JPH0366984B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

この発明は吸引鋳造装置に係り、特に湯回り不
良による欠陥の生じやすい複雑形状あるいは薄肉
形状の鋳造製品を前記欠陥を生じることなく高品
質で製造するのに好適な吸引鋳造装置に関する。 湯回り不良による欠陥を生じやすい鋳造製品と
しては、たとえば肉厚0.5mm以下程度の薄肉のも
のや鋭いエツジを有するものなどがあり、具体的
にはターボチヤージヤ用ロータやインペラ、ガス
タービン用ロータやインペラなどの薄肉翼物、あ
るいは表面に繊細な模様のある樹脂成形用金型等
がある。 従来、上記したような湯回り不良による欠陥の
生じやすい製品を鋳造するに際しては、真空中
において鋳造する真空鋳造法、金属溶湯に圧力
を加える加圧鋳造法、鋳型を減圧する吸引鋳造
法などが用いられている。 これらのうち、真空鋳造法は設備が高価につ
くと共に生産性も悪く非能率的であるという欠点
を有し、加圧鋳造法では溶湯が飛散するという
危険性があると同時に装置の構造も複雑になると
いう欠点を有している。そのため、比較的装置の
構造が簡単で設備費用が少なくて済むの吸引鋳
造法が注目されてきている。 第１図は従来の吸引鋳造装置の一例を示す断面
図であつて、この吸引鋳造装置は、鋳枠１で囲ん
だ通気性鋳型２の底部に冷し金としての金型３を
配設し、この通気性鋳型２と金型３とで鋳造空間
４を形成し、この鋳造空間４と連通する湯口５を
鋳型２の上部に設けると共に、前記金型３に吸引
孔６を形成し、金型３の下部に吸引箱７を設置し
てこの吸引箱７に吸引管８ａを接続し、この吸引
管８ａを吸引ポンプ８に連結した構造を有するも
のである。 このような装置によつて鋳造を行うに際して
は、るつぼ９内の金属溶湯１０を湯口５内に注入
するのに合わせて、あるいは注入する以前から、
吸引ポンプ８を作動し、吸引孔６を介して鋳造空
間４内を吸引して鋳造するようにしていた。 しかしながら、このような従来の鋳造装置で
は、通気性鋳型２と金型３との間の密着が不充分
であつて鋳型２と金型３との間に隙間３ａがある
と、吸引鋳造の際に金属溶湯１０が前記隙間３ａ
を通つて吸引孔６側へ流れて健全な鋳造製品を得
るのが困難となるばかりでなく、この金属溶湯１
０が吸引孔６から吸引箱７内に流れ込み、さらに
は吸引管８ａを経て吸引ポンプ８まで侵入して、
これらを閉塞しあるいは損傷する危険があるとい
う問題点があつた。 第２図は従来の吸引鋳造装置の他の構造例を示
す図であつて、上部鋳枠１１ａによつて囲まれた
通気性鋳型１２ａの内部に湯口１３ａを形成する
と共に、下部鋳枠１１ｂによつて囲まれた通気性
鋳型１２ｂの内部に鋳造空間１３ｂを形成し、鋳
造製品の厚肉部に相当する通気性鋳型１２ａの底
面部分に冷し金１４を設けておき、この通気性鋳
型１２ａ，１２ｂを重ねた状態で鋳型台１５を介
して吸引箱１６上に設置し、この吸引箱１６に吸
引管１７を臨ませて図示しない吸引ポンプにより
吸引できるようにした構造を有するものである。 このような装置によつて鋳造を行うに際して
も、前記と同様に、るつぼ９内の金属溶湯１０を
湯口１３ａ内に注入するのに合わせて、あるいは
注入する以前から、吸引管１７および吸引箱１６
を介して鋳造空間１３ｂ内を吸引して鋳造するよ
うにしていた。 しかしながら、この吸引鋳造装置では、冷し金
１４が通気性鋳型１２ａ，１２ｂの内部に埋設さ
れているため、冷し金１４の冷却能力に限界があ
るうえに、通気性鋳型１２ａ，１２ｂと冷し金１
４との熱膨張係数の違いによつて通気性鋳型１２
ａ，１２ｂの予熱時にクラツクが生ずることがあ
るという問題点がある。 この発明は上述した従来の問題点を解消するた
めになされたもので、吸引鋳造時に金属溶湯が洩
出して吸引系統を閉塞したり破損したりするのを
防止することができ、湯回り不良による欠陥の生
じやすい複雑形状部品あるいは薄肉形状部品等の
鋳造製品を当該欠陥を生ずることなく高品質で製
造することができる吸引鋳造装置を提供すること
を目的としている。 この発明に係る吸引鋳造装置は、湯道を有する
と共に前記湯道に連通する開口状の鋳造空間形成
用空洞部を有する通気性鋳型と、前記通気性鋳型
の前記鋳造空間形成用空洞部開口側に当接して前
記鋳造空間形成用空洞部との間で鋳造空間を形成
する冷やし金兼用の金型と、前記通気性鋳型の鋳
型外壁部に当接する位置と前記通気性鋳型の鋳型
外壁部から離間する位置との間で移動し且つ前記
通気性鋳型の外壁部に当接する位置にあつて前記
通気性鋳型の通気性部分を介して前記鋳造空間の
内部を吸引する吸引器と、前記吸引器を前記各位
置の間で移動させる吸引器移動手段を具備してな
る構成としたことを特徴としている。 以下、この発明の実施例を図面に基づいて詳細
に説明する。 第３図〜第７図はこの発明の一実施例を示すも
のであつて、通気性鋳型２１は、第４図に示すよ
うに、鋳型２１の上部側に湯道２１ａを有すると
共に、湯道２１ａより下部側に前記湯道２１ａに
連通する開口状の鋳造空間形成用空洞部２１ｂを
有し、石膏、セラミツクシエルあるいは砂その他
の鋳型材料から適宜構成され、保温性、通気性を
有している。この通気性鋳型２１の上面側にはス
リーブ２２を設置して湯口２３を形成すると共
に、通気性鋳型２１の底面側には冷やし金として
も作用する冷やし金兼用の金型２５を設置して前
記鋳造空間形成用空洞部２１ｂの開口を塞ぐよう
にし、これにより通気性鋳型２１と金型２５とに
よつて鋳造空間２６を形成するようにしている。
この場合、通気性鋳型２１は、金型２５のフラン
ジ部２５ａによつて位置決めされている。この鋳
造空間２６は、第７図に示す羽根車３０の形状に
対応した形状を有している。そして、この場合、
金型２５は鋳造空間２６の一部をなすように形成
され、金属溶湯の凝固時に冷やし金として作用す
ることにより厚肉部分の指向性凝固を図り、鋳造
製品の組織を緻密にして歪の防止および機械的性
質の向上はかるようにしている。 上記通気性鋳型２１の側面外壁部には、第５図
および第６図に示すように、この通気性鋳型２１
を二方向から挟むように２つの半円弧状の吸引器
３１，３１が配設されており、前記通気性鋳型２
１の鋳型外壁部に当接する位置と前記通気性鋳型
２１から離間する位置との間で移動するものとな
つている。この場合、前記両吸引器３１，３１は
各々吸引器移動手段としてクランプ用シリンダ３
２，３２のシリンダ軸３２ａ，３２ａに連結さ
れ、シリンダ軸３２ａ，３２ａが押出作動したと
きには前記吸引器３１，３１が前記通気性鋳型２
１の側面外壁部に当接し、シリンダ軸３２ａ，３
２ａが引込作動したときには前記吸引器３１，３
１が前記通気性鋳型２１の側面外壁部から離間す
るようになつている。そして、各吸引器３１，３
１は、配管３３，３３、吸引用バルブ３４、配管
３５を介して図示しない減圧吸引ポンプに接続さ
れている。 上記吸引器３１は、第３図および第５図等に示
すように、半円筒状の金属基盤４１に、凹溝状の
円弧形吸引口４２ａを有する同じく半円筒状の吸
引体４２を取り付けたもので、この吸引体４２
は、耐熱ゴム、アスベスト等の耐熱性および弾性
を有する材料から形成されている。そして、金属
基盤４１と吸引体４２に貫通口を設けて前記配管
３３と吸引口４２ａとを連通させ、吸引口４２ａ
を介して減圧吸引できるようにしている。また、
金属基盤４１の外側に当板４３を介してシリンダ
軸３２ａを連結している。 以上の構成になる吸引鋳造装置を用いて、従来
の重力鋳造法では湯回り不良による欠陥を生ずる
ような製品を鋳造するに際しては、例えば第７図
に示す羽根車３０の形状に対応した鋳造空間２６
を形成しうる鋳造空間形成用空洞部２１ｂを有す
る通気性鋳型２１を準備し、これを所定の予熱温
度に保持したのち金型２５上に載置して鋳造空間
２６を形成する。次いで、吸引器移動手段である
両クランプ用シリンダ３２，３２を同時に押出作
動させて各シリンダ軸３２ａ，３２ａに連結した
両吸引器３１，３１を鋳型２１の側面外壁部に向
けて移動させ、鋳型２１の側面外壁部に当接させ
ると同時に吸引体４２，４２の端面同士を密着さ
せる。このとき、第６図に示す配管３３にフレキ
シブルホースを用いることによつて無理な力が生
じない。 次に、るつぼ４９内に収容した金属溶湯５０を
湯口２３より注入し、鋳造空間２６内に金属溶湯
５０を注ぎ込む。この注入と同時に吸引用バルブ
３４を開き、吸引器３１，３１の吸引口４２ａ，
４２ａを介して鋳造空間２６内を減圧吸引し、こ
の減圧吸引により吸引鋳造を行う。 かくして所定時間の減圧吸引を終了したのち、
クランプ用シリンダ３２，３２を引込作動させ、
吸引器３１，３１を鋳型２１の側面から離間させ
る。 第８図はこの発明による吸引鋳造装置を回転テ
ーブルと共に設置した場合を示す図であつて、こ
の回転テーブル５１は前記実施例における金型２
５と同様の機能を兼備するものである。そして、
この回転テーブル５１は既知の間欠回転駆動機構
によつて所定角度毎（例えば60゜毎）に間欠回転
するものであり、この回転テーブル５１上に複数
の（例えば６個の）通気性鋳型２１を設置してそ
れぞれ鋳造空間を形成し、複数の鋳型２１のうち
の１個の鋳型２１に対して、その側面側より吸引
器３１を前記鋳型２１の外壁部に当接する位置と
前記鋳型２１の外壁部から離間する位置との間で
移動するように配設し、各吸引器３１には吸引器
移動手段であるシリンダ３２のシリンダ軸３２ａ
を連結した場合を示している。 このようにすれば、鋳造製品の生産性を著しく
向上させることができるという利点がある。 第９図はこの発明の他の実施例を示す図であつ
て、下注鋳造による場合を示しており、前記実施
例と同一機能部分に同一符号を付してその説明を
省略する。 鋳造例 １ 前記第１実施例に示した吸引鋳造装置を用いて
複雑な形状でかつ薄肉翼を有するターボチヤージ
ヤ用インペラを鋳造した。鋳造条件は表１の如く
である。

【表】 その結果、得られた鋳造製品の薄翼先端（肉厚
0.5mm）まで十分に溶湯が充満され、湯回りが完
全なものであつて、さらに鋳物の厚肉部に当てた
冷し金により指向凝固の組織となり、緻密な鋳物
を製造することができた。 鋳造例 ２ 前記と同じ吸引鋳造装置を用いて複雑な形状で
かつ薄肉翼を有するターボチヤージヤ用ロータを
鋳造した。鋳造条件は表２の如くである。

【表】 その結果、鋳造製品は薄肉の翼先端まで溶湯が
充満され、湯回りの完全なものであり、かつ鋳物
の厚肉部に当てた冷し金により指向凝固させるこ
とができ、緻密な鋳物を製造することができた。
さらに、本発明装置によれば、高融点のNi基耐
熱合金鋳物を製造するに際し、鋳型予熱温度が
1000℃以下（この場合は700℃）であつても完全
な湯回りを保証することができると共に、エネル
ギー節約の意味からも有利であつた。 以上詳述したように、この発明の吸引鋳造装置
によれば、通常の重力鋳造では湯回り不良による
欠陥の生じやすい複雑形状製品や薄肉形状製品の
鋳造を完全な湯回りを保証しておこなうことがで
き、製品歩留りを向上させることができると共
に、減圧吸引により従来の重力鋳造に比べて鋳型
予熱温度ならびに金属溶湯温度を低下させること
が可能であり、鋳型が減圧されるために鋳型と溶
湯の間が酸欠状態となつてガス欠陥の発生が軽減
されると同時に製品の酸化が少ない鋳肌の良好な
製品を得ることができるという非常にすぐれた効
果を奏する。 一方、減圧吸引を鋳型側から行うために、従来
のように鋳型下部の冷し金に設けた吸引孔から溶
湯が流出して吸引経路を閉塞するという危険性が
なく安全な操業の確立が容易となる利点を兼ね備
えている。 さらに、通気性鋳型と金型とで鋳造空間を形成
することによつてこの金型からなる冷やし金が鋳
型の一部を構成するものになると共に、鋳型の外
壁部側から鋳型内を減圧吸引するために、指向凝
固を可能にして緻密かつ機械的性質の優れた健全
な鋳物製品を安価に製造することができる。 さらには、吸引器が吸引器移動手段の作動によ
り通気性鋳型の鋳型外壁部から離間する位置に移
動しているときに、鋳造済の通気性鋳型を別の位
置に置くと共に次に鋳造に供する通気性鋳型を鋳
造位置に置くようにすることによつて、多数の通
気性鋳型を用いて順次鋳造を行うようにすること
が可能であり、その場合にも吸引器は共通して使
用することができるという著しく優れた効果があ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は従来の吸引鋳造装置を説
明する各々断面図、第３図はこの発明の一実施例
による吸引鋳造装置を説明する部分破断正面図、
第４図は第３図の吸引鋳造装置の通気性鋳型を示
す部分破断正面図、第５図は第３図の吸引鋳造装
置の吸引器を示す斜視図、第６図は吸引器が鋳型
から離間した状態を示す平面説明図、第７図は本
発明装置を用いて吸引鋳造する鋳物の形状例を示
す斜視図、第８図はこの発明による吸引鋳造装置
を回転テーブルと共に設置した実施例を示す平面
説明図、第９図はこの発明の他の実施例による吸
引鋳造装置を示す断面図である。 ２１…通気性鋳型、２１ａ…湯道、２１ｂ…鋳
造空間形成用空洞部、２５…金型、２６…鋳造空
間、３１…吸引器、３２…シリンダ（吸引器移動
手段）、４２ａ…吸引口。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 湯道を有すると共に前記湯道に連通する開口
   状の鋳造空間形成用空洞部を有する通気性鋳型
   と、前記通気性鋳型の前記鋳造空間形成用空洞部
   開口側に当接して前記鋳造空間形成用空洞部との
   間で鋳造空間を形成する冷やし金兼用の金型と、
   前記通気性鋳型の鋳型外壁部に当接する位置と前
   記通気性鋳型の鋳型外壁部から離間する位置との
   間で移動し且つ前記通気性鋳型の外壁部に当接す
   る位置にあつて前記通気性鋳型の通気性部分を介
   して前記鋳造空間の内部を吸引する吸引器と、前
   記吸引器を前記各位置の間で移動させる吸引器移
   動手段を具備してなることを特徴とする吸引鋳造
   装置。