JPH0454265Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、石貼工事用の足場を躯体につないで
足場の倒壊を防ぐのに使用される石貼工事用の足
場引き装置に関するものである。

〔従来の技術〕

板状の石材又は人造石材（以下、単に石と記載
する。）を、壁面や柱面などの躯体表面に貼つて
いく石貼工事用においては、躯体表面と足場との
間に石があり、石どうしの目地が、通常、６〜10
mm程度の狭いものであるから、既製の足場つなぎ
を目地に通して設置することができない。

このため、従来では、足場つなぎを設置する部
分を駄目にしたり、つまり足場つなぎを設置する
部分を残して石貼工事用を進め、完成後の足場解
体時に、この部分に石を後貼りしたり、あるい
は、一端を躯体に固定したステンレスの針金を目
地から外に出して、これを足場の建て地に結束し
たりしていた。

〔考案が解決しようとする問題点〕

上記の従来例には、次のような問題点があつ
た。即ち、前者によれば、足場解体時の工数が多
くなつて工期が長くかかるばかりではなく、石を
後貼りするため、その部分だけ石の貼り方が異な
り、他の部分と色が変わつたり、石表面のクリー
ニングに差が出て、外観が一様にならないことが
ある。しかも、後貼り部分は乾式工法となるの
で、強度が不十分になつて、将来、この部分の石
が落下する可能性もある。

後者によれば、引つ張り抵抗は発生しても、圧
縮側の抵抗が皆無となり、足場のつなぎが不十分
で、安全上、問題がある。

上記の従来欠点に鑑み、本考案は、既製の足場
つなぎを使用して足場を躯体にしつかりとつなぎ
ながらも、石を後貼りせずに施工できるようにし
た足場引き装置を提供するものである。

〔問題点を解決するための手段〕

上記の目的を達成するために、本考案が講じた
技術的手段は、次の通りである。即ち、本考案に
よる石貼工事用の足場引き装置は、ねじ軸の一端
部に、ねじ軸々芯と平行で且つ偏芯したねじ孔を
有する雌ねじ体を取り付けた第一部材と、一端部
が前記ねじ孔に着脱自在にねじ込まれたねじ棒の
他端部に、足場つなぎをねじ込み可能な雌ねじ体
を、当該ねじ棒と略同芯状に取り付けた第二部材
とを備えてなるものである。

〔作用〕

上記の構成よりなる足場引き装置は、次のよう
にして使用することができる。

先ず、躯体表面に墨出しを行つて、貼着される
石の横目地に対応する位置にホールインアンカー
を設置し、これに第一部材のねじ軸を螺着する一
方、ホールインアンカーのレベルまで石貼工事用
を行う。第一部材のねじ孔とねじ軸々芯とは偏芯
しているので、貼着された石の上縁部のレベルが
第一部材のねじ孔のレベルと合わない場合には、
第一部材をホールインアンカーに対して適当角度
回転させることによりレベル合わせを行うことが
できる。

次に、第二部材のねじ棒を第一部材のねじ孔に
螺着し、この状態で上の石を貼着する。横目地か
ら出たねじ棒の他端部に取り付けた雌ねじ体に
は、既製の足場つなぎをねじ込み、当該足場つな
ぎを足場の建て地等に連結するのである。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明す
る。

第１図は本考案に係る石貼工事用の足場引き装
置を示し、第２図はその使用状態を示す。

前記足場引き装置は、第一部材１と、第二部材
２とを備えている。前記第一部材１は、躯体３に
設置したホールインアンカー４に螺合する寸法の
ねじ軸５の一端部に、雌ねじ体６を、そのねじ孔
６ａがねじ軸５の軸芯と平行で且つ偏芯して位置
する状態に、溶接等の手段により固着状態に取り
付けて構成したものである。前記第二部材２は、
一端部が前記ねじ孔６ａに着脱自在にねじ込まれ
た小径（これは、貼着された石の横目地を貫通さ
せることができる寸法である。）で且つ高強度の
PC鋼棒よりなるねじ棒７の他端部に、既製の足
場つなぎ８をねじ込み可能な大径のねじ孔９ａと
前記ねじ棒７の他端部をねじ込み可能な小径のね
じ孔９ａとが同芯状に穿設された雌ねじ体９を、
前記小径のねじ孔９ｂとねじ棒７他端部のねじ部
との螺合により着脱自在な状態に取り付けて構成
したものである。図中、１０はねじ棒７に套嵌さ
せるビニールパイプ、１１はナイロンワツシヤー
であり、これらは、石裏の空間に充填されたトロ
のねじ棒７への付着を防止したり、石の破損や錆
による汚れを防止するために必要に応じて使用さ
れる。

上記の足場引き装置は、次のようにして使用さ
れる。

先ず、躯体３表面に墨出しを行つて、貼着され
る石A₁，A₂の横目地に対応する位置にホールイ
ンアンカー４を設置し、これに第一部材１のねじ
軸５を螺着し、必要があれば、丸リング１２、ス
プリングワツシヤー１３を介してロツクナツト１
４を締め付け、緩み止めを行う。

しかる後、ホールインアンカー４のレベルまで
下の石A₁を、湿式工法により施工する。

次に、第二部材２のねじ棒７を第一部材１の雌
ねじ体６のねじ孔６ａにねじ込む。この場合、ね
じ孔６ａと貼着された石の上縁部のレベルが合わ
ない場合には、第３図に示すように、第一部材１
をホールインアンカー４に対してねじ軸５の軸芯
周りに適当角度回転させる。このようにすること
により、ねじ孔６ａがねじ軸５軸芯から偏芯して
いるので、レベル合わせを行うことができる。

この状態で上の石A₂を湿式工法により施工す
る。

しかる後、横目地から出たねじ棒７の先端部に
第二部材２の雌ねじ体９を螺着すると共に、当該
雌ねじ体９には既製の足場つなぎ８を螺着し、当
該足場つなぎ８を図外の外部足場の建て地に連結
する。

外部足場の解体時には、足場つなぎ８及び雌ね
じ体９を取り去り、ねじ棒７を第一部材１の雌ね
じ体６から抜き取る。

尚、第一部材１やロツクナツト１４は、石A₁，
A₂の裏側に残置されることになるので、錆によ
る石A₁，A₂や目地の汚れを防止するためにステ
ンレス製とすることが望ましい。図示しないが、
雌ねじ体９とねじ棒７は溶接等の手段により固着
しておいてもよい。またねじ軸５に対する雌ねじ
体６の取付けは、ねじ嵌合など他の手段によつて
行つてもよい。例えば、雌ねじ体６に前記ねじ孔
６ａと偏芯した位置に別のねじ孔を形成してお
き、この偏芯したねじ孔にねじ軸５を螺着しても
よい。この場合であれば、ねじ軸５をホールイン
アンカー４にロツクナツト１４でしつかり固定し
たままでも、雌ねじ体６をねじ軸５に対して適当
角度回転させて前述したレベル合わせを行うこと
ができる。

〔考案の効果〕

本考案は、上述した構成よりなるから、躯体に
設置したホールインアンカーに第一部材を取り付
け、第一部材の雌ねじ体に第二部材のねじ棒をね
じ込み、石の横目地から出たねじ棒他端部の雌ね
じ体に既製の足場つなぎをねじ込むことができ、
ホールインアンカーと横目地のレベルが多少ずれ
ていても、第一部材を回転させることによつてレ
ベル合わせを行うことができ、ねじ棒を確実に横
目地に通すことができる。また足場引き装置が上
記の構成であるため、引つ張りに対しては勿論、
圧縮に対しても抵抗でき、足場のつなぎが確実に
行われることになる。

このように、本考案によれば、足場引き装置と
既製の足場つなぎを使用して足場を躯体にしつか
りとつなぎながらも、足場引き装置のねじ棒を横
目地に通せるため、石を後貼りせずに施工できる
効果がある。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の一実施例を示し、第１図は石貼
工事用の足場引き装置の分解斜視図、第２図は前
記足場引き装置の使用状態を示す縦断側面図、第
３図は作用を説明する要部の正面図である。 １……第一部材、２……第二部材、５……ねじ
軸、６……雌ねじ体、６ａ……ねじ孔、７……ね
じ棒、８……足場つなぎ、９……雌ねじ体。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ねじ軸の一端部に、ねじ軸々芯と平行で且つ偏
   芯したねじ孔を有する雌ねじ体を取り付けた第一
   部材と、一端部が前記ねじ孔に着脱自在にねじ込
   まれたねじ棒の他端部に、足場つなぎをねじ込み
   可能な雌ねじ体を、当該ねじ棒と略同芯状に取り
   付けた第二部材とを備えてなる石貼工事用の足場
   引き装置。