JPH03748B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、積層形燃料電池に関し、特にその
ガスシール性の向上に関するものである。

周知の通り燃料電池は、水素を主成分とする燃
料ガスと、酸素又は空気などの酸化剤ガスとの酸
化還元反応による電子の授受を利用して発電を行
なうもので、一般に燃料、酸化剤両電極と電解質
マトリツクスおよびガス分離板を多数積層して用
いられる。

従つて、反応ガスのシールは燃料電池の安全上
非常に重要な問題であり、反応ガスが極力外部に
洩れないようなシール構造にする必要がある。

ガス分離板の周辺部分におけるシールも重要な
ガスシール部分の一つである。第１図、第２図
は、最も単純な直交型ガス分離板を示す平面図
で、図中斜線部分１がガス分離板の周辺部分にお
けるシール部分である。図において、２は反応ガ
ス流路凹部、３は反応ガス流路凸部であり、ａ，
ｂ，ｃ，ｄは第１図と第２図の同一の位置を示し
たものである。実際の燃料電池は第１図と第２図
のガス分離板の間に、燃料、酸化剤両電極と電解
質マトリツクスとから成る単電池をはさみ込む形
になる。

従来、上記ガス分離板周辺部分１のシール方法
としては、パツキング材による方法と、電解質を
多孔質部材に充填することによる方法、すなわち
電解質による湿潤ガスシール（ウエツトシール）
とが用いられている。

パツキング材によるシールにおいては、パツキ
ング材の弾力により充分なガスシール性が期待さ
れるが、パツキング材は電解質に対して充分な耐
食性を有していなければならず、また、厚さの均
一なものを使用する必要がある。従つて、材料的
制約からコストが高くなる欠点がある。このた
め、現在はウエツトシールが数多く用いられてい
るが、ウエツトシールはコストが安く、組立が簡
便である反面、シール部分に充填されている電解
質が不足した場合に充分なシール性が維持できな
くなるという欠点がある。これらの点について更
に明らかにするために、以下、従来例について具
体的に説明する。第３図はウエツトシールの実例
を断面図を用いて示したもので、図において、４
はガス分離板、５は反応ガス流路、６は燃料およ
び酸化剤電極、７は電解質マトリツクス、８は電
解質が充填されたウエツトシール部分、９，１０
はガス分離板４とのシール面である。ウエツトシ
ール部分８の電解質が不足した場合、シール面
９，１０でのガスシール性が悪化する。特に、反
応ガス流路５と直交するシール面９は、反応ガス
流路５に平行なシール面１０に比べてシール面積
が約半分になるため、ガスシール性の悪化が著し
い。またウエツトシール部分８は弾力性に乏しい
ため、面圧の変化に対してシール性が著しく低下
する恐れがある。

一方、第４図はウエツトシールとパツキング材
によるシールの両方を用いた場合の実例を示した
もので、図において、１１はパツキング材であ
る。この場合、パツキング材１１の弾性により、
燃料電池全体の面圧が低下した場合にもウエツト
シール部分８にはある程度の面圧が維持されるた
め、第３図のシール方法よりもシール性は保たれ
るが、ウエツトシール部分８の電解質が不足した
場合にはやはりシール面１０のガスシール性が悪
化する。

なお、図では示さなかつたが、燃料および酸化
剤の両電極６にパツキング材１１によるシールを
用いた場合には、電解質マトリツクス７に対して
パツキング材１１と電極６との境界面において無
理な力が加わり、電解質マトリツクス７が破損し
やすくなり、実用に耐えない。したがつて、現在
用いられているシール方法は、第３図のように両
電極ともウエツトシール８にする場合と、第４図
のように一方をパツキング材１１に、他方をウエ
ツトシール８にする場合の２つが主流となつてい
る。

以上のように、従来のシール方法には、何れの
場合にも、電解質が不足した場合にシール性が著
しく低下するという欠点があつた。

この発明は上記のような従来のものの欠点を除
去するためになされたもので、ウエツトシールと
対向するガス分離板部分に窪みを設け、この窪み
にシール材と電解質とを充填することにより、上
記窪みを設けた分だけシール経路すなわち電極周
縁部とガス分離板との隙間で形成されるガス漏れ
経路が長くなりシール効果が上昇し、また、電解
質が不足しても、シール体積すなわちシール部に
充填されている電解質の体積が大きくかつ上記窪
みによるシール経路の複雑さによりシール性への
影響が少ない積層形燃料電池を提供することを目
的としている。

以下、この発明の一実施例を図をもとに説明す
る。

第５図、第６図において、１２はウエツトシー
ル８と対向するガス分離板４部分に設けた窪みで
あり、この窪み１２にシール材と電解質とが充填
されている。これらの図から明らかなように、窪
み１２を設けた分だけシール経路が長くなり、シ
ール効果が上昇する。また、電解質が不足して
も、シール体積が大きく、かつ窪み１２によるシ
ール経路の複雑さによりシール性への影響が少な
い。

第７図〜第９図はこの発明の他の実施例を示す
図で、図において、１３は窪み１２の面に設けた
複数個の溝であり、９はパツキング材１１による
シール部分である。すなわち、この実施例では、
それぞれのガス分離板４の反応ガス流路５に平行
な辺をウエツトシール８とし、垂直な辺をパツキ
ング材１１によるシールとしている。上記窪み１
２および窪み１２の面に設けた複数個の溝１３に
はシール材と電解質が充填されている。第９図か
ら明らかなように、窪み１２の面に複数個の溝１
３を設けることにより、電極周縁部とガス分離板
との隙間で構成されるガス漏れ経路が長くなり、
第５図の実施例よりシール効果が高められる。ま
た、電解質が不足した場合にも、複数個の溝１３
が障壁となり、反応ガスの外部への洩れを防ぐこ
とができる。

両電極６ともウエツトシールにする場合にも、
それぞれのガス分離板４の反応ガス流路５に平行
な辺に複数個の溝１３を設け、電解質シール材と
の混合物を充填することにより上記実施例と同様
の効果が期待されるが、さらに反応ガス流路５に
垂直な辺についても同様の機構を設け、シール性
をより高めることができる。第１０〜第１２図は
この発明の他の実施例を示す図で、図において、
１４は複数個の溝を設けたはめ板であり、反応ガ
ス流路５を加工して装着したものである。これに
より、反応ガス流路５に垂直な辺でもシール材と
電解質を充填することが可能となる。第１２図か
ら明らかなように、両電極６ともシール面９，１
０の面積が従来のシール方法に比べて著しく増大
しており、シール性が高められている。

また、電解質が不足した場合にも、先の実施例
と同様に、複数個の溝１３が障壁となり反応ガス
の外部への洩れを防ぐことができる。

なお、窪み１２および窪み１２の面に設けた溝
１３に充填するシール材としては、リン酸形の場
合は炭化硅素や炭化ホウ素の微粒子とポリテトラ
フルオロエチレン、四フツ化エチレン樹脂、四フ
ツ化エチレン−六フツ化プロピレン共重合体など
の結着剤との混合物が、溶隔塩形の場合はアルミ
ナなどが用いられる。

また電解質は、電解質マトリツクス７などに充
填するものと同じでよい。

また、上記実施例ではガス分離板４に反応ガス
流路５が設けられている場合について示したが、
電極６に反応ガス流路が設けられている場合（リ
ブ付電極）でもよく、上記実施例と同様の効果を
奏する。

なお、上記説明では省略したが、数セル毎に冷
却機能をも兼ねるガス分離板が挿入される。

以上のように、この発明によればウエツトシー
ルと対向するガス分離板部分に窪みを設け、この
窪みにシール材と電解質とを充填したので、上記
窪みを設けた分だけシール経路が長くなりシール
効果が上昇し、また、電解質が不足しても、シー
ル体積が大きくかつ上記窪みによるシール経路の
複雑さによりシール性への影響が少ない積層形燃
料電池が得られる効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図、第２図は従来のガス分離板を示す平面
図、第３図、第４図はそれぞれ従来の積層形燃料
電池の一部を示す断面図、第５図はこの発明の一
実施例による積層形燃料電池の一部を示す断面
図、第６図は第５図のガス分離板を示す断面図、
第７図及び第８図並びに第１０図及び第１１図は
それぞれこの発明の他の実施例にかかわるガス分
離板を示す平面図、第９図は第７図および第８図
の、第１２図は第１０図および第１１図のガス分
離板をそれぞれ用いたこの発明の他の実施例によ
る積層形燃料電池の一部を示す断面図である。 図において、１はウエツトシール８と対向する
ガス分離板部分、２，３はそれぞれガス分離板４
に設けられた反応ガス流路凹部および凸部で、こ
の凹凸部２，３により反応ガス流路５を形成して
いる。６は燃料および酸化剤電極、７は電解質マ
トリツクス、８はウエツトシール、９，１０はシ
ール面、１１はパツキング材、１２は窪み、１３
は窪み１２の面に設けた凹凸でこの場合は複数個
の溝、１４は窪み１２および窪み１２の面に複数
個の溝１３を有するはめ板である。なお、図中同
一符号は同一または相当部分を示すものとする。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 燃料電極、電解質マトリツクス、及び酸化剤
   電極を有し、上記両電極の少なくとも一方の電極
   周縁部に電解質による湿潤ガンシール部を構成し
   た単電池、ガス分離板、及び上記電極とガス分離
   板との間で両者のいずれか一方の面に複数の溝に
   て形成した凹凸状ガス流路部を備え、上記単電池
   とガス分離板とを交互に複数個積層して成る積層
   形燃料電池において、上記湿潤ガスシール部に対
   向するガス分離板部分に窪みを設け、この窪みに
   シール材と電解質とを充填したことを特徴とする
   積層形燃料電池。 ２ 窪みの面は凹凸状である特許請求の範囲第１
   項記載の積層形燃料電池。