JPH041379Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は自動２輪車等に使用される摩擦クラツ
チに関し、特にクラツチ入力部がエンジンクラン
ク軸に直結される型式の摩擦クラツチに関する。

（従来技術） 一般に自動２輪車用のクラツチにおいては、ク
ラツチ接続時に入力側と出力側の摩擦板が互いに
圧接してクラツチ入力部材と一体化し、クラツチ
内部において出力側摩擦板の内周突起と出力部材
の溝との嵌合部だけがごく僅かに相対回転（が
た）を発生し得る状態になる。従つて入力部材を
エンジンの出力軸に直結したクラツチにおいて
は、クラツチ接続時に駆動系全体の質量が上記嵌
合部を境にしてエンジン側（駆動側）とトランス
ミツシヨン側（従動側）とに二分される。そのた
めに従来品ではトルク振動等により出力側摩擦板
の内周突起が出力部材の溝の側壁と衝突し、異音
が発生するという解決されるべき課題がある。

（考案の目的） 本考案は上記課題を解決するために、クラツチ
の入力部材と出力部材を摩擦圧接部を介して連結
する連結部材を設け、その連結部材によりクラツ
チ接続時の入力部材と出力部材の相対的な回転を
規制できるようにすることを目的としている。

（考案の構成） 本考案は、エンジンのクランク軸に直結した環
状入力部材の外周に、軸方向に延びる筒状部を設
け、筒状部とその半径方向内側に配置した出力部
材との間に、端部入力側摩擦板を含む環状の入力
側摩擦板及び出力側摩擦板を、上記環状入力部材
から最も軸方向に離れた先端位置に上記端部入力
側摩擦板が位置する状態で軸方向に交互に配置
し、上記環状入力部材の外周部分に、それに隣接
する摩擦板を軸方向に支承できる支承部分を設
け、入力側摩擦板の外周を上記筒状部に軸方向に
のみ摺動自在に連結し、出力側摩擦板の内周の突
起を出力部材の外周溝に軸方向に摺動自在に連結
し、上記２種類の摩擦板が互いに圧接する接続位
置と両者が互いに離れる遮断位置との間で端部入
力側摩擦板を軸方向に移動させるべく、該端部入
力側摩擦板をその他の摩擦板側へ弾発付勢する押
圧ばねと、該押圧ばねの弾発力に抗して該端部入
力側摩擦板の一端を押圧可能に往復移動する移動
体とからなる制御機構を設け、上記押圧ばねを上
記筒状部で支持し、端部入力側摩擦板に対して出
力側摩擦板と反対側の位置に連結ばねを配置し、
該連結ばねの一方の縁部を上記筒状部で支持し、
連結ばねの上記一方の縁部以外の部分に圧接部と
被操作部とを設け、上記遮断位置において、上記
移動体が端部入力側摩擦板及び上記押圧ばねを介
して被操作部を、該連結ばねの弾発力に抗して軸
方向に押し、それにより圧接部が出力部材から離
れ、上記接続位置において上記押圧ばねに押圧さ
れた端部入力側摩擦板が被操作部から離れ、それ
により圧接部が出力部材に該連結ばねの弾発力で
圧接するようにしたことを特徴としている。

（実施例） 図面においてエンジン１のクランク軸２は自動
２輪車の車幅方向に延びており、クランクアーム
３の両側に隣接する部分が軸受４を介してクラン
クケース５のボス６に支持されている。クラツチ
７はクランクケース５の右側張出部５ａの内部に
収容されている。クラツチ７は、クランク軸２に
嵌合固定された環状入力部材（クラツチアウタ）
８と、クランク軸２に回転自在に嵌合している環
状出力部材（クラツチインナ）１７と、これら環
状入力部材８，１７間に配設されて互いに接続動
作および遮断動作（離間動作）を行うクラツチプ
レート１２，１２ａおよびフリクシヨンプレート
１３，１３ａとから主に構成されている。この実
施例では、クラツチプレートおよびフリクシヨン
プレートがそれぞれ２枚ずつ設けられた場合を示
している。

環状入力部材８は、内周のボス１０がスプライ
ンを介してクランク軸２の右端部に嵌合固定され
ている。また、環状入力部材８の外周部にはシリ
ンダ中心Ｏ−Ｏ側へ突出した筒状部１１が一体に
設けてあり、筒状部１１の内周側にはクラツチプ
レート１２，１２ａが装着されている。

環状出力部材１７は、内周に筒状ボス２０を備
え、ボス２０の内周に配設されたブツシユ２１を
介してクランク軸２に回転自在に嵌合しており、
外周部はフリクシヨンプレート１３，１３ａを装
着して環状入力部材８の筒状部１１の内周面に臨
んでいる。

２枚のクラツチプレート１２，１２ａ（入力側
摩擦板）と２枚のフリクシヨンプレート１３，１
３ａ（出力側摩擦板）とは、エンジン１側からク
ランク軸２の軸方向へクラツチプレート１２、フ
リクシヨンプレート１３、クラツチプレート１２
ａ、フリクシヨンプレート１３ａの順で交互に配
置してある。クラツチプレート１２，１２ａにつ
いては、これらは環状で、その外周に複数の突起
１５を備え、突起１５が筒状部１１の内周面の溝
１６に対してクランク軸２の軸方向に沿うように
摺動自在に嵌合している。フリクシヨンプレート
１３，１３ａも環状で、その内周に複数の突起１
６ｂを備え、突起１６ｂが環状出力部材１７の内
周面の溝１９に対してクランク軸方向沿いに摺動
自在に嵌合している。

環状出力部材１７のボス２０は外周にギヤ２２
を備え、ギヤ２２はトランスミツシヨンの入力ギ
ヤ２３と噛み合つている。ギヤ２３は捩りダンパ
２５の外周部に設けてあり、ダンパ２５の内周が
トランスミツシヨンの入力軸２６にスプラインを
介して固定されている。

クラツチプレート１２，１２ａとフリクシヨン
プレート１３，１３ａとの間の接続動作および遮
断動作を制御する機構は、以下に説明する押圧ば
ね２７とプツシヤピン３３とから主に構成され
る。

押圧ばね２７は、上記各プレートのうち最もエ
ンジン１側に配置されたクラツチプレート１２に
隣接し、クラツチプレート１２のさらにエンジン
１側に配置された環状の皿ばねで構成されてい
る。そして、その内周縁でクラツチプレート１２
を図の右方向へ押圧するように設けられている。
押圧ばね２７の外周縁は、環状入力部材８から突
出形成されている筒状部１１の内周面に当接して
おり、後述の他の皿ばねよりなる連結ばね２８の
外周縁を介してサークリツプ３０により固定され
ている。サークリツプ３０は筒状部１１の内周面
上の溝に嵌合固定されている。この押圧ばね２７
の弾発力によりクラツチプレート１２が押される
と各プレート１２，１２ａ，１３，１３ａは互い
に接触しあつて所謂クラツチの接続状態となり、
そのとき末端のフリクシヨンプレート１３ａは環
状入力部材８の一方端面に支承される。したがつ
て、環状入力部材８のこの支承面を形成する部分
は、プレート１２，１２ａ，１３，１３ａの支承
部分２７ｂとして構成される。

プツシヤピン３３は、押圧ばね２７と反対側に
配置され且つ環状入力部材８の上記支承部分２７
ｂをクランク軸方向沿いに摺動自在に貫通してお
り、上述の押圧ばね２７の弾発力に抗してクラツ
チプレート１２をエンジン１側へ押したり、その
押圧を解除したり往復運動が可能に構成されてい
る。即ち、このプツシヤピン３３がクラツチプレ
ート１２を押圧ばね２７の弾発力に抗してエンジ
ン１側へ押し込むと、各プレート１２，１２ａ，
１３，１３ａ間が離間して所謂クラツチの遮断状
態となる。図にはプツシヤピン３３は１本のみが
示されているが、本実施例では環状入力部材８の
周方向に３本のプツシヤピン３３が中心角120°毎
の位置に設けられている。

上述した皿ばねよりなる連結ばね２８は、クラ
ツチの接続状態で環状入力部材８と環状出力部材
１７との間を弾発力で連結し、クラツチ遮断状態
では両者を分離するための構成である。詳細は後
述するが、両者を連結または分離する動作は、ク
ラツチの接続または遮断状態と対応させるべく、
押圧ばね２７およびプツシヤピン３３の動作と連
動するように構成されている。連結ばね２８は、
押圧ばね２７よりも小さい内径を備え、外周縁が
上述の如くサークリツプ３０と押圧ばね２７によ
り両側から挾持されている。連結ばね２８の内周
縁３１は、出力部材１７の外周部のシリンダ中心
Ｏ−Ｏ側の端面３２に隣接する位置にある。図示
のクラツチ接続状態において、連結ばね２８は自
身の弾発力によつてその内周縁３１を出力部材端
面３２に圧接するので、連結ばね２８の内周縁３
１はその圧接部を構成している。なお、クラツチ
プレート１２は連結ばね２８から離れている。ま
た、クラツチプレート１２の内周には複数の折曲
突起２９が設けてあり、突起２９が連結ばね２８
の内周部の切欠きに入り込み、クラツチプレート
１２に対する連結ばね２８の回転を阻止してい
る。

上述のプツシヤピン３３において、クラツチプ
レート１２を押す端部とは反対側の端部は、環状
入力部材８よりも図の右方へ突出して環状のレリ
ーズベアリングホルダ３４の外周部側面に当接し
ている。ホルダ３４は外周部に孔３５を備え、孔
３５の内周が入力部材８本体から右方へ突出した
ボス３６に対してブツシユ３７を介してピン３３
と平行な方向に摺動自在に嵌合している。ホルダ
３４は内周部に筒状ボス３８を備え、ボス３８の
外周が入力部材８の内周に対してピン３３と平行
な方向に摺動自在に嵌合している。ボス３８の内
周にはレリーズベアリング３９を介してプツシヤ
４０が取り付けてある。プツシヤ４０の右端フラ
ンジ４０ａにはクランク軸２の軸芯に垂直な方向
で回動自在にクランクケースの右側張出部５ａに
支持されたレリーズシヤフト４１のカム面４２が
当接されている。

（作用） 図示のクラツチ接続状態では、カム面４２はプ
ツシヤ４０の右端フランジ４０ａと平行に位置し
ており、プツシヤ４０、レリーズベアリング３
９、ホルダ３４、ピン３３も右寄りの接続位置に
ある。この状態では押圧ばね２７の弾力を受けて
クラツチプレート１２が右方へ移動しており、プ
レート１２，１２ａ，１３，１３ａ及び環状入力
部材８の支承部分２７ｂは互いに圧接して一体化
している。従つてクランク軸２から環状入力部材
８へ伝えられたエンジントルクはクラツチプレー
ト１２，１２ａ、フリクシヨンプレート１３，１
３ａを介して環状出力部材１７に伝えられ、ギヤ
２２からギヤ２３を経てトランスミツシヨンへ伝
えられる。

このようにクラツチが接続した状態では、クラ
ツチプレート１２，１２ａとフリクシヨンプレー
ト１３，１３ａ及び環状入力部材８が一体化して
いるので、駆動系全体の質量は突起１６ｂと溝１
９の嵌合部を境にしてエンジン側の駆動部とトラ
ンスミツシヨン側の従動部とに二分される。従つ
てエンジントルクに振動や変動が生じた場合、上
記駆動部と従動部の間で相対的な回転が発生しよ
うとし、具体的には出力側摩擦板１３，１３ａの
内周突起１６ｂが出力部材１７の溝１９の側壁に
衝突しようとする。

ところがクラツチ接続状態では、連結ばね２８
の内周縁３１（圧接部）が環状出力部材１７の外
周部端面３２に圧接し、環状入力部材８と環状出
力部材１７が連結ばね２８を介して連結されてい
る。従つて小さいトルク変動が生じた場合でも、
環状入力部材８が環状出力部材１７に対して相対
的に回転することはなく、突起１６ｂが溝１９の
側壁に衝突することはない。又大きいトルク変動
が生じた場合でも、連結ばね２８の内周縁３１が
外周部端面３２上を滑るので、その滑りに対応す
る摩擦力によりトルク変動は大幅に吸収され、環
状入力部材８が環状出力部材１７に対して急激に
回転することはない。従つて突起１６ｂが溝１９
の側壁に高速で衝突することは防止される。

クラツチ遮断操作を行うと、図示されていない
リンク機構等を介してレリーズシヤフト４１が回
転させられ、カム面４２がそのエツジ部でプツシ
ヤ４０の右端フランジ４０ａを左方へ押し、プツ
シヤ４０、レリーズベアリング３９、ホルダ３
４、プツシヤピン３３も左方へ移動する。この移
動によりプツシヤピン３３は押圧ばね２７の弾力
に抗してクラツチプレート１２を左方へ押す。従
つてプレート１２，１２ａ，１３，１３ａ間の圧
接力は解放され、クラツチ７は遮断される。又こ
の状態ではプツシヤピン３３がクラツチプレート
１２及び押圧ばね２７を介して連結ばね２８の例
えば半径方向中間部５０（被操作部）を左方へ押
しており、連結ばね２８は環状出力部材１７から
離れている。

（考案の効果） 以上説明したように本考案によると、クラツチ
接続時に連結ばね２８により環状入力部材８と環
状出力部材１７を連結し、例えば連結ばね２８の
内周縁３１と環状出力部材端面３２との摩擦圧接
部により入力部材８と出力部材１７の相対回転を
規制するようにしたので、突起１６ｂが溝１９の
側壁に激しく衝突することはなく、衝突による異
音の発生を防止することができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案実施例の断面図である。 １……エンジン、２……クランク軸、７……ク
ラツチ、８……環状入力部材、１１……筒状部、
１２，１２ａ……クラツチプレート（入力側摩擦
板）、１３，１３ａ……フリクシヨンプレート
（出力側摩擦板）、１６ｂ……突起、１７……出力
部材、１９……溝、２７……押圧ばね（制御機
構）、２７ｂ……支承部分、２８……連結ばね、
３１……内周縁（圧接部）、３３……プツシヤピ
ン（制御機構の移動体）、５０……連結ばねの半
径方向中間部（被操作部）。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. エンジン１のクランク軸２に直結した環状入力
   部材８の外周に、軸方向に延びる筒状部１１を設
   け、筒状部１１とその半径方向内側に配置した出
   力部材１７との間に、端部入力側摩擦板１２を含
   む環状の入力側摩擦板１２，１２ａ及び出力側摩
   擦板１３，１３ａを、上記環状入力部材８から最
   も軸方向に離れた先端位置に上記端部入力側摩擦
   板１２が位置する状態で軸方向に交互に配置し、
   上記環状入力部材８の外周部分に、それに隣接す
   る摩擦板１３ａを軸方向に支承できる支承部分２
   ７ｂを設け、入力側摩擦板１２，１２ａの外周を
   上記筒状部１１に軸方向にのみ摺動自在に連結
   し、出力側摩擦板１３，１３ａの内周の突起１６
   ｂを出力部材１７の外周溝１９に軸方向に摺動自
   在に連結し、上記２種類の摩擦板１２，１２ａ，
   １３，１３ａが互いに圧接する接続位置と両者が
   互いに離れる遮断位置との間で端部入力側摩擦板
   １２を軸方向に移動させるべく、該端部入力側摩
   擦板１２をその他の摩擦板１２ａ，１３，１３ａ
   側へ弾発付勢する押圧ばね２７と、該押圧ばね２
   ７の弾発力に抗して該端部入力側摩擦板１２の一
   端を押圧可能に往復移動する移動体３３とからな
   る制御機構２７，３３を設け、上記押圧ばね２７
   を上記筒状部１１で支持し、端部入力側摩擦板１
   ２に対して出力側摩擦板１３，１３ａと反対側の
   位置に連結ばね２８を配置し、該連結ばね２８の
   一方の縁部を上記筒状部１１で支持し、連結ばね
   ２８の上記一方の縁部以外の部分に圧接部３１と
   被操作部５０とを設け、上記遮断位置において、
   上記移動体３３が端部入力側摩擦板１２及び上記
   押圧ばね２７を介して被操作部５０を、該連結ば
   ね２８の弾発力に抗して軸方向に押し、それによ
   り圧接部３１が出力部材１７から離れ、上記接続
   位置において上記押圧ばね２７に押圧された端部
   入力側摩擦板１２が被操作部５０から離れ、それ
   により圧接部３１が出力部材１７に該連結ばね２
   ８の弾発力で圧接するようにしたことを特徴とす
   る摩擦クラツチ。