JPH0375637B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、電極の補修方法、特に不溶性陽極の
補修方法に関する。

（従来の技術） 銅箔製造、アルミニウム箔の化成処理における
液体給電等の電解操作には鉛合金陽極が使用され
ていたが、電解による消耗が激しく、使用中に変
形したり、また電解浴中に多量の鉛スラツジが混
入し、浴を汚染したり、箔の表面に付着する等の
欠点があつた。このため現在では鉛合金陽極に代
わつて、バルブ金属基体上に電極活性物質として
白金族金属またはそれらの酸化物、あるいはこれ
にチタン、スズなどの卑金属酸化物を含む皮膜を
数μｍの厚さに被覆した不溶性陽極が使用される
ようになつた。

銅箔製造、アルミニウム箔の化成処理における
液体給電の電解操作中において箔が切れる事故が
発生することがあり、その際箔の切れ端が陽極に
接触して陽極表面の一部が損傷を受けることがあ
る。また、槽電圧を低減するために箔と陽極の距
離は極力狭められており、箔の振動により箔と陽
極が接触し同様の事故が生じることがある。従来
の鉛合金陽極を使用した場合は、鉛合金陽極の厚
みが数mm〜十数mmなのでその表面に傷が生じても
通電可能であるため、製品に悪影響を与えること
がほとんど無かつた。また、鉛合金陽極が大きな
損傷を受けて補修が必要な場合には熔接等によ
り、容易に短時間で補修が可能であつた。

不溶性陽極を使用した場合には、電極活性物質
層の厚みが数μｍと薄いため陽極の表面が損傷し
て電極活性物質の皮膜が失われるとバルブ金属基
体が露出してその部分は通電不能となる。通電不
能部分が存在すると電流分布が不均一となり製品
に悪影響を与える場合がある。陽極表面の損傷が
原因で製品に悪影響がでた場合には、不溶性陽極
の大部分が使用可能であるにもかかわらず操業を
停止し、電解槽からこの陽極を取り外して、新し
い電極活性物質を被覆するいわゆるリコーテイン
グを実施しているのが現状である。

（発明が解決しようとする問題点） 不溶性陽極のわずかの部分に通電不能部分が生
じたことによるリコーテイングの実施には、大部
分が正常なコーテイングであるにもかかわらず剥
離処理を必要とするので著しい不利益をもたら
す。そこで不溶性陽極上の通電不能部分を短時間
でかつ容易に補修する技術が望まれていた。

（問題点を解決するための手段） 不溶性陽極の通電不能部分を補修する方法とし
て、その部分に適合する別の不溶性陽極を熔接で
接合する方法が考えられる。しかし、熔接時の熱
により正常な不溶性陽極が損傷を受けてしまう。

本発明者らは不溶性陽極の損傷部分のみを短時
間で簡単に補修する技術について検討した。その
結果、不溶性陽極上に生じた通電不能部分より大
きい範囲にわたつて穿孔して得た穴に、不溶性陽
極と同一の電極活性物質を被覆した補修材を埋め
込むことにより不溶性陽極を短時間で簡単に補修
できることを見い出した。

次に、本発明の方法を図面により説明する。第
１図ａおよび第２図ａに示すように、バルブ金属
よりなる電極基体６の上に電極活性物質２を被覆
してなる不溶性陽極上に生じた通電不能部分の形
状は、主として点状の通電不能部分１（第１図
ａ）または線状の通電不能部分４（第２図ａ）と
なる。本発明を実施するためには、ドリル等で陽
極上の通電不能部分を穿孔する。その際通電不能
部分より大きな形状とすることが必要で、線状の
通電不能部分には、第２図ｂに示すようにその部
分に沿つて数箇所に穿孔する。第１図に示すよう
に不溶性陽極の基体が厚い場合は、第１図ｂのよ
うに不溶性陽極の中程まで穿孔する。必要ならば
ネジ切りを施してもよい。チタン等のバルブ金属
基体表面に不溶性陽極と同じ電極活性物質を被覆
せしめた補修材３（たとえばネジ、リベツト、ピ
ン、ボルトまたはブロツク等）を穿孔した穴に埋
め込む。第２図に示すように不溶性陽極の基体６
が薄い場合には、第２図ｂのように不溶性陽極を
貫通するように穿孔したのち、電極活性物質を被
覆せしめたバルブ金属製の補修材３を埋め込み、
バルブ金属製のナツト５等で固定する。

通電不能の範囲が広範囲である場合には通電不
能部分より広い範囲を穿孔して表面に電極活性物
質を被覆せしめた板またはブロツク等の補修材を
埋め込み電極活性物質を被覆せしめたネジ等で固
定する。表面に不溶性陽極と同じ電極活性物質を
被覆せしめたチタン等のバルブ金属基体で作成さ
れた補修材、たとえばネジ、リベツト、ピン、ボ
ルトまたはブロツク等を予め数種類の大きさのも
のを作成しておけば、不溶性陽極に穴をあけて埋
め込むだけで短時間で容易に不溶性陽極の補修が
可能である。補修済みの陽極が寿命となつてリコ
ーテイングを施す場合には補修に使用した補修材
は付けたままでもよく、それを除去した穴を熔接
等により埋めてもよい。

（実施例） 以下、実施例により本発明を説明する。

実施例 １ 長さ1100mm、幅100mm、厚さ30mmのチタン基体
に二酸化イリジウムの被覆を施した不溶性陽極を
銅箔製造工程に約３箇月間使用した時に銅箔が切
れて不溶性陽極とが接触して直径約２mmの部分が
通電不能となつた。製品の不良品数が増えたので
この陽極を取り外して通電不能部分を直径４mmの
ドリルで約10mmの深さに穿孔したのち、第１図ｂ
に示すように、ネジ切り加工を施し予め表面に二
酸化イリジウム被覆を施したチタン製皿小ネジの
補修材を取り付けた。その際二酸化イリジウム被
覆が剥離するのを防ぐためプラスチツク製ドライ
バーを使用した。補修作業は約２時間で終了し
た。補修後の不溶性陽極を使用して銅箔を製造し
たところ不良品数は正常のレベルとなつた。

実施例 ２ 約５箇月間銅箔製造に使用中に銅箔が切れて、
長さ1100mm、幅500mm、厚さ３mmのチタン基体上
に白金−イリジウムを被覆した不溶性陽極と接触
して不溶性陽極上に幅約１mm、長さ10mmの通電不
能部分が生じた。不良数が増えたので不溶性陽極
を取り外して直径４mmの貫通した穴をドリルで３
個あけ、予め表面に白金−イリジウムの被覆を施
したチタン製皿小ネジの補修材が入るように加工
したのち、第２図ｂに示すようにチタン製ナツト
でチタン製皿小ネジを固定した。その際プラスチ
ツク製ドライバーを使用した。補修作業は約２時
間で終了した。補修後の不溶性陽極を使用して銅
箔製造を正常に実施でき、不良数は正常のレベル
となつた。その後約５箇月間使用できた。

（発明の効果） 本発明によれば、予め製作しておいた補修材に
より簡単に通電不能部分を補修できるため、陽極
の長寿命化ができ、電極活性物質の利用率が大幅
に向上した。また、従来上述の突発事故に対処す
るため陽極スペアーを数多く保有しなければなら
なかつたが、本発明により陽極交換頻度が計画的
に行なえるようになつたため、ほとんど陽極スペ
アーを必要としなくなつた。

【図面の簡単な説明】

第１図ａ，ｂは、それぞれ厚い電極に生じた点
状の通電不能部分と、この補修の態様を示す概略
断面図であり、第２図ａ，ｂは、それぞれ薄い電
極に生じた線状の通電不能部分と、この補修の態
様を示す概略断面図である。 １……点状の通電不能部分、２……電極活性物
質、３……補修材、４……線状の通電不能部分、
５……ナツト、６……電極基体。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 不溶性陽極上に生じた通電不能部分を補修す
   るにあたり、通電不能部分より大きい範囲に穿孔
   して得た穴に、不溶性陽極と同一の電極活性物質
   を被覆した補修材を埋め込むことを特徴とする不
   溶性陽極の補修方法。 ２ 補修材の基体が、バルブ金属であることを特
   徴とする請求項１記載の不溶性陽極の補修方法。