JPH04122864U - 位置決め穴付き金属ガスケツト - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 位置決めピンに位置決め穴の嵌入が容易で、
しかも、位置決めピンからの脱落を防止した位置決め穴
付き金属ガスケットを提供する。 【構成】 穴内に位置決めピンを挿通する位置決め穴Hd
を第１の金属板６に形成し、該位置決め穴Ｈｄの少なく
とも一つに形成する弾性係合部14を、位置決めピンの側
壁を押圧する長さの舌片状に形成し、第２の金属板４に
設けるピン穴12に、変形する弾性係合部14と干渉を避け
る切欠き部20を形成した。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、接合面に設けた位置決めピンを挿入する位置決め穴付き金属ガスケ ットに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

例えば、内燃機関のシリンダボディとシリンダヘッドとの接合面をシールする ガスケットとして、金属薄板を積層した金属ガスケットが使用されていることは 周知である。該金属ガスケットは、ビードやワイヤーリングなどの弾性力を利用 してシールするものである。即ち、ビードは、金属薄板に設けたシリンダ穴など のシール穴の周囲に、横断面を波形などに屈曲させたものであり、また、ワイヤ ーリングによるシールは、シールする穴の周囲に配置したワイヤーリングの弾性 力を利用してシールするものである。該ワイヤーリングを、金属板からなるガス ケット本体と一体とするには、金属板をシール穴の周縁で折り返したり、金属板 からなるグロメットで組付けるようにしている。

【０００３】 ところで、例えば、内燃機関のヘッドガスケットは、正確に接合面に配置しな いと、シリンダ穴がピストンと干渉するおそれがあるなどの問題がある。このよ うに、ガスケットを正確に位置決めする手段として、従来から、シリンダボディ など、組付けの際に下側になる部材に位置決めピン（ダウエルピン）を植立し、 ガスケットに該位置決めピンを挿入する位置決め穴（ダウエル穴）を設け、位置 決めピンに位置決め穴を差し込むことによって、ガスケットを接合面の正しい位 置に配置するようにしている。その際、前記穴の穴径を、ピン径より公差の範囲 で少し大きめにして差し込みを容易にし、組付け作業能率の向上を図ることが従 来から行われている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

ところで、従来の位置決めピンは、通常、ダボ状のものが多く使用されている 。このような場合には、前記のとおり、位置決め穴は、位置決めピンよりも大き めに作られているために、ピンから外れ易いという問題がある。 例えば、内燃機関など、多数の部材から構成され、しかも、大量生産する場合 には、一般に、組立ライン上で組み立て作業が行われる。組立ラインは、一つの 組立工程が終わるごとに、組み立て中の機械を次工程の作業位置まで移動させる ように構成されている。ヘッドガスケットも、このような組み立てライン上で内 燃機関に組み付けられるが、ガスケットを載置したシリンダボディが、次工程に 運ばれる際に揺れると、ガスケットが位置決めピンから外れるおそれがある。特 に、ヘッドガスケットを載置するデッキ面が傾斜しているＶ型エンジンでは、位 置決め穴が位置決めピンから外れる傾向が強くなる。

【０００５】 しかも、自動組立ラインでは、部品が正規の位置に配置されているか否かを自 動的にチェックが行われる。この場合に、ヘッドガスケットが正規位置から外れ たり、脱落したりしていると、自動組み立てラインを停止させるなど正常位置に 戻す作業が厄介となる。したがって、自動組立ラインでＶ型エンジンを組み立て る場合には、ヘッドガスケットが位置決めピンから外れやすいと、組立ラインが しばしば停止するおそれが生じる。

【０００６】 そこで、本考案は、前記ピンを位置決め穴に容易に嵌合でき、しかも、長さの 短い位置決めピンからのガスケットの脱落を防止した位置決め穴付き金属ガスケ ットを提供することを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

以上の目的を達成するための本考案の位置決め穴付き金属ガスケットの構成は 、少なくとも第１及び第２の金属板から成り、ガスケットを取り付ける接合面の 複数か所に植立した位置決めピンに嵌合するピン穴を設け、第１金属板に開けた ピン穴の少なくとも一つに係合部を設け、該係合部は、ピン穴の少なくとも１カ 所に、位置決めピンに押されて変形し、該ピンの側壁を押圧する位置までピン穴 内に突出する舌片状に形成し、第２の金属板に開けたピン穴に、前記係合部に整 合する部位を切欠きを設け、前記係合部の変形による干渉を防止したものである 。

【０００８】 前記係合部を設ける金属板の材質には特に限定はなく、変形して位置決めピン と係合するものであれば、どのような金属を使用してもよい。また、係合部を設 ける位置には特に限定はないが、少なくともピン穴の１カ所に設け、複数カ所設 ける場合は、偶数のときは、ピン穴の軸心に対し対象位置に、また、奇数のとき は、等間隔に設けることが好ましい。また、舌片状の係合部を、位置決めピンの 挿入によって変形する側に予め曲げ、且つ、舌片の先端が、位置決めピンに達す るように形成することができる。前記舌片の形成には特に限定はないが、前記ピ ン穴から舌片を突設させたのでは、変形に必要とする長さが十分得られない場合 には、穴を大きくしてもよく、またピン穴の両側に切り込みを入れて、変形に必 要な舌片の長さを確保すればよい。

【０００９】 位置決めを確定する穴は、第１，第２の金属板のいずれに設けてもよく、また 、別に第３の金属板を積層し、該第３の金属板に設けてもよい。位置決めを確定 する穴の穴径は、前記のとおり、位置決めピンの径以上とするが、当然、従来の 位置決め穴と同様に、位置決めピンの径との差を、位置決めに必要とする公差以 内の値とする。また、前記係合部を設けない位置決め穴は、位置決めに必要とす る公差以内の穴を従来と同様に形成すればよい。

【００１０】 前記切り欠きは、位置決めピンに係合部が押されて生じる変形を吸収し、該変 形が接合面や他のガスケット構成板との干渉を防止するように作用する。 前記構成の金属ガスケットのシール手段は、従来の金属ガスケットに使用され るシール手段、例えば、ビード、ワイヤーリングなどをそのまま用いることがて きる。そして、ビードを設けたる金属板は、前記第１又は第２金属板のいずれに 設けてもよく、また、別の金属板に設けてもよい。更に、本考案のガスケット構 成板の積層枚数には特に限定はなく、表面板、厚み調整板など、所望により適宜 使用することができる。 本考案を適用する対象は、特に限定はなく、ガスケットを正確に位置決めして 下側部材に載置する場合のガスケットに適用することがてきる。

【００１１】

【実施例】

以下、添付の図を対照して、実施例により、本考案を具体的に説明する。 図１〜図４に示す実施例１の金属ガスケット（以下単にガスケットという）１ は、多気筒内燃機関（図示せず）のヘッドガスケットであり、シリンダ穴Hcの周 囲には、複数のボルト穴Hbを設け、それぞれ所定の位置に、水穴Hw、オイル穴Ho などを設け、更に、ガスケット１の対角線上２か所（一か所は図示せず）に、位 置決め穴Hdを設けている。該ガスケット１は、図２に示すように、実質的にガス ケット１の全領域に延長した３枚の金属板、即ち、上板２、中板４（第２の金属 板）、下板６（第１の金属板）によって構成しており、シリンダ穴Hc，水穴Hw、 オイル穴Hoをシールするビード（図示せず）は、中板に設けている。なお、図１ の符号８は、下板６をシリンダ穴Hcの周縁で折り返し、上板２に重ね合わせた折 返し部であり、積層した板2,4,6 の間に燃焼ガスが進入しないようにした。

【００１２】 前記位置決め穴Hdは、シリンダブロック９に植立した位置決めピン10（図４） に対応して中板４に設けた。そして、少なくとも、１個の位置決めピン10に対応 して、下板６に位置決めを確定する穴、即ち位置決め穴Hdを設け、該位置決め穴 Hdに舌片状の係合部14設けた。即ち、係合部14は、位置決め穴Hdの軸心に対して 対象位置の２カ所に、両側に切り込み16を図のように入れ、先端18を位置決め穴 Hdの中に延長し、舌片状に形成した。位置決め穴Hdの径をＤ₁ 、該Ｄ₁ の公差を Δ、係合部14の差し渡しをＬ（以上図３）、位置決めピン10の径をＤ_P （図４） でそれぞれ表すと、Ｌ＜Ｄ_P ≦Ｄ₁ ≦Ｄ_P ＋Δの関係が成り立ち、しかも、前記 Ｌは、係合部14が位置決めピン10の側壁を押圧する（図４）ような値とした。な お、本実施例では、位置決め穴Hdを、前記のとおり下板６に設けたが、これに限 定されず、他の積層板２，４のいずれに設けてもよい。

【００１３】 中板４に設けたピン穴12は、位置決めピン10の径Ｄ_P より大きな穴とし、図２ 及び図３に示すように、前記係合部14と整合する位置を切り欠いた切欠き部20を 設け、位置決めピン10に押されて変形する係合部14と干渉しないようにしている 。なお、前記位置決ピン10は、ヘッドボルト（図示せず）を貫通するボルト穴Hb （図示せず）を設けたリング状の部材である。

【００１４】 更に、上板２には、位置決めピン10との干渉を避けるために、位置決めピン10 の径Ｄ_P より大きな穴22を設け、各穴Hd,12,22が互いにずれないように、折り返 し部８及びかしめ（図示せず）によって各板2,4,6 を一体とした。他のずれ防止 手段としては、前記折り返し部８を設ける代わりに金属板製のグロメットを設け たり、スポット溶接、はとめなどの手段で、互いにずれないように係止すること もできる。係合部14を設けない側の位置決め穴Hd（図示せず）は、従来と同様に 、各板2,4,6 に設ける穴（図示せず）の少なくとも１個を、単に、前記式Ｄ＝Ｄ _P ＋Δを満たすように形成し、他をそれ以上の大きさの穴としてもよく、また、 前記実施例のように形成してもよい。

【００１５】 以上説明したガスケット１を、位置決め穴Hdに位置決めピン10を挿入してシリ ンダブロック９上に載置すると、変形した係合部14が、位置決めピン10の側壁を 押圧するように変形し、互いに係合する。したがって、位置決めピン10が、図３ に示すように短く、且つ、シリンダブロック９のデッキ面（接合面）24が傾斜（ 図示せず）した状態で揺れたり、急に動いたりした場合でも、ガスケット１が位 置決めピン10から外れることを防止することができる。

【００１６】

【考案の効果】

以上説明したように、本考案の位置決め穴付き金属ガスケットを構成したので 、該金属ガスケットを下側となる部材の上に正確に位置決めして載置すると、互 いに係合して、下側部材が傾いたり、揺れたりしても、位置決めピンから外れる ことがない。したがって、本願考案は、例えば、Ｖ型エンジンのように、ガスケ ットを載置する下側部材の接合面が傾斜していたり、位置ずれを起こすと手直し が困難な自動的組立てラインに使用する場合などに効果的に適用することがてき る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例１による金属ガスケットの部分
平面図である。

【図２】図１の要部を拡大して示した部分平面図であ
る。

【図３】図１の要部を一部破断して示した拡大斜視図で
ある。

【図４】図１に示す金属ガスケットをシリンダヘッドに
載置した状態を示す部分断面図である。

【符号の説明】

１ ガスケット（金属ガスケット） ２ 上板 ４ 中板（第２の金属板） ６ 下板（第１の
金属板） ９ シリンダブロック 10 位置決めピン 12 ピン穴 14 係合部 16 切り込み 18 先端 20 切り欠き部 22 穴 24 接合面 Ｄ 径 Ｄ₁ 径 Ｄ₂ 径 Ｄ_P 径 Ｄ₂₂ 径 Ｌ 差し渡し Hd 位置決め穴

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも第１及び第２の金属板から成
   り、ガスケットを取り付ける接合面の複数か所に植立し
   た位置決めピンに嵌合するピン穴を設け、第１金属板に
   開けたピン穴の少なくとも一つに係合部を設け、該係合
   部は、ピン穴の少なくとも１カ所に、位置決めピンに押
   されて変形し、該ピンの側壁を押圧する位置までピン穴
   内に突出する舌片状に形成し、第２の金属板に開けたピ
   ン穴に、前記係合部に整合する部位を切欠きを設け、前
   記係合部の変形による干渉を防止した位置決め穴付き金
   属ガスケット。