (ja) | 1985-01-29 | 1985-01-29 | 耐遅れ破壊性に優れた機械構造用鋼の製造法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS61174326A JPS61174326A (ja) | 1986-08-06 |
JPH0454725B2 true JPH0454725B2 (ja) | 1992-09-01 |
Family
ID=11907318
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP1610885A Granted JPS61174326A (ja) | 1985-01-29 | 1985-01-29 | 耐遅れ破壊性に優れた機械構造用鋼の製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPS61174326A (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0726177B2 (ja) * | 1991-02-15 | 1995-03-22 | 株式会社神戸製鋼所 | 耐遅れ破壊性の優れた高強度耐火ボルト |
JP2943506B2 (ja) * | 1992-06-05 | 1999-08-30 | 日本鋼管株式会社 | 耐遅れ破壊特性に優れた車輌部材用超高張力電縫鋼管 |
JP5167616B2 (ja) * | 2005-10-31 | 2013-03-21 | Jfeスチール株式会社 | 耐遅れ破壊特性に優れた金属ボルト |
JP5726604B2 (ja) * | 2010-06-11 | 2015-06-03 | 株式会社神戸製鋼所 | 高強度ボルト用鋼 |
CN114875308B (zh) * | 2022-04-08 | 2023-04-14 | 鞍钢股份有限公司 | 一种薄规格高强度核反应堆安全壳用钢及其制造方法 |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS58174551A (ja) * | 1982-04-03 | 1983-10-13 | Sumitomo Electric Ind Ltd | ボロン含有鋼およびその製造方法 |
JPS59162252A (ja) * | 1983-03-07 | 1984-09-13 | Daido Steel Co Ltd | 高強度ボルト用鋼 |
JPS60114551A (ja) * | 1983-11-25 | 1985-06-21 | Daido Steel Co Ltd | 高強度ボルト用鋼 |
-
1985
- 1985-01-29 JP JP1610885A patent/JPS61174326A/ja active Granted
Patent Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS58174551A (ja) * | 1982-04-03 | 1983-10-13 | Sumitomo Electric Ind Ltd | ボロン含有鋼およびその製造方法 |
JPS59162252A (ja) * | 1983-03-07 | 1984-09-13 | Daido Steel Co Ltd | 高強度ボルト用鋼 |
JPS60114551A (ja) * | 1983-11-25 | 1985-06-21 | Daido Steel Co Ltd | 高強度ボルト用鋼 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS61174326A (ja) | 1986-08-06 |
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Legal Events
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---|---|---|---|
EXPY | Cancellation because of completion of term |