JPH0431277B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

［産業上の利用分野］ 本発明は体外血液循環回路中において血液を一
時的に貯溜する貯血槽に関し、一層詳細には、前
記貯血槽を構成するハウジング内に略鉛直状態と
なる隔壁を設けることにより血液排出時の拍動乃
至脈動による血液面の共鳴振動を抑制して気泡の
混入を防止した貯血槽に関する。 ［発明の背景］ 例えば、胸部手術等を行う場合には人工肺を用
いて体外血液循環回路を構成し、前記人工肺によ
つて二酸化炭素と酸素との交換を行つている。こ
の場合、人工肺から送出された血液は気泡の除去
および一定量の血液の送給のために一旦貯血槽に
貯溜された後、ポンプにより一定の拍動乃至脈動
数で送出される。ここで、拍動とは流量と時間の
関係が一定時間t₁に一定の大流量Q₁が流れ、次の
一定時間t₂に一定の小流量Q₂が流れる動きを交互
に繰り返し、流量を縦軸、時間を横軸として表さ
れる線が櫛型となるような関係を意味する。ま
た、脈動とは流量Ｑが時間ｔとともに漸次増加減
少を繰り返し、流量を縦軸、時間を横軸として表
される線が波型となるような関係を意味する。 ここで、前記貯血槽には袋状の軟質部材に血液
を気密状態で貯溜するクローズドタイプの貯血槽
と、硬質部材からなるハウジング内に血液を貯溜
するオープンタイプの貯血槽とがある。この場
合、オープンタイプの貯血槽はプライミングおよ
び貯血量の確認が容易であり、また、人工肺と一
体的に構成することも容易であるため、このよう
なオープンタイプの貯血槽を用いた機能集約型人
工肺が本出願人によつて提案されている（特開昭
第59−57661号）。 そこで、このオープンタイプの貯血槽を用いた
体外血液循環回路の概略構成を第１図に示す。す
なわち、貯血槽２には図示しない人工肺より送給
された血液Ｂが貯溜されており、この血液Ｂは貯
血槽２の底面部に画成された血液排出口６よりフ
レキシブルパイプ８を介して送出される。なお、
前記フレキシブルパイプ８は拍動乃至脈動を生起
するポンプ１０内を経由しており、前記ポンプ１
０を構成する回転子１２が矢印方向に回転するこ
とで血液Ｂに所定の拍動乃至脈動流が付与され
る。 この場合、貯血槽２に貯溜された血液Ｂの液面
１４には、ポンプ１０の拍動乃至脈動数、すなわ
ち、回転子１２の回転数、貯血槽２に貯溜された
貯血量または液面面積、血液Ｂの粘性等の条件に
より実線および破線で示す共鳴振動を生じること
がある。このような共鳴振動が発生すると、循環
技師等は液面１４が振動しているために貯血槽２
内に貯溜された血液Ｂの貯血量を正確に把握する
ことが出来なくなつてしまう。また、体外血液循
環回路を構成する人工肺等の装置に対して不要な
振動が惹起され、その動作に支障を来す虞があ
る。さらに、液面１４の共鳴振動の振幅が増大し
た場合、血液Ｂ中に気泡の巻き込まれる危険性が
ある。ここで、液面１４の共鳴振動の振幅は血液
排出口６を液面１４に対して非対称となる位置に
設けた場合、特に顕著となる傾向がある。そのた
め、前記血液排出口６は貯血槽２の略中央部に形
成すことが要請され、当該貯血槽２の形状等が著
しく制約されてしまう不都合が指摘されている。 ［発明の目的］ 本発明は前記の不都合を克服するためになされ
たものであつて、体外血液循環回路中において血
液を一時的に貯溜する貯血槽内に略鉛直状態とな
る隔壁を設けることにより、血液送出時における
拍動による液面の共鳴振動を抑制し、前記血液に
対する気泡の巻き込みおよび当該循環回路におけ
る不要な振動の発生を防止することを目的とす
る。 ［目的を達成するための手段］ 前記目的を達成するために拍動乃至脈動を生起
するポンプを有する体外血液循環回路中におい
て、血液を一時的に貯留する血液貯留部を備える
貯血槽であつて、該貯留部には血液流入部、隔
壁、血液排出口の順に配置され、該血液排出口は
該貯留部の底部に画成した前記貯留部の中央部分
から偏位した位置に設け、該隔壁を貯留部の固有
振動数とポンプの拍動乃至脈動が相違する位置に
設け、該隔壁は貯留部の排出口側を少なくとも２
つに区分けし、かつ、血液を貯留したときに、血
液面上に突出し、貯留部の排出口側の隔壁によつ
て区分けされた領域が少なくとも血液面下で連通
することを特徴とする。 ［実施態様］ 次に、本発明に係る貯血槽について好適な実施
態様を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細
に説明する。 第２図において、参照符号２０は体外血液循環
回路を構成する本体部を示し、この本体部２０は
熱交換器２２と人工肺２４と本発明に係るオープ
ンタイプの貯血槽２６とを集約して一体的に構成
したものである。 熱交換器２２は筒状のハウジング２８内に多数
の熱交換用管体３０を収納したものであり、この
熱交換用管体３０の内部には水ポート３２より温
水または冷水Ｗが供給さえる。なお、血液供給ポ
ート３４より熱交換器２２内に流入した血液Ｂは
熱交換用管体３０の外周を通過することにより加
温あるいは冷却されて人工肺２４に供給される。 人工肺２４は血液Ｂ中の二酸化炭素を除去して
酸素を添加するものであり、中央部を絞つた略円
筒状のハウジング３６内に多数の中空糸膜３８を
束状に収納している。ハウジング３６の上下両端
部には中空糸膜３８の両端部を保持する隔壁４０
ａおよび４０ｂが装着される。この場合、中空糸
膜３８が収納されハウジング３６と隔壁４０ａ，
４０ｂとによつて囲繞される空間は熱交換器２２
に連通しており、血液Ｂの流通するガス交換室４
２を構成する。ハウジング３６の上下両端部には
さらに蓋部材４４ａおよび４４ｂが装着され、隔
壁４０ａ，４０ｂと前記蓋部材４４ａおよび４４
ｂとの間にはガス供給室４６およびガス排気室４
８が夫々画成される。なお、中空糸膜３８にはガ
ス入口ポート５０からガス供給室４６を介して酸
素を含むガスＡが供給される。また、中空糸膜３
８より送出される前記ガスＡはガス排気室４８を
介してガス出口ポート５２より排出される。 一方、本発明に係る貯血槽２６は管路５４を介
して人工肺２４のガス交換室４２に連通する。貯
血槽２６の底面部は、第３図に示すように、第１
乃至第３の段部５６ａ乃至５６ｃで構成され、前
記管路５４の血液流入口５８は最上層である第１
段部５６ａに開口する。第１段部５６ａには流入
時における血液Ｂの発泡を防止するため、前記血
液流入口５８に近接してウレタン消泡材６０が配
設される。中間層である第２段部５６ｂの略中央
部には当該第２段部５６ｂ上の貯血域を第１の貯
血部６２ａと第２の貯血部６２ｂとに略分離状態
とする隔壁６４が設けられる。また、最下層であ
る第３段部５６ｃの端部側には貯血槽２６に貯溜
された血液Ｂを排出するために血液排出口６６が
開口する。なお、この血液排出口６６は血液送出
ポート６８を介して拍動乃至脈動を生起する図示
しないポンプに連通する。 本発明に係る貯血槽は基本的には以上のように
構成されるものであり、次にその作用並びに効果
について説明する。 先ず、血液供給ポート３４から流入した血液Ｂ
は熱交換器２２内に収納された熱交換用管体３０
の間隙を通つて人工肺２４に供給される。この場
合、前記熱交換用管体３０内には水ポート３２か
ら所定の温度に保持された水Ｗが流通しており、
この水Ｗによつて前記血液Ｂが所定温度に加温ま
たは冷却される。 熱交換器２２から人工肺２４に流入した血液Ｂ
はハウジング３６によつて囲繞されるガス交換室
４２内において酸素が添加されると共に二酸化炭
素の除去が行われる。すなわち、ハウジング３６
内には束状となつた多数の中空糸膜３８が収納さ
れており、この中空糸膜３８内にはガス入口ポー
ト５０からガス供給室４６を介して酸素を含むガ
スＡが送給されている。従つて、血液Ｂは前記中
空糸膜３８を介して酸素と二酸化炭素との交換を
行う。なお、二酸化炭素を含んだガスＡはガス排
気室４８を介してガス出口ポート５２より外部に
排出される。 人工肺２４において酸素の添加された血液Ｂは
管路５４を介して血液流入口５８より貯血槽２６
内に流入する。次いで、前記血液Ｂはウレタン消
泡材６０によつて血液Ｂ中に含まれる気泡が除去
された後、貯血槽２６内に貯溜される。 一方、貯血槽２６に貯溜された血液Ｂは血液送
出ポート６８に連通される図示しないポンプの作
用下に血液排出口６６を介して外部に間欠的に送
出される。この場合、貯血槽２６に貯溜された血
液Ｂの液面７２は前記ポンプによる血液Ｂの間欠
的な送出により共鳴振動することが懸念される。
然しながら、このような共鳴振動は貯血槽２６の
第２段部５６ｂに配設した隔壁６４によつて極め
て効果的に抑制されている。 そこで、前記隔壁６４の作用効果について実験
結果に基づき詳細に説明する。 第４図は前述した貯血槽２６を用いて構成した
循環実験回路の概略説明図である。この場合、貯
血槽２６の上部空間には貯血槽７４が配置されて
おり、貯血槽２６の血液排出口６６と前記貯血槽
７４とは拍動乃至脈動を生起するポンプ７６を介
して管路７８により連結される。また、貯血槽２
６の血液流入口５８と貯水槽７４の排出口７９と
は管路８０によつて連結される。そして、これら
の貯血槽２６および貯水槽７４には血液Ｂと略同
様の特性（粘度約３センチポアズ）を有した35％
グリセリン水溶液Ｇを貯溜しておくものとする。 このような循環実験回路において、貯血槽２６
から隔壁６４を除去した状態でポンプ７６により
拍動乃至脈動数を100beet／minとしてグリセリ
ン水溶液Ｇを循環させた場合、拍動乃至脈動によ
る液面８２の変動量ΔPは貯血槽２６に貯溜され
た貯水量に対して次の表に示すように変動した。

【表】 この場合、貯血槽２６に貯溜された貯水量が
700乃至800mlの時に液面８２の変動量ΔPが最大
となり、共鳴振動の発生が観測されている。 一方、貯血槽２６における第２段部５６ｂの略
中間部に、第３図に示すように、隔壁６４を略鉛
直状態で設けた場合、前記の表に示すように、液
面８２の変動量ΔPは大幅に減少し共鳴振動の発
生しないことが容易に諒解されよう。 すなわち、貯血槽２６に貯溜された血液Ｂの液
面７２（第２図および第３図参照）に発生する共
鳴振動は、血液Ｂの特性、貯血槽２６の形状等に
基づく系の固有振動数とポンプによる拍動乃至脈
動数とが一致した時に発生するものと考えられ
る。この場合、ポンプにより拍動乃至脈動数は人
工肺２４の実用上から一定範囲に設定されてい
る。そこで、貯血槽２６内の所定部位に隔壁６４
を配設すれば系の固有振動数とポンプの拍動乃至
脈動数とを大幅に相違させることが出来、共鳴振
動が抑制される。この結果、血液Ｂの液面７２が
静穏となり、当該血液Ｂに気泡等の混入する危険
性が著しく低下する。また、拍動乃至脈動による
液面７２の変動量ΔPが小さいため、液面７２の
高さ、すなわち、貯血槽２６に貯溜されている貯
血量を外部から容易且つ正確に確認することが出
来る。さらに、貯留槽２６内の血液Ｂの揺動が効
果的に抑制されるため、振動の発生が極めて少な
く、装置全体に無用の振動の惹起される虞もな
い。 なお、貯血槽２６および隔壁６４の形態として
は前述したものに限定されず種々のものを採用す
ることが出来る。例えば、第５図ａは貯血槽２６
に対して十字形状の隔壁８４を設けたものであ
り、この場合、同図に示すＸ方向およびＹ方向に
対する血液Ｂの振動が好適に抑制される。第５図
ｂは貯血槽２６にＸ方向に対して平行となる２枚
の隔壁８６ａおよび８６ｂを設けたものであり、
Ｘ方向に対して特に顕著な振動減衰効果が招来さ
れる。第５図ｃは逆円錐あるいは逆角錐状の貯血
槽８８に対して血液排出口９０の位置が血液Ｂの
液面９２に対して略対称となるような隔壁９４を
設けたものであり、前述した場合と略同様の効果
が得られる。また、第５図ｄは第２図および第３
図に示す貯血槽２６に対して第２段部５６ｂにお
ける貯血槽２６の壁面に対して接触しないように
隔壁９６を設けたものであり、同様に血液の振動
を低減させることが出来る。 ここで、例えば、第２図において、隔壁６４の
断面形状は貯血槽２６に貯溜された血液Ｂの液圧
に十分耐えられるものであれば特に制限されるも
のではなく、また、前記貯血槽２６と共に一体的
に形成することが可能である。従つて、その製造
も極めて容易である。また、隔壁６４の高さは当
該隔壁６４を設けない場合において共鳴振動の発
生する液面７２の高さの少なくとも80％以上の高
さに設けてあれば好適である。さらに、隔壁６４
は出来る限り広面積を有するほうが血液Ｂの振動
を効果的に抑制し得るものであるが、血液排出口
６６に対する血液流を阻害することのないよう貯
血槽２６の側壁に対して20％程度の間隙を設けて
おくことが望ましい。 ［発明の効果］ 以上のように、本発明によれば、拍動乃至脈動
を生起するポンプを有する体外血液循環回路中に
おいて、血液を一時的に貯留する血液貯留部を備
える貯血槽であつて、該貯留部には血液流入部、
隔壁、血液排出口の順に配置され、該血液排出口
は該貯留部の底部に画成した前記貯留部の中央部
分から偏位した位置に設け、該隔壁を貯留部の固
有振動数とポンプの拍動乃至脈動が相違する位置
に設け、該隔壁は貯留部の排出口側を少なくとも
２つに区分けし、かつ、血液を貯留したときに、
血液面上に突出し、貯留部の排出口側の隔壁によ
つて区分けされた領域が少なくとも血液面下で連
通する。この場合、血液の間欠的な送出による拍
動乃至脈動数に対して貯血槽の形状および血液の
特性等によつて決まる系の固有振動数を相違させ
ることが出来、従つて、血液の液面に共鳴振動の
発生することがなくなる。この結果、血液の送出
による液面の変動量が小さく抑えられるため、貯
血量の確認が極めて容易となる。また、液面の共
鳴振動によつて血液中に気泡の巻き込まれる虞も
ない。 以上、本発明について好適な実施態様を挙げて
説明したが、本発明はこの実施態様に限定される
ものではなく、例えば、ポンプを有しない体外血
液循環回路、または人工肺、熱交換器等が別体と
なる貯血槽等にも適用可能である等、本発明の要
旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設
計の変更が可能なことは勿論である。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来技術に係る貯血槽を用いた体外血
液循環回路の説明図、第２図は人工肺と一体的に
構成される本発明に係る貯血槽の一部断面構成
図、第３図は第２図に示す貯血槽の概略構成斜視
図、第４図は本発明に係る貯血槽の特性を示す循
環実験回路の説明図、第５図ａ乃至ｄは本発明に
係る貯血槽の他の実施態様を示す説明図である。 ２０……本体部、２２……熱交換器、２４……
人工肺、２６……貯血槽、３４……血液供給ポー
ト、３８……中空糸膜、５８……血液流入口、６
０……ウレタン消泡材、６６……血液排出口、６
８……血液送出ポート、Ｂ……血液。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 拍動乃至脈動を生起するポンプを有する体外
   血液循環回路中において、血液を一時的に貯留す
   る血液貯留部を備える貯血槽であつて、該貯留部
   には血液流入部、隔壁、血液排出口の順に配置さ
   れ、該血液排出口は該貯留部の底部に画成した前
   記貯留部の中央部分から偏位した位置に設け、該
   隔壁を貯留部の固有振動数とポンプの拍動乃至脈
   動が相違する位置に設け、該隔壁は貯留部の排出
   口側を少なくとも２つに区分けし、かつ、血液を
   貯留したときに、血液面上に突出し、貯留部の排
   出口側の隔壁によつて区分けされた領域が少なく
   とも血液面下で連通することを特徴とする貯血
   槽。 ２ 前記隔壁は略鉛直状態で且つ互いに直交する
   複数の隔壁よりなる特許請求の範囲第１項記載の
   貯血槽。